【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ   作:ラットマンΣ

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私の願い、ボクの願い

———ティンダロスの大口の底 冥界の入り口にて

 

「ようこそ勇者御一行の皆様、お待ちしておりました」

 

そう言って冥界の入り口の巨大な門の前に立っていたのは白銀の長髪を後ろで三つ編みにしている赤い服を着た青年だった。

 

「貴方は冥王様、何故ここに?」

 

賢王(リリス)さんとは文通仲間でしてね。彼女の魔眼である程度来る日にちを絞ってもらったのです。そして、申し遅れました。僕は現冥界王の閻魔です。気軽に閻魔と呼んでください」

 

「ほう、うちの賢王様と知り合いか! そういや時たま手紙書いてたなあの人」

 

「貴方はジニスですね? 賢王からよく聞いてますよ。そして勇者アリス、貴方の願いを叶えましょう」

 

「……! 何故わかるんですか?」

 

「僕もちょっとした魔眼を持っていましてね。相手の心が読めるんです」

 

さらっとすごいことを閻魔さんが言う。

けど、わかってくれるなら話は早い。

 

「ではついて来てください。低深度冥界にある旧閻魔庁に向かいます」

 

そう言って冥界の街を歩いていく。

周りには青く燃える炎の玉……人魂が浮遊し街を光らせる。

これら全てが死した人々の魂、この世に未練が残った魂たちだ。

行き場のない魂の安寧の地、それが冥界だ。

その街中を歩き旧閻魔庁に到着する。

古びた赤い建物の中に入り大広間に到着した。

 

「それでは、エデさんの魂を呼びますね」

 

「よろしくお願いします」

 

私がそう言うと閻魔様は両の手を合わせ祈る。

そうすると一つの人魂が旧閻魔庁内にやってきた。

そうして人魂は次第に人の形を取り戻していく。

 

「エデ、久しぶりだね……」

 

「うん、久しぶりアリス。大きくなったね、もうボクよりずっと大きいや」

 

「エデ……もっと話していたいけど決意が鈍るから言うね。私の身体を使ってエデを蘇生する。私なんかよりエデの方が勇者として相応しい。何より冥界(ここ)で待っていたのがその証明だ。エデには未練がある、だからこそここにいたんだよね?」

 

「アリス……」

 

エデはそっと瞳を閉じて私に近づく。

そう、これでいい。

これで……

 

「この大バカちんが!」

 

そう叫んでエデは私の頬を叩いた。

 

「なぁに考えてんの! 確かに未練はあるけどそんなえげつないことしないからボク?! 全く君ってやつは昔からいい奴なんだが自分のことを考えなさすぎだ! いいかい、肉体譲渡したらキミは死ぬんだぞ! わかってるのか!」

 

「……けど、私はエデを死なせて……」

 

「ああ! 死んだ、めっちゃ痛かった! けど、ボクはあれで良かったんだよ! もし生きていたいならキミを見捨ててチクタクマンの奴を殺せば良かったからね! だけどあのクソ野郎よりによってボクの一番大切なものを狙った! だから守ったんだよわかる? そのキミを死なせてまで蘇る気はないよ」

 

「……わからないよ、私はエデにとって何だったの?」

 

「親友、だろ? それともそう思ってたのボクだけ?」

 

「私も思ってたよ、けど……」

 

「はいこれ以上自己否定禁止! アリス、キミには今もついてきてくれる大切な仲間がいるじゃないか! ……それにキミは勇者として1番大事なものを持っている。だから安心しろ」

 

「エデ……」

 

「さぁて、これでお別れがちゃんと言えなかったって言うボクの未練は無くなった。アリス、そしてその仲間たち。キミたちの道に祝福を! どうかその手で世界に光を!」

 

エデの身体が徐々に光に溶けていく。

まるで無へと還るように。

 

「それと、アリス。できたら別れは笑顔でお願いしたいな」

 

「……うん! 絶対泣かない! 必ず私たちが世界の未来を切り拓くから!」

 

そう言ってぐちゃぐちゃな笑顔でエデを見送る。

 

「……」

 

エデの魂が光に溶けて私の周りで消える。

私の頬を涙が伝う。

ジニスとフェロウは何も言わずに私の肩をそっと叩く。

私はみんなに助けられてばかりだ。

だけど決めた、必ず魔皇を打ち倒すと。

そしてチクタクマンを必ず打ち取ると!

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