【本編完結済みと言ったな、あれは嘘だ 本編改稿中】 混沌怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ 作:ラットマンΣ
「やあやあ、初めまして。僕はサタン、憤怒の魔王サタンだ。あ、今世界を壊そうとしてる
そう言って自己紹介をしてきた青年……サタンは飄々としているが圧倒的な威圧感を放っていた。
そしてサタンは私達の周りを一周すると私の前に止まった。
「うん!弱い!こんなんじゃ世界は滅亡待ったなしだね!」
サタンは笑顔でそう言い放った。
「な……てめぇ、何を思ってそんなことを!」
ジニスが怒りながら反論するがサタンは笑顔で言い返す。
「だって、僕より圧倒的に弱いんだもん君達。初代魔皇討伐組より弱いとか論外だよ」
あぁ、そうか思い出した。
サタンは初代魔皇討伐組の1人と
そのサタンが私達を弱いと評したことは私の中では納得した。
何故なら私達はチクタクマンに遊ばれてた。
そんなんじゃ、それ以上に強い魔皇を倒すなんて無茶な話だ……
「まぁ、君達なりに努力してきたのは認めるよ?
サタンは心を見透かすような鋭い瞳で私達を睨む。
「……と、まぁダメダメな君達だけど、君達が勝たないと世界が滅びる。だから君達に最高のプレゼントをあげよう!なんと相手より必ず強くなる魔法!便利で都合が良いだろう?と言う事で早速———
「サタン様!」
サタンの言葉を遮ってレストが大声を上げる。
そこには怒りを感じた。
「失礼、サタン様。貴方は真実を話していない。強大な魔法には強大なデメリットが付くもの……それを説明しないで無理やり魔法を付与するのは余りにも身勝手では?」
レストはそう告げてサタンを睨む。
サタンは小さく舌打ちをした後、言葉を紡いだ。
「レスト、やっぱり君は
その言葉を聞いた閻魔様がサタンに対してキレ気味で話しかける。
「レストが貴方の様な卑怯極まりない子に育たなくて私はよかったと思ってますよ、サタン。それで、そのいかにも都合のいい魔法のデメリットを説明しなさい」
「みんな釣れないなぁ……なぁに、全部終わった後に死んでもらうだけだよ。そして死した魂は天国にも地獄にもいけない、どことも知らない場所で永遠に幽閉されるだけさ!あ、転生とかもないからね?ついでに言うと五感は残るからきっと苦しいよ?」
その言葉を聞いて私は唖然とした。
そんな極大のデメリットを語らずにサタンは私達に魔法を付与しようとしたのか!
「あ、みんな悪魔みたいだって怒っているだろうけど僕魔王だからそこら辺は悪辣だよ?当たり前じゃん」
「そうだな。
聞き覚えのある女性の声が響く。
同時に私達の近くの空間に縦に漆黒の穴が空き、そこから1人の女性が現れた。
「久々だな。アリス、ジニス、そして初めましてフェロウ、レスト」
「賢王様?!どうやってここに……賢王の書庫からじゃ辿り着くには相当な時間がかかるはず……」
私は賢王様に問う。
賢王様はそれに対して簡単に答えた。
「空間転移の魔術を使っただけさ。まぁ、この魔術は私が知る限り私ともう1人くらいしか使えなかった筈だがね」
「なんだよ、師匠!そんな都合のいい魔法があるなら俺にも教えてくれりゃよかったのに!」
ジニスが賢王様にそう言い放つ。
「バカ弟子、そもそも魔術と魔法は違うと教えた筈だが?……まぁ、この魔術は私ともう1人が最初から持っていた
賢王様は呆れた顔をして答えた。
「それで、だ。サタン、貴様随分とずるい手を使うじゃないか?前より悪辣だ。お前もこの星が最後の一つだとわかったからか?」
この星が最後の一つ?
意味がわからないがとりあえず話を聞いてみよう。
「あ〜、それ言っちゃうの?まぁ、いいや。アリス、夜の星空は見たかい?」
サタンが私に問いかける。
「ええ……まぁ、星が綺麗だなとは思っていましたけど……」
「アレね、全部
その言葉を聞いてジニスの顔が青ざめる。
「な……バカな!そんなことあり得るはずがない!だって太陽も星も見えるんだぞ!それが全部贋作だぁ?!その上でこの星しか残っていないだと?!そんなの……」
そこまで言ったところで賢王様が喋り出した。
「ジニス、君の気持ちはよくわかるが現実はそうだ。もう他の星も太陽も無い、
世界がここしか残ってない?
魔皇の依代のおかげ?
わからない、余りにも情報量が多すぎる。
「君達の気持ちはよくわかる。だからこのデータデバイスを持ってきた。今の時代だと機械を使える者はあまりいないだろうから私が起動させながら説明する」
そう言って賢王様は薄い本の様なものを取り出した。
「まずこの画像を見てくれ」
そう言って映し出されたのはこの星と真っ黒に塗り潰された背景だった。
「黒い部分が邪神達の
「待ってください!邪神達の世界って一体なんなんですか?!」
「まぁ、文字通り
「全然意味がわからない……」
「まぁ、そうだろうよ。とりあえず続きだ。次は魔皇についてだ。過去のデータを繋ぎ合わせてできた最新の魔皇の姿がこれだ」
そう言ってまた別の映像が映し出される。
そこに映っていたのは頭の右に歪な角が生えている以外は普通の華奢な女性だった。
「これが……魔皇?」
「正確に言うと魔皇の依代だ、彼女が邪神共の最高神を封じている……まぁ、人柱だ。彼女が生きている限りはこの星だけは残るだろうよ。まぁ、北の大陸の化け物共に人類が絶滅させられると言う一文を付け加える事になるがね」
賢王様は暗い表情を浮かべながらも話を続ける。
「そしてだ。君達はこの依代ごと最高神を殺さなければならない。まぁ、要は普通に魔皇を倒せば良いだけの話だ。想定としてはね」
「まるで、魔皇を倒しても解決しないみたいな言い回しですね?」
「あぁ、イレギュラー要素が一つある。チクタクマンだ。魔皇は遥か昔に北の大陸にいた邪神のほぼ全てを黒白の太陽内に封印した。間違いなく最高神の意思ではなく、人柱となった彼女の意思でだ。だが、一柱だけ封印できなかった……」
「それがチクタクマン……というわけですか……」
「その通り、チクタクマンは邪神どもの中でも最強クラスの邪神。今でこそ人の姿を模って遊んでいるが実態は違う。千の貌をもつ邪神……真の名をニャルラトホテプと言う。だが、その数多の化身も魔皇によってほぼ封印された。生き残りはチクタクマンだけ、奴も倒さないと世界は救われない……と言うか、仮に魔皇を倒して上書きされた
賢王様の表情がさらに険しくなる。
つまり私達は魔皇とチクタクマンの両方を倒さないといけないわけだ。
「ここまで悪い情報しか言ってなかったがまぁまぁ良い情報もある。魔皇は今弱りきっている。依代が封じていた封印が解けそうだからだ。魔皇の依代はそう長くは持たない。だからこそ今がチャンスだ。彼女は70億年間最高神を封じてきた、だからこそ彼女を呪縛から解き放ってほしい」
賢王様は私達に頭を下げる。
先程から彼女と言っている人物を知っているのだろうか?
「賢王様、その……依代になっている人と知り合いなんですか?」
「……わからない。いや、思い出せないが正しいか。私の研究の結果、彼女は元は地球人なのは確かだ。だけどデータが何一つ残っていない。記録も記憶も何もかもがだ、私は自分の魔眼……過去視の魔眼で記憶を遡って確認したが明らかに一部だけ不可解な欠如をしてる部分があった。そこから逆算して彼女は知り合いだと暫定的に考えた。おそらく人柱になる時の条件が存在した痕跡の抹消なんだろう」
悲しそうな顔で賢王様は語る。
「きっと彼女は70億年の中1人で戦い続けていたんだろう……私はその彼女を思い出せないのが悔しくて仕方がない!大切だったはずの人物を忘れ、その孤独を忘れ、助けることすらできない自分が憎くて仕方がない!本当なら君達と共に戦いに行きたいが私にはもう彼女を殺すことはできない……怖いんだ、大切だった人を殺すことが……情けない話だ、彼女を救いたいのに自らの手を下せない……私は……」
その話をぶった斬る様にサタンが喋り出した。
「はいはい、そんなつまらない話はどうでもいいわけ。とりあえず魔皇とチクタクマンを殺せば世界は救われる!それだけのことじゃないか!しかも、魔皇に関しては弱ってるときた!絶好のチャンスだよ本当に!と言うことで改めて契約を提示しよう。君達には力が必要だ、だから僕は君達に力を与えよう。代償は君達の魂だ。で、欲しい人いる?」
「おい……サタンてめぇなんとも思わねぇのかよ!」
ジニスがサタンの胸ぐらを掴んで怒る。
「……手を離してくれないかな?」
「答えやがれ!俺たちに力がないのは確かだ、そこは認める。だが、人柱になった奴は70億年もの間1人で戦い続けた!それをテメェはなんとも思わねぇのかよ!」
「ん〜、特に?まぁ、不幸だったなぁくらいには思うけど」
「…………ッ!」
ジニスは怒りの表情を浮かべながらもサタンを離した。
あぁ、すごくムカつく!
賢王様の話を聞いて理解した。
人柱になった彼女は70億年1人で戦い続けた。
なのに、その結末が死ぬことなんて余りにも酷すぎる!
「……サタン、その契約全員分私が契約することはできる?」
「お!いいね!構わないよ!能力も4倍だ、その上犠牲1人!ヘタレ共と違って良い判断だ!」
「アリス?!お前何言ってんだ?!さっきの話聞いてただろ!理不尽すぎる契約なんだぞ!?」
ジニスが怒りながら言い放つ。
私だって嫌だ。
けど……けど!
「わかってる。けど、私はチクタクマンを絶対に殺したい!……それと、70億年1人で戦い続けた人をせめて眠りにつかせてあげたい……だから、私はこの契約を飲む!」
「…………お前はエデの分も生きるんじゃなかったのかよ?!俺は認めねぇぞ、そんなバッドエンド!」
「…………」
「なんとか言えよ!」
「俺たちも反対だ、こんな理不尽な契約をする必要はない!俺たちの力だけでも———
フェロウの言葉を遮る様にサタンが笑う。
「あはは!さっきまで勝てないとか言っていた奴が急に戦えるとか言い出した!あぁ……バカじゃないの?お前たちじゃ勝てねぇんだよ。僕の作った魔法は他者にしか使えない。まぁ、僕自身が自分に使う気なんてそもそもないけど。まぁ、アリスちゃんが使うって言ってるんなら良いんじゃない?ちゃんとデメリットも理解してるみたいだし」
……やっぱり、サタンは最低最悪の魔王だ。
けど、今はその力に縋るしかない。
ごめんエデ、約束破る事になって……
「さて、契約成立だ。アリスちゃん、手を出して。君に僕の魔法を付与してあげるよ」
そう言ってサタンは私に手を出す様に促す。
もう決めた事だ、迷うことはない。
これがたった一つの冴えた方法なんだから。
「はい」
「じゃ、魔王サタンの名の元に契約を、勇者アリスに力を与える。代償は刻まれた、この時を持って魂の行末は決まった。だが、多大なる力を与えよう……はい、終わり!じゃ、頑張ってねぇ!」
そう言ってサタンは手を振りながらその場を後にした。
「本当によかったのかよ、アリス!」
ジニスが涙を流しながら私に問い詰める。
「……いいの、これは私の決めたこと。だから後悔はない……いや、エデとの約束を破っちゃったのはいけなかったね……」
頑張って軽い笑みを作る。
怖くて仕方ないけど、私1人の犠牲で世界が助かるなら安い代償だ。
あぁ……けど、苦しいなぁ……
◇◆◇
「はぁ、依代もしぶといですねぇ。さっさと死ねば良いのに」
黒白の太陽内で椅子に座してる私にニャルラトホテプがそう告げる。
まだだ、まだ死ねない。
この封印だけは破らせない。
後少しで私もろとも