【単話読み切り】幻想とじゃれ合って、時に傷付くのは無駄だろうか? 作:堪えきれぬ狂い火
人は誰もが哀れな星なのかもしれない。瞬いて、流れて、燃え尽きる。
でも、星屑だって、自分のことを誰かに気付いて欲しいの。
土曜日は半ドンで午後は練習なのはいつものことだけど、クリスマスイブにも練習だなんてちょっと嫌。でも、逆にプレゼントを渡すチャンスになったのは僥倖だった。
練習後、
「アタシ、この後用事あるから!これにてドロン!」
早々に抜け出して、準備を始めた。
気合いの入った私服に着替えて、軽くメイクも済ませた、プレゼントのラッピングもしてある。後は頃合いを見計らって電話をかけるだけ…
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prrrrrrr…
「もしもし、トレーナーさん?アタシです。詐欺じゃなくて本物の方」
「あのさ、今からちょっと出てこられるかな?」
「わかった、最後の片付けが終わったら行くよ」
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近くの公園で待っている間、考えていた。
いつからだろうか、アタシが恋に落ちたのは。
教えるのは上手だし、真面目でかっこいいけど、ちょっとおっちょこちょい。
こんなアタシに真正面から向き合ってくれて、いつも応援してくれた。
力と勇気を沢山もらったからだろうか、ずっと一緒に居たいと思った。
でも、それは叶わないのだと知った。彼の左薬指には銀が光っているのが見えたから。
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「トレーナーさ~ん?その指輪、誰からもらったんですか~?トレーナーさんが結婚してただなんてネイチャさん驚きですよ~!」
その時は茶化して聞いたけど、ただのオシャレだって言ってほしいと本心から願っていた。
「言ってなかったっけ?結婚してるよ~。俺にはもったいないぐらいいい嫁さんだよ」
「せっかくだし紹介しておこうかな、○○○○○○だよ。ネイチャのファンなんだ。今度二人でゆっくり話してみるといい」
相手はトレーナーさんと同い年のウマ娘だった。それからすぐに喫茶店で話をすることになった。
「あ~!ネイチャちゃんだ!いつも応援してるよ!」
「あ、ありがとうございマス…」
「いつも、アイツから話は聞いてるし、テレビで見てたけどやっぱり本物は可愛いなぁ!」
「ハハ…どうもどうも…そんなに褒められても何も出ませんよ~」
「ねぇねぇ、アイツちゃんとトレーナーできてるかな?」
「トレーナーさんはちゃんとしたトレーナーさんですよ。ちゃんと練習見てくれるし、アドバイスもわかりやすいし、相手とかの研究もすごい助かってます。」
「そう?よかった~!もし教え子に手ェ出してたらぶっ飛ばしてたよw」
「さすがにトレーナーさんはそんなことしませんよ~」
「ま、ちゃんとトレーナーやってるようで何よりだよ」
「あの、アタシからも質問いいですか?」
「なに~?ネイチャちゃん?私になんでも聞いていいよん?」
「えっと、トレーナーさんって忙しいし、アタシにかかりっきりだし、寂しいとか妬けちゃうとか思ったりしないんですか?」
「アイツ、昔から人の役に立ちたいって言っててさ、それはもう頑張ってトレーナーの勉強してたんだよ。私もレース出てたからお互いに勉強してさ。私はもう十分結果を出したし満足してる。でも、アイツはまだ夢は終わってない。だから、アイツが夢を叶えるまでは邪魔したくないし、応援し続けるって決めたの」
「ま、正直、担当にかまけてるのは妬けちゃうけどねw」
「でも、私はアイツの一生懸命に突き進む姿に惚れたからさ、それでいいと思ってる。最低限、休みとかイベントは欠かさず一緒にいてくれるからそれでいいのよ」
正直、お似合いの二人だった。アタシには勝てない。
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それからはもう、どうしようもなく辛かった。
あなたが気付かせた恋があなたなしで育っていく。
悲しみの花をつける前に、小さな芽を摘んで欲しかった。
でも、トレーナーさんは優しい罪な人。
結婚してるのに、一緒にシューズを見に行ったり、レース場に下見に遠出したり…。ほとんど浮気に近いのに、ドキドキしてしまう。危ない、恋心。
でも、奥さんが話していた通り、休みの日やイベントはしっかり二人でいたし、奥さんがたまに迎えに来てるのも見た。
トレーナーさんはちゃんと奥さんが好きなのは十分身に染みた。
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だからこそ、少しでも痕を付けたい、アタシを心に刻んで欲しいから、息抜きと称して遊園地にも連れてってもらった。待ち時間にちょっとしたゲームをして、勝ったから罰ゲームとして一日恋人ごっこをした。なるべくくっついた。あーんもした。最後に観覧車で不意打ちでほっぺたにキスした。そしたら…
「ネイチャ…今日はどうしたんだ?」
「やだなぁトレーナーさん~、デートの最後はキスで〆るのが恋愛漫画の王道ですよ~?」
「さすがにキスはよくないよ。こういうことは、ちゃんと好きな人とするべきだ。ましてや、俺には○○○○○○がいる。だから、もっと自分を大切にするんだ。」
咎められてしまった。アタシは何をやってるんだろうか、空回りして、まるでピエロみたいじゃん…。
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空の広さを記すとき、人は何で測るのだろう?
この思いを伝えるときアタシはどんな言葉にしよう?
アタシは小さな光の下でしか
あなたの隣に居るアタシをうまく思い描けない。
だから、今日は、最後に悪あがきすると決めた。
想いを伝えて、粉々に砕け散ろう。燃え尽きよう。
どんな結末になっても、夜はアタシを優しく包んでくれるから。