担当バをそういう目で見ているトレーナーVS汚物を見る目をしながら対応するアヤベさん 作:晃斗
出会い
現在のトレセンはまさに大混迷時代。聖職者であるトレーナーが自分の担当バに手を出そうとする事態が後を立たない為、まさに暗黒の時代とも言える様相なのだ。その上タチの悪い事にウマ娘側も強く拒否しないでなされるがままという嘆かわしい事実もあり、ブタ箱にブチ込まれるトレーナーが増え続けている。
ヒトより力が強いウマ娘が強く拒否しないとか実質合意なのでは?とか双方が矢印を向けあってるなら問題無いじゃんとかウマ娘ちゃんが幸せならオッケーです!などの意見もあるにはあるのだが、互いの感情がどうあれトレーナーが自分の担当バで、しかも未成年のウマ娘に手を出した時点でそれはもう犯罪である。
項垂れながら連行されているトレーナーを涙ながらに追いかけるウマ娘の姿は、トレーナー連行における一種の風物詩とも言える光景だろう。
ウマ警察に連行されている
さて、そんなわけで今トレセンにはウマ娘に対してトレーナーの数が圧倒的に少なくなっている。元から少ないトレーナーの数がもっと少なくなったらどうなるだろうか?………そう、激しいトレーナー争奪戦が繰り広げられるのだ。
不祥事をやらかすバ鹿が間引かれ、残った数少ないトレーナーは聖人か鈍感か朴念仁かクソボケかスパダリか女トレだけである。彼等彼女等は底抜けな善人なため、こんな状況に深く悲しみ元からブラックな職務を更に暗黒化させていった。そうしてディープでダークネスな激務をこなして過労で倒れた光のトレーナー達の屍の山が出来上がった。
そういった事態は特に中央トレセンで多く見られた。確かに中央トレセンはトレーナーの質が地方よりも格段に高く、その精神性も善性のトレーナーが多いのだが、それでも全てのトレーナーがそんな存在ではないのだ。地方よりも圧倒的にブラックな中央の業務を日常的にしているため、ストレスやらなにやらが爆発的に溜まってき、ふとした瞬間に欲望が開放されるというケースが多いという。
そういった事実もあり、同じトレーナーとして責任を感じた中央の光のトレーナー達はウマ娘の為に普段から常に修羅場っていると言っても過言ではない激務を更に増やしていき、結果ほぼ全てのトレーナーが病院行きとなり絶対療養を強制された生活を送っている。
トレーナーとは超人である。その超人の中でも飛び抜けた才能を持ち、そこからさらにたゆまぬ努力をした規格外の超人たる中央のトレーナーが倒れる程の激務とはいったいどれほどのものだったのだろうか。想像することすら恐ろしい。
そんなわけで現在のトレセン、とりわけ中央トレセンのトレーナーの数は圧倒的に足りていない。そこでトレセンは苦肉の策を取った。その苦肉の策とはトレーナーの資格の取得難度を下げトレーナーの総人口を増やすというものだ。
言わずとも分かるだろうが、これには大変危険な可能性が秘められている。トレーナーの質が下がるとウマ娘の走りの質も下がるという事は勿論ある。
だがそれよりも危険な事がある。それは未熟なトレーナーがウマ娘の担当をすると杜撰な練習をウマ娘にさせる事になり、未熟ゆえに碌なケアをすることもできずウマ娘に怪我をさせてしまうという事態である。 もちろんトレセンがウマ娘が危険な目に合う可能性を放置しておく筈がない。
そこでトレセンはある一つの策を講じた。
〜安心!安全!目指せトップトレーナー!〜」
これがトレセンの無謀な策の名である。字面からして怪しい臭いがプンプンしてくる事この上ない。わざわざ安心安全と銘打つとかそうじゃないと言ってるようなものだろとか不穏なルビ振りあるよね?とかいう疑問は一旦置いておいてほしい。マジで。
そんな疑念は杞憂で、正しく安心安全………と言いたい所なのだが、残念ながらそんな事はない。バリバリ肉体に悪影響がでるし精神は壊れること間違い無しである。
この育成は一年間行われ、この長くとも短い期間の中で"正規のトレーナーがベテラントレーナーの下で長い時間をかけて学ぶ色々な知識を"みっちりと頭に詰め込むのだ。…………のだ。
この五徹した後の朦朧とした意識の中で考えたとしか思えないトチ狂った策を出した奴は正真正銘のアホなのだろうか。いや、それ以前にこの策に異議申し立てなかった他の上層部のヒト息子やヒト娘も十日くらい寝ていなかった為アホになったのだろう。そうとしか考えられない。
トレセンの言い分としては、「この程度の忙しさにかまけて潰れている様じゃトレーナーなんてやってらんねぇよ現実見ろ変態共」との事。
幸か不幸か、この狂った育成期間はしっかりと役割を果たせてしまったのだ。生半可な覚悟とうまだっちしたシモしか持っていなかった変態の諸兄が脱落し、鋼の精神の雛形となるメンタルとスパダリの素質を持った
こうして地獄を乗り越えた新米トレーナーはいっぱしのトレーナーとなり、トレセンの地に足を踏み入れたのだ。
これはそんな地獄を乗り越えてから数年経った一人のトレーナーとそんなトレーナーの愛バとなるウマ娘の涙あり、笑いあり、シリアスあり、曇らせありの一歩進めば二歩下がり、三歩進めば二歩下がったりする物語である。
☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
家から出る前に一応姿鏡で身だしなみを確認してみる。黒色のスーツはヨレておらずピシッとしていて下の方も同様。髪はワックスで軽くセットしており、全体的に清潔感もある。間違っても不審者に思われる事はないだろう。そして左手首には白いリストバンドがしっかりとつけてある。 …あ、トレーナーセットが入った鞄をつい持って来ちまった。………まあいいか。
んー…と?……よし、完璧。
「いってきます」『いってらっしゃい。…っと私も行かなきゃ』
いつも通り、誰も居なくなった部屋に挨拶をしてから玄関の扉を開けた。
そろそろ選抜レースが始まるからトレーニングの様子でも見とけと先輩から勧められた為観に行く事にしたのだけども………、なんだ?あのウマ娘。危なっかしい走り、というよりは……んー。
うまく言葉に出来ないけどこのままじゃ潰れるっていう事だけは分かる。身体か心か、もしくはその両方が。
周りのトレーナー達は末脚のキレが素晴らしいだとか仕掛けどころの見極めが抜群だとか良い面しか見ていない。いや、スカウトしに来てるんだからそれは決して間違いではないのだが……、やはり何処か危うさを秘めているウマ娘だというのがそのウマ娘に対する俺の評価だ。あと胸がデカい。足も太い。多分夢も秘めてる。『なにおう!私だって胸に夢くらい秘めてるわい!』
つか仕掛けどころの見極めが抜群って言ってたトレーナー俺の同期じゃん。何したり顔で言ってんだ。この前担当契約したばっかだって言ってたよな? ……そういやあの地獄の時に「いつか走ってるウマ娘を見て私だけがあの娘の走りの凄さを分かってる風にドヤりてぇ〜」って言ってたっけ。
……くだらな、無駄な事に時間と思考を割いたな。うん、忘れよう。
それにしてもアドマイヤベガか。先輩から送られてきた選抜レースの出走者リストに名前があったな、憶えておこう。
ってまだ練習するのか!?選抜レースは明日だぞ!?
どう考えたってオーバーワークだ。本人が大丈夫だと思っていたとしても、ケアをしっかりしていたとしても危なすぎる。しかもあの様子だと常日頃からこんなトレーニングをしているのだろう、本当に危なっかしい。
………………どうせ他にやることも無いし、アドマイヤベガのトレーニングが終わるまで見守っていよう。心配だし。 痴漢とかに会わない?大丈夫?あ、俺が痴漢みたいなもんか。視姦してるとか言われて起訴されたら勝てねぇわ。『きゃーウマ警察さーん、痴漢でーす』
もう夜も更けたのにまだ続けるのか…。
フォームも崩れて息も絶え絶え。すっかり疲れきってるのにペースは落ちておらず、足を止める様子が見られない。何が彼女をここまで突き動かすんだ…?それと胸がすげぇ揺れてる。痛くないの?『ちょっとー?トレーナー?それセクハラだよ?』
「っ……まだ、まだ……!」
……飲み物とタオルって持ってたっけ?えっと…あった。よく持ってるな俺。担当のトレーニングを見るってわけでもないのに。…癖か。『…………まだ、乗り越えられてない……』
「はーっ、はーっ……くっ……。……………………」
アドマイヤベガが不意に足を止めて星空を見上げた。……ここが潮時か。
「アドマイヤベガ」『ありゃ?同類さん?』
「……?」『どうもはじめまして!お姉ちゃんの妹です!』
「ほれ」『どうもどうも、トレーナーさんの元担当バです』
「わぷっ、…もふもふ?」『どうもー!』
タオルを彼女に投げたら頭にかかった。そうしたらなんかクールそうな彼女から出るとは思えない発言があった気がするけど…気の所為か。
「いつもこんな時間までやってるのか?」『そうなの?』
「大体は」『うん……、そうなんだよね……』
「…そうか」『ふ〜ん……?』
予想通りか。………。
「一つ聞いてもいいか?」『聞いてもいい?』
「なに?」『どうしました?』
「君が走る理由はなんだ」『そのお姉ちゃんが走る理由は?』
「…勝つため。走って、勝って、勝ち続ける。それだけ」『…私の為なんです。……そんなこと、気にしなくていいのに』
………まだ他にも理由がありそうだけど…、まあいいか。俺はアドマイヤベガのトレーナーでもないただの他人、これ以上深掘りするのは止めておこう。 前に異性に月のモノか?って聞いて叩かれた事を忘れてないぞ俺は。『流石にデリカシーがなかったよトレーナー!』
「……トレーナーとして話があるなら、選抜レースの後にして。それじゃ」『失礼しましたー!』
「少し待ってくれ」『じゃあね!……トレーナー?』
「…まだ何かあるの?」『?』
「ほら、スポーツドリンクだ。あまり水分補給をしてなかっただろ?」『よっ!気遣いの鬼!』
「………………」『わぁ……!』
「なんだ?何か言いたげな顔をして」『え、何その顔』
「……なんで貴方は私に世話を焼くの?」『いや、良いトレーナーさんだなって』
「君はウマ娘で俺はトレーナー。それだけで世話を焼いちゃいけないか?」『……うん、最高のトレーナーだよ』
まあ理由はそれだけじゃないけども。それを喋る必要はないだろ。
「そう………。それじゃ」『それじゃあ今度こそ!また会いましょう!』
彼女はそう俺に言い残して、星明かりの中立ち去っていった。……足ぶっと…!『トレーナーさぁ…』
「……アドマイヤベガ…か」
明日の選抜レース、正直あまり見る気は無かったけどしっかりと見てみるか…。特に彼女のレースを。
あと足。
『少しずつ、少しずつだけど進めてるよ?トレーナー。どうかこの調子で…
(書き溜めとか)ないです。続きは気分が向いたら。