そこでまた千歌は不思議な感覚に襲われて……
クレープ屋さんの店内は割に混んでいた。ここのクレープ屋さんは種類が豊富でおやつにも軽食にもなるし、駅近で女子高生たちにも人気だ。
みんなで沼津で遊びに来て、ここに来る前には本屋さんに寄ってゲームセンターで遊び終えた後、帰る前に最後にここでクレープを食べていくことになった。
花丸「マルはこのきゃ、きゃらめるばななみるふぃーゆ…?ってやつにするずら」
ルビィ「ルビィはどれにしようかな〜」
善子「私はストロベリーチョコブラウニー」
鞠莉「マリーはこれ!いちごレアチーズケーキ!」
果南「私ツナサラダ〜、ダイヤは?」
ダイヤ「私はこの抹茶チョコブラウニーにします。」
みんなメニュー表を楽しそうに見つめてクレープを決めている。ルビィちゃんはまだ迷っているようで、隣にいる曜ちゃんと梨子ちゃんもメニュー表とにらめっこしている。
曜「うーん、迷っちゃうな〜」
梨子「じゃあ私はいちごアラモードにするね」
千歌「わ〜!いいね!梨子ちゃんあとで一口ちょーだい!」
梨子「ふふ、いいわよ。その代わり千歌ちゃんも一口ちょうだいね?」
千歌「もちろん!」
曜「因みに千歌ちゃんはどれにしたの?」
千歌「ふっふっふ、千歌これ!みかんスペシャル!」
梨子「だろうと思ったわ…」
曜「あははっ!だよね!いつもクレープ屋さんではそれしか頼まないもんねー」
果南「おーい、千歌達ー!私達先に注文しちゃうよ〜?」
千歌「おっけー!」
曜「わわっ、早く決めないとね。じゃあ私はこれにする!アイスチョコ!」
千歌「よし、決まったね!じゃあ注文しちゃお!」
いつの間にかルビィちゃんもクレープを決めたらしく、果南ちゃん達とカウンターで注文を済ませたようだった。果南ちゃん達と入れ替わりで私達も注文を済ませた。
そしてしばらくしてクレープが出来上がり、たまたまタイミング良く空いたカウンターのすぐ横にある多人数用のテーブル席に九人で座った。
注文を済ませたすぐ後、善子ちゃんはお母さんからの電話があったらしく、ルビィちゃんに自分のクレープを預けて電話をかけ直すために店の外に出て行った。
善子ちゃんを見送り、みんなでクレープをつつきながら談笑を始める、その時ふと果南ちゃんの手元に目が行った。
千歌「果南ちゃん、なんで食べないの? いつもは私達より食べるの早いのに」
果南ちゃんは好物のツナサラダクレープを注文していた。なのに、ほとんど口を付けていない。みかんジュースも三分の一以上残っていた。
果南「うん……なんでかな、急に食欲なくなったと言うか…」
曜「お腹、空いてないの?」
果南「いや、減ってる。すごく減ってるんだけど……。」
果南ちゃんの眉がきゅっと寄る。
果南「なんか、こんなのじゃなくて……。」
果南ちゃんの隣にいた花丸ちゃんの目が一瞬、少し細くなった気がした。
花丸「どうしたの果南ちゃん?なにか、ほかに食べたいものがあるの?」
果南「うん。なんかもっと歯ごたえがあって、もっと………。」
果南ちゃんの黒目が迷うように左右に動き、コクリと唾を飲み込む。
次の瞬間、驚きの表情がはっきりと浮かび、すぐに怯えに変わる。顎が震え、額に汗が噴き出す。
鞠莉「果南…?」
ダイヤ「どうしたのですか?」
鞠莉ちゃんとダイヤさんの言葉は果南ちゃんには聞こえていないようだった、その時。
花丸「果南ちゃん。」
花丸ちゃんが果南ちゃんの手をおさえた。
花丸「落ち着いて。……どうしたの?何を考えてたの?」
いやいやをする子供のように、果南ちゃんは頭を振った。息が荒くなる。その様子を隣にいる花丸ちゃんは射るような眼差しで、俯いた果南ちゃんの顔を見つめている。
鞠莉「果南。」
鞠莉ちゃんが果南ちゃんの肩に手をかけた。
鞠莉「大丈夫?」
果南ちゃんの肩が大きく上下した。深く息を吐いたのだ。
果南「まり……私……「あっ、なにするんだ!」
私達の座るすぐ後ろで大声がした。
後ろは先程クレープを注文したカウンターなのだが、そのカウンターの前に、背広姿の男の人が居た。大声を出した本人らしい。細長い顔が歪んで見えるほど、顔を顰めている。
男性「どうしてくれるんだよ。」
男の人の胸の辺りに白いクリームがべっとりとついていた。
「もっ、申し訳ないことを…すみません…。」
白っぽい着物を着たお婆さんが、床に着くくらい頭を下げている。小さなお婆さんで、背中を丸めて深々とお辞儀をしているから余計小さく見えた。
男性「申し訳ないじゃ済まないだろうが。えぇ?この背広、高かったんだぞ。どうしてくれる。」
男の人は、四十歳くらいだろうか。中、高生や女性の多い店内での背広姿はかなり目立っていた。声を荒らげて怒鳴る姿は更に目立つ。カウンター内の若い女性店員も顔を強ばらせていた。
「うそばっかり。」
突然聞こえたよく響く声のする方を向くと、そこはつり目をギロリと尖らせた善子ちゃんが立っていた。
男性「あぁ?」
男性が善子ちゃんの方に顔を傾ける。
善子「どう見ても高級紳士服には見えないけど? 鞠莉、あんたのパパ、高級ブランドを扱う会社の専務でしょ?」
鞠莉「えっ、私のパパはホテルの……じゃなくて…ええ。ラル〇ローレンもサン〇ーランも、なんでもありますよ。」
ダイヤ「 !? 鞠莉さん…!?」
善子ちゃんのあからさまな嘘に乗っかった鞠莉ちゃんを目を見開いて驚きの表情で見るダイヤさん。この場を収めるためなのだろうが大丈夫なのか。
善子「そんなあんたから見てどう?これが高級紳士服?」
鞠莉「……お世辞にも、そうとは言えないわね。私が見るに、それユニ〇ロとかで普通に売っているものじゃないですか?」
男性「 !? 」
あの反応はまさかの当たり…? 流石鞠莉ちゃん、高級ブランドのくだりははったりだけど、お金持ちでお嬢様なのは本当だからブランドに詳しいんだ。
善子「その反応、当たり?まあユニ〇ロにしろなんにしろ、大声で騒ぐほど大したことないんじゃないかしら、おじさんの背広。」
善子ちゃんがねえと言うように私に目配らせしてくる。ここは私も…
千歌「そ、そうだよ!こんなお年寄りに大声出して、かっこ悪い。」
男の人はお婆さんを押し退け大股で善子ちゃんに近づいた。
男性「お前達、どこの生徒だ?」
善子「…」
男の人の脇から善子ちゃんは鞠莉ちゃんとアイコンタクトをとる。鞠莉ちゃんが頷いた。
善子「…浦女です。」
男性「高校生のくせに、大人に生意気な口をきくんじゃない!」
善子「大人のくせに、お年寄りに乱暴な口をきかないでください。」
男性「なんだと?」
男の人の手が善子ちゃんの制服の襟を掴んだ。
あっ、上田先生と同じだ。
先程の部室での出来事が私の頭に浮かんだ。
十月にしては蒸し暑い日が続いてるから、もしかしてみんなイラついてるのかな────頭の隅でちらっと思う。
男性の行動を見て鞠莉ちゃんが立ち上がる。
すると素早く果南ちゃんが男の人の腕を掴んだ。
果南「やめなよ。あなた、酔っ払ってるんでしょ?」
男性「なんだと?俺は酒なんか飲んでないぞ!」
果南「でも匂うよ。お酒の匂いがぷんぷんする。」
善子「え?そうなの?」
と呟いて、善子ちゃんはすんすんと匂いを嗅ぐ。私や鞠莉ちゃんも匂いを嗅いでみた。
甘いクリームの匂いだけでお酒の匂いはしなかった。けれど、男の人は少し怯んだように視線を動かし、善子ちゃんから手を離した。
善子「ったく…それにね、私見たんだから。」
男性「な、何をだ。」
善子「あんたがわざとお婆さんを転ばせようとしたとこ」
男性「 !? 」
善子ちゃんの発言に店内が少しざわめく。
鞠莉「それ、本当なの?善子。」
善子「えぇ。お婆さんが丁度おじさんの横に来た時、わざと足を引っかけてたわ。そこに監視カメラがあるからそれ見ればわかると思うけど。」
善子ちゃんの発言に男の人は顔色を変えた。
その瞬間、私はまたあの唸り声を聞いた。低く低く足元から這い上がり、耳の奥を震わすような、唸り声。
えっ、また?
耳を澄ます。すると、唸り声に混じって、微かだが別の音が聞こえてきた。
羽ばたき?そう、大きな鳥が翼を広げて羽ばたく音だ。
そしてもう一つ。いくつかの、かすれ声のざわめき。
《いやなやつ。》
《いやなおとこ。》
《いやなにんげん。》
ざわざわ、ざわざわ。風に乱れる草原のようにざわめく。
私はコクリと唾を飲み込み、店内を見回した。
…………何もいない。
秋だというのにアロハシャツを着たカップルがおしゃべりしている。女子高生グループがちらちらこっちを見ている。母親に手をひかれた女の子が、大きな人形を抱きしめて見つめている。カウンターの中の店員はまだ強ばった表情のまま、クレープの生地を焼いている。
みんな人間だ。昼の時のように雀すらいない。
鼓動が速くなる。気分が悪くなるほどの胸騒ぎがした。
なにか、とんでもない事が起こる。起ころうとしている。
ほんとに吐き気が込み上げてきた。血の気が引いていくのがわかる。私は口に手を当ててよろめいた。
梨子「千歌ちゃん…!?」
梨子ちゃんの腕が脇の下に入り、意外に強い力で私の体を支えてくれた。
梨子「千歌ちゃん、大丈夫なの?」
千歌「う、うん」
梨子ちゃんの胸にもたれただけで、吐き気は手のひらの淡雪のように呆気なく消えていった。
再び善子ちゃん達の方を見ると、善子ちゃんと鞠莉ちゃんと果南ちゃんの三人が男の人と睨み合っていた。
鞠莉「お婆さんを転ばせようとするなんて、下手したら犯罪ですよ?防犯カメラを見れば分かることですし、なんなら確認してもらいましょうか?」
鞠莉ちゃんが強気にそう言うと、男の人はチッと舌打ちの音を一つ吐き捨てて、そのまま足早にお店から出て行ってしまった。
果南「待ちなよ!」
果南ちゃんが後を追おうとする。鞠莉ちゃんがその腕を押さえた。
鞠莉「果南、もう……。」
果南「うるさい!」
果南ちゃんの腕が大きくしなる。鞠莉ちゃんは弾かれて後ろの壁に倒れかかった。
鞠莉「きゃっ!」
善子「果南!鞠莉になにすんのよ!」
果南「うるさいって言ってるでしょ!」
底光りのする目で善子ちゃんを睨み、果南ちゃんが入口に向かう。
ダイヤ「果南さん!一体どうしたのですか!」
ルビィ「ほんとに…果南ちゃんどうしちゃったの…!全然いつもの果南ちゃんじゃないよ…!」
曜「果南ちゃんとは小さい頃からの幼馴染みだけど、あんな果南ちゃん見たことないよっ…!どうしちゃったの、果南ちゃん…。」
善子「っ!とにかく追うわよ!」
鞠莉「えぇ。このまま果南が手を出したら、停学…下手したら退学処分になるかもしれないわ。それだけは阻止しないと!」
千歌「止めなきゃっ…!」
私は小さな声でそう言うと、クレープ屋を飛び出した。
クレープ屋から出てすぐ右に曲がる、駅に真っ直ぐ続く通りに出ると果南ちゃんの後ろ姿が見えた。そしてその前方に背広の姿があった。
果南ちゃんが不意に立ち止まり、かがみ込む。跳躍するための姿勢。
見た瞬間、肌がぞわりと粟立った。
隣で走っていた梨子ちゃんがこちらを向く。
梨子「っ!千歌ちゃん止めないと!」
梨子ちゃんが叫ぶように言うと、私は必死に腕振って駆け出した。
果南ちゃんが更に低く身をかがめた次の瞬間、果南ちゃんの足はアスファルトの歩道を蹴った。
千歌「果南ちゃんっ!ダメッ!!!」
果南ちゃんが飛び出そうとした瞬間、私は今から起こるであろう光景を見ていられなくなり思わず目を閉じて大きな声で叫んだ。
それと同時に、私のまぶたの裏には果南ちゃんの足がくっきり浮かんだ。私は訳もわからぬまま咄嗟にその足を掴んだ。
「うわっ!」
果南ちゃんの悲鳴が聞こえた。
目を開けると、木漏れ日が歩道の上でちらちらと揺れていた。夕方の日差しをほんのりと温かく、人も建物も、淡いオレンジ色に染まり始めていた。
倒れ込んだ果南ちゃんの背中の上でも木漏れ日が動く。
鞠莉ちゃんと曜ちゃんが走り寄って助け起こした。
果南「いって…」
額を抑えて果南ちゃんが呻く。
鞠莉「果南!何やってんのよ!」
鞠莉ちゃんは座り込んだ果南ちゃんの頭を軽く叩いた。全力疾走したので息が切れる。
果南「なんか、カッときちゃって……。」
善子「そりゃあすごい嫌なやつだったけど、追いかけてまで喧嘩することはないでしょ…。」
果南「…うん、だよね…。私、なんか昼からおかしいよね…。あっ、でも私、何で転んだんだろう…足を急に引っ張られた感じがしたけど。」
花丸「……」
ダイヤ「急に走ったから足がもつれたのではないですか?」
千歌「もうっ、どうなるのかと思ったよ…」
そう言って私は前方に視線を向け、目を凝らした。男の人の背中は駅前の雑踏に紛れて、私達の視野から完全に消えていた。
傍にいる善子ちゃんも私と同じくホッと息を吐く。よかった。
それにしても私は何でこんなに慌ててたんだろう。
制服の上から胸を抑えてみる。心臓はまだ速い鼓動を刻んでいた。
果南ちゃんが喧嘩するのが、怖かった………そう、確かにそうだけど……止めなくちゃと思った。心臓が苦しいほど強く思った。
「み、みんな〜!!」
その声にその場にいた全員が振り向く。そこには全員分のスクールバッグを両手に引っ提げ、必死にこちらに駆けてくるルビィちゃんの姿があった。
ルビィ「お店にみんなのバックが置きっぱなしだったから持ってきたよ〜!」
曜「ごっ、ごめんねルビィちゃん!全員分の鞄なんて重いよね!ありがとう!」
花丸「ルビィちゃんありがとう。ごめんね、重たいもの一人で持たせて」
ルビィ「んーん!ルビィは平気だよ」
ダイヤ「ルビィ、ありがとうございます。助かりました。」
ルビィ「えへへ…」
「あの。」
とその時、控えめな声がした。果南ちゃんの後ろに小柄なお婆さんが立っていた。
クレープ屋で男の人に怒鳴られていたお婆さんだ。白髪に着物姿の、上品なお婆さんだった。
「あの、これ、お忘れものでしょう。」
ルビィ「あ、ルビィのハンカチ…あっ、ありがとうございます!」
お婆さんは可愛らしいピンク色のハンカチを差し出し、ルビィちゃんに手渡した。
どうやらルビィちゃんはみんなの鞄を持ってくるのに夢中で、テーブルの上に出していた自分のハンカチを忘れてきてしまったようだ。
「いえいえ、こちらこそ。助けていただいてありがとうございました。」
お婆さんは白い頭を丁寧に下げた。
善子「…別に、私があの人のこと気に食わなかっただけなので」
善子ちゃんがふいと視線を横にずらし、ぶっきらぼうに言った。
鞠莉「ふふ、素直じゃないんだから」
梨子「善子ちゃんは何だかんだいい子で正義感強いからね」
「あの、お名前を教えていただけますか?」
鞠莉「え、名前ですか?そんな、気になさらなくても大丈夫ですよ?」
「いえ、これも何かのご縁なので。あと、私はこういう者です。」
お婆さんは帯の間から白い紙を取り出し、鞠莉ちゃんに渡した。
鞠莉「あら、名刺ですか。ご丁寧にどうもありがとうございます。私はこういう者です。」
そう言うと鞠莉ちゃんも鞄から手早く名刺を取り出し、丁寧にお婆さん手渡した。
というか鞠莉ちゃん、名刺なんて持ってたんだ…大人だなぁ…。
「これはこれは、学校の理事長さんでしたか。それにしてもお若い。」
鞠莉「はい、生徒兼理事長としてやらせていただいております。わたくし小原鞠莉と申します。」
礼儀正しく名刺を渡し終えた鞠莉ちゃんは後ろの私たちに目配らせをする。多分名前を名乗った方がいいのだろう。
一人一人簡潔に名前だけを言うと、お婆さんはさっきよりも更に丁寧なお辞儀をしてお礼を言った。
「本当にありがとうございました。なにかありましたら、お渡しした名刺をご覧になって、ぜひおいでください。待ってますから。」
そう言うとお婆さんは駅の方に歩きだす。
花丸「あの。」
花丸ちゃんがその背中に声を掛ける。
花丸「は?」
ほんの少し躊躇い、花丸ちゃんはお婆さんの手首を掴んだ。
「はっ、なんですか?」
花丸「あっ……いえ……すみません。」
花丸ちゃんに会釈して、お婆さんは駅に向かう人々の列にするりと紛れ込んでいった。
鞠莉「鹿山通り一三、山田梅子か。お婆さんから名刺を貰ってもねぇ…」
鞠莉ちゃんはお婆さんから貰った名刺に目を通すと、鞄から出したカードケースと思われるものに名刺をしまおうとした。
花丸「ちょっと待って」
花丸ちゃんが名刺をしまおうとする鞠莉ちゃんの手を遮った。
花丸「鞠莉ちゃん。その名刺、マルが預かってもいい?」
鞠莉「え?別にいいけど…どうしたの?」
花丸「…鞠莉ちゃん、気が付かなかった?」
鞠莉「なんのこと?」
花丸「……あのお婆さん息が切れてなかった。」
「あっ!」っと私は叫んでいた。
横に居た梨子ちゃんも少し顔が強ばったのが分かった。
曜「そ、そういえば…果南ちゃんのすぐ後ろに居たんだから、のんびり歩いてきた訳じゃないし。走ったにしては全然息が切れてなかった…」
梨子「そもそも、果南ちゃんの後ろに立ってたこと自体が…。ここの道は一本道だし、クレープ屋から出て先回りなんてできないはず…」
梨子ちゃんはそれ以上言及はしなかった。
花丸ちゃんが頷く。
花丸「それに…。」
花丸ちゃんは自分の手のひらを見つめた後、その手を握りしめて固い拳を作った。声が掠れ、声が低くなる。
花丸「あのお婆さん、脈がなかった。」
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