陰実の世界に転生したら武神だった件 のんびりしたいが姪っ子が活動的で何だかんだ手伝う内に組織で母と慕われるようになった。 作:生徒会長月光
今回でクレアはヘルクライム・ピラーを登りきります…
それではどうぞごゆっくり!
ヘルクライム・ピラー上級を踏破してから数日
怪我の完治したクレアの前には、アレクサンドリア地下空洞の中央にそびえ立つ最後の試練があった。
最上級ヘルクライム・ピラー。
高さ二十五メートル。
表面は波紋を帯びた特殊な大理石で構成され、常に油が循環している。
そして上級までとは違い、登攀者を妨害するための仕掛けが随所に施されていた。
「いよいよね……」
クレアは塔を見上げる。隣にはベアトリクス、その後ろにはラムダ、ナンバーズたち、七陰、そして修行を共にした構成員たちの姿もあった。
「クレア…最上級は私や七陰…一部アビスの子達しかまだ登れたことのないものよ…故に無理はしないこと。」
「師匠が一番無理してたりするのにそれを言うの?」
「……。」
ベアトリクスはプイッと視線を逸らした。
「ほらやっぱり。」
思わず笑いが起こる。
緊張が少しだけ和らいだ。
「クレア。」
ベアトリクスが真剣な表情になる。
「私は貴女なら出来ると思っているわ。」
「……えぇ。」
「でも覚えておいて。試練は登りきることだけじゃない。」
「?」
「自分を見失わないこと。」
その言葉だけを残し、ベアトリクスは下がった。
クレアは深く息を吸い己の中で波紋を練り…そして塔へ飛びついた。
―――――
五メートル。
十メートル。
十五メートル。
上級までの経験が活きている。
指先に波紋を集中させる…必要最小限の力で身体を支える。以前より明らかに洗練されていた。
「速い……」
ラムダが目を見開く。
「最上級を初挑戦でこの速度で登るとは…やはりクレア殿の成長速度は速いな。」
他のカイ、オメガなどのナンバーズたちも驚いていた。クレアは着実に進む、そして二十メートル地点。
そこで異変は起きた。
ガコン。
「……え?」
クレアが足を掛けた時…何かを踏んだ。
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
塔内部から重低音が響く。
ラムダが叫ぶ。
「不味い…!クレア殿!!!」
しかし遅かった。
ブシュゥゥゥゥゥッ!!
塔全体から油が噴き出した…通常の数倍 最大油圧、最上級の隠し罠だった。
「なっ!?」
「伯母様!あんな機能私たちの時はなかったのにどうしていきなり!!!」
「いいえアルファ…貴女たちが登ったときもあの罠自体はあったの…でもみんな踏むことがなくて作動したことが……いえ正確には二回作動しているわね。でもその作動した時でさえあんな激しくはなかった筈よ!」
これはベアトリクスも知らなかったことだが霧の龍が少し手を加え前回作動したときの1.5倍近い出力にしていた。
因みに作動させたのはシャドウとイータで一回…そしてとある人物で一回である。
シャドウとイータの時はシャドウが踏んで作動させてしまい巻き添えで食らったイータはシドに説教していたという。とある人物については…ここでは割愛する
油が激流のように吹き出す。
必死に食らいつくクレアであるが…くっつく波紋が次々に剥がされていく。
「うそ……」
右手が滑り、左手も辛うじて身体を支えるが身体は後ろへ傾く。
地上から二十メートル…魔力、波紋で強化されているので落ちても即死ではない。だが重傷は避けられない。
「クレア!!」
ベアトリクスが叫ぶ。しかしクレアの耳には届かない…意識が遠のいていた。
(ここまで……なの……?)
身体が滑る…努力した日々。
ラムダとの修行、559番との出会い。
悪魔憑きの子供たち、師匠の期待…弟たちとの思い出
全部が脳裏をよぎる。
(ごめんなさい……師匠……ごめんなさいマナ…ルーナ…リリムさん…イータ………………シド…)
諦めかけたその時
「何やってるの姉さん?」
聞き慣れた声だがその声がするのは本来有り得ないことだ…
クレアは目を見開く。
「……ぇ…?…シド……?」
いつの間にか。
クレアのすぐ横…足を塔にくっつけながら垂直に立っている弟…シドがいた。
疲労で幻が見えているだけかもしれない。
だが確かにそこにいた。
「こんなところで諦めるの?もうあと少しで頂上なんでしょ?」
「だって……!こんな勢いが強い中を登るなんて…!」
「まったく姉さんって昔からそうだよね。」
呆れたような顔。
「なんでもかんでも決めつけて一人で抱え込んじゃうところ…」
「!」
それにはクレアも心当たりがあった…幼少期の盗賊のこと…師匠との修行のこと…自分が本当に師匠に追い付けるのか…不安に思った日は一度や二度ではない…
「でも今は違う…そうでしょ?」
シドは笑う。
「まだ終わってないし…姉さんなら登れるでしょ?」
あまりにも平然とした返事を返すシドに思わずクレアは怒鳴ってしまう
「根拠は!?」
しかしシドは何てことはないように
「姉さんだから。」
たったそれだけ…だが何故だろうか…その肯定の言葉には確かな信頼があった…
(そうよ…私はクレア・カゲノー…シドとイータの姉でルーナの親友でマナのお姉ちゃんでリリムさんの友人で……なにより…師匠の弟子よ!)
(ここで終わるわけにはいかない。)
気付けばシドは幻のように消えていた。
自分の見た幻覚だったのたろう…それでも心の火は再び燃え上がっていた。
「やってやるわよ……!」
クレアは周囲を見た。油、波紋、油圧…クレアは高速で思考する。
まず油圧が強すぎる…正面から耐えるのは無理だ…たちまち落ちてしまうだろう
「弾く波紋……!」
今までくっつく波紋ばかり使っていた。…弾く波紋なら…!波紋を指先だけでなく全身へ行き渡らせる
そうして…
パァァァァン!!
クレアの身体が油を弾いた。
「なるほど!」
ラムダが叫ぶ。
「くっつく波紋だけでなくはじく波紋を利用して油の抵抗を相殺する気なのね!!」
下で見ていたアルファはクレアのしたことに気付く。ベアトリクスも微笑み
「正解よクレア。」
クレアは全身へ波紋を巡らせる。油を弾き波紋が爆発する。
バチィィィッ!!
油流が左右へ散った。完全には防げないから負担が減っただけ…だが進める。
クレアは指先へ波紋を集中。さらに弾く波紋を身体へ流し油流を逸らす。
一段…また一段再び登り始めた
二十一メートル…二十二メートル。
二十三メートル…
クレアの身体はすでに疲労困憊で限界だった。
腕が震え、指の皮が裂ける。
波紋も乱れていく…それでも登る。
「私は……弟を!」
何だかんだ世話の焼ける弟を想い
「師匠を!」
自分のことより他人を優先する優しい師匠の助けになりたくて…
「みんなを守るんだからぁぁぁ!!」
そして親友や妹たちへの想いを込めてクレアは最後の力を振り絞る
二十四メートル
あと少し…あと少しで頂上。
…二十五メートル。
最後の一段の…頂上へ手が届いた。
「届いた!!」
だがその瞬間。
ぷつりと安心感から集中力が途切れてしまった
「しまっ――」
身体が落ちる…指が離れる。意識が遠のく、限界だった。
右手が外れる。左手も。
(あぁ…ここまでなの…ね…)
身体が落ちる。ベアトリクスたちは慌てて落下地点へ駆け出そうとする。
だが…ガシッ!!
「捕まえたのです!!」
クレアの両手をしっかりと握り返す温かい両手が彼女を救う
「マナ!?」
マナことデルタであった。
いつの間にか頂上付近まで登っていた彼女が、落下するクレアの腕を掴んでいた。
「離しなさいマナ!貴女まで落ちてしまうわ!!」
姉として妹を心配するクレアはそう怒鳴ってしまう
「嫌なのです!」
デルタは
「姉様を落とさないのがデルタの役目で………でも!マナとして…!家族って呼んでくれた優しい姉様を今度はマナが助けるのです!」
凄まじい腕力…獣人特有の身体能力…そして純粋な波紋…そうして強引にクレアを引き上げた。
クレアの身体が頂上へ転がり込む。
二十五メートル。
最上級ヘルクライム・ピラー。
完全踏破…
誰もが言葉を失っていた。数秒する内に登りきったことを理解し大歓声が響いた。
「おおおおおおおおお!!」
「やったぞ!!」
「踏破した!!」
構成員たちが沸き立つ。
ラムダも笑っていた。559番は涙を流していた。七陰たちは流石だわと誇らしげであった。
ベアトリクスも慈愛の笑みで微笑ましく見つめている。ふらふらになりながらクレアは立ち上がった
そして、塔の下にいる師匠を見た。ベアトリクスは微笑んでいた。
優しく…誇らしげに…その顔を見た瞬間。クレアは思わず泣きそうになる。
「師匠……!」
「姉様…一緒に降りるの!」
そうしてマナに担がれてクレアは一番下まで戻った
「おめでとう、クレア。」
たった一言
だがクレアにとっては何より嬉しかったがそれで言わなければいけないと伝える
「貴女は試練を乗り越えた。」
「でも……最後はマナに助けられたわ…これだと…試練失敗じゃ…!」
「言ったでしょう。登りきることだけが試練ではないと…心の有り様…そして自分の意志をしっかり認識できた…」
「強くなったわねクレア…」
その言葉に…クレアは涙をこぼしながらベアトリクスに抱きついた
「師匠……うぁぁぁぁぁぁん…わ、わだじぃ…」
「うん…分かってるわ…よく頑張ったわね…師匠として一人の人間として貴女を誇らしく思うわ。」
やり遂げたことと師匠ベアトリクスからの言葉それらはクレアの大切なものとなった。
こうして武神ベアトリクスの弟子クレア・カゲノーは
最上級ヘルクライム・ピラーを踏破し、ブシン祭へ挑む資格を得たのであった。
あとがき
まずは更新遅くなり大変お待たせしました。
色々と時間が取れなかったりなど執筆が思うように進まず…
これからも遅くなってしまうと思いますが気長に見てもらえると助かります!
さて今回でクレアはヘルクライム・ピラーを完全踏破しました。
ここから先はブシン祭に向けてひたすら七陰やナンバーズたちとの組み手となるでしょう。
それと後日霧の龍が手を加えていたことを知った転生ベアトリクスは意外に怒ってたシドと共にしばかれることになりました。
ジョジョの奇妙な冒険第2部では波紋のバリアーのような形でジョジョとシーザーを阻みましたがこちらでは単純ですが油圧と油がとんでもない量出てクレアの行く手を遮りました。
カゲマスではいよいよ外典の7章が始まるので待ち遠しいですね。
フェスタッグ、イプシロン&イータは確保したので限界まで強化したいですね。
性能はひとまず置いておいて…
FGOでも第2部終章を終えアフタータイムがいよいよ始動…
色々と待ち遠しいですね。
それでは皆様今回も読んで頂きありがとうございました!
???
……………
「ねぇ……言わなくて良いの?」
暗がりを颯爽と去ろうとしていた陰にイータは声を掛けた。
「不要だよ…登りきれるのは分かってたさ…」
「まったくあんたは……普段よりも激しい油圧なのに……足だけで引っ付くなんて…」
そう実はクレアの見たシドは幻覚などではなく本物であった。
偶々アレクサンドリアに来ていたシドは皆が集まるのが見えたからと気配を消して付いていっていた。
ベアトリクスは気付いていたものの放置しクレアのピンチに思わず声を掛けたとのこと。
「それにしても姉さんまであれを作動させちゃうなんてね。」
「それに……巻き込まれた……私の苦労……返してほしい…」
「でも強くはなれたろう?…それにしてもあれを作動させて登ったのは姉さん入れて四人目だね。」
「そうね…私、シャドウ…クレア………そしてアンリィの四人。」
そうアビスナンバーズ、No.1狐の獣人アンリィも罠を作動させながらも登っていた
「ベアトリクスさんは気付いてた?」
「いいえ…気付いてるのはシャドウと私だけよ。」
「そうか…それにしても不思議な現象だよね…」
「そうね…どうしてあの娘だけ発症しているのか…それは分からない…分からないから……経過観察…必要」
「まだまだ道は長いってことだね。それでその現象の名前……結局付けたの?」
「えぇ…アウロラから聞いて……昔にもあったみたい…名前は…」
「魔人化……」
異世界食堂続編するなら 七陰+クレアなどで誰が先か?どの料理にするかはまた決めます…(イータは大体付いていくので除外します)
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アルファ
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ベータ
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ガンマ
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デルタ
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イプシロン
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ゼータ
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クレア
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シェリー
-
ローズ