第13話
「……ハッ………無駄だ……お前に儂は殺せぬよ………長く生きすぎた弊害というやつだ……最早私に…人としての死は待っていない……」
「知っているとも………その程度の事……私がお前に劣ることも…………卑怯とは言わせないぞ………■■■■…」
「言わぬよ……見抜けなかった儂の落ち度だ…好きにするがいい」
「あぁ……腹が立つ……お前に、こんな手でしか勝てぬ己に………こんな手で沈んだお前に………だが私をこうさせるのは或りし日のお前達だ…………私はこの手で………必ず………」
数週間、先輩マスター立香の力を借りつつ、カルデアのマスターとしての基礎を学んだ真純に最初の仕事がやってくる。
館内放送でミーティングルームに呼び出されたマスター二人はダヴィンチから説明を受ける。
「今回君たちを呼んだのは、知っての通り特異点が観測されたからだ……観測されたんだけどね……問題は特異点はかなり小さいはずなのにその反応は異常なくらい大きいことだね」
ーーー微小特異点と呼ばれるそれは本来であればその規模の小ささ故に、カルデアからの干渉が無くとも、精々一人か二人の運命を変える程度で歴史への影響は無い。
今回観測された特異点もカルデアから見る限りは表面上はその様に映る。しかしその特異点から発せられる反応は最早微小特異点どころでは無い。ダヴィンチを悩ませるのはそこだった。
「とは言え、場所と年代が判明している以上調査しないという手はない……大きさはともかく、これだけの反応を持つ特異点だ……放っておいてもいいことはないだろう」
ダヴィンチはそう言うと二人に向き直り、指令を出す。
「立香ちゃん、真純くん。記念すべき初めての共同作業だ。場所はアイルランド、時代は1600年代。比較的近代だから神秘はかなり薄いと思われる……調査は明日から始めるから、ひとまず今日は休んで英気を養ってくれたまえ」
「「はい!」」
元気のよい返事を返した二人のマスターは部屋を後にする。それを見届けたダヴィンチは顔に貼り付けていた笑みを消して思案する。
(あんなに微小な特異点からあれほどの反応が出るのは、本来あり得ない……アイルランド……か。その辺り出身のサーヴァント達に話を聞いておくべきかもしれないね)
そう考えたダヴィンチは我等が頼れる光の御子、クーフーリンとその他ケルト出身のサーヴァント達を集めることにした。
ーーー翌日
既に全ての準備が整った立香と真純は後はレイシフトを待つのみとなっていた。ちなみにメリュジーヌは今回お留守番の予定だ。サーヴァントはその特異点との強い親和性がない限り、レイシフトする事は出来ない。なので立香は今までの特異点で現地に召喚されたサーヴァントと契約したり、召喚術によって戦闘時のみ一時的にカルデアのサーヴァントを呼び出す事で戦ってきた。
そう言った理由もあって、留守番の件をメリュジーヌに伝えたところ
「え?嫌だけど?」
と、普通に返され真純も立香も唖然とするも、ダヴィンチに
「どうせついてこれないからレイシフトまでは好きにさせてあげなよ」
と言われた真純の背中にはメリュジーヌが蝉の如くへばりついていた。
そして今回メリュジーヌが付いて来られない事もあり現地でサーヴァントを召喚し、戦う為にも結局、別のサーヴァントと契約をすることになった。メリュジーヌはかなりごねたが、こればかりはどうしようもないので、この特異点限り、と言う事で話をつけた。
そんな真純の契約相手になったのはみんな大好き槍のお兄さんこと、クー・フーリンである。
「よう!また会ったな!ヨロシクなぁ、ボウズ!」
今回の特異点はアイルランド近郊ということもあり、土地の問題からもケルト出身のサーヴァントのみが同行可能と言う判断が出されたためである。
ちなみに立香の方はと言うと…
「お任せください……このディルムッド・オディナ必ずやマスターお二人共、そろってカルデアへお返しいたします」
泣きぼくろが特徴的な色男セイバー、ディルムッド・オディナになった。
「さぁそろそろ時間だ…始めるとしよう」
ダヴィンチが号令をかけると。クーフーリンとディルムッドは霊体化し、メリュジーヌも渋々と言った様子で真純から離れる。
真純と立香はそれぞれコフィンの中へ入り込みその時を待つ。周囲の機械が起動する音に真純は若干の不安を、立香はいつもの事ながら、今までとは違う仲間の存在に胸を躍らせる。
「……頼んだよ二人とも」
そう告げるダヴィンチの言葉を最後にレイシフトは始まった。
直後
「!……あれ?…そんな…まさか、あり得ない!?」
一人の職員が声を荒らげる。尋常ではない慌て様にダヴィンチは尋ねる。
「どうしたんだい!?」
「特異点の年代が次々に……変わって……」
「!…見せてくれ……これは…!」
ダヴィンチが計機を覗き込む。特異点の年代を示すその数字は1600だったはずが今は800。更に100となったかと思えば次の瞬間には3000などと意味の分からない時代を表示し続けている。
「何がどうなってるんだ!」
今すぐにでもレイシフトを取り止めたいが時は既に遅く、コフィンの中に二人の姿はもうない。ダヴィンチは職員達へ矢継ぎ早に指示を出す。
「二人の追跡を急いでくれ!何としても探し出すんだ!」
今までにない事態にカルデアスタッフは恐慌状態であった。故に気が付かない。
冥界魔■城■ スカ■
ーー年代ーー■■■■■