人類最後のマスターには好きな人がいる    作:永久冬眠

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第18話

「………そう………うん……そういう事……ね」

 

 そう言って事の経緯を聞いて、静かに怒りに震える目の前の小さな竜に真純を連れ去られた3人は戦々恐々だった。

 だがその怒りは3人に向けられているものでは無い、真純を連れ去ったオイフェとかいう女と、ついぞ間に合わなかった自分自身に対してだった。マスターを守り通せなかったクー・フーリンに思うところがないわけでも無いが、それはメリュジーヌ自身にも言える事であるので、特に目くじらを立てる様なことはしない。

 

 それに、クー・フーリンが真純のサーヴァントではなくなっている。

 

 こんな状態で自らのマスターの戦力が減ったのは宜しくない、危険だ、と頭では理解しているメリュジーヌだったが、真純のサーヴァントが自分一人だけであるという事実を心の何処かで喜んでいた。

 

 自由に動かせる戦力の低下による若干の心配とそれによって満たされる独占欲。今のメリュジーヌは気分は悪いが、機嫌はそこまで悪くないのだ。

 

 

 

 やはり彼のサーヴァント足りえるのはわたしだけ。

 

 

 

「…門は私達に開かれると、オイフェは言っていました」

 

 現状の陰鬱な空気を紛らわせる為にも、ディルムッドが話を切り出す。

 

「じゃあ、今すぐ助けに行かないと!」

 

「…ええ、そうね」

 

「それはオススメできません」

 

 真純が連れ去られた場所も、其処への行き方も判明しているなら今すぐ助けに行きたいと思う立香とメリュジーヌだが、それはディルムッドによって却下される。

 

「情け無い話だと理解していますが、メリュジーヌ……真純殿からの強力な魔力供給を受ける貴女以外に、現状オイフェとまともに戦える戦力は、ありません」

 

 未だ、言葉を発しないクー・フーリンを気にするそぶりを見せながらも、事実として、ディルムッドはそう言った。

 

「…ハァ……さっき門の中を少し覗いてきた……あの女、門の内側でも魔獣を飼ってやがる……どいつも滅多に見れねぇサイズだったがな」

 

 クー・フーリンが言うにはあの門の内側には、夥しい数の魔獣がひしめき合っている。そのどれもがオイフェによって選び抜かれた、その種における最高の個体であるらしい。「オメェの大好きな魔猪もいたぞ」と言われたディルムッドの顔は引き攣っていた。

 

「仮に竜の嬢ちゃんがオイフェとやり合ってもあの数のバケモノどもを俺たちだけで捌くのは無理だ………俺たちの勝利は坊主を取り返す事じゃねぇ、二人を生きて返す事だ」

 

『ふむふむ、成程成程………それは大変な事になっているねぇ、私達もそちらを補足するのに手間取ってしまった……申し訳ない』

 

「…ううん、気にしないでダヴィンチちゃん………ん?ダヴィンチちゃん?」

 

『いや本当に申し訳ない、何分初めての事でね、そちらを捕捉するのに少し手間取ってしまったがまぁ其処はこの万能の天才にお任せあれ、君たちが何処に行ったって必ず見つけて見せるとも』

 

 そう言って現れた通信越しのダヴィンチの声がとても頼もしく感じられる。

 

「何処から聞いてたの?」

 

『君たち4人で話し始めたところからかな』

 

「最初からじゃん!言ってよ!」

 

『アハハ……まぁともかくその戦力差は手痛いね、サーヴァントをそっちに送りたくても、何故か安定しない……いくらメリュジーヌが強くても、大量の魔獣たちから立香ちゃんと真純くんを守りながら3人で戦うのは現実的じゃない…真純くんに通信が繋がらないし安否が気になる所……いやぁ、問題がいっぱいだ』

 

 そう言うダヴィンチの声色は朗らかだが真剣なものだった。『手を考える』と言い残して通信が終了され、残された4人も動き出そうとしていた。

 

「なぁ、竜の嬢ちゃん……マスターの護衛、しばらく頼んでも良いか」

 

「構わないけど……」

 

「何処か行くの?」

 

 自らのマスターの護衛をメリュジーヌに託し、ディルムッドを連れて何処かへ行こうとするクー・フーリンに立香が問いかける。

 

「あの女の言う通りにするのは癪だが、海獣でも狩りに行くかと思ってな、アイツらの骨は良い触媒にもなるしな」

 

 クー・フーリンはそう言い残し、「そうら、オメェも行くぞ」とディルムッドの尻を蹴り上げて森を抜けて止める間も無く、何処かへ行ってしまった。

 

(……き、気まずい)

 

 じーっと、ただ無言でこちらを見つめるメリュジーヌに気まずさを感じながら、先ずは趣味とか聞いてみようかと呑気な事を考える立香であった。

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