人類最後のマスターには好きな人がいる    作:永久冬眠

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第20話

 オイフェに連れられ、城の中庭の一際月の光がさすその場所で真純はオイフェにこう告げられる。

 

「お前は何というか……魔力量はあるんだが……アレだ……弱い」

 

「結構言うじゃん……いや、事実ですけども」

 

 紛う事なき事実だが、面と向かって言われると来るものがある。とはいえ、相手は影の国でも最強の戦士、とりあえず黙って言うことを聞く。

 

「お前にはここ数日、ルーンについて色々と語ったな」

 

「はい、(実戦で使える気はしないけど)ためになりました」

 

「うむ、つまりだ……お前はその……私の弟子と言っても過言ではない」

 

「過言です」

 

「いいや弟子だ」

 

「あ、はい」

 

 スカサハは影の国の女王であり、戦士であり、英傑を育てる導き手でもあった。そんなスカサハの姉妹であるこの時代のオイフェには弟子と言えるほどの者はいなかったが、手ずから魔術を教えた真純は彼女の中では弟子の様な存在になっていた。

 

「師匠と弟子はお互いに学びを得るものだと聞く………お前との関係性は正にそれだというわけだ」

 

「いやそういう意味ではないと思う………というか、自分捕虜なんですが」

 

「何か言ったか?馬鹿弟子?」

 

「何でもありません師匠」

 

「よろしい」

 

 これからオイフェがするであろう事に大方察しがついた真純は彼女の弟子認定を何とか取り消したかったが、影の国最強の一角に逆らう程の度胸は流石になく、従っても従わなくても死にそうなので取り敢えず長い物に巻かれろ精神で従っておく。

 

「ほれ、これを待て」

 

 そう言ってオイフェが渡してきたのは見覚えのある朱い槍。クー・フーリン達は軽々と振るっているが、その槍から発せられる風切り音はとても重々しく聞こえ、真純の中では重い槍だと言う認識が強かった。

 

「……結構軽いんだ……」

 

「その槍は私が創った………お前でも多少は振るえるよう、軽量化のルーンを刻んである」

 

「?……でも、ゲイ・ボルクって……」

 

「そうさな……ボルクが創ったからゲイ・ボルク、ならそれは差し詰めゲイ・アイフェとでも言ったところか……私だと思って後生大事に使え」

 

 真純は自分の名前が付いた武器を贈るのってある意味重いなと思ったが、口にすると命が無さそうなので黙っておく。

 

 

「記念すべき最初の弟子だ………あの女の弟子よりも弱いなど許さん………どれ、まずは基本的な構えからだ……なあに心配するな……文字通り、手取り足取り……じっくりと教えてやろう……」

 

(クー・フーリンより強くなるのは無理があります師匠)

 

 蠱惑的な笑みを浮かべ、真純の体を抱く様に槍の構えを教え始めるオイフェに、真純は己の内に秘める本音をグッと堪えながら、体に触れる柔らかい感触によって刺激される本能に抗うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真純が連れ去られてから3日目時点。立香とメリュジーヌは未だ戻らぬディルムッドとクー・フーリンを心配しつつ、再びダヴィンチと通信を繋げ、話を聞いていた。

 

『そっちには神代の幻想種が大量に棲息しているんだよね』

 

「うん、見た事無いような生き物がうじゃうじゃいるの、殆どはメリュジーヌを見ると逃げていっちゃうんだけどね」

 

「当然ね」

 

『あははは、まぁ彼女は幻想種の中でも頂点に君臨する竜だからね、尻尾を巻いて逃げるのも分かっちゃうなぁ』

 

 立香とメリュジーヌのサバイバル生活は今のところ順調だった。真純を想うもの同士、険悪な雰囲気になるかと思いきや、お互いの知らない真純トークで盛り上がり、二人の仲は以外にも良くなっていた。

 

「それで……ダヴィンチちゃん……何か策が見つかった?」

 

『うん………そっちでサーヴァントが召喚できないなら、今いるサーヴァントを強化するしか無い……素材(幻想種)はいっぱいいるみたいだしね』

 

「ほえー……そんなことできるんだ」

 

『これからできるようにするのさ。クー・フーリン達は"海獣"を狩りに行くと言ったんだね?それが本当だとすれば、強化素材としては申し分ないと思う』

 

「強化って……どんな強化するの?」

 

 

 

 

 

アメリカ(第五特異点)で敵だった、バーサーカー。覚えているかい?』

 

「え"……」

 

「?……」

 

 心当たりがある立香は意外な提案に硬直し、何も知らないメリュジーヌは石像のように動かない立香を不思議そうな顔をして指でつつく。

 

 

「おぅマスター!今戻ったぜぇ!」

 

「はぁ……はぁ……もう、二度と海には近付きたくありません……」

 

 そうこうしていると狩りに出ていた二人が3日ぶりに姿を見せた。ひとまず生きている事に安堵する立香だったが、二人の姿を見て悲鳴をあげる。

 

「ボロボロじゃん!!大丈夫!?……じゃ、ないか……すぐに治療しなきゃ」

 

 そう言っていそいそと二人の治療をしつつダヴィンチも交えて話を聞く。

 

「っかー!やっぱ強ぇわ!コインヘン!」

 

「触手と幾つかの甲殻片……これらを持ち帰るのが精一杯でした……」

 

「二人がこんなになるなんて……どんだけ強いのソイツ」

 

「ありゃダメだ…人間が相手するもんじゃねぇ」

 

「えぇ全く…同感です」

 

 どこか吹っ切れた様子のクー・フーリンとは対象的にディルムッドは相当酷い目に遭ったのか、どこか悲観的な雰囲気を纏う……本当に何があったのか。

 

『でも、素材を持ち帰ってくれたのはかなり大きい………それだけあればイケるかな……』

 

「あん?何が?」

 

 二人が持ち帰ったコインヘンの素材を吟味するダヴィンチの言葉にクー・フーリンは訝しんで問う。

 

 

『ねぇ、君ぃ……もう一回霊基再臨……してみない?』

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