暗く、冷たく、しかして斬られた腹は熱く。男に腹部を斬られた真純は
召喚陣の上に倒れ込んだ。
(…寒い……腹は熱いのに)
斬られた瞬間に真純は意識を失っていたが倒れた時の衝撃とじわじわと襲ってくる痛みで意識を取り戻した。
「…ぅあ、…ぁ」
「…まだ意識があんのか」
苦悶の声を漏らす真純に気がついたら男がにじり寄ってくる。真純は床に掘られた陣の全てに自身の血が流れていくのを感じた。
(そういえば、さっきは焦っていて気が付かなかったけど、魔力がどうのこうのって日記に書いてあったような気がする…)
「今、楽にしてやるよ…」
男が再度剣を振りかぶるのと同時に、真純は自身の全てを投げ打ち魔力を放出する。
「っぐぉ…ぬわぁ!」
凄まじい純粋な魔力の奔流に飲まれ、男は数メートルにわたって吹き飛んだ。衝撃によって部屋の中にあるあらゆるものが吹き飛んでいき、何かが陣の中心、倒れ込む真純の顔のそばに落ちてくる。母の日記に写真と共に綴られていた、とある幻想種の一部。イギリスのどこかにある母の実家、その広大な土地のどこかで、せいぜい這うくらいしか移動手段のなかった当時の真純自身が見つけたと書かれていた。真純はソレを握りしめさらに魔力を放ち続ける
血が流れる召喚陣に今度は魔力が流れ込み、光る。
「ってぇな、クソが」
体勢を立て直した男が魔力の流れに耐えながら、真純にとどめを刺さんと詰め寄ってくる。しかしその歩みは先ほどと比べ牛歩の如く遅い。
真純の血と魔力、そして
「おいおいおい…!冗談だろ!?まさかアレは!サーヴァンt」
「まったく、恋人との逢瀬に他人が割り込むのはやめてほしいね」
予想だにしない事態に混乱していた男の驚嘆の言葉は最後まで続くことは無かった。真純の魔力に吹き飛ばされた後やっとの思いで部屋まで戻ってきた男は、哀れ今度は別の何かに吹っ飛ばされることになる。
「…っはぁ、はぁ」
息も絶え絶え、文字通り自身の全てを投げ打った真純は既に死に体だった。
外側から黒く染まっていく景色の中で真純の目に映ったのは白銀にたなびく綺麗な髪だった。
「ごめんねマスター、少しだけ待っていて……
直ぐに…終わらせるから」
一方、藤丸立香は焦っていた。理由はただ一つ。日本へ到着したばかりの立香と護衛のサーヴァント達へダヴィンチから緊急連絡があったためだ。
「まずいことになった!すまない立香ちゃん!こうなる事を予想しておくべきだった!」
「何があったの?ダヴィンチちゃん」
「魔術協会に君の幼馴染の回収命令が出されているんだ!急いで彼の家に向かうんだ!」
「……ぇ」
メリュジーヌが好きなんや、察してくれ