しばらく意識を失っていた真純はまさか家が倒壊しているとはつゆ知らず、
ベッドに腰掛け、メリュジーヌと談笑していた。
「そういえば、俺を襲ったあの男は……?」
「もういないよ。安心して、血の一滴も残してないから」
「…え」
あっけらかんと答えるメリュジーヌに唖然とする。小さな少女の姿をしているが彼女は自分を竜だと言っていた。この問答にその片鱗を感じたような気がする。
「マスターをキズモノにしたんだから、しっかり罪を償ってもらわないとね」
根本的にヒトとは違うナニカ、そこに若干の恐怖心を抱くが、彼女は真純を救ってくれた恩人。自分の味方だと考えればこれ以上に頼もしい存在は無いためその恐怖心は直ぐに薄れた。
「…!マスター…何か来るよ、敵かもしれないからわたしの後ろにいて」
「あ、ああ…分かった」
小さな少女に守られる自分に情け無さを一瞬感じるも先程までのことを思い出し、直ぐにメリュジーヌの後ろにつく。
「いるんだろう…姿を見せたらどうだい」
「…まさか、サーヴァントとは思いもしなかった」
白黒の剣を両手に持ち、赤い外套に身を包んだ白髪の男が冷や汗をかきながら地下室の入り口に現れた。
「…それで、何が目的」
先程までとは打って変わって腹の底から冷えるような冷徹な声色で話すメリュジーヌに真純はギョッとした。顔は見えないが目の前の赤い外套の男に絶対零度の視線を送っているであろうことは容易に想像できた。
「そっちの男の子に用がある……と、言ったら?」
一瞬、メリュジーヌの姿が掻き消えると次の瞬間には外套の男は石造りの壁を背にしており男が持つ白黒の剣とメリュジーヌの腕にある鞘のようなものから出てきた剣と鍔迫り合いを起こしていた。鍔迫り合いとは言ってもメリュジーヌの圧倒的な膂力を前に男は受け流すのが精一杯と言った様子だ。
「待ってくれ!こちらに攻撃の意思はない!そこの彼に聞きたいことがあるだけだ!」
「…だそうだけど、マスター。コレ、知り合い?」
「…いや…知り合いでは…ない…かな」
「じゃあ、殺していいよね」
「何となくこうなる予感はしてたぞ!」
赤い外套の男は慟哭する。何だか可哀想になってきた真純は助け舟を出す。
「ちょちょちょっと待って!メリュジーヌ!一旦話を聞こう!」
「うん分かった」
言うや否やメリュジーヌはいつの間にか男を簀巻きにして真純の隣に鎮座していた。
「はや」
「わたしは最速の竜なので」
「なんでさ」
ひとまず落ち着いたので男の話を聞くことにした。
男…エミヤは二人にことのあらましを伝えた。
幼馴染、藤丸立香のサーヴァントである事、彼女が人類最後のマスターであり、自分に会うために日本に帰ってきていた事…etc
様々な情報が一気に入り込んだ真純は
「…は?」
「どうする?やっぱり潰す?」
「いや、それはやめてあげて」
真純はひとまず頭の中で状況を整理してエミヤに尋ねる。
「じゃあ、ここに立香がいるって事?」
「そうだ。私達の戦闘音を聞きつけてすでにこちらに向かっている筈だ…じきに…」
「エミヤっ!大丈夫!?なにが…あっ…た…の」
噂をすれば何とやら、部屋に現れたのは金髪で青い服を纏ってた騎士風の美人さんと、見覚えのある、橙色のサイドテール。
「立香…!」
「真純〜!」
久方ぶりの再開に抱き合わんとすら二人の間にメリュジーヌが割って入る。
「君からは害意は感じないし、マスターの友達みたいだけど、マスターは僕の恋人だからそういうのは遠慮してほしいな」
「「え?」」
その場の全員に衝撃が走る。
「こ、こい……び、と?」
「いやいやいやいや、知らない知らない!……えぇ!?」
立香も、当の本人真純も何が何だかわからず、ひとまずそのような事実はないと否定することしかできなかった。
「お、おほん…ま、まぁ詳しい話は後で聞くとして、取り敢えず…真純!」
「は、はい!」
未だ頭が混乱している真純の手を取った立香はこう告げる。
「南極に行こう!」
「は?」
真純は意識を失った!
うちではメリュジーヌはマスターと話すとき「わたし」
他の人がいるとき「僕」と使い分けます。