暗く、昏く、腐り果て、朽ちていく。
かつて、竜の中の
世界のどこかにある未だ神秘を色濃く残すその場所で、どろどろと溶け、腐り、朽ちゆくそのかけらを掬い上げた赤子がいた。
竜種は元来、つがいを選ぶ際に一目見ただけで直感的に未来を観測し、適切な相手を選ぶ能力を持っている。
朽ちた肉片とはいえ、文字通り
赤子に触れられ、その膨大な魔力に包まれた瞬間、ソレは理解した。
これから先の未来でその赤子がどうなるのか、自身にとってどのような存在になるのかを。
だからこれから起こることは、君にとっては未来でも、わたしにとっては過去のこと。
いつの日かその時が来るまで、この身を預けよう。
腐りゆくわたしに手を伸ばした、
愚かで
優しい
愛し子へ
「……今のは」
母の日記に綴ってあった。サーヴァントとそのマスターはお互いの過去や記憶を夢で見ることがあるという。夢での記憶は既に霞の中へ消え掛かっているが…もし、今のがそうなのだとしたら、聖杯も無く、願いが叶うわけでもないのに、彼女が自分に力を貸してくれる理由が少しだけ分かったような気がする。
「て、いうか………ここどこ?」
白を基調とした無機質な部屋、ベッドとテーブルくらいしか家具はない。
真純は、自身の記憶を手繰り寄せる。
「確か、南極に行こうって……そういえばメリュジー「呼んだ?」うん知ってた」
メリュジーヌに自分が気絶した後起こったことを聞いた。
曰く、数多の英霊と契約し、大小様々な歴史の特異点とやらを修復し、人理焼却を阻止した立香は魔術協会とか言う組織に狙われていて、その関係者である自分も、
そしてこの場所は南極大陸のはるか標高6,000メートルの雪山の地下に作られた地下工房。 地球上の最南端、西経0度にある南極大陸に建てられた地球最大にして唯一の人理観測所。
藤丸立香の職場、
人理継続保障機関 フィニス・カルデア
「マジで南極じゃん…」
「マスターの安息のためだし、仕方ないかな」
猛吹雪の窓の外を眺めながらメリュジーヌの言葉にそれもそうだと自分を納得させ現状を受け入れると同時、機械的な音を立てて扉が開き、部屋に女性が2人入ってくる。
一人は見知った顔、藤丸立香。
「大丈夫?痛いとこない?」
もう一人は…
「やあやあ、お目覚めかな?古谷真純くん」
モナリザみたいな人だった。