見習い魔法使いイジーとスライムのスマイル   作:ヤングコーン

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学校に興味津々のスマイル。帰りがすっかり遅くなった2人は更に帰り道にあの嫌な先輩達とまた会ってしまう。更に、野外での決闘を挑まれてしまった。校外での決闘は校則違反。しかし先輩達は気にも留めない。スマイルとイジーは人気のない公園に連れ込まれ…。


11話 まずは相互理解から

それから午後の授業も受けて放課後になった。私が変なスライムを連れて来た事、私がジフに決闘で勝利した事。色んな事が話題になっていた。何だか遠回りにちやほやされたり、根も葉もない酷い噂を流されたりと何だか身の縮む思いだった。

 

そんな一日を終えてようやく帰ろうとした所、スマイルにある頼みごとをされた。

 

「ねえねえイジー、僕にこの学校を案内して欲しい」

 

「いいけど…どうせこれから学校生活を送るならそのうち色んな所を見て回る事になるし、別に今日じゃなくてもよくない?」

 

スマイルはちょっともじもじとした仕草をする。

 

「今日がいい。せっかく学校に来たのに授業は座学ばかりで殆ど見て回れなかったんだもん。あれは何なのか、これはなんなのか。僕にとって興味が尽きない物ばかりだ」

 

「仕方ないなぁ。今日中に全部は見て回るのは無理だけどできる範囲で案内するよ」

 

「やった!」

 

それから私はスマイルを連れて教室や施設を回った。彼は熱心に周りをよく見ている。時々声をかけても反応しないぐらい食いついて色んなものを見ていた。私は疲れていてすぐにでも帰りたかったけど、スマイルを見ているとどういう訳かそうしてあげるべきな気がした。何故かそろそろ帰ろうよの一言が胸の奥から中々出てこない。

 

むしろこうしてあげる事が少しでも彼のためになるのであれば嬉しいとさえ思えた。日も暮れて来た頃、校長先生と何かを話し込んでいたイルチェ先生に見つかり帰る様に言われた。そろそろ親も心配する頃だろう。

 

「そろそろ帰ろうか、スマイル」

 

「そうだね!」

 

スマイルは校長先生の顔を少し眺めてから私の後を追った。

 

「校長先生がどうかしたの?」

 

「いや、ちょっとズレてるなって」

 

「?」

 

気になって振り返った。既に後ろ姿の校長先生の髪の毛がやや不自然になっている。ああ、なるほど…。担任の先生がこちらを振り向くと口元に指を当てて「しーっ」とジェスチャーをし、魔法で位置を直した。器用だなぁ。本人は気付いていない様子。

 

それから私達は学校を後にした。通学路を帰っていると途中でまた会いたくない2人組と会った。バズとタードだ。ベンチに座ってこちらを見ていた。彼らの帰り道はこちらじゃない。間違いなく待ち伏せされた。

 

「遅かったな。少し話がしたくてね」

 

「ジフを決闘で倒したんだって?」

 

彼らは立ち上がる。

 

「お前の成長を確かめたくてな。ちょっと手合わせに付き合ってくれよ」

 

「う…」

 

「公園行こう。あそこなら広いしな」

 

スマイルは無表情で連行される私について来る。

 

やがて公園に到着した。この辺りは人が住んでおらずゴミが辺りに捨てられている。雑草はそんなに生えていなかった。

 

「よし、ここでいい。それじゃ決闘しよう」

 

「あ、あの…。校外での決闘は校則違反…」

 

言い終える前に私はバズにお腹を蹴られた。帽子が近くに転がり眼鏡が落ちた。尻餅を搗くとその場にうずくまる。タードが私の背中を蹴った。息が苦しい。痛い。今の私にはもう魔法を使う気力もない。体力もない。仮にスマイルの力を借りたとてジフの時の様に戦う事は不可能だった。

 

「さあどうする、校則と自分の身体とどっちを守る?」

 

バズが嫌味ったらしく言う。きっと醜い笑顔を浮かべているに違いない。私は両手で頭を押さえて丸くなり体を守る。

 

急に風を切る音と砂利が擦る音が聞こえた。遅れて何かが落下する鈍い音も聞こえる。頭を動かして周りを見る。僅かにぼやけているがすぐ近くにスマイルがいる。彼は私に向かって背中を向けていた。彼の体の周りに纏う魔力の濃度が少しずつ濃くなっているのを感じた。

 

私は何とか手探りで眼鏡を拾って状況を把握しようと彼らの方を見る。少し離れた場所でタードがふらふらしながら起き上がっていた。パズは少し焦った表情でスマイルに雷の呪文を当てる。スマイルはその雷を右手で受けると左手から放ってパズに返した。パズはその場に倒れ、まだ痺れが残りながらもスマイルの方を驚いた表情で見る。

 

「そんな、スライムには雷が有効なんじゃないのか!?」

 

「そんな拙い静電気で僕をどうにかできるつもりでいたのか?」

 

声色はいつもよりも低く怒気を含んでいた。私の周りにバリアが張られた。スマイルが詠唱を始めるとの彼の右手拳の周りに太い電撃がいくつも走る。スマイルはバチバチと音を立てる拳を前に突き出した。

 

「雷の呪文がどういう物かその身でとくと味わえ」

 

スマイルの手が今にも開こうとした時、何者かが走って来る姿が見えた。

 

「待って!!!」

 

保険医のスティル先生だった。声に驚いた皆は声のした方を見る。スティル先生はようやく駆け付けるとスマイルとパズ達の間に割って入った。両手を広げ私達に向かって開いた掌を突き出す。

 

「ストップ!ストップ!!ちょっと待って!」

 

「先生…」

 

スマイルが小さな声で呟いた。彼女はぜえぜえと肩で息をする。スマイルは手に纏っていた雷を消した。全力で走って来たようだ。やがて落ち着くと顔を上げる。

 

「パズ、タード。この子達をこんな人気のない公園に連れて来たのはあなた達ね。一体ここで何をしようとしてたの」

 

スティル先生は厳しい目を2人に向ける。

 

「い、いや俺達は…その…」

 

「こいつと親しくなろうとコミュニケーションをしようとしてただけです」

 

タードがおどおどしている所をパズが平然と言う。そうだよな?とこちらに視線を送って来る。どうやら先生が現れた事で危険は去った物と思っているらしい。スティル先生は地べたで腰を抜かしたままのパズに手を貸すと起こしてあげた。

 

「なのに、こいつ俺達を攻撃して来たんです」

 

「そうなんですよ!仲良くなろうとしただけなのに!」

 

パズが調子に乗るとタードまで便乗しだした。

 

スティル先生は私とスマイルを見比べる。私の服が汚れているのを確認するともう一度彼らの方に向き直り、大きく振りかぶってパズをビンタした。凄い音と共にその場に倒れる。目を皿の様に開いて驚いているタードの横っ面にも強力なビンタをした。彼も同じように倒れる。

 

「先生、暴力は…」

 

「あなた達の顔に虫がついてたの。ごめんなさいね。…それより今日はもう帰った方がいいわ。あなた達の成績を知った親がおかんむりでしょうから、これ以上機嫌を損ねないうちに」

 

パズとタードはお互いに顔を見合わせる。

 

「あら、まだ虫がついてるようね…」

 

パズとタードは近くに置いていた荷物を走って拾うと逃げて行った。スティル先生はため息をつくとこちらに歩いて来る。スマイルは2人が走っている方角をずっと眺めていた。先生は私の周りに貼られているバリアを解いて私に触れ、怪我の場所を確認した。

 

「痛かったね。怖かったね。もう大丈夫」

 

そう言って飴玉をくれた。体の怪我の回復を促すものだ。扱うのが非常に難しいため回復魔法を扱える魔法使いも極めて少ない。だから保険医の先生だからと言って回復魔法が扱えるとは限らない。代わりに私の様に薬学に詳しい人間がなりやすい。

 

こうした魔法薬も非常に貴重で高価な物が多い。材料を集めるのはそこまで難しくないが加工に使う道具が非常に高価なため結局自分で作るより買って済ませる人が多い。一から手作りだと非常に手間がかかる。学生は特にやんちゃな子が多いため怪我をしやく、その度に飴を渡しているとお金も薬も足りなくなるので余程の怪我でない限りこうした物が渡される事は極めて稀だった。

 

私は驚いて首を横に振る。

 

「いいえ、受け取れません」

 

「いいの。今日はジフ君の事といい散々だったでしょ。私も本当はもっと遠慮なく誰にでもあげたいんだけどね…」

 

スティル先生は拳を作って受け取りを拒否する私の右手首を掴むと指を1本1本開いて飴玉を握らせた。ここまでされると突っ返すのも躊躇われる。私はそれを有難く頂戴する事にした。それからスティル先生は立ち上がるとまだパズ達が逃げた方角を眺めているスマイルに話しかける。

 

「友達を守ろうと言う気持ちは立派だわ。でもあんな強い魔法を放ったら非常に危険よ。せっかくイジーと一緒に学校に通えるようになったのに、下手するとこの町にも入れなくなる所だったかもしれない。イジーにだって責任を負わされるわ」

 

「こんばんは、スティル先生。よくここが分かりましたね」

 

スマイルは振り向きもせず話に応じる。

 

「あはは…近所だしここ。帰宅途中で攻撃魔法の音がしたから何事かと思って走って来たらうちの学生達がただならぬ雰囲気でにらみ合ってるじゃない。久しぶりに全力で走ったわ」

 

スマイルはくるりと振り返った。いつもの様な穏やかな表情だった。

 

「そうですか。すみません、取り乱してしまいました」

 

スティル先生はにほっとした様に肩の力を抜いた。もうパズ達に興味を無くしたのか私のすぐそばに来る。

 

「ごめんなさいね。彼らを擁護するつもりはないけど…あの子達も元々はいじめられっ子だったの。勉強はできなくて…上級生に八つ当たりされてた。親からも冷たくされてて…。私には彼らの荒んだ心を癒してあげられなかった」

 

私と同じようにいじめられている子も他にもいるらしく、どうにか止めようと苦心していた様だが上手く行かなかったらしい。かつて助けてもらった事に恩義を感じているのかスティル先生の前では不良行為をする事は殆どなく、改心の余地はあるとずっと信じ続けている様だ。

 

スティル先生は彼らも救いたいのかもしれないが、私は今の話を聞いて同情心どころか怒りが湧いて来た。何故自分がされて嫌だった事を他人にやるのか理解に苦しむ。事情はどうあれ私はこんなにも嫌な思いをしている。

 

彼女の事は個人的に尊敬もしているし好きな先生だが、どんなに事情を教えられても彼らに対して抱く感情はまるで変わりなかった。むしろ憎悪が増した。

 

「彼らにそんな過去が…。また1つ勉強になったよ。ようし、相互理解を促して彼らと仲良くなっちゃおう!」

 

私達は驚いた。

 

「本気!?パズとタードと!??」

 

「パズとタードを分かり合えたなら、いじめも止められる。パズとタードも救える。この2人の不良行為が止まったならスティル先生も助かる。いい事尽くしじゃないか」

 

「スマイル君…」

 

スマイルは私の両手を掴む。

 

「やろうよイジー。僕達ならできる。彼らを救ってあげなきゃ」

 

私は酷く困惑した。私の彼らへの感情は限りなく嫌悪の方に向いている。彼らと仲良くしろと!?理解し合えと!??冗談じゃない!!…そう思うが、恩人であるスティル先生とスマイルにそんな目で見つめられると嫌とは言い辛い。

 

ため息をついて帽子を拾うと埃を払って深くかぶった。

 

「分かりましたよ。できる限りの事はします」

 

見なくても分かる。スティル先生もスマイルもとても喜んでいるんだろう。私はとんでもない事になったな…と内心で気を重くしていた。

 




ニコ動見ながらぐーたらしてたら校正してないのを忘れてて投稿が遅れたゾ
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