見習い魔法使いイジーとスライムのスマイル   作:ヤングコーン

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スティル先生との約束のためにジフ達やバズ達と仲良くしようとするスマイル達。しかし一向に上手く行かず、スマイルはやきもきしていた。このまま変わらない日常が続くかのように思われたが、偶然にも通学中にバズとタードが喧嘩している所を見かける。


13話 悪党の友情

あれから毎日毎日、嫌な先輩達や同級生から絡まれた。スマイルはスティル先生との約束を忘れず何度も仲良くなろうとした。相手はその気がない様で関係はいつまでも平行線。私も仲良くなりたいとは思ってないので行動は消極的になりがちだった。

 

一向に改善しない関係にスマイルも少し参っている様で自宅に着くとベッドの上でぐったりとしてしまった。

 

「関係改善の光明が全く見えない。イジー、僕はどうすればいい」

 

「一朝一夕じゃどうにもならないよ」

 

「気の遠くなる様な話だ。ただ仲良くなるだけの事がこんなに難しいだなんて。彼らは好き好んで僕達を敵視している様な気がする。どれだけ仲良くしようと接しても拒絶される。彼らはどうしてあんな嫌がらせをして来るんだ?」

 

「いじめに大した理由はないよ。フラストレーションの発散。優劣をつけて自尊心を保ったりとかね。スライムの世界にだっていじめぐらいあったんじゃないの?」

 

スマイルはしばらく考え込んだ。

 

「ああ、そうだった。スライムは基本的に目的が一致しない限りは集団行動は避けるんだったね。いじめとかは発生しないか」

 

スマイルはしばらく私の方を見ていたが、やはり返事をせずに腕を組んで真剣な表情で考え込む。

 

「ひょっとして気分を悪くした?もしそうならごめん」

 

あまりに何も言わないので少し焦った。お互いに軽口を言い合う仲だけど触れられたくない事はあるはずだし種族が違うから何気ない一言に傷つく事だってあるかもしれない。なので先に謝っておいた。

 

「別にそんな事はないけど…。どうだろう。スライムにいじめ…あったっけ」

 

「私もスライムの生態に詳しくないからスマイルが知らないなら知りようがないよ。でも君だって他のスライムと一緒に過ごした事ぐらいあるでしょ?」

 

しかし彼は困った顔をするばかり何も答えなかった。どうしてそれが分からないなんて事があるだろうか。彼だって他のスライムから分裂して生まれたはず。そのスライムが偶然孤立してたなんて事あるだろうか?

 

「ひょっとして記憶喪失?」

 

「そうかもしれない。考えた事もなかった。変だ。僕には生まれてすぐの記憶がない…。最も古い記憶…」

 

スマイルはこめかみのあたりを手で抑えて考え出す。やがて彼の身体が段々と溶けて来た。どうやら人の体を保てなくなるぐらい集中して考えているらしい。ちょうど肩まで液体化が進んでる所で諦めて元の人間の姿に戻った。

 

「ごめん、思い出すには時間がかかりそうだ。また何か思い出したら話すよ」

 

「う、うん」

 

彼は人間に殺されそうになった事があると言っていた。その時の事が記憶を思い出せない事と何か関係あるんだろうか。彼はベッドに寝転がったままどこか遠くを見つめている。いつもとは違う物憂げな横顔にどこか既視感があった。

 

あまりにスマイルの方をじっと見ているので彼も気になって私の方を向いた。

 

「僕の顔に何かついてる?」

 

「いや?」

 

「?」

 

「…どうにも私、スマイルに何か聞かなきゃいけない事があった気がする」

 

「結婚式場はどこがいいかとか?」

 

「違うよ」

 

私もスマイルと同じで思い出せない。記憶にもやがかかっている。誰かに会って、スマイルに何かを聞いてみると言った気がする。あまり考え込んでいると気が遠くなってしまいそうだった。それでもスマイルと一緒にベッドに座って思い出そうと頑張った。

 

辛うじて夢と言うワードが何か関係している事は思い出した。そこまでは分かる。でもそれ以上が分からない。私はその事をスマイルに話す。

 

「夢…?」

 

「うん。夢」

 

スマイルしばらくぼんやりしているとふと目をパッと開いて手をポンと叩く。

 

「そうだ!1つ思い出したよ!」

 

「えっ!?」

 

「僕がミルジナに来た用事があるんだ。ある人物に会いに来たんだよ!」

 

「おおお!それで、誰?」

 

「…………………」

 

スマイルはまた黙り込んでしまった。親が帰って来るまでお互いに考え込んでいたが、お互いに記憶はあやふやなままだった。

 

 

 

 

ある日、私達が学校へ投稿しているとバズとタードが何か話しているのが目に入った。いつもの様に何か企んでいるとかそんな雰囲気じゃない。どこか声色に怒気が混じっているというか…。一体どうしたんだろう。

 

私達は物陰に隠れて何か時間を潰してる風を装いながら会話に耳を傾けた。

 

「駄目だ、この距離じゃ聞こえない」

 

私はため息をついた。スマイルは手をポンと叩くと自分の耳を千切ってその辺に捨てた。するとその耳が素早くゴミや枯れ葉を伝って彼らの元へ行く。それからスマイルは私の耳に左手の人差し指を突っ込んだ。不思議と声が聞こえて来る。

 

『だから、もうこんな事嫌なんだよ。やるなら1人でやってくれ』

 

タードがパズに言っていた。タードがパズに物申すだなんて珍しい。彼はパズの腰巾着で、いつも彼の傍にいて威張っては彼を褒めそやすだけだった。

 

『俺がいないと何もできない癖に。そんな事言って、後で後悔しても知らないからな!』

 

パズが顔を真っ赤にして怒るとタードをその場に置いて早歩きで校内に入って行った。残されたタードはしばらく俯いていたがやがて決心した様に歩き出した。

 

『あのガキに負けてられねえからな…』

 

私とスマイルは顔を見合わせた。良く分からないけど2人とも仲違いしたらしい。

 

不思議な出来事はそれだけに留まらなかった。2階の渡り廊下を歩いてると今度は庭でジフとパズが言い争っているのが見えたのだ。スマイルは朝と同じように耳を使って会話を聞く。タードの時もそうだったが彼らも言い争っているらしい。

 

ジフは怪我をしているため、友達2人が前に出て威圧的な態度を取るパズと向き合っている。

 

『聞いたぞ。タードと喧嘩したんだってな。2人一緒ならまだしも、1人だけのお前なんて怖くねーよ』

 

カウルがパズに対して強気に出る。

 

『留年したくないんだったらそろそろいじめんかやめて勉学に励めば?』

 

トードがカウルに続いて言う。

 

『何だと!?』

 

パズが声を荒げて威圧的な態度を取る。それでも2人は下がらない。ジフは2人の間を抜けて前に出た。

 

『決闘するなら俺がやりますよ。怪我を負った後輩に惨敗して恥をかく心の準備ができてるならいつでもどうぞ』

 

顔を真っ赤にしたパズがその場で呪文を唱えた。突然の突風に吹かれて3人は数メートルほど吹き飛ばされてしまった。トードが炎の呪文を唱えるが途中で舌を噛んでしまい不発に終わる。カウルはスペルを間違ってて魔法を発動できない。

 

ジフが呪文を唱えようとするとその腹に魔法弾を撃ち込まれた。

 

『誰が誰に惨敗するって!?ええ!?』

 

生徒の注目が集まり出した。そのうち先生が来るかもしれない。でもこの上級生と下級生の争いに割って入って止めようと言う生徒は誰もいない。同級生3人はクラスではそれなりに魔法が扱える方だ。だがそれは下級生ではの話。

 

仮に成績が悪く1対3であってもとも扱える魔法の種類も魔力の量も多い相手では分が悪い。カウルとトードはジフの援護をしようとするが、カウルとトードはまるで戦力にならずジフは怪我で思う様に戦えない。

 

「イジー!」

 

スマイルが私の方を向いた。スマイルなら先生を呼ぼうだの、先生に任せようだの言わないだろう。言いたい事は分かっていた。

 

「分かってる」

 

私は窓を開けると飛び出した。

 

「イジー、ここ2階!」

 

「あっ」

 

気が付くのが遅かった。それでもスマイルが落下する私よりも素早く地面に向かうとトランポリンの様に弾力性のあるクッションになって私の落下の衝撃を和らげた。それから上手く着地する。我ながらちょっとカッコよかったかもしれない。

 

突然の私の登場に4人は驚いていた。私は咳払いをするとパズを指差した。

 

「パズ、怪我人をいたぶるのは感心しないな。それ以上やるのなら続きは私が引き受ける」

 

生徒達がざわつく。このまま戦うのならスマイルがいる限り私は負けない。彼が引けば大恥をかく事になり私には今後関わって来ない様になるだろう。どちらにしても私の利にしかならない。

 

しかしパズは不思議とニヤリと笑う。

 

「威勢がいいな。なら行こうぜ、決闘部屋に」

 

私は後悔した。まさかこの状況で決闘を申し出るなんて予想してなかった。決闘じゃ直接スマイルの力は借りる事が出来ない。仮にスマイルに腕輪を借りた所で魔法の技量の差はあまりに開きすぎている。からと言って今更引っ込みもつかない。

 

途中で騒ぎを聞きつけた先生に止められるのを祈ったが、神は死んでるのか届く事はなかった。




どこに挿絵を入れればいいか分からないッス
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