見習い魔法使いイジーとスライムのスマイル   作:ヤングコーン

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スマイルのお願いに応えるため、ビジーとの約束のためイジーは決闘祭に参加する事にした。彼らは果たして二次選考まで合格できるのか…。


20話 決闘祭へのエントリー

第一次選考は魔力の壺に魔力を込めると言う物だった。それを一定に満たす事ができれば合格。私1人じゃ無理だったと思うが、スマイルが一緒ならこの問題はきっと難しくない。スマイルは私に抱き着くとそのまま姿を変えてアクセサリーになった。

 

イルチェ先生は目を皿の様に開いて驚く。

 

「す、凄い…そんな事も出来たんですね」

 

イルチェ先生の隣にいる副担任のバーグ先生も同じように驚いていた。

 

「本当に…スライムなんですか…」

 

バーグ先生がイルチェ先生に尋ねる。彼女は副担任だが滅多に顔合わせないのでこういった事が出来る事は知らないんだろう。

 

「だから言ったじゃないですか。人間にも化けるし魔法も扱えるって」

 

「い、いえ…イルチェ先生の事だからからかっているものとばかり」

 

イルチェ先生は悪戯が好きだ。疑われるのも無理はない。私は早速とスマイルの魔力を借りて壺の中身を満たした。イルチェ先生はニッコリと笑顔で拍手する。

 

「素晴らしい!合格です」

 

「まあ、このぐらいは余裕ですね」

 

スマイルが誇らしげに言った。バーグ先生は壺の中身を確認して誤作動などでない事を確認している。彼女は困惑した表情のまままだ目を疑うように私やスマイルの方をチラ見しながら既にイルチェ先生がサインを終えた申請書にサインした。

 

それから申請書を私に返すと二次選考について説明を始めた。二次選考では火、水、雷、風の呪文を順不同で唱えて成功させなければならないのだと言う。これぐらいできなければそもそも決闘祭への参加は厳しいとの事。

 

二次選考と言っても次のテストへの練習のために期間を空けるか空けないかを生徒が選べるだけで今すぐにでも可能ならここで今すぐにテストを行う事も可能だ。

 

「変な話だよね。上級生から下級生まで参加できるのに下級生が決闘祭に参加できる時期ではまだ雷の呪文も風の呪文も授業で会得していない。これじゃアンフェアなんじゃないのかな」

 

スマイルが私に言った。バーグ先生は腕を組みながら首を横に振る。

 

「決闘祭は本来中級生から以上の学生が参加する様に企画されたものなのです。しかし、もし下級生であっても能力に問題がなければ参加しても良いと校長先生はお考えになりました。そもそもこの魔力の壺1つ取り上げるにしたって下級生はおろか中級生にもそれなりに高いハードルとして設定されているのですよ?」

 

「なるほど、そういう事だったんですね。納得しました」

 

「それで、どうします?二次選考は後日やっても構いませんし今すぐでも構いませんよ」

 

イルチェ先生が言った。

 

「私はできないし練習が必要だろうなあ」

 

「そうだよねー。うーん…。先生、別に呪文は僕が唱えてもいいんですか?」

 

「ええ。使役する魔物がその魔法を使えるのであれば充分にその資格があると認められます。そもそも普通は魔物以上の力を持つ魔法使いが魔物の主となるのが普通ですから。スマイルは一体どういうつもりでイジーさんに服従したんですか?」

 

「ミルジナでこうして活動するのに主従関係として契約するの最適だっただけであって僕達の関係は対等な友達です。誰かと親しくなるのに特別な理由はいりませんよね?」

 

「とも…だち…」

 

バーグ先生が困惑している。ミルジナでは魔物を対等な生き物として見ている人は少ない。必要とあれば服従させる。特に用事がなければ関わらない。特に魔物と契約する人が少ないミルジナでは私達はとても変わっている。更に主従関係を契約で結びながらもお互いの関係を対等と認め合っているのだ。不思議と思われて当たり前、気が触れていると思われても無理はなかった。

 

「何だか時代の風って奴を感じますよね、バーグ先生。ふふっ」

 

イルチェ先生はご機嫌そうに言った。

 

「ドラゴンと契約して学校に連れて来るだなんて言いだしませんよね」

 

「…駄目かな?」

 

「当たり前です」

 

イルチェ先生はドラゴンが大好きだ。魔物の話をしていると時々ドラゴントークが出て来る。生徒は飽きるほど聞かされた。しかし意思疎通はできないので契約を辛うじて取り付けた所で学校に連れて来るにはとても危険だ。高い代償を払って行動の殆どを制限させる事も可能だがその相手がドラゴンじゃ割に合わない。古代ドラゴンにロマンを見出す人はそこそこいるが現代のドラゴンが好きって言う人は珍しかった。

 

それより二次選考だ。スマイルが代わりに呪文を使っていいと言う事であれば迷う必要はない。私はしょんぼりしているイルチェ先生と呆れてるバーグ先生に申請書を渡して二次選考を受ける事を伝えた。

 

「分かりました。ではどうぞ」

 

バーグ先生が受け取りテストを行う。私は緊張しながらスマイルに呪文を頼んだ。スマイルは私のローブから体をニュッと出すと呪文を唱えた。火と水の呪文のスペルは知っているはずなのに彼の唱える呪文の単語と構成は耳にした事がないものばかりだった。

 

詠唱を終えると辺りに火と水と雷と風の魔法が同時に発動した。

 

「!?…スマイル、今何をしたの?」

 

この数の呪文を時間差なしに同時に起こすなんて…。師匠なら同じような事ができるかもしれないが見た事はなかった。

 

「イジーさん、この学校では魔法の同時発動は2つまでしか習いませんが呪文を正しく理解できていれば呪文の文章構成を変えて特定のスペルを加える事でそれ以上の数の魔法の同時発動が可能になるのです。言葉で言うほど容易な事ではありませんが」

 

「あっはっはっは!ここまでできれば本当に優勝あり合えるんじゃない?」

 

イルチェ先生はご機嫌そうだ。バーグ先生は複雑そうな表情をする。

 

「しかしスマイル、こちらの提示した魔法を1つずつ唱える事であって同時発動ではありません。指示通りに行ってください」

 

「あれだけの技量があれば訳ないと思うけどなぁ」

 

「それはそれ。これはこれ。テストは厳正に行わなければなりません」

 

「分かりました」

 

スマイルはバーグ先生の指示通りに呪文を詠唱する。詠唱や単語にややアレンジが加えられているものの基本的に私の知っている呪文だった。まずはその場に炎が上がり、水が炎に覆いかぶさって消える。床に飛び散った水を空中に浮かせると風に乗せて細かく切り刻んで舞い上げ、水の粒の間に雷を走らせてまるで植物の根の様な模様を作った。

 

バーグ先生は笑顔を作ると書類にサインをした。光景をぼんやり眺めていたイルチェ先生も遅れてサインをする。

 

「おめでとうございます。決闘祭、頑張ってくださいね。応援してますよ」

 

バーグ先生はいつもクールで表情が硬いので珍しい笑顔だった。私はうなずいて申請書を受け取る。

 

「頑張ります」

 

「僕も応援してますよ。頑張ってくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

そうして私は多目的ホールを後にした。これでエントリーは終わりだ。そして決闘祭に出るための資格を得た。後はその日まで訓練を重ねて待つだけだ。スマイルは強いが私が足を引っ張る様じゃ駄目だ。少しでも成長しないと。

 

あれこれと考えごとをしていると何者かが私にぶつかって来た。

 

「おめー!見てたよ、決闘祭出るんだって?」

 

「!?」

 

トードだった。ジフ達は一緒じゃない。

 

「あ、ありがとう。でも私の力じゃないよ。スマイルのおかげだったんだ」

 

「でもそのスマイルと契約したのはあんただしね。凄い事だよ」

 

良く分からないけど凄く褒めてくれる。スマイルも人間と同様の資格があれば私がいなくても1人で合格できた。私は1人じゃ合格できない。それを分かってても褒められるのは悪い気はしなかった。

 

彼女は私の腕を抱きしめながらその場をぴょんぴょんと跳んで見せて喜ぶ。

 

「ありがとう。言葉は嬉しいけどその…当たってる」

 

「んぇ?ああ。危うくイジーを悩殺する所だった。てへ。とにかくおめでとう!私も応援してるから頑張ってよね!」

 

「うん。やれるところまで頑張ってみる」

 

その後、学校から帰っていると寄り道してお菓子を食べているジフ達と会った。トードが私が決闘祭に出る事や選考に合格した事などを説明すると一緒に喜んでくれた。こうなると明日にはクラスで話題になりそう。プレッシャーだなぁ…。

 

3人と道を分かれて自宅に向かっているとスマイルがこちらをジト目で見てる事に気が付いた。

 

「どうかしたの?」

 

「イジー、鼻の下伸ばしてる」

 

「ええっ!?」

 

近くの店の鏡で顔を確認した。いつも通りに見える。

 

「別にいつも通りじゃないか」

 

「ふーん。イジーはトードみたいな子が好きなんだ」

 

良く分からないがスマイルは嫉妬しているらしい。

 

「そんなんじゃないって」

 

「どうだか」

 

それからしばらくスマイルは拗ねていた。口数はいつもより少なかったが、寝る時は結局私に寄り添って眠る。何だか可愛く思えて彼の頭を撫でた。彼は目をパチリと開けるとこちらを向く。

 

「イジー、時々僕の頭を撫でたがるけどそれなんなの?」

 

「可愛いと思ったり偉いと思ったりすると頭を撫でたくなるんだ。それ以上深い意味はないよ。嫌だった?」

 

「ううん。今日は頑張ったからもっと頭を撫でてくれてもいいよ」

 

私は思わず吹き出した。それからは彼の頭をいつまでも撫でていた。彼もすっかり機嫌を直してくれた。

 

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