見習い魔法使いイジーとスライムのスマイル   作:ヤングコーン

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親にも認められ、担任の先生にも許可を得てスマイルと一緒に学校生活を送る事になったイジー。スマイルのいる日常はいつものとはかけ離れていた。特に魔法の授業では彼自身も扱える上、全クラスメイトを相手にしなきゃいけない先生とは違いを付きっ切りで教える事ができる。初めてクラスメイトと同じように魔法が扱えた事にイジーは上機嫌になった。しかし、そんなイジーの前に「嫌な先輩」が現れる…。


9話 嫌な先輩

今日から学校だ。学校生活の事を思うと気が重い。これまでと違う事と言えばスマイルが一緒と言う事だ。通学路では同級生が私の隣にいるスマイルをチラ見していた。スマイルは時々自分に視線を送る生徒に手を振ったり挨拶をしたりしていた。手を振り返す生徒、挨拶を返す生徒そうでない生徒と様々だった。

 

スマイルはこれから同じ学び舎で過ごすであろう生徒を見ながら首を傾げる。

 

「皆あまり元気がないんだねぇ。何かあったのかな?」

 

「スマイルが元気過ぎるだけだよ。この辺じゃ知らない相手への態度はアレが普通」

 

途中である人物を見かけて物陰に隠れた。スマイルは特に隠れもせず隠れる私を眺めている。

 

「どうしたのさ」

 

「あそこの上級生から隠れてるんだよ。バズって言って嫌な奴。見つかるとロクな事はない」

 

「ふうん…」

 

彼と遭遇しない様に道を変えて進んだ。それからは学校まで会わずに済んだ。

 

学校へ到着すると担任のイルチェ先生の元に行って魔物と契約した話をした。イルチェ先生は隣にいるスマイルがスライムと言う事が信じられず、冗談だと思って笑ってしまった。スマイルは私と顔を見合わせた後、体を液状化させて見せる。

 

「おわぁ!…ほ、本当だ。てっきり僕をからかってるのかと思った」

 

イルチェ先生は眼鏡の位置を直してスマイルの体をまじまじと眺める。珍しいのは間違いない。人に擬態できる上に喋る事だってできるんだから。スマイルと会う前の私に今の状況を話してもイルチェ先生と同じ反応をするだろう。

 

「でも僕がスライムである事ぐらい先生なら見抜いてたんじゃないですか?」

 

「いやぁ、魔法学校の先生と言っても魔法に関しては僕の専門外だからなぁ。分からなかったよ」

 

「そう言うもんなんですね」

 

それからイルチェ先生はちゃんと契約が成立している事を確認すると校内での同行を許可してくれた。私とスマイルは認証バッチを付ける。

 

「それにしてもイジー君が魔物と契約かぁ。こんな凄いスライムと契約だなんて、一体何を差し出したんだい?」

 

脳裏に浮かんだのはスマイルとのキスの思い出。思い出すとまた顔が熱くなってきた。

 

「ひ、秘密です」

 

「隠すほどの事かなぁ」

 

スマイルは首を傾げていた。無事にイルチェ先生からの許可は得たので私達はそのまま教室に向かった。当然だが知らない人間が増えてるように見えるクラスメイトはスマイルを不思議そうに眺めている。

 

元から誰とも親しくなかった私は特に声を掛けられる事はなかった。でも視線はとてつもなく感じる。イルチェ先生が来てホームルームを開始する。それからスマイルについての紹介があった。当然だが彼がスライムだと聞いてクラスメイトは驚いていた。スマイルはイルチェ先生にもそうした様に姿を液状化して見せる。やはりクラスメイトは驚く。

 

あまり目立ちたくはなかったが、魔物と契約している生徒と言うだけでも非常に目立つのにその契約相手が非常に珍しいスライムと来た。スマイルが登校したいと言いだした時から避けられない状況だった。

 

ホームルームが終わると次の授業までとにかく視線を感じて居心地が悪かった。スマイルはやはり気にしてない様子だった。

 

やがて休み時間も終わると魔法学の先生、ウェンズリー先生がやって来た。

 

「おお、話は聞いていましたが…」

 

「どうも、スマイルのスライムです」

 

「逆だよ」

 

「よろしくお願いしますスマイルさん。それじゃ授業を始めますよ」

 

今回は火の呪文を習う。呪文のスペルと発音を習う。生徒は早速と練習を始めた。私も真似をするけどやはり上手く行かない。他の生徒は小さな火の玉を出すぐらいは成功している。私は全く何も出ない。たまにポッと何か音がするぐらいだ。

 

「イジーは魔力操作の仕方から矯正した方がいい気がする。まあひとまず僕の魔力を貸すからそれでやってみなよ」

 

スマイルは私の右手首に触れるとそこに腕輪の様な物を作った。教科書で見た事があるが魔法使いが魔力不足に備えて装備したりするものだ。おそらくそれを模した物。私はスマイルから借りた魔力で火の呪文を試みる。それでも中々火は出ない。

 

「何でだよー」

 

「スペルも間違ってるし発声の仕方も間違ってるからね。そりゃ魔法も出ないよ」

 

「うぐぐ…」

 

スマイルは目の前で火の呪文を唱える。目の前で火が噴きあがる。またクラスメイトの注目を浴びた。ウェンズリ―先生も驚いている。

 

「あなた魔法まで使えるんですか」

 

「ええ、まあ簡単な物なら」

 

「イジーさん、スマイルさんとは一体どこで?」

 

「妖精の森ですね」

 

事実を言ったがとても信じられないと言う表情だった。

 

それからスマイルは私に発声の仕方について教えてくれた。先生も私にだけ構ってはいられないので大変助かっている様子だった。スマイルはとにかく呪文の読み上げはどこにアクセントを置くべきかが重要かとかそんな話をしていた。

 

スマイルの指導を以てしても中々上達しない私の所にウェンズリ―先生がやって来て発声について私のやりやすい様に読み上げる方法などを提案してくれる。私はアドバイスを元に呪文の練習をする。

 

「それにしてもスマイルさんの呪文詠唱は独特ですね」

 

「そうですか?」

 

「訛りと言うか癖と言うか、この辺じゃあまり聞かないイントネーションです」

 

「まあ発動できれば何でもいいじゃないですか」

 

「まあそれもそうね」

 

呪文ができる同士の会話は良く分からない。2人の指導とスマイルの貸してくれた魔力のおかげもあって小さな火は起こせるようになった。いつも魔法関連の授業は遅れてばかりで、生徒は皆できるし先生は授業を先に進めるしでちっとも楽しくなかった。でも、魔法ができるってこんなに楽しい事だと思わなかった。

 

授業の後も私は呪文の練習をしていた。それまで基本中の基本しか使えなかったのに。

 

「予習でスマイルに色々魔法を教わろうかな」

 

「僕で良ければ喜んで教えるよ」

 

休み時間が終わると薬学の授業に入った。魔法や体を使わない授業は全て得意だ。私は教科書を読んでるフリをしながら、時々飛んでくる先生からの質問にも正確に答えた。ただ教科書の通りに応えるだけでなく、質問事項について1歩踏み込んだ所まで答える。

 

これはいつもの通りなのでクラスメイトは驚かない。スマイルは隣で「おお~」と感心していた。でもやっぱり座学は退屈だ。私はとっくに教科書を全て読破している。スマイルは時々分からない所を私に質問したりしていた。魔法の時とは立場が逆転していて少しだけ得意になった。

 

やがてお昼になった。皆学食の方へ向かう。私が机に突っ伏しているのを見てスマイルが尋ねる。

 

「食べに行かないの?」

 

「お金はもらってるんだけどね。でも学食に行くの嫌なんだ。あそこ上中下のクラス関係なくいるから、嫌な先輩に遭遇する確率が高い」

 

「でもお腹減るでしょ」

 

「あいつらに会う事を考えると空腹なんて大した問題じゃないよ」

 

そうして昼をやり過ごそうと考えていると教室の窓から声がした。

 

「おーい、イジー。学食行こうぜ」

 

「げっ…」

 

そこには私が今会いたくない先輩、バズがいた。タードも一緒だ。これまでわざわざ教室に来ることはなかったのに、私が前学期で食堂に行かない事で露骨に避けていたのがバレたのかもしれない。よほど私をいじめたいらしい。行きたくないが断るとそれはそれで面倒ごとに…。私は諦めて立ち上がると食堂へ向かった。スマイルも一緒について来る。

 

「行きたくないんでしょ?行かなきゃいいのに」

 

「人付き合いはそうもいかないんだよ」

 

そうして私は嫌いな先輩2人と一緒に食堂へ向かった。食堂の長椅子に座ると彼らは「俺が奢る」と言って何か色んなものを注文している。スマイルは食堂のメニューと真剣な表情でにらめっこしていた。

 

バズ達には紹介していなかったし、私にずっと就て来る

 

「何でもいいけど誰この子」

 

バズがスマイルを指さして言った。これで何度目になるか分からない紹介をする。体を液状化させるとやはり驚いていた。タードは他にどんな姿に化けられるのかとか尋ねていたが、バズに背中を叩かれて黙った。

 

やがて料理が運ばれてくる。それはゲテモノ料理だった。こういうのを好んで食べる生徒や先生はいるが私は苦手だ。彼らは分かってて注文している。

 

「食べないのか?」

 

私は縮こまる。どうしようか考えていると隣にいたスマイルが皿を持ち上げて全て体内に流し込んだ。

 

「おいしー!」

 

先輩2人が驚いた。お互いに顔を見合わせるとスマイルの方を向いた。

 

「いや、俺達はイジーに食わせてやろうと思って…」

 

「イジーはそういうの苦手なんだって。僕なら美味しく食べられる。せっかくの料理なら、苦手な人より好きな人に食べてもらう方がいいよね」

 

2人共何も言えなくなってしまった。スマイルは目を輝かせて2人に質問する。

 

「他にお勧めとかある??」

 

「いや、ねえけど…」

 

バズはバツが悪そうに言うとそそくさと立ち上がってどこかへ行った。タードも私をチラ見しながら食堂を出て行った。後後から仕返しされそうで怖いものの、少し胸がすっきりした気がした。

 

私もメニューを開くと食べてみたかった物を選ぶ。スマイルにも好きな物を注文させた。後から聞くと味覚がないので何を食べても味はしないとの事だった。その事で羨ましがられた。味覚を体験できる魔法とかあったらな。とかそんな事を考えていた。

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