たるさん及び樽さんでございます。
ついに今回はファーストライブのお話となっております。
ライブ描写は自信がないのでカットしてあります。申し訳ありません。
楽しんでいただければ、幸いです。
それでは、どうぞごゆっくり。
「……」
そわそわ。
「…………」
そわそわ、そわそわ。
「………………」
そわそわそわ、そわそわそわ。
「だぁぁぁ!!穂乃果ッ!そわそわうるさーい!」
「ひあっ!?ごめんなさい……」
今日は朝から穂乃果がそわそわとうるさい。いや、声は発してないのだが、何かそわそわしていて、こうなんて言うか、うるさい。
「まぁ、葵。穂乃果がそわそわするのもしょうがないでしょう」
今は昼休み、この後に新入生歓迎会がある。それがあるということは、そうーーー。
「今日は私達のファーストライブなのですから」
そう、海未が言った通り、今日はμ'sのファーストライブなのだ。だから、穂乃果がそわそわするのは分かる。分かるのだが……。
「穂乃果ちゃん、朝からうずうずそわそわしてるんだもん。流石に私も気になっちゃうよ」
ことりもあはは、と苦笑いをする。てゆうか、そわそわしてるのは穂乃果だけではない。俺だって、内心ずっとそわそわしていた。
「でも、だからってそわそわし過ぎですよ?穂乃果」
「うぅ……分かってるよぉ。分かってるけど、私達のライブを見にお客さんが来るんだよ?なんか、そわそわとゆうか、うずうずしない?」
「それもそうですが……」
俺を含め、四人ともずっとそわそわしていたらしい。そりゃ、μ'sの記念すべきファーストライブだからね。そわそわしない方がどうかしてる。
「それにしても、ファーストライブかぁ……」
窓越しに空を見上げた穂乃果は何処か憂いを帯びた目をしていた。
「どうした?」
「ううん、いやね。こうして海未ちゃん、ことりちゃん、そして葵君とライブが出来るんだなぁ、って思って」
純粋な笑顔で三人を見据える穂乃果。その笑顔には、嬉しさと不安があった。実際のところ、穂乃果も不安で仕方がないのだろう。まだ始めたばかりのスクールアイドル"μ's"のファーストライブなのだから。不安になるのもわかる。
「それに、海未は最初凄く嫌がっていたよなぁ〜。とくに衣装に」
「と、当然でしょう!!だって、あんなにスカート丈が短いのですよ?せめて膝ぐらいは……」
あの、俺にとってはその制服のスカート丈も目のやり場に困っちゃうのですが。なんて事を言おうと思ったのだが、海未に叩かれそうなのでやめた。
「そういえば、ことり。ちゃんと衣装のスカート丈は膝したくらいには作ってあるんですよね?」
「え?……あはは」
「……ことり、言いましたよね?スカートの丈は膝したぐらいにって……!」
海未がすごい剣幕でことりに迫っている。正直、この状態の海未を目の当たりしたら俺は腕を片方折る覚悟だ。そのくらい、海未が怒ると凄く怖い。
「……もういいです。作ってしまったのなら、頑張って着てみます」
妥協したとゆう感じにため息をついた海未。その要領の良さは流石弓道部部員である。……人見知りなところだけ取っ払ってくれたらなぁ……。あのポエム、(色んな意味で)凄かったなぁ……。
「……葵?いま凄く失礼なこと考えませんでした?」
「ナンノコトデショウカ」
鋭い……!
何で女性ってこんなに鋭いんだろう?それとも、俺が単に分かりやすいだけなのかなぁ……?
「あ、そうだ!私、みんなでする掛け声考えたんだ!」
唐突に穂乃果が切り出した。みんなでする掛け声?掛け声ってのは「○○、ファイトォ!!オー!」みたいなやつだろうか。
「こうして、みんなでチョキをつくって……くっ付けるの!」
穂乃果、海未、ことり、そして俺はそれぞれチョキをつくり、それを並行になるようにくっ付けた。そして、四人で小さな星ができた。
「そしてね、こう合図するの!」
穂乃果はたっぷりと息をすい、吐き出すように叫んだ。
「μ's!ミュージックスタート!」
そして、いっせいに腕をあげる。なるほど、これは結構良いんじゃないか?μ'sの"μ"とミュージックの"ミュー"をかけているのだろう。掛け声としても、随分立派である。
「いいねぇ♪」
「えぇ、気持ちの持ち用は大事です」
「俺はこうゆうの、大好きだな」
俺を含めた三人がその掛け声を賛美する。
「よし!じゃあもう一回!」
そう言って、四人はさっきとまた同じ小さな星をつくる。
「せーの!」
「「「「μ's!ミュージックスタート!!」」」」
四人でいっせいに掲げた腕。その時の気分はとても清々しく、幸せに満ち溢れていた。それは俺だけではなく、穂乃果、海未、ことりも同様に笑顔を見せていた。
「えへへ、何だかいいね、こうゆうの」
ちょっと恥ずかしかったのか、穂乃果が少し顔を赤らめていた。
丁度、五時限目開始のチャイムがなった。二年生、三年生、一年生の順番で講堂へ入場するため、俺らはかなり早く移動することになる。俺はテスト生なので、整列の順番的に(背は高くないが)一番後ろになる。実はこれがちょっと嬉しかったりする。いつも、前だったので後ろというのは少し嬉しかった。
前のクラスが移動を始め、俺らのクラスもそれの後ろについていく。
新入生歓迎会が終わって、そこから部活動見学会がある。その時間は三時。そして四時からμ'sのライブが始まるのだ。何人集まるかは分からない。けど、穂乃果達には今までやってきた事を精一杯出し切ってほしい。
俺はそう思いながら、教室を後にした。
「葵君、そこのスピーカーをここに置いて!」
「はい!」
新入生歓迎会が終わった今、講堂はμ'sのライブの準備で慌ただしくなっている。なんと、ライブの準備にうちのクラスの生徒も手伝いにきてくれたのだ。何ともありがたい。
そして、穂乃果達三人は外でビラ配りをしている。何もしないで練習しているのは申し訳ないから何かやらせて!!……という訳らしい。メインは穂乃果達なのだから、練習していたほうが良いと思ったのだが、そういう優しさも大事かと思い、ビラ配り頼んだのである。
「……っと、ふう。これで機材は大丈夫かなぁ」
機材関係は全て置き終った。後は穂乃果達のダンス、歌の最終確認だけだ。
「すみません、穂乃果達を呼んで最終確認をしたいので、機器の調整は任せても大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫!音響や照明は任せて!」
「ありがとうございます!」
お礼を告げ、俺は小走りで講堂を出て行った。
講堂の前でビラを配っている穂乃果達に声をかける。
「穂乃果、海未、ことり!戻って!最終確認するよ!」
「了解っ!今戻るね!」
三人はビラ配りをやめ、講堂の方に戻ってきた。
「よし、時間押してるから講堂のステージを使って最終確認いくよ!」
「「「はい!!」」」
俺と穂乃果達は急いでステージに上がる。そこで照明のテストもかねた短いリハーサルをする。
「はい、いくよ!」
俺の合図と手拍子とともにスポットライトがバンッ、と穂乃果達を照らした。
人が少ない講堂に俺の手拍子と、ダンスのステップと歌声が響いた。
本番はもうすぐだ……!
「はぁ〜……本番だぁ……」
よほど緊張している穂乃果。それもそのはず、閉じたカーテンの向こうにはたくさんのお客さんがいるはずだ。
「……そうですね、緊張します」
「大丈夫だよ、きっと三人なら!」
海未、ことりも緊張している。もちろん三人だけでなく、俺も緊張している。マネージャーという裏方の存在だが、μ'sの一員だ。緊張しないわけがない。
「音響、照明、大丈夫ですか?」
「えぇ、ばっちり!」
そんなやり取りをしているだけでも、俺は緊張で動機が激しくなる。
「穂乃果達は大丈夫かな……」
穂乃果達の方を向いてみると、三人は笑っていた。状況をみる限り、三人のうちの誰かが場を和ませてくれたらしい。それぞれ、アイドルらしいフリルやリボンのついた衣装に身を包んでいる。
……そろそろ、カーテンが開く時間だ。
アイドルらしい可愛い服に身を包んだ三人の顔は、とても凛々しく、それでいて勇ましかった。最初はあんなに服を気にしていた海未でさえ、キリッとしている。良かった、これならライブに影響はないな。
『只今より、μ'sによるライブを公演いたします』
放送部員のアナウンスが入る。それと同時にカーテンの開く音が鳴る。
「みんな、頑張ろう!」
「えぇ!」
「うん!」
三人の決意は固まった。
そして、そのカーテンが開く。
照明により、一瞬だけ眩しくなる。その先にはたくさんのお客さんがーーーー。
「……え?」
ーーーたくさんのお客さんが、いると思っていた。
今、穂乃果達の目の前に広がるのは……。
「ごめん……私達も頑張ったんだけど……」
これまでに手伝ってくれた生徒達が申し訳なさそうに謝る。
それも、そうだ。
だって……。
「観客が……いない……?」
そう、お客さんがいないのだ。見えるのは講堂の青い椅子ばかり。静まりかえった講堂には、ただ空虚がそこにあった。
「そう、だよね……そうだよね……」
ステージの中央に立っている穂乃果がふるふると震えだした。良く見たら、目に涙をためている。海未とことりも同じく、悲しげな表情をしている。
「現実は、そんなに甘くないっ!!」
穂乃果から大粒の涙が零れた。気丈に振舞おうとはしているが、涙は隠しきれないようだった。
現実……それはとても残酷である。
分かっている、現実は辛い。
知っている、物事は順風満帆にはいかない。
だけど、わからない。何故、努力は報われない。
「穂乃果……」
「穂乃果ちゃん……」
海未、ことりも目に涙を溜め込んでいる。今にも泣きそうな表情だった。
泣いたいのは、俺も同じだ。
俺は制服の袖で目を覆う。
「くそ!!……また、俺のせいで……俺のせいで……!」
気がつけば、俺は講堂のカベを思い切り殴っていた。拳がじんわりと痛くなったが、気づきもしなかった。もちろん、拳から血が出ていることについても。
「あーあ……スクールアイドル……いい考えだと思ったのになぁ……」
穂乃果からは涙がポロポロと落ちている。泣かないと顔を笑顔にしているが、歪んでいる。海未、ことりも涙を零し始めた。やはり、みんなとても悔しいのだ。あんなに頑張ったのに、あれほど練習したのに……それが報われなかったんだ。
バタン!!
「え……?」
その時、扉が開いて閉じる音がした。誰かが、講堂に入ってきたらしい。
「はぁ、はぁ……あれ?ライブは……?」
「もう、かよちんどうしたの?」
そこに入ってきたのは、一年生。茶髪の髪に黒縁の眼鏡。
オレンジがかった茶髪のショートヘアの子……間違いない。
花陽と凛だ。
それを見ていた穂乃果が涙を拭いて、口を開いた。
「やろう!海未ちゃん、ことりちゃん!」
穂乃果はそれぞれの方を向いた。その顔は、決意に満ち溢れていた。
穂乃果に向かい二人が頷く。そして最後に、穂乃果は俺の方を向いた。
涙を拭いて、大きく頷く。
「歌おう、全力で!そのために頑張ってきたんだから!」
その言葉を合図にステージが暗くなった。そして、スポットライトが穂乃果、海未、ことりを照らした。
「「「聞いてください!"START:DASH!!"」」」
今、始まる。
夢が広がる。
希望を与える。
ーーーそんな、"
「はぁ、はぁ……」
ライブを終えた三人は、すっかり息が上がっていた。しかし、疲れた様子ない。見せるのは清々しいほどの笑顔だった。
花陽、凛ともに拍手をしている。それを見ただけで、俺はだらしなく泣きそうになる。嬉しいのだ。どう言葉を紡いで良いのか分からないが、とにかく嬉しいのだ!
「……それで、どうするつもり?」
冷たい声がライブ後の講堂に響いた。声の主は……。
「絢瀬、先輩……」
生徒会長、絢瀬 絵里先輩。
絢瀬先輩は、確かμ'sを毛嫌いしていたはずだ。
そんな両者の視線がぶつかりあった。
「続けます!!」
勢いよく口を開いたのは穂乃果の方だった。
「何故?これ以上続けても意味があるとは思えないけど」
「やりたいからです!」
穂乃果は、そう即答する。その目は真っ直ぐに絢瀬先輩を見据えていた。
「私、もっともっと歌いたい。それは海未ちゃんも、ことりちゃんも同じだと思っています。このまま誰も見向きも応援もしてくれないかもしれない、けど、届けたいんです!私達がここにいる思いを!」
真っ直ぐに自分の決意を語る。それを聞いてたじろいたのか絢瀬先輩は無言で講堂を出て行った。
「良かったのですか?」
「うん!後悔はしてない!」
「ふふ、穂乃果ちゃんらしいね♪」
大失敗と終わった初ライブだが、それは彼女達にとっては"大成功"となった。そんな彼女達にかける一言は一つだけだ。
「……三人とも、お疲れ様」
そう、ステージに出てきて俺が言うと穂乃果がこっちに駆け寄ってきた。
「うん、ありがとう!!これも海未ちゃん、ことりちゃん……そして葵君のおかげだよっ!」
瞬間、胸に暖かい感触が伝わってきた。
そう、そうだ。
"これから"だ。
ーーーこれがμ'sの"START:DASH!!"だ!!
「あー……えと、穂乃果?」
「ん?なに?」
「……そろそろ、離れてくれると助かる」
「へ?……あ!?ご、ごめん!」
「い、いや、いいんだよ……」
「……何か、穂乃果ちゃんずるい」
「え?」
「葵君!私にも抱かせてー!」
「な!?ちょっ!?こ、ことり!?」
「……破廉恥な」
「海未!?」
今回はかなり頑張りました!!気付いたら五千文字超えていましたwww
実はこの小説、私一人でやっている訳ではないのです。友達のSさんに協力してもらっています。
Sさん!!ありがとう!
次作からはほのぼのまったりした日常を書きたいと思います。もちろん、そのなかでまきちゃんやかよちんや凛ちゃん、にこにーやえりちや希がμ'sに加入する話もやっていきます。
次作も明日か明後日に投稿予定です。
それでは、その時まで。
さようなら。