ラブライブ! 〜IF STORY〜   作:たるさん

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ども、たるさんです。

さてそろそろまえがきで使うネタがなくなってきた今この頃。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
たるさん、いろんなカードゲームに手を出してしまって、出費が激しいです(泣)

さて、今回はやっと歌詞完成の兆しが見えてくる回です。

では、ごゆっくり。


五十一話 Wander Zone

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませー! ご主人様、お嬢様!」

 

「2番テーブルさんに『メイド手作りオムライス』二人前はいりましたぁー!!」

 

「ではでは、ミニゲームを始めます♪ 最初はグー、じゃんけん……」

 

 

ーーいやぁ、大盛況大盛況。

どこから情報が漏れたのか、もしくはその日の内に広がった口コミなのか、よくはわからないが……俺たちがバイトしているメイド喫茶"らぶどっきゅん"は連日よりも大盛況を催していた。

おかげで厨房が間に合わず、料理出来る俺と……本当にメイド服での接待が嫌な海未と朱美が臨時で厨房に入った。主に俺が料理、海未が洗い物を担当している。

 

「ことりちゃ……じゃなかった。ミナリンスキーちゃぁん! オムライス出来たよー!」

 

俺は未だサキちゃんスイッチの入ったハイテンションキャラのまま、料理をしていた。普通なら素の俺でやるつもりだったのだが……ことりに「料理する時だけ性格が変わるのはヘンだよね?」って言われて(てか脅迫されて)このまま料理をしている、と言う訳である。

正直なところ、落ち着いて料理ができなくて困るよ……。

 

「はいはーい♪ えっと、サキちゃん。追加でオムライスと……特別会員さんからの"ユリキス"ご指名来たよ〜♪」

 

「……後者の方、それほんと?」

 

「ほんとだよ〜♪」

 

うっわ……マジで注文はいっちゃったよ……"ユリキス"……。

ユリキスとは……まぁ大体は言葉の通りなのだが。実はこれ、お客様から、しかも毎月何十万円と足繁く通ってくださるお客様しか頼めない秘密のご奉仕メニューで……要はメイド二人によるキスシーンが見れるご奉仕メニューなのだ。金額は一回キスシーンを見るだけで五万円とられるぼったくりメニュー。バイトしたてのメイドは出来なくて、長年いた年季の入ったエリートメイドさんしか出来ないメニューなのだが……今回は穂乃果達が入る代わりに何人かのメイドさんが休んでいるので……必然的に長くやってることりと俺がご指名されたと言う事だろう。

 

「……お断りは、出来ないよねぇ……」

 

「……ことりは、サキちゃんとキス……シたいけどな〜♪」

 

ーーキス、か。

先程……ほんの数時間前に朱美にされたディープな、貪られるようなキスを思い出してしまい、思わず自分の唇を指でなぞった。

そういえば、料理していて気づかなかったけど……今の朱美、なんだか少しモジモジしてない? なんかいつもより内股になっている気が……これってもしかして……?

い、いやいや……朱美に限ってそんな事は、ない、はず……多分。

 

「……! サキちゃん危ない!!」

 

「えっ?」

 

ジュッ!!

 

「あっつ!?」

 

……惚けていたのが原因で、熱々に熱したフライパンに手を付けてしまった。

付けてしまった右手の手の甲は、ゴルフボールくらいに赤く、火傷をつくってしまっていた。

 

「あっつうぅ〜……悪い海未、ボウルに氷水いれてくれ」

 

「え? ……あ! 火傷してるじゃないですか!? 待っててください、すぐに準備します!」

 

俺の火傷に気づいてくれた海未は、慌ただしくボウルを取り出して準備をはじめてくれた。

 

「……これじゃ、ユリキスは無理そうだね」

 

ことりがやたら悲しそうな表情で俺を見つめてきた。……そんな顔されたらやらないなんて言えないじゃないかよ。

 

「いや、やるよ。大丈夫だよ、このくらいの火傷なら……」

 

「駄目です葵! ほら更衣室に行きますよ!」

 

「ちょっ!? わかった! 海未わかったから! あ、朱美ー! 俺の代わりに料理頼むー!」

 

海未に引きずられながらも、俺は朱美にあと厨房の事はまかせて……どこか悲しそうな朱美とことりを気にしつつも、火傷の処置を行うため更衣室へと再び向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っい!? 海未もうちょい優しくだな〜……」

 

「いけません。火傷には最適な応急処置法があるのです。ほら、じっとしてください」

 

「う〜……いたっ!? しみるっ! その緑色の塗り薬しみるぅ!」

 

「男の子なんですから我慢してきださい。……よし、終わりましたよ」

 

仕上げと言わんばかりにきっちりと包帯を巻いてくれるあたり、海未は真面目なんだな〜、と思う。治療は少し雑だが。

なんか良いお嫁さんになりそう。小学校の頃の海未の夢って多分、お嫁さんだったんだと直感した。

 

「ふぅ……ありがとな、海未」

 

「いえいえ、園田家秘伝の薬を持ち歩いていた甲斐がありました」

 

海未がボトルに入った緑色の薬を見せる。なんでも園田家が代々昔から稽古事の怪我や病気時に使ってきた万能薬で、塗れば擦り傷、打撲、打ち身、火傷といった外面的な怪我から、肩こり、腰痛といった内面的な怪我にまで効き、水で薄めて飲めば風邪、腹痛、胸焼け、二日酔いにも効き目がある。

……そしてこれは精力剤としても効果があるらしく、海未が顔を赤らめながら、遠回りに説明してくれた。精力剤としての使い方は、そのまま塗るらしい。……どこに、とは言わない。

 

「なんでその薬を持ち歩いているの? いや、理由は怪我した時のためだってのはわかるけど……」

 

なんとなく薬を持ち歩いている理由について聞きたくなり、思い切って聞いてみた。……でもさ、この質問って絆創膏もってるやつに「なんで絆創膏もってんのー?」って聞くようなもんだよな……。

 

「そうですね……確かに葵の言う怪我した時のためだと言うのもあります。……実は、この薬は代々園田家の"女性"が製法や使用法を受け継いできたんです」

 

へぇ。女性だけが使い方や作り方を知っている薬か……。それはそれで気になる話だ。

 

「なんで女性だけなんだ?」

 

「……えっとですね。園田家は何故か……昔から女房、つまり女性が強い権限を持っている家柄なんです。それで、その……」

 

海未は何故か顔を赤らめてモジモジしはじめた。なんだろう、そんな言いづらい理由があるのかな?

 

「…………昔の園田家の女性は、気に入った男性がいると……えと……その薬を媚薬代わりにつかって夜伽をしたそうです……私のお母様もそれをして、今のお父様を手にしたらしいです……」

 

「Oh……」

 

き、聞かなきゃよかった……。

なんだよ、夜伽の為に使う薬とか……なんかあとあと聞いたら疲労回復の効果なんかもあるって海未は言うし……多分この園田印の万能薬がことりや、今の朱美なんかに使われたら……!?

 

か、考えるだけで恐ろしい……!

絶対エンドレス・ザ・ヨトギされちゃうよぉ! チュンチュンナイトフィーバーきちゃうよぉぉぉ!!

 

……なんだよチュンチュンナイトフィーバーって。エンドレス・ザ・ヨトギって。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

ーー二人の間に気まずい沈黙が広がる。

そりゃそうだよな。夜伽の話……えっちな話をした後だもんな、気まずくなるのは当然だ。

 

「あっ、あのさ海未!」

 

「ひ、ひゃい!? なんでしょう!」

 

変な空気を断ち切って話しかけたため、両者変な請け合いをしてしまった。海未は珍しく声が上ずっていた。

 

「あのさっ、海未が歌詞を作る時、どんな事考えてるの?」

 

なんかしどろもどろになりながらも、聞きたい事を聞けた。

……正直、まだ歌詞は出来ていない。どんなテーマの歌にしようかも決まっていないし……。俺もことりも、まだ歌詞を完成させていないのだ。

そんな中で、初期μ'sから歌詞を担当している海未に助言を貰おうとした。

 

「そうですね……私が歌詞を考える時は……よくμ'sの事を考えてますね」

 

「μ'sの事?」

 

どこか楽しむような綺麗な笑顔で、聖母のような包み込む優しい笑顔で、海未はそう答えた。

 

「そうです。……穂乃果とことりとμ'sを結成した時や、花陽達一年生が加入してくれたこと、先輩方の加入にこのメイド喫茶の事……もちもん、葵がマネージャーになってくれたことも、その全てを思いだしながら歌詞を作っています」

 

ーー振り返ってみれば、μ'sにはいろいろあった。

惨敗から始まる『START:DASH!!』。

花陽、凛、真姫、にこさんが新しく加入して、毎日たのしく『これからのsomeday』。

絵里さんとの衝突もあったけど、希さんも加わって完成したμ'sの女神達。彼女達が歌い紡ぐ『僕らのLIVE 君のLIFE』。

……思えば、その曲ができる間にいろんな事件や楽しい事があった。衝突しあい、ときには挫折しかけたけど……それでも歩みを止めない彼女達。そんな彼女達に、俺は何回見惚れた事か。

 

「楽しい気持ち、悲しい気持ち、嬉しい気持ち……様々な感情が混ざり合って、調和して……性格も個性も凹凸ばかりの私達が一つの形になっていく……私は、未だにそれが不思議でならないんですよ」

 

ーー違う形同士はかみ合い、形をなす。でも、その中にはかみ合わない形もあるはずだ。

しかし、μ'sは……その九つのカケラは、非常に上手くかみ合ったのだ。がっちりと、しかっりと。

 

まぁ確かにそう考えると、不思議に思える。

 

あんだけ灰汁強いメンバー達が一つにまとまって魅力を放っているんだ。……確かに不思議に思えてきた。

 

 

「それにしても……秋葉原は不思議な所ですね。この歳になってなんなのですが、電気街と言うのは何歳になっても不思議な空間のように思えますね……」

 

ボソッ、と海未が呟いた。

不思議……アキバが不思議、ねぇ……。確かに不思議っぽい町ではあるよなぁ。アキバに吸血鬼が居ますよー、なんて言われても信じるかもしれない。

……『不思議な』っ確か英語でwanderだっけか。それに、空間……wanderな空間……。

 

 

 

「不思議な空間『Wander Zone』……これだっ!」

 

 

 

出来た! かなり無理やりだけど、今回の歌詞のテーマであり、曲名が!

 

「と、突然どうしたんですか?」

 

突然の大声に目を丸くして驚く海未。

不思議な空間『Wander Zone』。楽しいやら嬉しいやら悲しいやら辛いやらを諸々ごちゃまぜにして、結局は楽しい場所になっちゃう不思議な場所。アキバとはそんな場所である。

最初からこの気持ちを素直を歌にすればよかったんだ。俺は何を難しく考えていたんだろう。

 

「海未っ! ありがと! 海未の助言のおかげで書きたい歌詞が思いついたよ!」

 

思わず海未の手をとって、お礼を言う。その行動に最初は困惑したのだが、後に優しく海未は微笑んでくれた。

 

「それは幸いです。でも、難しそうな時は私を、穂乃果やメンバーを頼って下さい。それがメンバーなんですから」

 

優しくニコッ、と微笑む海未。俺はその微笑みが本当に綺麗で、美しくて……何故か昔見た母さんの笑みと重なってしまっていた。

 

 

だから、見惚れた。

 

 

「……葵?」

 

「あ、いや……ごめん」

 

掴んでいた手を離し、顔を逸らす。

何だか、言い表せない気持ちになってしまった。……この心臓の鼓動が速くなっているのは、きっと更衣室にこもる暑さのせいだ。そう、きっと……。

 

「じ、じゃあ俺は厨房に戻るから!」

 

「はい。私はちょっとここに残ります」

 

海未は長い髪を少し揺らして、そう言った。本当に、本当に優しい笑顔……優し過ぎで、溺れてしまいそうな感覚を感じたのは、言わないでおこう。

 

「分かった! また後で!」

 

「ええ、また後で」

 

そうして、俺は更衣室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あんな表情されたら、好きになるじゃないですか、葵……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーースカートの裾をキュッと、握る音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

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