復活とか言っときながら長らく投稿しなくてすみませんでした。
引越しの準備とか手続きとか、書類書いてました。
……スランプにもなっています。ネタが思いつかなかったんや……。
では、本編へどうぞ。
あとがきはなしです。すみません。
人がいない、暗い路地。
細く入り組んだ都会の迷路を、駆け抜ける。
「はぁ、はぁっ……! どこ行った! 朱美のやつ……っわ!?」
青いゴミ箱を蹴飛ばし黒いゴミ袋を吹っ飛ばす。それに足がつっかえ、盛大に転んだ。普段なら足が引っかかるようなヘマはしないのだが、この状況だけに転んでしまう。もうこれで三度目だ。
「いつつ……くそっ!」
倒れたゴミ箱を直しつつ、先を急ぐ。
……てかさ、何で
……って、今はこんなことでイライラしてる場合じゃない。
早いとこ、路地に走っていった朱美を見つけなきゃ。
「朱美ッ……どこだよ……!?」
そう呟きながら、また暗い路地を駈けた。
※穂乃果目線です。
「……穂乃果? どうしたのですか?」
「ーーぅえ?」
あわわ……変な声でちゃった。
いや、まぁ……そうなるのも無理はないのかな? 私じゃよくわからないよ。
「別に大丈夫だよ海未ちゃん! ライブがんばろっ!」
無理矢理テンションを上げるように言ってはみたものの……やっぱり何かモヤァッ、てする。
「……無理、してますね」
「うぐっ……」
何かあったのですか? と海未ちゃんは私の顔を心底心配そうに見つめてきた。それは、私が幾度となく見てきたであろう、厳しくも優しい、幼馴染の見知った顔。
ーーでも、何故だか。
「……ほんとに何でもないよ海未ちゃん。さ、ライブがんばろー! おー!」
……何故だか、言いたくなかった。別に海未ちゃんが嫌いだとかそんな理由じゃない。じゃないけど……。
私の本能が何かが『言ってはいけない』と叫んでいる気がした。
……何か、引っかかってる。
モヤァッ、とした気持ちも、葵くんがいないという事にも……朱美ちゃんが泣いていた事にも……そんな事を『妙』ととらえている私がいる。この『妙』な気持ちは……なんなんだろう。
「そうですか……無理はしないでくださいね、穂乃果」
「うんっ!」
私はライブ会場の確認をしてきます、と心配そうな顔つきのまま海未ちゃんはお店の外へと出て行った。
「……はぁ」
海未ちゃんが行ったのを見送り、私は深いため息をつく。ため息をついちゃうと幸せが逃げるなんて言われているけど、確かにそうかもしれない。だってするたびになんか、気持ちが深く沈んでいく感じがする。
……早く帰ってこないかな、葵くん。
そうしたら、この沈んだ気持ちも浮上するかもしれない。なんの根拠もないけど……そう思えちゃう。
葵くんの声を聞いただけで……いや、葵くんがいるだけでμ'sのみんなのやる気が上がっている気がする。もちろん、わたしも葵くんのいると断然やる気が入る。
もうそれくらい、葵くんはμ'sに不可欠な存在になっているんだ。
「早く帰ってこーい……」
なるべくおちゃらけた感じで呟いてみたんだけど……全然、力入んないや。
「あ、ライブいかなきゃ……」
……ほんと、早く帰ってきてね。
※視点が葵に戻ります。
ーーあれから10分くらい走って探した。
「……ッチ! どこだよ朱美のやつ!」
割とマジで舌打ちを鳴らした。
だって全然居ないんだもん! 朱美が!
これだけ探していないって事は……もう遠くに行ったのか? 路地から通じている大通りからはμ'sのライブであろう曲が微かに聞こえてくる……かなり遠くに来たようだ。早いとこ朱美を連れて帰んなきゃな。
「あーもう……!?」
……今、なんか声が?
「……て……さい……!」
「せ……! お……ろ!」
この声、朱美!? しかも男の声も聞こえたな!?
「まさか……! こっちか!」
最悪の事態になる前に……!
ーー俺は、声のする方へと急いで向かった。
「やめてください!」
「うっせぇな! おとなしくしろ!」
「兄貴、どうしますか? この女」
「そうだなァ……」
「へへ、こいつ。胸は小さいですが、なかなかの上物ですよ」
「しかもきわどいメイド服を着てますぜ? 誘っているんじゃないですか?」
……案の定、こうなってたか。
朱美は穴の空いたコンクリ壁に、両手を縛られ動けなくなっていた。その周りに、見た感じ凄く小物感満載な輩5人。おそらく不意でもついかれてこうなってしまったんだろう。
「離して! これを解いて!」
朱美は必死に抵抗をしているが、強く結ばれた紐は切れそうにもない。
……しかし、あの朱美がこんな強く抵抗するなんて。普通なら、冷静に対処しているはずなんだけど……。
「黙れっての! 聞こえたらどうすんだ!」
「大丈夫ですよ兄貴。ここ路地のまた路地っすよ? こんなとこの声なんて聞こえるはずーー」
……さて、暴れるか。
「聞こえているんですね、それがっ」
「なん……がぁっ!?」
挨拶代わりに、一番近くにいたやつを蹴りで吹っ飛ばした。顎に一撃、見事に失神。
「な、なんだお前!?」
「その子の仕事仲間ですけど?」
……へ? 上段蹴りでスカートからパンツが見えたって? なんのご冗談を。俺は下にジャージ履いてるんですよ? 勝手なこと言ったらダメですよ?
……こほん。少しキャラぶれしたな。
「てめぇよくも……がはっ!?」
「はい二人目」
次はミドルキック、脇腹にクリーンヒット。サッカーボールみたいに吹っ飛ぶなこいつ。お前前世ボールだな。
「わたくしの友達が失礼をしました」
「そ、そうだ! こいつ、兄貴に肩にぶつか……ヒィ!?」
「うっせぇな……黙れよ小物」
顔すれすれに上段蹴りを放つ。振り上げられた足は音をたてて空を切った。それをくらった小物は、その場にへたれこむ。小物の頬に、刃物みたいな切り傷ができていた。
「な、なな……!」
なんだよ、頭蹴っ飛ばさないだけでもよかったと思えよ。あと、そんな顔すんなよ。頭、蹴りたくなってくる。
「……あんたか? 兄貴ってのは?」
先ほどみたいな仕事の声とはうってかわり、低い声でそいつを睨んだ。
「ひっ……!?」
「朱美に……なにした?」
一歩、一歩とそいつに近づく。なるべく威圧感たっぷりに。威嚇するように。
「お、おおおおぼえてろぉっ!!」
悪役の去り際みたいにセリフを吐いて、そいつは逃げ出した。他のやつも、うごけない奴を背負ってそいつの後を追った。
「ふう……さて」
俺は縛られている朱美のもとへ向かう。朱美はホッとしたのか、微動もしなかった。
……それだけ、怖い思いをしたんだな。悪かった、朱美。
「えーと、ハサミ……あった」
メイド服のポケットからハサミを取り出し、紐を切る。これで、大丈夫。
「と……ごめんな朱美。遅くなっ!?」
「怖かった……怖かったよ葵ぃ……」
解けるや否や、抱きついてきた。しかも泣いてる。
「ごめん……助けんの、遅くて」
「ううん……助けてくれるって……”私”、信じてたよ」
泣いている朱美の背中を優しく撫でる。朱美かこんな怖がるなんて……。
ん? まて。朱美、今自分のこと”私”って言わなかったか?
「……あ、ごめん。急に抱きついて。もう、”ボク”は大丈夫」
そう言って、朱美は離れた。抱きつかれていた温もりが、不意に寒くなる。
「嬉しかったよ、助けてくれて」
朱美は、普段通りの笑顔で振り向いた。目が真っ赤になっている以外、なんら変わりようのない笑顔で。
「戻ろうか。ライブしてるみたいだし」
「あ、ああ……」
俺は、路地先から入る光に向かって行く朱美の後ろ姿を……複雑な気持ちで見つめていた。
「……ありがとね、もう”私”は……」
朱美が呟いたその一言は、ライブ終わりの歓声にかき消され……聞こえる事はなかった。
※12/26 21:53 作品タイトルを変更いたしました。