今日は穂乃果ちゃんの誕生日!……なんですが、この話はにこにーの話になっております。
楽しんでいただけたら、幸いです。
それでは、ごゆっくり。
"人"という漢字は、人間と人間が互いに支え合っているさまからきた漢字である。
どこかの有名な先生がそう言っていたのを思い出した。確かに、人は支え合うものかもしれない。しかし、片方だけの人間が大きければどうだろ。そう、支えるバランスが偏る。
人は一人では自分を支えられない。逆に自分が大き過ぎても、他人を支えられない。
……そんな風に、人間は出来ている。
春風が花の散った葉桜を撫でる。それは暖かくて、どこか淋しそうにも見えた。
「穂乃果ッ!すこし遅れてる!ことり!もう限界?海未!他人ばかりじゃなくて自分を気にして!」
屋上に俺の声が響きわたる。その近くでは曲に合わせて踊るスクールアイドル"μ's"のメンバー、穂乃果、ことり、海未がマネージャーこと、俺"白崎 葵"の指示のもと、ダンスを練習していた。それも、今度の新入生歓迎会のライブのためだ。
「はぁ……はぁ……葵君、キツすぎるよぉ……」
曲が終わると同時に床にへなへなと座り込んでしまった。そうとうきつい練習を指示してしまったらしく、海未とことりも息が上がってしまっている。
……女の子が汗だくで、息が上がっている姿ってなんかエロい感じがする……って、なんてこと考えているんだ俺は。
「あ……ご、ごめん。ちょっと熱くなっちゃった」
ヒップホップダンスをしていたせいか、ダンスの事になると熱くなってしまう。
……まだ諦めきれてないようだな、ダンスのこと。
「良いんですよ。でも、葵があんなにダンスが上手いなんて思ってもいませんでした」
汗をタオルで拭いながら意外そうにこっちを見た。……その姿に、俺は一瞬見蕩れてしまった。汗が光に反射して、それを腰まである長い青のロングヘアがより綺麗な海未をよりもっと綺麗にしていた。
「……?葵、私の顔に何かついていますか?」
「へっ!?い、いや、何でもない!!」
俺は赤くなった顔を見られないようそっぽを向いた。ことりに何故か、何かを悟られたように笑われてしまった。
「ふふっ、葵君可愛い♪」
「なっ!?か、からかうなよっ!」
「はいはい♪ごめんね〜?葵"ちゃん"♪」
ことり、絶対からかってんな……ただでさえちゃん付けで呼ばれんのはかなり抵抗あるのに。俺の傷をえぐってさらに塩を塗るつもりかよ。
「あ、悪い。俺、今日は早く帰らなきゃ」
今日は夕方からスーパーのタイムセールがある。早く帰らないと、セールが終わってしまう。セールが終わると途端に野菜やら肉やら魚やらの値段が高くなってしまう。それだけは避けたいのだ。
「うん、分かった!じゃあね!葵ちゃ……」
「穂乃果」
「……葵君」
「おう、またな」
穂乃果はなにか不穏な事を言いそうになったみたいだが、そんなの知るか。俺は男の子だ。
たじろぐ穂乃果とそれを笑う海未とことりを背にして、屋上を後にした。
「どうして、こうなった……」
辺りにには一面のアイドルグッズ。ポスター、他云々。その中でも、昼に花陽から聞いたUTX学院のスクールアイドル"A-RISE"の三人が載った大きなポスターがその中でも一段と目立つ。
「あんたはそもそもアイドルを分かっていないのよ!!いい!アイドルってのはねーーー」
俺は目の前の女の子、黒髪をツインテールにした背の低い先輩"矢澤 にこ"先輩からアイドルとは何かを教え込まれていた。
「あぁ……たいむせーる……」
俺は、夕方になった紅い空を涙と共に仰いだ。
事のいきさつはこうである。
「ここで……あってるよな……?」
この音ノ木坂学園には"アイドル研究部"という部活があるらしい。μ'sのマネージャーにもなったんだし、スクールアイドルを詳しく調べなきゃなぁ、と思っていた。だから今日はその部室へ行って、アイドルについて知ろう!とおもったのだ。もちろん、タイムセールに支障のない範囲で。
生徒会の東條先輩に聞いてアイドル研究部の部室の場所を教えてもらったのだが、東條先輩が帰り際にこんな事を言っていた。
『"今"は部員が一人きりなんよ』
今は……?とゆうことは昔は部員はいたのだろうか?音ノ木坂の部活は部員が五人以上いないと部活申請が出来ない。その一人きりの部員も穂乃果たちと同じく、スクールアイドルをやっていたのだろうか。
などと考えるうちにアイドル研究部の部室へ着いた。扉には堂々とアイドル研究、と掛札がかけてある。
「よし……」
俺はノックをしようとした。
そのとき、
「なによあんた。うちの部に何か用?」
「のわぁ!?」
後ろから突然、声が聞こえた。振り返ると背の低いツインテールの女の子がいた。
「あ、えっと……すみません。俺は転校してきた白崎 葵です。二年生です」
「……へぇ、あんたが。有名になってるわよ。"可愛過ぎな男子高校生が転校してきた"ってね」
流石、生徒数がすくない学校!噂が伝わるのが田舎みたいに早い!俺がどんどん悲しくなる!居場所なくなるよぉ!!
「あたしは"矢澤 にこ"。三年生!よ」
あ、三年生だったんだ。てっきり一年生かと……。
「さ ん ね ん せ いよ!!」
「何も言ってないですってば!」
何でここの生徒達も俺の心の声が聞こえるんだよ。何?エスパー養成してるの?ここ。
「……で?何か用?」
さっきの流れで完全に不機嫌になってしまった矢澤先輩は部室の鍵を開けながら聞いてきた。
「いや、あの……アイドルについて聞きたいなぁ〜、と思って……」
ガシッ
え?ガシッ?
「ーーー分かったわ。アイドルについて、存分に教えてあげる」
俺は矢澤先輩に凄い力で腕を掴まれた。瞬間、先輩の目がギラリ、と光った。あ、やばい。この感じ、あの時の花陽と一緒の感じが……。
「ほら、アイドルについて聞きたいんでしょ?早く入った入った!」
「え、あ、ちょ……引っ張んないでくだぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
バタンッ
で、今に至るという訳だ。
「そもそもアイドルってのはね、笑顔でする仕事じゃないの!!ファンを笑顔にする仕事なの!」
矢澤先輩の説教じみた熱弁はまだまだ続いていた。
「あはは……アイドルが好きなんですね……」
「ええ!好きって次元の話じゃないわ!!憧れよ!!スポットライトを浴びてキラキラして……私の、憧れよ」
憧れ、と言う矢澤先輩の横顔はどこか花陽と似た表情をしていた。ただ、花陽違うのはその顔に諦めの感情がなかった。やりたくてやりたくて仕方が無い。でも、出来ない。といった感じの顔をしていた。
「やりたいんですね、アイドル」
元気がなくなった矢澤先輩に俺は諭すように話かけた。
「当然よ!だからこの部活をつくったのよ!!……今はあたし一人きりだけどね」
一人きり……そうか、東條先輩は矢澤先輩の事を言っていたのか。
「どうして、一人になったんですか?」
そう聞かれた矢澤先輩は少し腹立たしそうに話はじめた。
「……みんな、あたしの目標についていけない……って辞めていったのよ。また一人、また一人ってね」
話す矢澤先輩の目には諦めない気持ちと辞めていった部員たちに対する怒りがこもっていた。
「そしてこのざまよ。……気づいたらあたし一人きりになっていたの」
同じ目標をもっていたはずなのに、裏切られた。同じ夢を追いかけていたはずなのに。
そうやって、仲間だと思っていたはずの人から、裏切られた。それがどんなに辛いものか、どんなに悲しいものか。それはその痛みを経験した矢澤先輩にしかわからないはずだ。
「……矢澤先輩、"人"って漢字の成り立ち、分かりますか?」
「はぁ?」
矢澤先輩は俺に少し苛立ちながら言った。
「知ってるわよ、それくらい。人が二人で支え合う姿からきてるんでしょ」
「そうです。では、支えるひとが片方いなくなってしまったらどうなるでしょうか?」
矢澤先輩はついには椅子をたって、俺に怒鳴りつけた。
「何!?あんたあたしを馬鹿にしてんの!?」
「ち、違いますって。最後まで聞いてください」
俺は苛立つ矢澤先輩をなだめながら話した。
「"人"とゆう漢字から片方をとると"一"になるんです」
「……」
矢澤先輩は苛立ちながらも俺の話に耳を傾けてくれている。
「この"一"という漢字は、実は色々なものに変身しちゃうんです」
そう、"一"は他に"一"を足すといろんなものに変化するんだ。
「先輩、"一"足す"一"はいくつになりますか?」
「はぁ?そんなもん、ニに決まってるでしょ」
あたりまえ、というふうに矢澤先輩は呆れた感じでいった。
「違います」
「は?」
俺ははっきり、違うと言った。確かに、"数学的"にみればニだ。だが、"漢字的"にみたら?
「答えは、"十"ですよ」
「……何が言いたい訳?」
一人で出来る事なんて数がしれている。なら、二人なら?三人なら?四人、五人、六人……それ以上なら?そうなってくると、出来る事は山程出てくる。
「今、矢澤先輩には"一"を支える"もう一つ"が必要なんです」
"一"単体では輝けない。たくさんの"一"が集まって"輝"になれる。
「ハッ!じゃあ何?あんたがその"もう一つ"になってくれるの?」
「ええ」
「なっ……!」
「でも、俺じゃありません」
そう、俺ではない。俺はあくまで"一歩踏み出すための踏み台"でしかない。
「先輩、実は俺、ここの学園のスクールアイドル"μ's"のマネージャーをやっているんです」
「……!!」
矢澤先輩はまさか、というかんじで驚いている。それはそうだ。自分ななしえなかった"輝き"を他の誰かが成し遂げようとしているから。
「矢澤先輩……いえ、にこ先輩!μ'sに入ってくれませんか!」
先輩に輝いてほしい。輝きたいと思っているならなおさらだ。その輝きを失ってはほしくない。
「……いいわよ」
「えっ!?本当でーーー」
「でも、あたしはあたしでその"μ's"とやらのグループを見極めるわ!!話はそれからよ!」
にこ先輩はピシャリと言い放った。確かに、自分の目で確かめなければいけない事なのかもしれない。
「……はい、わかりました。にこ先輩」
にこ先輩の目には固い決意がやどっていた。これはもう、何を言っても無駄だと、俺は思った。
「あと、先輩ってのはやめて」
「え?」
先輩に先輩って呼ぶのやめろなんて言われたのはじめてなんですけど?
「えっと……じゃあ、にこさん」
「……何か某カラオケ店みたいな感じだけど……まぁいいわ」
そう言うとにこさんは俺にビシッと指を突きつけてきた。
「白崎 葵!あたしはあんたがマネージャーをやっているスクールアイドル"μ's"を見極める!いい、それまであたしを失望させないでね!」
「はい!」
にこさんは軽く笑った。その顔はまだ夢を諦めていない人の顔だった。
「……あと、スクールアイドルに誘ってくれて、ちょっと嬉しかったわ……」
「はい?」
俺はにこさんが小声で言った内容を俺は上手く聞き取れなかった。
「……何でもないわ。今日はもう遅いし、早く帰んなさい」
にこさんはそっぽを向いてしまった。
「はい、失礼しました」
そう言って、俺はアイドル研究部の部室を後にした。
「……"μ's"……あたしが入るに相応しいか、見極めてあげる」
そう呟いたにこは、部室にあったノートパソコンを起動させる。
途端、物凄いスピードでキーを打ちはじめた。
「あたしが……あたしが夢を"かける"のに相応しいのかをね……!」
一人きりの部室に、キーを打つ音だけが響く。その音は何か焦っているようにも思えた。
「あぁ!?タイムセール忘れてた!!」
今回は四千文字といつも以上の文字数となっております。つまり何が言いたいかというと、大変でした、はい。
今日は穂乃果ちゃんの誕生日なんですがこの話を投稿しちゃいましたwww
明日の投稿では、穂乃果ちゃんに関したサイドストーリー的な小説を投稿しようかなと思っています。
それでは、その時まで。
さようなら。