ヴィランの敵、人類の味方   作:オールF

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志村菜奈結構好き。


お見せしよう! 仮面ライダー!

 

 

「とりあえずここまで来れば一旦は大丈夫かな……平気?」

 

 

 そう問いかけてきたのは確か、志村菜奈。記憶が正しければヒロアカ世界で平和の象徴として君臨していたオールマイトの師匠だったはずだ。物語が始まった時点では故人で、その最期はオール・フォー・ワンに殺されている。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「……あぁ、すみません。助かりました」

 

 

 考え込む俺に覗き込むようにして顔を寄せてきた志村菜奈に、ようやくお礼の言葉を述べた俺は自分の身なりを確認する。

 

 

「ったく、身ぐるみ全部剥がしやがって……」

 

 

「ははっ、まぁパンツは履かせてもらってたしよかったじゃん」

 

 

 かけられていた布は助けられた際に置いてくることになってしまったため、今の俺はパンイチで外を出歩けるような格好では無い。確かオープニングで映る一文字もこんな感じだったが、せめて1号みたいに顔だけ俺のままで下は仮面ライダー……ってそうだった、忘れるところだったぜ。

 助けに来てくれたことには感謝するが、肝心なことが抜けていた。本来、俺を助けに来るのは俺と同じように改造手術を受けて仮面ライダーとなった本郷猛かそれに近しい存在だと思っていた。けれど、実際に助けに来たのは志村菜奈。

 仮面ライダーがこの世界に周知されていないことは確認済みだったが、世間的には隠れた存在という線を考えていた。だが、実際は本当にいないもので、こうなると俺も仮面ライダーになれるのかも怪しい。

 

 

「しかし、キミ良い体つきだね」

 

 

「まぁこれでも格闘技やってましたからね」

 

 

 改造されてしまっているものの、表皮は普通の人間と変わらないもので、しかも昨日鏡で見た俺の姿と瓜二つだ。多少衰えはしているだろうが、朝夜の筋トレは欠かしていない。そのためか、鍛えている志村菜奈には俺の筋肉のつき具合はよく見えるらしい。

 

 

「へぇ、格闘技……そこを付け込まれたのかな」

 

 

「かもしれませんね」

 

 

 実際そうだと言っていた。身体目当てとはこの事か。嬉しいようで嬉しくない。複雑な気分だ。

 再び俺が思考にふけようとすると志村菜奈の表情が柔らかいものから険しいものへと変わる。

 

 

「……ごめん、もう追っ手が来たみたいだ」

 

 

 結構離れたのになと呟いた志村菜奈の視線の先を見るべく後ろを振り向く。すると、明らかに異形のモノへと成り果てた二足歩行のバケモノがそこにいた。

 

 

「ンモーッ!」

 

 

 恐らくは象の遺伝子か生体情報を組み込まれたのであろう俺の同胞が戦闘員らしき男たちを引き連れて、雄叫びをあげる。

 

 

「キミは逃げろ。ここは私がなんとかするよ」

 

 

 そう言うと俺の返事も聞かずに志村菜奈はクライシスの連中が差し向けた改造人間の方へと向かっていく。さて、逃げろと言われてもなぁ。

 

 

「一文字隼人! 偉大なサンプル! 逃がさない!」

 

 

「追いかけろ! 追いかけろ!」

 

 

 裸足だし、衣服はパンツだけじゃ逃げたところで足はボロボロ、オマケに街に入れば職質待ったナシだ。

 

 

「くっ! もうっ! 数だけは多いん、だから!」

 

 

 それに志村菜奈1人では捌ききれない程に戦闘員の数が多すぎる。象男が動かない限りは追いつかれるということはないだろうが、戦闘員のやられ具合を見て今にも動き出しそうな雰囲気だ。

 

 

「ちっ!」

 

 

 とりあえず近づいてきた戦闘員2人を蹴り飛ばし、エルボーを入れて意識を刈り取る。奴らの話では骨や筋肉は俺本来のものから人工物に置き変わっているという話だったが、戦闘員を倒した感じだとあまり変化していないように思える。

 やはり、仮面ライダーのように何かしら力を発揮するための動作かスイッチがあるのかもしれない。試そうにも俺の願望通りでなかったらどうしようかという不安がよぎる。それに願望通りだったとして志村菜奈に見られたあとのリスクはどうする。しかも、個性を持つ人間を超える改造人間という奴らの言葉が本当かも分からない。

 

 

「ていっ! りぃっ!」

 

 

 流れ込んでくる戦闘員を倒しつつ、足に砂利や小岩を踏みしめる感触を味わいながら山をおり、林道へと入っていく。

 

 

「あの象男、大したことなければいいが……」

 

 

 俺の追っ手として派遣したのか、それとも志村菜奈潰しのためか。クライシスの考えが読めない……。というか、クライシスという名前ならかなりヤバい怪人を差し向けてくるのでは無いか。

 

 

「……クソッ!」

 

 

 せめて奴らからリミッターを解除する方法だけでも聞いておくんだった。それさえ出来れば俺自身に降りかかる火の粉は最低限何とかできるというのに。

 そう歯噛みしていると地面が避けて、もう1人の追っ手が現れた。

 

 

「おっと!」

 

 

「ブオオオンーッ!」

 

 

 甲高い声を出しながら出てきたのは、モグラの要素を加えられた改造人間。仮面ライダーに出てきたモグラングほどの重厚感はないが、本来のモグラらしさを感じさせる意匠が姿形に出ている。

 

 

「一文字隼人! 逃げられはせんぞ!」

 

 

「はなから無事逃げおおせようとは思ってないさ」

 

 

 追いついてきたのか、背後も横も戦闘員に囲まれてしまう。志村菜奈からの応援を待つか……いや……それは一文字隼人らしくない。

 

 

「お前たちに改造されたこの身体、お前たちを倒すために使わせてもらう」

 

 

「何をっ!」

 

 

 そうはさせないとモグラ男が肉迫してくる。ドリルのように尖った腕を振り下ろして、俺の気絶を狙って加減された一撃が首筋へと飛んできそうになる。それを躱すと戦闘員が飛びかかってくる。

 

 

「ちょおっ!」

 

 

「ぐあっ!」

 

 

 服がないおかげで体に可動制限はなく、しなやかで重い一撃を戦闘員の顔へと叩き込む。そのまま、モグラ男と距離をとるための道を切り開きながら、回し蹴りをして戦闘員を突き飛ばす。

 

 

「無駄な抵抗はやめろ一文字隼人! お前では雑兵は倒せても、この俺は倒せん!」

 

 

「だったら試してみるか……?」

 

 

 挑発するように言い放った俺は腕を水平に構える。両腕を揃えながら頭上まで持ってくるとそれを一気におろし……

 

 

「させるかっ! 大人しくしろぉ!」

 

 

「へんっ、ぎっ……、あっ……!」

 

 

 特撮のように上手くいかず、変身できるか試そうとしたらモグラ男が飛びかかってきて、それを避けるために背後に下がるも、そこは足場の少ない崖際で……。

 

 

「うっ、う……っ! わぁ〜〜っ!?」

 

 

 バランスを崩した俺は崖下へと落下してしまう。目先ではモグラ男が慌てたように俺を見下ろしているが、俺の落下速度は速く、モグラ男が小さくなっていく。

 

 

(あぁ……これが走馬灯ってやつか、こんな速く落ちてるのに思考はすっきりしてらぁ……)

 

 

 ここでもう潮時かと目を瞑ったその時だった。

 

 

 ガシャンっ

 

 

「ん? なん、だ……?」

 

 

 唐突に腰の辺りが重くなり、瞼をあげる。そしてそこついていたのは。

 

 

「こいつは……!」

 

 

 子供の頃から憧れて見慣れたベルトが巻きついており、赤い風車が落下の際に受ける風に反応して回り始める。

 

 

「そうか……そういや、そういう設定だったな!」

 

 

 仮面ライダーの変身方法は、本来変身ポーズをとることではない。体内に埋め込まれた変身用ベルト:タイフーンに風エネルギーが集まることで、仮面ライダーに変身する。特撮版ではバイクで疾走する際に受ける風によって、仮面ライダー1号は変身していた。

 変身ポーズは当時バイクの免許を持っていなかった一文字隼人の演者、佐々木剛が抱えていた問題を解決するために生まれた苦肉の策だとされていたが、本人が否定していた。おそらくは、イチイチ風を受けるシーンを考えたり挿入するのが手間になったからという理由だろう。

 

 

「それに、囚われすぎていたな」

 

 

 地面に降りたって、変化した身体を見る。手足には薄緑色の手袋とブーツがあり、胸部にはプロテクターがつき、首には赤いマフラーが巻かれている。視野は広くなり、さっきまでは聞こえなかった風の音や、林の中で震える動物たちの声や脈の音まで聞こえてくる。

 

 

「……まさか俺の願望通りとはね」

 

 

 俺を作ったやつは仮面ライダーが好きだったんじゃないかと錯覚してしまうほどに出来すぎている姿に、俺は仮面の中で口角を上げずにはいられなかった。

 一文字隼人だから姿は2号に合わせてるが、仮面ライダー第1号だからと変身の条件は1号と同じってのは少しいただけないが……。

 

 

「ブオォッ! やはり生きていたか一文字隼人! いや、バッタ男!」

 

 

 

 行くとするかと跳躍しようとする前に、俺の死体を確認しに地中を掘り進めてやってきたモグラ男が再び姿を現す。

 

 

「バッタ男? 違うな」

 

 

「なんだと?」

 

 

 首を傾げるモグラ男に俺はさっき取り損なった2号ライダーのファイティングポーズを取ると、今の私自身の名を呼んだ。

 

 

「お前たちの敵、そして人類の味方」

 

 

「はっ! なんだそれは憎きヒーロー気取りか!」

 

 

「お見せしよう! 仮面ライダー!」

 

 

 このセリフが言いたかったからモグラ男のセリフは全部無視だ! 

 

 

「何をぉっ!」

 

 

 モグラは地中を生活圏にしている生物だ。視力が弱く、太陽光に弱いという説があるが、そんなことは無い。確かに視力は弱いが太陽光を浴びて死ぬということは無い。それに必要とあれば地上にも出てくる。

 けれど、地上ではどうしてもモグラ本来の特性は活かせない。活かされると面倒だし、さっさと片付けるか! 

 

 

「じょおっ!」

 

 

「みぎゃっ」

 

 

 試しに拳を1発と、モグラ男の顔面に右ストレートを浴びせる。すると、どうだろう。モグラングはライダーキックでも倒せなかったというのに、モグラ男の顔は容易く吹き飛び、クルクルと駒のように回っては大樹に潰れたトマトのように叩きつけられた。

 

 

「えっ」

 

 

 確かに割と強めに鋭く拳を突き出しはしたが、こうもあっさりと……。しかも、一撃で死なせてしまった。

 

 

「うっ」

 

 

 俺と同じならこいつも改造人間で、元々は無個性の人間だった。同胞とも言うべき相手を、こんな簡単に……。

 

 

「……あぁ、吐き気はするのに改造されてるからか、出る気がしないとはな」

 

 

 たった一撃。たった一撃だ。

 俺の右手が他者の命を奪ってしまった。脳改造をされてはクライシスと同じ思想に取り憑かれてしまってはいるだろうが、何をしたかも分からない人を殺してしまった。

 

 

「……いや、これで、これで良かったんだ」

 

 

 あいつは個性を持った誰かを殺すために作られた。そんな存在を個性を持たず、同じく改造人間である俺が葬ったのだ。むしろ、この方が良かったのだろう。

 

 

「じょおっ!」

 

 

 そう結論づけると、俺を逃がすために戦ってくれているであろう志村菜奈と合流するため今度こそ跳躍する。なるべく加減して、さっき落ちたところまで跳べるようにとイメージすると、少し通り過ぎてしまった。

 

 

(思いのほか、変身後のスペックが高すぎるな……仮面ライダーのジャンプ力って20メートルくらいじゃなかったっけ)

 

 

 パンチ力は確か10トン弱だったが、さすがに一個人にそれだけの力を持たせるとは考えにくいし、そこまで意識して作るならそいつは間違いなく仮面ライダー好きの転生者だ。

 けど、このジャンプ力の高さは……バッタがその身長を175センチにしてもここまでにはならないと思うが。

 

 

「細かいこと気にしても仕方ないな!」

 

 

 とりあえず、その辺のことは後回しにして志村菜奈の方へと向かう。けれど、元いた場所に志村菜奈の姿はなかった。

 象男も倒されたのか、あるいは俺の追っ手へと回ったのか。分からない。戦闘員は倒されているようだが、志村菜奈はどこに……? 

 

 

「……まぁいいか」

 

 

 考えても答えの出ないことは考えない主義だ。追っ手がこれ以上来ないように遠くに離れよう。それで変身解除の方法とこれからのことを考えよう……。




志村菜奈どこ行ったん?▶︎一文字が崖から落ちてる間になんとか象男を倒して、山道を下って行ったであろう一文字のことを追いかけて行った。なので、完全な入れ違い。

仮面ライダー(2号(自称))▶︎クライシスが一文字隼人をベースに持てる技術の全てを注ぎ込んだ改造人間。ほぼ特撮版と遜色ないスペックと見た目を実現している。なお、クライシス側の科学者には仮面ライダー好きの転生者が3人いた(全員志村菜奈に気絶させられている)

象男▶︎一文字隼人を逃がした志村菜奈を拘束、殺害するために派遣された改造人間第82号。象のパワフルさを出せるように改造されているが、パワー付与の個性であるワン・フォー・オールの残滓がある志村菜奈の敵ではなかった(即死では無い)。

モグラ男▶︎一文字隼人を捕まえるために派遣された改造人間。モグラをベースにされているが、地中での高速移動以外の能力は並程度。実は変身していない一文字隼人でも時間をかければ倒せていた。モグラングのこともあって一文字が警戒しすぎた。


モグラング▶︎特撮版『仮面ライダー』第28話「地底怪人モグラング」 にて登場した怪人。東京出身のモグラの改造人間。目が見えないが、伸縮自在360度の視界を地上からキャッチできる目「エレクトロ・アイ」を移植されてるため、ある程度の視力を持っている。 右手の剣と左手のシャベルが武器で、これを使って地底を掘り進み、敵の真下から現れては敵を地中に引きずり込む攻撃を得意としている。身体は非常に硬く、ライダーキックすら無効化し、そのボディの硬さで仮面ライダーを最後まで苦戦させた。 その最期はセメントタンクの中へ蹴り落とされ、その中で固まって絶命するというものだった。
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