ヴィランの敵、人類の味方   作:オールF

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評価と感想ありがとうございます。
書いたら投稿する派なんですけど(大嘘)その気持ちをこらえて予約投稿です。


これからどうするか

 

 

 手頃な改造人間を倒してクライシスのアジトがあった山から下りながら、俺は変身解除の方法を考えていた。仮面ライダーに変身する方法はベルトのタイフーンの風車に風を受けさせることだが、元に戻る方法は不明瞭だった。

 劇中では風エネルギーがなくなったり、変身を維持できないほどのダメージを負うと強制的に変身解除となっていたが、それ以外は自力で解除していたように思える。

 この姿で人前に出たり、自宅に戻ったりは出来ないので変身解除したいところだが、変身解除したら今度はパンイチだ。結局見られたら面倒な姿であることには変わりない。加えて志村菜奈が通報したからか、公道ではパトカーのサイレン音がやかましくなってきた。耳がいいってのも不便だな。

 とりあえず着るものが見つかれば変身解除しようという気にもなれるんだが、やはり人里から離れた場所故か服を貸して貰えそうな家屋も服屋も見つからない。ライダージャンプして一気に自宅まで跳ぶか? いや、見つかった時のリスクを考えるとそれこそアウトだ。仮面ライダーであることを隠す必要性があるから今のところ定かでは無いが、知られる必要性も分からないため、一文字隼人として下山するのが安牌だ。

 警察に保護してもらう線も考えたが、質問責めにあうだけならまだしも改造人間になったことが露見するのもマズイ。ただクライシスの奴らから一文字隼人という名前は露見し、顔も見られている。いずれは来る可能性も考慮するなら早めに伝えておくべきか……? 

 

 

「ん……」

 

 

 色々と悩んでいる間に変身が解除されて、元の一文字隼人としての姿へと戻っていく。パンツ1枚のあられもない姿へだ。

 

 

「服くらいはサービスして欲しかったな」

 

 

 改造してくれたことには感謝してやってもいいが、服のことはナンセンスだ。寝ている時に攫われたようだがら、財布や携帯電話は無事であるからいいとしてやろう。

 念の為、こそこそ隠れながら木々の多い人が通れるように舗装されていないところを歩きながら下っていく。クライシスの追っ手も警察の対応でそれどころでは無いからか、追いかけてくる気配はなく、警察やヒーローにも会わずにふもとまで降りることが出来た。

 

 

「あー! いたー!」

 

 

 すると、俺のことを追いかけ先に麓についていた志村菜奈がいた。しかも、その手には俺には少しばかり大きそうな上着とズボンを持っており、俺の姿を見るなり声を上げて近づいてくる。

 

 

「よかったよー! 先に降りたと思ったのに全然いないんだから」

 

 

「普通の道を通ってたら追いつかれそうだったんで」

 

 

 それはすみませんと謝罪しながら、用意しておいた言い訳を口にすると、俺の安否の方が大事だったのかウンウンと頷いてくれる。

 

 

「あ、そうだこれ」

 

 

 感動の再会を終えて、俺の姿を思い出した志村菜奈は持ってきてくれたのか、誰かに届けさせたのであろう服を俺に渡してくる。

 

 

「弟子のやつだから一文字くんにはちょっと大きいかも」

 

 

「ありがとうございます。助かります」

 

 

 弟子っていうとオールマイトのことか。全盛期……より若いのか、志村菜奈が生きてるってことは。確か、志村菜奈が死んだ時のオールマイトの年齢は高校1年生か2年生くらいって知り合いから聞いたからその辺か。この頃にはすでに成長期に入っていて、身長は高くなっているのか歳上の俺よりも1サイズ大きい服だった。

 

 

「ごめんね、うちの弟子育ち盛りだから」

 

 

「いえ、着れるもんがあるだけで十分です。それにこれだけ大きければ破れても平気そうですし」

 

 

「そう? それなら良かったよ」

 

 

 2人で笑い合うと、俺は山の方を振り返った。

 

 

「俺の取り調べまでここにいた方がいいですかね」

 

 

「……うん、そうだね。被害者の生の声も聞きたいだろうし」

 

 

 やっぱりか。身体検査とかされたら面倒だが、幸いにして怪我はしていないし、病院に連れてかれる可能性は低い。それに俺がなにかされる前だったと答えれば済む話だ。

 

 

「そういえば……あー、えっと……」

 

 

「ん? どうしたの?」

 

 

 名前を呼ぼうとしたのだが、確か聞いていなかったなと口ごもる。ヒーロー名も知らないのでどう呼ぶか悩んでいると、志村菜奈は「あぁ」と納得したように微笑んだ。

 

 

「私は志村菜奈。ヒーローなんだけど、訳あってヒーローネームは使ってないの」

 

 

 表舞台にも出ておらず事件解決数、社会貢献度、国民の支持率などを集計して、毎年2回発表される現役ヒーロー番付である"ヒーロービルボードJP"にも名が挙がらないように配慮してもらっているらしい。

 おそらくは家族のためだろう。

 さて、口ではなんと呼ぶべきか。

 

 

「じゃあ菜奈さん」

 

 

「何かな」

 

 

 昔ならやらなかったが、フレンドリー気質の一文字隼人なら初対面でも名前で呼ぶかとファーストネームで呼んでみる。志村菜奈の方に嫌悪感などは見られず、受け入れられたようなのでそのまま話を続けることにした。

 

 

「どうしてここに?」

 

 

 ヒーローが出はって来るのは個性犯罪が関わっている時だけで、アイデンティティクライシスは無個性の集まりだ。形式上はヒーローではなく、警察が介入するべき案件だろう。

 

 

「ウチの弟子がちょっかいかけられてね」

 

 

 あぁ、確かオールマイトも元々は無個性だったか。なるほど、それで狙われたところを志村菜奈が助けて、その大元を叩きに来たといった感じか。オールマイトが狙われたとなれば、グラントリノも関わっていそうだな。彼もオールマイトの師匠だし。

 

 

「それで痕跡を辿ってたらここに着いて、キミを助けたってわけ」

 

 

 志村菜奈の話では、クライシスが秘密結社のような動きをしていたからか、組織についてはあまり知られておらず、彼女の弟子……オールマイトを襲ったことでその存在が露見してしまったらしい。オールマイトは攫いに来た改造人間を志村菜奈と共に容易く撃退。その際に倒すことは出来ず、爆死するかは確認できていないようだ。

 なので、彼らが掴んでいる情報としては

 ・世間的に知られていない組織

 ・無個性の人間を狙っている

 ・改造人間のことを異形型の個性を持つ人間だと思っている

 ・組織の目的や改造手術のことは知らない

 といったところか。これなら俺の事情はバレずに過ごせるだろう。

 

 

「一文字くんはどう? あいつらのことで何か知ってることはある?」

 

 

「個性持ちの人間を恨んでいる組織で、仲間にならないかと勧誘を受けました。断れば、無理やりにでも従わせると」

 

 

 嘘は言わずに、改造手術のことはぼかして伝えると「あー、まだいるんだ……」と過去にもそういう組織や団体がいたことを思い出したようだった。

 

 

「でも、菜奈さんが来たおかげで酷い目に遭う前に逃げ出せて助かりました」

 

 

「礼には及ばないよ。これが私の仕事だし……できたら攫われる前に組織を潰しておくべきだったね」

 

 

 謝辞を簡単には受け取らず、むしろ謙遜して反省する志村菜奈に俺は苦笑する。

 

 

「志村さん」

 

 

「あ、終わったみたいだね」

 

 

 少しすると警察がこちらへとやってきて志村菜奈へと声をかける。「待っててね」と警察官と合流すると、何やら話し始める。

 さて、俺もどう説明するか考えておくか。

 

 

 ###

 

 

 結論から言うと、クライシスには逃げられてしまった。警察がアジトへ入るも、中はもぬけの殻。しかも、時限爆弾がセットされており、ガサ入れの数時間後に痕跡もろとも爆破されてしまった。まるでショッカーのようだとも思ったが、彼らなら警察が入った瞬間に爆破しているだろうから、まだ優しいだろう。ご丁寧にデータ類は全て破棄していたため、彼らが何をやっていたのかは分からず終いだったようだ。

 そのため、俺の話は大いに役に立ったらしい。個性を持つ人間に反感を持つ人間の集まりで、()()()()()()を持つ人間と無個性の人間を狙っている秘密組織としてIDENTITY CRISISは警察とヒーローから認知された。

 

 

「いいのかい?」

 

 

「ええ、怪我はしてませんし、身体は丈夫な方なんで」

 

 

 事情聴取が終わって、警察署から出る時に調書を担当してくれた警察官に検査を受けなくていいかと尋ねられるが、やんわりと断る。

 

 

「病院はいいんで、家まで送って貰えませんか?」

 

 

「……確かにそんなことが言えるなら送らなくても大丈夫そうだワン」

 

 

 俺の態度に肩を竦めて呆れた表情を浮かべる犬のおまわりさんに、俺は頭を下げてから口を開いた。

 

 

「じゃあ、おまわりさん。攫われないように気をつけて」

 

 

「君もね。クライシスが逮捕できてない今、無個性の君の方が狙われた時のリスクは高いワン」

 

 

「ははっ、あいつら思ったより強くないですからなんとかなりますよ」

 

 

 また寝込みを襲われたらどうしようもなかったりするが、これだけ言っておけば精神的にも問題ないと判断してくれるだろう。

 踵を返して自宅への道をたどっていく。後ろには念の為か、警察官が2人ほど着いてきてくれている。正直、いらないが厚意は素直に受け取っておくとしよう。

 家に着くと鍵は開いており、クライシスのやつらが開けっ放しにしたんだろうなとため息を吐く。部屋が荒らされた形跡はなし。金目のものも、携帯電話も取られていない。家電と住所はメモられるどころか、すでにバレてるから引越しを検討せざるを得ないな。

 

 

「晩飯でも食うか……」

 

 

 改造人間になったので3大欲求はどうなったのかと訊かれれば、食欲はわく。恐らく、食べたものもエネルギーに変換できるのだろう。睡眠欲はあまりない。目が疲れるとかもなくなっており、肉体的な疲労感もない。精神的にはあったりするので、寝ること自体はできる感じだ。性欲に関しては、ガワはそのままなので生殖器はあるし、勃起もできる。が、それだけかもしれない。機会があれば男の象徴が機能するか試してみよう。

 カップラーメンを取り出して、湯沸かし器に水を注いでスイッチを押す。その間に携帯電話に触れて着信履歴やメールをチェックする。

 

 

「仕事の依頼はあんまり来てないな……」

 

 

 名が少し売れてからは、フリーのカメラマンにしては仕事が来るようになった方だが、結婚写真とかそういうのは全く来ない。今回もデビューするヒーローの宣材写真に、グラビアモデルの宣材写真を相場より安く撮ってくれないかという依頼が数件来ていた。

 

 

「……ん?」

 

 

 どちらもあまり溜まっていないが、催促の連絡で3日も日を跨いでいる。俺が最後に見たメールから5日も経ってる。どうやら、改造手術ってのも一朝一夕ではできなかったらしい。

 とりあえず、仕事の依頼は近場以外はキャンセルして新居でも探すか。引っ越したところで直ぐに探して当てるんだろうが。そうなる前に潰すのも手ではあるが……。

 

 

「ベルトのアップデートとか、新2号にしてもらうにはいてもらった方が都合はいいか」

 

 

 打算的な考えではあるが、仕方ない。あちらが俺の思った通りの組織ならこれ以上無駄に無個性の人間にちょっかいをかけることはあるまい。世界征服ではなく、復讐が目的なら俺の回収か個性持ちで著名なヒーローやヴィランを狙うはずだ。相対した改造人間の強さからして、武闘派のヒーローであれば容易く倒せるレベルだったから、さほど大きな問題にはならないだろう。




次は明後日〜
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