ヴィランの敵、人類の味方   作:オールF

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仮面ライダーらしいことが出来てない仮面ライダーが出る作品はこちらです


グラントリノ

 

 

 クライシスの連中に補足されないようにしながら新居へと移り、荷解きを終えたのは俺が改造人間となってから3週間後の事だった。

 あれからクライシスとは出先で絡まれることが多くなった。新居のことはすでにバレてるようだが、警察やヒーローの目を気にしてか、俺に監視のついていないタイミングだけを狙って襲ってくる。まぁ全て返り討ちにしている。その際に全く関係ないであろうヴィランも来たので何人か力加減をしつつ無力化しておいた。といっても、改造人間たちは殴るだけで爆発するし、ヴィランたちもまた殴るだけで骨折させたり、足を粉砕したりと仮面ライダーのパワーの高さに恐れ戦く結果となってしまった。

 今のところ世間的には異形型の個性にしか見えない改造人間たちの目撃情報はないようで、犬のおまわりさんと志村菜奈からは時折連絡が来てはクライシスからの接触はあったかと訊かれるが無かったことにして返している。あったと言っても、全員爆死してるので跡形もないし。

 カメラマンとしての仕事は再開して依頼のあった件はすぐに片付けて、今となっては俺の専売特許となったヒーローとヴィランの戦いを間近で収める戦場カメラマンとして活動している。

 撮った写真をヒーロー専門の広報誌やヒーロー公安委員会などに送り付けては歩合制で金を貰っている。

 個性を用いての職業活動は基本的にヒーロー活動に限定されているため、個性を使用しての社会活動はヒーロー以外は出来なくなっている。そのため、素の身体能力で戦場カメラマンをしている俺にしかこの仕事はなし得ない。まぁ、似たようなことをやってるやつもいるが、大抵引きで撮ってるからぼやけていたり、ピントが合っていなかったりと俺の写真よりは価値が低いらしく、俺の写真の方が重宝されているのが現実だ。

 ヒーローとヴィランの戦いの様子を撮影するという仕事上、彼らの戦いを間近で見ることになるのでその戦いの最中にトラブルに巻き込まれることはしばしばある。人質にならないようにヴィランから距離を取ってはいるが、ヒーローに圧倒されてやけくそになったヴィランは一般人を盾にする傾向が強い。それでも弱りきったヴィランなら俺でも倒せるため、たまにサイドキックにならないかという勧誘も受けたりする。

 ただ、今日は少し面倒だった。なぜならヴィランが強すぎたのだ。それもヒーローを圧倒するくらいに。

 

 

「はははははっ! よえぇええなぁ!! ヒィィィロォォォさんよぉぉぉぉ!!!」

 

 

 巻き舌なのか、小文字が多いかのような話し方をするヴィランに前期のビルボードランキングで8位だったヒーローが敗れ去った。個性である"加速"を使用して、銀行から逃走しようとしたヴィランを駆けつけたヒーローが相対したところまではよかった。だか、超次元的なスピードから叩き込まれるヴィランの攻撃に、拘束を得意とするヒーローは為す術なく倒されてしまった。

 

 

「そっんな、個性でぇぇぇぇ俺がよォぉぉぉぉたおせるとおもってたのかぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 げらげらと嘲笑しながら倒れたヒーローへと言い放ったヴィランは、ギラりと獰猛な瞳を俺の方へ向けてくる。

 

 

「んでよぉぉぉぉ、てめぇはよぉぉぉぉ、なんだぁぁぁぁ? さっきからちょこまかとよォぉぉぉぉ、鬱陶しいなぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

「ただのカメラマンにそう気を立たせるなよ。みっともないぜ?」

 

 

 巻き添えを喰らわないように離れようとはしていたが、ビルボードランキング上位のヒーローの写真は高く売れるので夢中で撮りすぎてしまった。まぁ、途中からは一方的にボコボコにされている写真だが。

 

 

「ただのカメラマンンンンンン? 嘘つけぇ! なんの個性持ちだぁぁぁぁ?」

 

 

「あいにく個性とは無縁なもんでね。生身の身体さ」

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ? 本気出してないとはいえよぉぉぉぉ……無個性とかいう人以下が俺の動きをよぉぉぉぉ、追えてるってのかぁぁぁ?」

 

 

 本気じゃなかったのか。改造人間になったからか、少し遅く感じたが、本気でないというのなら納得だ。初速は普通でも加速していけば時速500キロくらいは出るんだろう。さっきは40キロほど出ていたようだし、止まらなければもっと上のスピードを維持しつつ加速できるとなれば手強いかもしれない。

 無個性の俺に動きを追われていただけでプライドとやらが傷ついたのか、ビキビキと怒りを募らせたヴィランは俺へと近づいてくる。

 

 

「なぁぁぁぁぁ、知ってるかぁぁぁぁぁ? 加速の乗った拳はよぉぉぉぉ、重いんだぜぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 幸いにして8位という大物ヒーローが倒されたからか、見ていた野次馬はほとんど逃げてしまっている。増援を呼んでいることも考慮したら、俺はここでこいつを引き付けておけばいいわけだが。

 

 

「ちぃっ!」

 

 

「よけてんじゃねぇよぉぉぉ!! 当たれよぉぉぉボケェぇぇぇぇ!!」

 

 

 ヒーローや警察が来るまで、2車線ある道路上で少しずつ加速していくヴィランの拳を避けるのはなかなかに骨が折れそうになった。

 ただ改造人間にされたことで変身前でも五感はより研ぎ澄まされている。常人より少し速い程度にしか感じないヴィランの動きを、疲れることの無い身体はヴィランの攻撃を簡単に躱すことができる。

 

 

「ああああああああぁぁぁクソぉぉぉぉ! 無個性とか嘘だろてめぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「嘘じゃないさ! 現に、避けるのが、精一杯、だからなッ!」

 

 

 反撃してもいいが、個性持ちに無個性が殴った時の刑法ってどうなるんだっけな。正当防衛にするには1発貰う必要があるし、関節技を決めるには一旦動きを止めにゃならん。どうしたものかと考えていると、目の前を黄色い影が通り過ぎた。

 

 

「とぉりやぁ!」

 

 

「がはっ!!?」

 

 

 空から飛んできたヒーローの横からのキックで加速していた体を吹き飛ばされたヴィランは道路へと転がっていく。

 

 

「大丈夫か若いもん!」

 

 

「えぇ、なんとかね」

 

 

 俺は何もしなくて済みそうだと安堵して、やってきてくれたヒーローに礼を言おうと顔を上げる。クリーム色の頭髪と黒いひし形のアイマスク、黄色いマントと隆々の筋肉を包む白いスーツを着たヒーローには見覚えがあった。

 

 

「ったく、弟子の教育中に面倒事起こしおって」

 

 

 グラントリノ。オールマイトのもう1人の師匠にして、志村菜奈の盟勇にあたる人物だった。

 往年は背が縮んだというレベルではないほどに、小さい老人になるが、若い頃は志村菜奈より少し背の高い成人男性の姿をしている。

 

 

「また来たかァァァ、ヒィィィロォォォぉぉぉぉほげぶっ!」

 

 

「うるさい。寝ていろ」

 

 

 起き上がったヴィランがセリフを言い終える前にジェットの個性で生み出した加速キックで、ヴィランの意識を今度こそ刈り取ったグラントリノは「ふぅ」と息をついた。

 

 

「ん、よし……生きてるな。そっちは……」

 

 

 気を失ったヴィランの脈を取り、殺していないことを確認すると、そのヴィランにやられたヒーローへと膝を着く。

 

 

「コッチも大丈夫そうだ」

 

 

 安心したように息を吐くと、再び俺の方へと振り返ってきたグラントリノに俺はカメラを構えた。

 

 

「おい、撮影NGだぞ。俺は」

 

 

「いいじゃないですか1枚くらい。8位を救った謎のヒーロー。人気出ますよ」

 

 

「いらん。そんなの」

 

 

 不機嫌そうに睨んでくるグラントリノに、写真でも撮ったらカメラが壊されそうだと俺はカメラから手を離す。

 

 

「じゃあ、あのヴィランは誰が倒したことにするんです?」

 

 

「お前さんでいいだろう。いや、待て……お前さん、そのナリは……」

 

 

「見ての通りただのカメラマンですよ」

 

 

「ヒーローじゃないのにヴィランの真ん前に……? あいつと同じ命知らずのバカか……」

 

 

「なんのリスクもなく、良い写真は撮れないんでね」

 

 

 言いながら、パシャリとシャッターを切る。すると、グラントリノは怒ったようにジェットを噴かせて俺へと迫ってくる。

 

 

「おっと、一般人、それも無個性の人間への個性の行使及び器物損壊はヒーロー資格の剥奪にもなりますよ?」

 

 

「くっ……! んっ……! 頭の回るわっぱだな!」

 

 

 ヒーローの、それもオールマイトを育てているグラントリノにとっては辛いところを口にするとカメラも俺の身体も無事で済んだ。

 

 

「まぁ、ヴィランの傷も頭ですし、転んで気絶したとか言っときますよ」

 

 

「そうするなら俺の写真は必要ないだろう」

 

 

「いやいや、あんたが俺を助けてくれたっていう証として俺の思い出にしときたいんですよ」

 

 

 オールマイトが平和の象徴になってからは、緑谷が職業体験に行くまで隠居することになるグラントリノの写真、それも全盛期のものが撮れるのはこれが最初で最後になるだろう。

 

 

「そんな写真じゃなく、若いんだからその頭で覚えておけばいいものを……」

 

 

 わからんやつだと嘆息するものの、カメラを壊したりする気はもうないらしく、グラントリノはマントを翻す。

 

 

「じゃあこの場はお前に任せるぞ」

 

 

「ええ。あ、その前に1つ」

 

 

「なんだ」

 

 

「ヒーロー名、聞いておいても?」

 

 

「……グラントリノだ。もう会うことは無いだろうがな」

 

 

 そう言って飛び去っていくグラントリノの後ろ姿が消え去る方向を見やる。多分あっちの方角に雄英かオールマイトととの特訓場があるんだろうな。また機会があれば行くとしよう。

 

 

「さて……」

 

 

 近づいくるパトカーの音に耳を傾けながら、俺はこれからあるであろうおまわりさんと事情聴取の時間にため息をついた。




仕事上、事件に巻き込まれるので警察やヒーローからの顔の覚えはいい一文字(いい意味でも悪い意味でも)

加速ヴィラン:止まらない限り加速し続ける個性。その先に俺はいるぞ! 最高速度は理論上無限だが、人体に耐えられるものではないので時速80キロまでだった。だがある人物に、それを超えても耐えられる個性を与えられてからは最高速度を時速600キロに更新した。が、体の強度は上がっても加速した身体の横から蹴りを入れられると痛いものは痛いし、脳震盪だって起きる。

グラントリノ:まだ若い時(それでもアラサーくらいはいってそう)アラサーが若くないって!? あぁ!? そんなこと言ったのはどこのどいつだ!?
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