ヴィランの敵、人類の味方   作:オールF

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ぼっち・ざ・ろっく! を観てたら「百合を観測しようとしたらNLを発生させてしまった件」という、結束バンドのメンツ全員に惚れられるギャルゲーの主人公が出てくる二次創作を思いついたので誰か書いてください。書かないと俺が書くぞ……。

ちなみに本文途中に出てくる「キィイン」という擬音は、特撮版1号、2号が変身ポーズ構えたり出てきたりする時のSEだと思ってください。


悲しみを噛みしめて

 

 

 不本意ながらもまた警察の厄介となった俺は、月明かりが街を照らす時間に警察署を出た。管轄が違ったので犬のおまわりさんと会うことはなかったが、俺のことは都内で有名になっているらしく「あぁ君が……」という胡乱な目をされてしまった。

 これからもこういうことはあるため、その時はよろしくと出てきたが、やはりというか久しぶりに「危ないからやめろ」と言われしまった。世間的には無個性であり、今まで怪我をしたことや人質にされることがなかったから大事に至っていないだけで、俺は本来守られる側の人間なのだそうだ。確かに身体能力が多少高いだけのカメラマンがうろちょろしていればヒーローも気が散るだろうし、ヴィランにとっては常に近くに人質がいるという状況はよろしくない。

 だが、俺のカメラマンとしてのアイデンティティは至近距離から撮るヒーローの勇姿なのだ。ヒーローたちも鬱陶しいと思いつつも、自分たちが活躍している写真を撮ってもらえるからと容認してくれているのだ。戦場カメラマンが出来なくなったら、平凡なカメラマンに成り下がってしまう。

 カメラマンとしての腕はまだまだなのだ。ヒーローの写真も連写しまくったやつの中から写りがよかったやつを送り付けてるわけだし。というか、あの状況下でたった1枚で綺麗に撮れるやつがいたら弟子入りしたい。

 

 

「はぁ……」

 

 

 今日は警察のお守りもないし、のんびり帰れると思ったんだが、どうやらそうでも無いらしい。

 

 

「さっきからコソコソついてきてるやつ、誰だ?」

 

 

 昔から闇討ちのようなことはされていたし、こういうのには敏感になっている。

 

 

「あらぁ〜気付いちゃった……?」

 

 

 女言葉なのに野太い声……オカマか……。さて、クライシスかヴィランか、それとも面倒なナンパか……。もし、最後のやつだとしたらクライシスかヴィランの方が助かるな。

 電柱からゆらりと出てくるのは頭の頂点が塀を優に超える巨漢が現れる。つるっパゲのどう見ても男にしか見えないタイプのオカマで、ダブルのルナドーパントの変身者よりも見た目のインパクトが強すぎる。それにしても、どうやったらあのガタイで気づかれないと思ったのか小一時間問い詰めたいところだが。

 

 

「マッハアクセルがお世話になったみたいねぇ〜?」

 

 

 マッハアクセル? 警察官で2号ライダー同士の混ぜ物か? 見たところ変異型でもないし、改造人間という様相でもない。とりあえず、ナンパの線が消えただけ良しとしよう。

 

 

「誰かは知らないが、あまりいいお友達ではなさそうだな」

 

 

「しらばっくれないでよ、アナタが捕まえたんでしょ?」

 

 

「あぁ。あのヴィランか。あいつが勝手に転んだだけだぜ?」

 

 

 言いがかりはやめて欲しいなと返してから、こいつもヴィランだなと結論づけると警戒を強める。

 

 

「転ぶ? あの子が? そんなわけないでしょ……? 明後日、2人でデートの約束だったのに……」

 

 

 ぶつぶつと呪詛のようになにか呟きながらオカマの腕の筋肉が震える。バキバキと骨が軋むような音がしたかと思えば、腕が大きく変形する。

 

 

「許さないわッ!!」

 

 

 筋肉が収縮して手先に集まり、右手はカジキマグロの頭部のように尖り、左手は逆に肥大化して大根のように太く逞しいものへと変化する。変異型の個性ってやつか。

 

 

「死んで! あの子のためにぃッ!」

 

 

「ッ!」

 

 

 アスファルトを蹴りつけて俺の方へと迫るオカマは、右手の針を突き刺してくる。それを余裕を持って避けると、今度は左腕が振り下ろされる。

 

 

「ご近所迷惑なやつだな!」

 

 

「アナタが避けるから悪いのよッ!」

 

 

 俺のいた場所のアスファルトが砕けて、閑静な道路に轟音が響く。その音に「なんだなんだ」と野次馬が窓を開け始める。まずいな、見られると変身できないし、またヒーローが来るまで耐久レースだ。

 

 

「余所見ィッ!」

 

 

「うっ"」

 

 

 次々と窓から顔を出してきたり、中には玄関のドアを開ける野次馬たちを見つつ、目の前のオカマをどう対処したものかと考えていたらその隙を見逃さずに剛腕が目の前に迫る。

 

 

「へぇ、見た目よりタフね……それとも個性のおかげかしら……?」

 

 

「ははっ、こちとら鍛えてるんでね」

 

 

 最近サボり気味だから、響さんよりは大したことないが。しかし、改造手術サマサマだな。多分、無個性の時にこれを食らってたら良くて骨折、最悪腕を持っていかれただろう。湯沸かし器や携帯を壊さずに使えているあたりパワーは以前と変わってないが、強度自体は上がっているらしい。

 

 

「そう? じゃあ、もう少し楽しませて、ね」

 

 

「ッ、い"っ!」

 

 

「ん"ッ!?」

 

 

 重くのしかかる腕を受け止めているせいで、がら空きになった上半身に大針を突き刺そうとするオカマの脇腹に蹴りを入れる。その際の反動で距離をとりつつ、腕に痣や青タンができていないかを確かめる。

 

 

「……やるわね。……ねぇ、アナタ」

 

 

 見たところ傷らしい傷はできておらず安堵していると、あちらさんもあまりダメージはなかったのかピンピンとした様子で俺に声をかけてくる。

 

 

「アタシからあの方に推薦してあげましょうか? あの子の代わりには十分そうだわ。見たところ、肉体強化系の個性なんでしょ?」

 

 

 あの方? 誰だ。……いや、なんとなくだが察しはつくな。この時系列だと異能解放軍はまだ虎視眈々と力を溜めているか、リ・デストロが組織再編をしている頃だ。ヤクザもヴィランの台頭で力を失っているし、組織立ってヴィランを統率しているやつの心当たりは1人しか居ない。

 

 

「話だけなら聞かせてもらおうかな。ただ、この場所では言いにくいんじゃないか?」

 

 

「あら? そうでもないわよ」

 

 

 なんだとと言い返す間もなく、オカマは不敵に笑う。

 

 

「アナタは耐えてね」

 

 

「まさか……!」

 

 

 股を開き、両腕を上げたオカマに、奴がこれからしようとしていることを察した俺はそれを止めようと声を荒らげる。

 

 

「やめろ!」

 

 

「野次馬が邪魔なら消えてもらえばいいだけよォ!」

 

 

 力を溜めて両腕をハンマーのように地面に叩きつけると、叩きつけられた場所を起点として地面が割れ、衝撃波が起きる。瞬間、視界にアスファルトが宙を舞った。

 

 

 

 ###

 

 

「戦いやすいように更地にしてあげたのにいなくなっちゃったの〜?」

 

 

 クスクスと弱者を嘲笑うかのように想い人の敵討ちに赴いたヴィランは、想い人が逮捕される原因になったであろう男のために周りにいた野次馬ごと周囲数百メートルを吹き飛ばした。

 辺りに立ち並んでいた塀や電柱、家屋はみる影もなく、むき出しの大地のみが残されていた。水道管も破裂させられ、月下での湿度が少し上がるもそれを気にするものは誰もいない。

 

 

「この程度で死んじゃうならあの子を捕まえたのはアレじゃないってのは本当みたいね」

 

 

 マッハアクセルを倒すには、奴のスピードに追いつくか捉えることのできる身体能力と動体視力を要する。それがあったとしても、そこに防御系の個性を打ち抜けるパワー、もしくは技術が必要とされるため、並大抵のヒーローでは倒すことは出来ない。ましてやただの一般人に倒されるわけが無い。

 

 

「期待はずれね。本気じゃないとはいえ、私の一撃を受け止めたからてっきり……」

 

 

 強いモノに惹かれるタチのヴィランはその男に、マッハアクセル以上の強さを求めたのだが杞憂だったと肩を落とす。ヴィランの好むマッハアクセルよりも強いヴィランはいるが、彼らを従える王は別格だ。好意を抱くのもおこがましいと脳裏に過った存在に首を振ろうとした刹那。

 

 

「なに……?」

 

 

 キィインと聞き慣れない音が聴こえて、ヴィランは首を傾げた。煩わしいサイレン音ではない。面倒事を省くために近くの警察署ごと吹き飛ばしたのだ。野次馬が通報していたとしても、到着までにあと10分はかかるだろう。

 ヒーローはやってくる時に音は出さない。それに彼らもまた夜間ということもあって時間がかかる。街に根差すヒーローは男との会敵前に処理している。少なくとも8分は余裕があるため、その時までは楽しもうとしていたヴィランだったが、王と会った時以来の胸のざわつきに動揺を隠せなかった。

 そして、ゆっくりと、音が聴こえた場所へと身体ごと視線を向ける。

 

 

「……誰、アナタ……」

 

 

 立っていたのは見たことの無いフルフェイスのマスクを被った赤いマフラーをたなびかせるナニモノかで、ヴィランはその声を震わせた。

 赤く大きな瞳、胸部と腹部に筋肉のようについた6枚のプロテクター、薄緑の手袋とブーツを履いた奇妙な存在。その佇まいからは何も感じないのに、何故か彼の本能は警鐘を鳴らしていた。

 

 

「ヴィランの敵、そして、人類の味方……」

 

 

 マスク越しのくぐもった声は、怒りと悲しみを滲ませたそんな声だった。少なくともヴィランではない。ヒーローだとすればいつの間にやってきたのかという疑問がわく。

 

 

「なんなんだ、お前……!」

 

 

「仮面ライダー。仮面ライダー2号」

 

 

 本能から素の声を出し問いかけたヴィランに、仮面ライダーはポーズをとることなく目の前の敵を真正面に捉えながら口にした。

 

 

「仮面ライダー……? ォォッ!!?」

 

 

 なんだそれはと警戒しつつも思い浮かんだ言葉を口にしようとした瞬間、ヴィランの身体に激痛が走る。

 

 

「罪のない人々を、俺のせいで死なせてしまった」

 

 

「……ッ! ……ォッ! ァ……ッ!」

 

 

 たった一撃。たった一撃でヴィランの肺から酸素が消える。そんな錯覚すらさせるほどの一撃を腹部に加えられ、ヴィランは痛みを声に出すことができない。憤って、怒り任せに力を振るうこともできないほどの痛みを感じながら、捉えきれないほどのスピードで拳を突き出してきた存在を見つめる。

 

 

「彼らには明日の予定も、来週の予定もあったかもしれない。なのに、こんなの、人の死に方ではない」

 

 

 この場に生きていた生物はもはやいない。嘆いても帰ってこない。これがヴィラン、個性をもった悪意と暴力の化身の正体。今まで戦ってきたものがいかに生易しいものだったかを仮面ライダーは痛感した。

 

 

「私だけが傷つくのならそれでいい。だが、私以外の、ただ生きていただけの彼らを殺めた貴様を私は絶対に許さん」

 

 

 判決は下った。ようやく酸素を取り込んだヴィランは反撃ではなく、逃走を選ぶ。逃げ切れる気はしなかったが、それでも逃げるしか手はないと思った。不運にも自らの行いでヒーローを苦しめる人質はいない。最短でもあと5分はかかってしまう。

 ならば、こちらから近づいて少しでも可能性がある方に賭けようとヴィランが走り出す。

 

 

「どこへ行く」

 

 

「アアアアアアッッッッ!!!!?」

 

 

 自慢の腕がへし折られる。その激痛に今度は叫び声をあげる。紙を折るように簡単に折られた右手は、仮面ライダーに掴まれたままで、引き剥がそうとすれば骨折の痛みが襲ってくる。

 

 

「アッ……ッ! アアアアアッッッッァッッァッ!?」

 

 

 個性で変形させた先端もチョップで叩き落とされ、さらには肥大化させた左手も叩き割られる。ただ身体が大きく、瞬間的な超パワーを出せるという個性に付け加えられたそれはヴィランにとっては愛すべきものだった。弱き者を蹂躙し、突き刺し、押し潰し、壊す感覚は生きている充足感を存分に味あわせてくれた。だが、今それが自身を苦しめる重しとなって返ってくる。

 

 

「……ゆ" ゆ" ゆるひて……も、もう、し、しないから……ゆ、ゆるひ……」

 

 

 気づけば命乞いのような、これまでの罪を棚上げして許しを乞っていた。今まで自分に対してそうして来たものたちを侮蔑し、嘲笑した自分がすることになってもヴィランは、これ以上痛みを感じなくて済むのならと自尊心を投げ捨て咽び泣いた。

 そんなヴィランの姿を見て、仮面ライダーはもとより命までは取る気がなかったため、静かに頷く。それを見たヴィランは個性を賜った時と同じくらいの笑顔を浮かべ───────

 

 

 

「アァッ!? なんでっ!? あああアッ!? イタッ、あひ、あひがぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 

 その顔を再び絶望に歪ませ、あまりの激痛と過剰に分泌された体内物質の影響もあって白目を剥いて地面へと倒れた。

 

 

「……これで二度と悪さはできないだろう」

 

 

 あとのことは警察に任せようと、まだ姿は見えないが強化された耳に届くサイレン音を聴きながら仮面ライダーはその場を立ち去る。面倒なヴィランと関わってしまった……というだけでは済まされない事態となったことに、一文字隼人は仮面の中で歯噛みした。

 もしかしたらマッハアクセルのことと同じように、あのオカマのヴィランを倒したことで狙ってくるヴィランがいるかもしれない。その時に周りの誰かが自分のせいで犠牲になることはもうあってはならない。

 一文字隼人という名を授かり、改造人間となり、仮面ライダーとなることの重さを思い知った彼は、戻ることの無い時間と、無責任な自分へと怒りと悲しみを顕にするのだった。




あともう1話主人公が曇る話がある。

オカマヴィラン:つるっパゲ2m巨漢。3日に1回くらい両腕攻撃でナッパのクイッ(誇張表現)ができるくらいの個性のヴィラン。そこに誰かさんが変なもん付け加えて、人1人殺すのに5秒もかからないほどのヴィランになった。クイッのインターバルを短縮されているものの、最後に使うと味気ないため初手に雑魚処理として使用している。尊大な自尊心を持ち、弱者を踏みつけることを快楽としていた。

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