ファイズ新作は熱い。令和55年5/05!
「こいつは……ひでぇもんだな」
「……」
数時間前まで存在していた街は、たった1人のヴィランの気まぐれにより跡形もなく消え去った。爆心地からやや離れた場所にはこの街の建物の瓦礫が散乱している。
被害規模自体は警察やヒーローにとっての脅威とされている魔王がここ近年起こしたものに比べると生易しいものだが、それでも住宅街が被害に遭ったこともあり死者は看過できない数字であった。
巨悪から補足されないようにと、場所を転々として個性と肉体の強化に勤しんでいたために、駆けつけるのが遅れた2人のヒーローは目の前の惨状に顔を顰めた。
こんな住宅街で突発的な犯行とは思えない志村菜奈は1人歩き出すと実況見分を行っている警察官へと声をかける。
「すみません」
「ん? あぁ、勝手に入らないで。危ないですよ」
住宅街に近い位置に警察署があり、被害を受けた所轄の警察官は非番の者含めて誰一人としていなかった。そのため、2人と親交の深かった警官の姿はなく、代わりに管轄外の警察署から駆り出されたのであろう応援警官が2人の動きを止める。
「私たちは……」
「待ちたまえ」
志村菜奈が身分証を出して、自らがヒーローであることを示そうとすると低い声がかかる。
見れば制服ではなくスーツ姿の、明らかにこの場にいる誰よりも発言力と権力、地位の高そうな威厳をもった男性がいた。菜奈の見立ては当たっており、2人の動きを止めた警官が敬礼のポーズをとっているのが何よりの証拠だった。
「彼女たちの相手は私がする。君は引き続き近づいてくる野次馬や報道陣の対処を頼む」
「はっ!」
警官の返事を聞いて、男は菜奈たちを引き連れ、規制テープの先へと入ると口を開いた。
「現状は見ての通りだ。死者・行方不明者は今のところ不明。運良く街の外に出ていた住人からの連絡は今のところなし……というのも、交番も警察署もなくなってしまった」
対応は全て本庁が行っているが、事件発生から2時間経っても近親者からの連絡はないと男が付け足すと菜奈が口を開く。
「……これをやったヴィランは?」
「既に逮捕されているが……今は病院の方に行ってもらってるよ」
こういったことは慣れているのか淡々とした口調で告げる男の言葉に菜奈は険しい顔で首を傾げた。
「病院に?」
この惨状に駆けつけられたヒーロー、もしくは警官がいてヴィランを捕縛したのかと菜奈は驚きを隠せずにそう尋ねるも、男の顔は変わらず無表情だった。
「我々が到着した時、実行犯のヴィランは両腕の肘から出血をして地面に倒れていた。足も骨折していると見られ、第1発見者が敗北したヒーローと勘違いするほどに酷いありさまだったよ」
「えっ……」
その話を聞いて菜奈が当惑すると、背丈の高い男が早足で近づいてくると菜奈たちと話していた男へと耳打ちする。
「……そうか」
男からの報告を聞いた男は、小さく頷くと再び菜奈たちの方へと向き直る。
「ヴィランは一命を取り留めたそうだ。出血も個性で変形させた箇所が叩き落とされたためか、死に至るほどではなかったらしい」
足の方は元に戻ることはないほどにバラバラにされていたそうだがと男は自嘲気味に告げる。
「あの、どうしてその怪我人が主犯だと?」
「本人が言ったんだよ。第1発見者……さっき来た私の部下が見つけた時にね」
警戒しながら近づいた部下がヴィランの外傷から抵抗することが困難と判断して接触を試みると、意識を取り戻したヴィランは声を震わせながら男に助けを求めた。
『た"、た"の"む"っ、た、たずげでぇ……! こ、こ、殺されるッ……』
縋るようにして言葉を発したヴィランに、男は事件に巻き込まれた被害者、あるいはヴィランと戦闘したヒーローだと思っていた。しかし、話を聞けば彼はヴィランで、しかも公安にマークされている指名手配クラスのヴィランということがわかった。
「名前は那波 来栖。3年前から各地で強姦、強盗、大規模な破壊活動を繰り返しているヴィランだ」
差し出された写真にはツルツル頭の強面で紅い口紅を塗った男が写っていた。この顔に覚えがあるのかグラントリノが口を開く。
「見たことがある。オレが尻尾を掴んだ頃には四国に身を移していやがった」
「だとしたらあなたは運がいい。連戦でなければあいつに勝てるヒーローはいないだろうからな」
その理由を口にするのが面倒なのか、写真を裏返してヴィランの個性と戦闘スタイルについて記されたメモを見せると、このヴィランを知らない菜奈は顔を顰める。
「厄介だね、周囲数十メートルを吹き飛ばす超パワーか」
「加えて、両手を武器に変形させるか……」
スピードに自信があるグラントリノのであれば、爆破から逃れることも変形後の攻撃にも対応はできる。しかし、それも爆破の規模が町1つ分となれば話は別だ。
「ちなみに手を変形させる個性は自称で、本当かは知らない」
「……随分とペラペラと喋りましたね、そのヴィラン」
指名手配犯にしてはと暗に潜ませる菜奈に男は同意する。
「かなり脅えていたようでね。命を救ってくれるならとなんでも話してくれたよ。彼が君たちの追う魔王の手先ということまでね」
「「!?」」
なんでもないように発された言葉に2人は目の色を変える。先程からも警戒心やこの地を地獄に染めたヴィランに対する怒りはあったが、それとは別の感情が湧き上がってくる。
「……失礼ですが、あなたは?」
私たちのことを知っているようですがと問いかける菜奈に男はスーツの襟を正す。
「名乗るほどのものでもない。私は政府の人間だ」
「政府……?」
「なるほど……それでオレたちのことも知ってるってわけか」
「ああ。後継の育成は順調そうで何よりだ」
オール・フォー・ワン、ワン・フォー・オールのことを知っている人間は限られている。志村菜奈、グラントリノの知る限りでは弟子と彼を庇護する信頼出来る警官のみに留めている。他に知っているものがいるとすれば雄英関係者と諸悪の根源くらいかと思考をめぐらせる菜奈に男が肩を竦める。
「そう警戒するな。あの悪辣な魔王の対処には我々も手をこまねいている」
「その対策をしてる最中にオレたちのことを知ったってか」
グラントリノの質問に頷いて答えた男は話を戻そうと咳払いをする。
「さて、今回君たちにこのことを話したのはあの魔王が関わっている可能性があるためというのと、1つ心に留めておいてもらいたいことがあったからだ」
そう言って歩き始めた男に、2人は目を合わせると男の話を聞くため追いかけるように歩き出す。
「君たちは魔王が関わったヴィランが自らの主の話をしたらどうなるか知っているか?」
「もちろん。アイツの話をした瞬間、ヤツに与えられた個性を介して制裁を加え……待って」
言っている途中で、そのヴィランが生きていることに疑問を抱いた菜奈に男は「そうだ」と頷く。
「そのヴィラン曰く、腕を変形させる個性は貰い物。戸籍に書かれていたのは超パワーのみで、腕の変形能力は後から与えられたものだった」
個性発現期から今に至るまで他者に"個性"を奪い与えることができる個性を持った者はたった1人しかいない。
「オール・フォー・ワンに個性を与えられたものは、彼に関する情報を話すだけで与えられた個性因子が破裂し、死に至る。それが彼が魔王たる所以の1つなのだろう」
彼に個性を与えられ、裏切って生きていられるものなどいない。情報漏洩を防ぐためであると同時に他のヴィランたちへの見せしめにもなる。古い時代から存在する見せしめだと政府の男が呟くと、話の続きへと移る。
「しかし今回それが起こらなかった理由としては2つ。1つはこのヴィランがオール・フォー・ワンの手先では無いというものだが、個性が増えている点と彼の名前を知っている時点でないだろう」
「もうひとつは?」
菜奈が急かすように問いかける。すると、男は少し間を置いてから口を開く。
「近年、ヒーロー、ヴィラン、一般人問わず個性所有者を狙った反個性組織がある」
「……そんなの昔からあるでしょ」
「志村」
口を挟むなと窘めるグラントリノに菜奈は不服そうにしつつも男の言葉を待つ。
「そうだ。昔からある。だが、個性発現によって停滞した科学力と技術力を、数世紀先まで押し上げた無個性の集まりがあるのだ」
そこから語られたのは2人の想像の及ばなかった奇妙な話だった。
個性を持つものたちに虐げられた無個性たちは、彼らへの復讐心を募らせ、無個性でも伸ばせるからと知識と技術を蓄えた。そして、それは次の世代へと受け継がれていき、とうとう個性を持つ人々へと対抗しうるものへとなった。
無個性の人間を個性持ちを超える超人へと押し上げる。それを彼らは改造人間と呼び、ヒーロー、ヴィラン、一般人を問わず過去に無個性だという理由だけで他者を貶め傷つけたものへと反旗を翻した。
「志村菜奈。君は相対した経験があるだろう。異形型の個性を持つと思わしき怪物の姿を」
「あれが無個性……?」
「元はな。君の前に現れた連中は全員が改造手術を受けて、人並み外れたパワーと能力を持っている」
男の言葉から、象の化け物の姿を思い浮かべた菜奈は彼が元々弟子と同じ無個性であったことを知り、嫌な汗が流れるのを感じた。グラントリノも雲行きが怪しくなってきたと表情を険しくする。
「組織の名はクライシス。語源を知りたいところだが、聞く前に構成員たちは情報秘匿のため、死が来ると自爆したり溶解するという性質を持っている」
どこかで聞いたような話だろうと付け加えた男に、2人は神妙な顔で話の続きを待つ。
「そして、もう1つある性質としては個性を恨むがあまりか……個性を持つ人間に攻撃を加えると、攻撃されたものの個性が消滅するというものだ」
「……消滅?」
現実味のない話にグラントリノが首を傾げるも全て事実だと、いつの間にか後ろに立っていた若い男が2人の間に入るとスマホの画面を見せる。
「これはさっきの……」
画面には今回捕まったヴィランが映っており、消音であるため何を叫んでいるのかはわからず、意味もなく手を振り回しているようにしか見えない。
「我々も噂程度にしか思っていなかったが、彼の話を聞いて確信に変わった」
那波は個性を使おうとしているものの、全くその片鱗すら出すことが出来ていない。個性が発現していれば、骨折していたとしても一部分くらいなら変形させられるはずであるが、彼の持つどの個性も力を発揮することが出来ていなかった。
「というわけで、我々が君たちへと警告するのはただ一つ。
なんか文章めちゃくちゃな気がするので適宜修正お願いします……仕事なので寝ます……
もうちょい書きたいこととか、補足とかあったんですけどね……(´・ω・`)