永久に君を刻んで~スピンオフ~ 零れ落ちる砂   作:アテル

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登場ライダー:仮面ライダーゼロノス
登場怪人:ラットファンガイア


クレフ・始まる激闘

 僕の名は金城 真船(キンジョウ・マフネ)。ここ、中央トレセンでトレーナー業に勤しむしがない青年だ。今は訳あってこの娘、アストンマーチャンを救うため、彼女のトレーナーとして3年間を繰り返している。

 これから語られるのはそんな僕が過ごした時間のうちの3年間。僕が仮面の戦士となり、悪と戦った不思議な世界でのお話だ。

 ここから僕はこの記憶を語る存在から離れ、この世界の住民に戻る。語り部は…神にでも任せよう。それでは、さらばだ。

 

_________

 

 その日は突然訪れた。

 真船は今日もいつもと変わらずニュースを垂れ流しながらマーチャン4コマに銅像製作、加えて新業務のフィギュア原型製作と無駄に芸術面に凝った才能を活かしていた。

 

『近年問題になっている怪人問題ですが__』

 

 怪人問題。聞き慣れぬその単語に首を捻る。この時間ではかれこれ3か月程生活しているが、何度か耳にする怪人に対し実感を持てずにいた。

 そんな時だった。

 

「ん?汽笛?」

 

 故郷では何度か耳にした蒸気機関車の汽笛が聞こえた。それも結構近くで。当然、時代は令和でここは府中。蒸気機関車なんていうレトロな列車が運行しているはずもない。

 一瞬気になったが、誰かがそういう列車趣味で、汽笛を流しながら作業をしているのだろうと勝手に結論付けた。

 

『キイイイイ!』

 

 その直後だった。鼓膜が破れる程の大音量でブレーキ音が鳴ったのだ。今は真昼間。ここは校舎。勿論生徒は授業を受けている時間だ。こんな大音量は流石にうるさいし妨げになってしまう。誰が流しているのかは分からないが注意しよう。そう思い彼は部屋を出た。

 

「は?」

 

 音源はすぐに見つかった。いや、目の前にあった。目の前に機関車そのものがあったのだ。黒い素体に緑のラインが加わった見た目。先頭車両には牛を模した様な立派な角が生えており、どう見ても普通の列車ではない。どうやって入って来たのか?などの疑問は尽きないがここに居座られてはやっぱり迷惑なので車掌に直談判しよう。そう判断し、真船は1人その列車に乗り込んだ。

 

「ちょっと!邪魔なんですけど!…うわっ!」

 

 文句を言いながら乗車するが、その列車は真船が乗り込んだ瞬間発射した。

 進行方向に線路を敷きながら直進する。道なき道を進む列車はワームホールを作り出し、真船を乗せたまま旅立っていった。

 

「おいおい嘘でしょ…」

 

 その様子を窓から眺めていた彼は車掌へクレームをぶつけるために車掌室へ向かう。1つ、また1つと扉を開け、先に進んでいきやがて先頭車両にたどり着くと…

 

「誰もいない」

 

 先頭車両には誰もおらず、何故かバイクが1台、ポツンと置かれていた。このバイクにも牛らしき角が装着されており、随分と風変わりな物だった。どうやって操縦しているのだろうか。ここでもまた、疑問は浮かび上がった。

 文句は言う相手がいてこそだ。肩透かしを食らった気分だがしょうがない。そう受け止め、真船は客用の車両に戻っていく。

 さっきは通り抜けるだけで詳しく見れていなかった内装を眺める。こちらも外装と同じく黒を基調としアクセントとして緑と黄色を使用しており、隅にはL字型の椅子と机が置いてあった。広さに目を向けるとそんなに広くなく、せいぜいカラオケボックス程度の広さしかない。現代の縦に長い車両に慣れている真船にとっては少々狭っ苦しい印象を受けた。

 椅子に座ってみる。クッション生地で、案外座り心地がよく、長旅にはうってつけだった。対角線にも同じ椅子と机のセットがあり、5~8人程度なら同じ車両で乗れそうだった。

 さて、次はどうしようか。そう思った瞬間に扉が開き、先程誰もいなかったはずの先頭車両から男がやって来た。男は薄茶色の外套、同色のフェルト帽に身を包んでいた。

 

「誰…?」

 

 どう見ても普通じゃない。咄嗟に危険を感じ、警戒心を剥き出しにしながら真船は男に問う。

 

「…これを使え」

 

 だが男は質問を一切無視し、自分のペースで話す。

 彼が机に置いた物はベルトだった。今日何度も見た配色である黒、緑、黄。見様によっては駅の改札にも見えなくもないバックルが光る。左サイドにはカードホルダーらしきものが備わっており、中には何枚かのカードが見えた。

 

「これは…?」

 

 当然、疑問が湧く。突然現れた変な男からよく分からない物を渡されたら言いたいことの1つや2つ位出てくるのも当然だ。それにまだ受け取るとも言っていない。

 

「お前は今日から戦士だ。この世界のために戦え」

 

 そう言い残し、男は出ていった。真船も慌ててベルトを手にして追いかける。無論、突き返すためだ。

 

「ちょっと待てよ!…!?」

 

 男を追いかけて車両から出た。その瞬間景色が一気に変わった。時間は夜。場所は公園。おかしい。自分はあの不思議な車両にいたはずでは?目まぐるしく移り変わる状況に頭が付いていけなさそうだった。

 ふと、前方に誰かがいるのが見えた。いくら満月とはいえ流石に月明かりだけでははっきり見えない。

 

「あの~誰かいるんですか?ここってどこなんですか?」

 

 真っ先に出る質問はそれだった。確かにその人に聞ける質問などそれくらいだろう。彼もまた聡明なトレセントレーナー。混乱したこの状況でさえ一定の冷静さは保っていた。

 

「すみませ~ん!ここって、どこなんですか~?!」

 

 返事は返ってこず、不安になり声量を挙げて再び質問する。だが答えが返ってくる気配は一向になかった。

 どうしたのだろうか。何かまずい事でも起きているのかと思い近寄る。

 

「あの…」

 

 声を掛けながら肩を叩く。するとその人は真船に倒れ掛かって来た。倒れ掛かって来たかと思うと体がクリスタルの如く透明になり、音を立てて砕け散った。

 _死んだ?

 命が消える瞬間を目の当たりにし、真船はパニックに陥った。いくら歳を重ねようが、人の不審死が目の前で起きる事を経験するだろうか。いや、無いだろう。初めての経験に流石の真船も戸惑った。恐怖し、わめき叫んだ。それが最悪の判断だとも知らずに。

 

「…まだ人間がいたのか?」

 

 暗闇から声がする。まるで悪魔の声というべきそれは、不気味な反響をしながら真船の下へ近づいていく。

 

「あ、ああ…」

 

 ようやく彼の目にそいつの姿が映った時、彼は絶望のどん底へと転げ落ちた。

 化け物!そう叫びたいのに声が出ない。

 

「おい、人間。俺様が何に見える?」

 

 突然、その化け物が彼に質問をする。

 答えなければどうなるか。先程のあの人を見れば想像に難くない。目の前にあるのは…死。それを肌で感じ取る。

 

「あ…はぁ…」

 

 だが目の前の死よりも眼下の化け物に対する恐怖の方が先行し、足がすくむ。喉が震える。舌が動かない。金縛りにあったかのようにその場に縛り上げられ、真船は情けない嗚咽しか口から出てこなかった。

 

「チッ。つまらねぇ。食う気も失せた」

 

 『食う』。その単語が更なる恐怖を生み出す。蛇を前にした蛙の如く、凍り付く感触がした。

 

「死ね」

 

 化け物はどこからともなく剣を取り出し、彼へ振るう。

 ヤバい。死ぬ。

 死が本当に目の前に来た時、彼は走馬灯を見た。当然、マーチャンとの思い出が。これまでの数々の思い出が蘇る。

 

「(死にたくない…)」

 

 咄嗟に体が動いた。死への恐怖から来る生存本能が働いてくれたのか、刃をすり抜け、化け物との距離を取る。

 

「死に損ないが…」

 

 今度こそ殺さんと、ゆっくり化け物が近づいてくる。今度も避けられるという保証はない。どうする…。

 絶対的ピンチのこの状況。真船に冷静な思考が蘇る。

 ふと、さっきの列車での会話を思い出す。

 

「(『お前は今日から戦士だ』『これを使え』。もし、この推測が正しいなら、外套の男が渡したこのベルトは僕を戦士、とやらにするための道具だろう。一か八か、やってみるしかない)」

 

 ベルトを腰に巻く。カチャリと音を立て、綺麗に巻き付かれた。

 

「…全部、分かった」

 

 ベルトを巻いた瞬間、真船の雰囲気が変わる。巻いたベルトから膨大な情報が流れ込んで来る。久々のこの感触だが、今はノスタルジアに浸っている場合ではない。痛む頭を一発殴り、思考を無理矢理戦いに持っていく。

 カードホルダーから1枚、カードを抜き取る。そして、バックル上部にあるベゼルを動かし、ベルトを待機状態にする。笛で奏でられる待機音声が鳴り、戦士の降臨を告げる。

 真船はカードの緑でAと描かれた面を化け物に見せつけると、言い放った。

 

「変身」

 

 戦士誕生の言葉。悲しみを背負い、明日の自由のために戦う戦士の覚悟の言葉。それを口にしながら、カードをクロスディスクに装填する。

 

『Altair form』

 

 ベルトから機械音声が発せられると、真船のオーラをフリーエネルギーへ変換し、緑の鎧としてその身に纏う。胸と仮面には黄色の線路、ゼロレールが敷かれ、その上を2つの牛頭状の電仮面が走り抜けていく。やがて頭部の全面、すなわち目の部分へとやって来ると接触・変形。AltairのAの字を角で作る複眼が完成。

 方やクロスディスクの方でもカードと組み合わさってAの字を作る。ベルトのサイドバックルに目を向けるとそこには2つの武器が携えられていた。

 

 

 この戦士の名は、仮面ライダーゼロノス アルタイルフォーム

 

 

 今ここに、新たな戦士が誕生したのだった。

 

「貴様…仮面ライダーだったのか!?」

 

 驚きながら化け物が叫ぶ。変身した今ならようやくクリアに見える。化け物の見た目はまさにネズミ。ゴシック調な雰囲気をしており、黒い曲線で特徴的な耳を象っている。また、胸部にはステンドグラスが組み込まれており、心臓を彷彿とさせる。その化け物の名は、ラットファンガイア。人間に流れるライフエナジーを食す種族、ファンガイアの中の一体だ。

 

「『だったのか』、という過去的な表現は相応しくないな。『今なった』、という現在的な表現に訂正してもらおうか。…()の名は金城 真船。またの名を、仮面ライダーゼロノス」




という訳で真船君にはゼロノスになってもらいます(悪魔)
マーチャンが変身する、という作品は数あれどマートレが変身するのはこれが初?かな。だといいな

ちなみに初回の怪人に選ばれたラットファンガイア君ですが選考理由は完全に僕の趣味です。キバ好きとしてファンガイアは出したかったんですよね。その中でも倒しやすそう(偏見)な彼を抜擢しました

にしても戦闘描写久々に書くなあ…かれこれ…1年ぶりですかね。やっぱり戦闘描写書く時が一番筆進みます(次回の話)

追記(2026/02/07)  誤字修正



______
次回予告


ラットファンガイアの連携攻撃に苦戦する真船
連撃を浴び、朦朧とする意識の中で彼が導き出した答えとは
次回、『フェルマータ・一閃の熱狂』
「ここだっ!」
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