『鋼のムーンサルト!ラビット・タンク!イエーイ!!』
『Altair form』
「…変身」
「変身」
静かな言葉の次に、まばゆいフラッシュが放たれる。金城真船、仮面ライダーゼロノス。台羽創真、仮面ライダービルド。2人の仮面ライダーここ難波の地で対面した。緑の甲冑を身にまとう時の運行の守護者にして断罪者、ゼロノス。科学の叡智で人類を護るヒーロー、ビルド。
人類の守護者同士であるはずの仮面ライダー同士が…今、刃を交える。
「何故ドライバーを奪った!」
「自分のだって言ってるでしょうが!」
言葉を乗せ互いの剣を交え合う。激しい金属音は、平行線の舌戦そのものであった。
「俺はそれより、アンタの技術が気になるねっ!それどう変身してんのっ!」
「答える義理はない」
事実を素直に言っても信じられず、ましてフレンドリーに科学者としての好奇心をぶつけても無慈悲に叩き割られ、ビルドの苛立ちが積もっていく。
対してゼロノスも目に見えた嘘を堂々吐かれあまつさえ自分のベルトに…この呪いのベルトにすら目を付けてくる。そんな不届き者へさっさと片付けたい。
互いの心が刃の荒々しさに表れていく。
『Full charge』
『ボルテックフィニッシュ!』
ベルトの操作をし必殺技の準備を開始。互いの剣にエネルギーをチャージしていく。ゼロガッシャーには緑色のオーラが刃を覆い、ドリルクラッシャーは回転をして刀身にオーラを発生させる。
「「はあっ!」」
一定量チャージ後、同時にエネルギー刃を飛ばし合う。が、ほぼ同威力の攻撃。両者の間で相殺し攻撃を与えられるわけでもなく、肩で息をしながら両者にらみ合う。
その時だった。
「ぐぁっ…!」
響く銃撃音と同時にビルドがよろける。撃った方を見れば、そこには紅いライダーらしき人物が飄々とピストル状の武器を構えていた。紅いスーツの上を工業製品化のようなパイプが走り、そして胸にはコブラを模したかのような翠のマーク。頭部にはバイザーをしながら額から角に見立てた煙突が生えた奇怪な怪人。仮面ライダーというには段違いに不気味だ。
ゼロノスもその違和感を感じ取りゼロガッシャーを握る力を強める。
「おいおい悲しいじゃねぇか創真ァ。浮気かァ?」
話す声はエフェクトがかかっておりイマイチ判別できない。ただ飄々と、苛立たせるかのような声色をしているのは分かる。
「っ!…スターク!!!」
ただならぬ雰囲気を出すのはビルドであった。目の前のゼロノスを押しのけ怒りのままにスタークと名乗る怪人に向け走り出す。ドリルクラッシャーを何度も振り下ろし切りかかるがスタークは飄々と流し攻撃を捌いていく。銃を持っているにも関わらず徒手空拳で攻撃を捌く様子に、ゼロノスも困惑しながら確かな強さを感じ取った。
「オ~ラッ!まだまだだなぁ!」
ビルドが乱暴に体を振り回し攻撃をする。しかしスタークはそれをいなし、躱し、彼を挑発するかのように転がす。繰り返し繰り返し行われるその行為はまるでプロレスのようでその場の空気が少しずつ温まるのをゼロノスも感じ取っていた。
異様な光景だ。もうスタークはビルドに勝っている。なのになぜ彼は目的であるベルトの奪還をしない…?彼は何か別の狙いがある?ゼロノスの脳裏に言葉が過る。
『自分のだって言ってるでしょうが!』
「(もしあの言葉が本当だったら…あのスタークが仕掛けたものが嘘だったら…)」
「っ…うああっ!なぁあああああああ!」
武器を持つ力すら失いただタックルすることしか出来なくなったビルドが最後の力を振り絞り突っ込む。だが大した力になるはずもなく、真正面から受け止められた上でトランスチームガンにより切り裂かれてしまう。絶叫を上げながらその場に倒れ、ビルドはついに変身解除してしまった。
彼の周りにいくつかフルボトルが散乱し、スタークはそれを拾い上げていく。
「これはァ…パンダか。こっちは…掃除機」
ボトルをゆったり拾っていくスタークを眺め、ゼロノスの心は揺れる。あの戦い方は…あの行動は…違う。何十人と仮面ライダーを見てきたわけじゃない。片手で数えられるくらいだが。だが彼らは皆、心の奥で真剣だった。真っすぐ自らの正義を信じて戦っていた。
地べたに這いつくばる創真を見つめる。一度負けてなお、地面を掴み再び立ち上がろうとしている。彼の闘志はまだ燃え尽きていない。
「…信じるよ。あなたのこと」
為すべきことは決まった。ゼロガッシャーをボウガンモードにし即座にスタークを狙い撃つ。
「んんっ…いってぇなぁ…」
「…そこまでしなくていいだろう」
油断しきったスタークの首に光弾が突き刺さる。煙を上げ気怠そうにゼロノスを睨む。
「他人の問題に首突っ込んでんじゃねぇ!」
激高するスタークの弾丸を弾くと共に戦闘開始…になるかと思われた。弾丸発射と同時に何かが地下駐車場の壁を突き破りゼロノス目掛けて突進してくる。スタークに気を取られていた。ゼロノスはその突進に何も抵抗できず直撃。壁にめり込むほど吹っ飛ばされてしまう。
「おめぇさんはせいぜいそいつの相手でもしてな」
現れたのは全身にプレス機のような機構が生えている怪人、プレススマッシュ。スタークが呼び寄せた、スマッシュという怪人だ。やかましい雄たけびを上げながら再び突っ込んでくる。
「あぶなっ…!自分から、信頼を手放したってことで…いいんだな!」
ボウガンモードのゼロガッシャーをサーベルモードに切り替えスマッシュを迎え撃つ。突っ込んでくる。今度はタックルじゃなくプレスする気だろうか。腕を大きく広げてくる。
「はあっ!」
逃げるんじゃない迎え撃つんじゃない。ゼロノスも突っ込んでいく。腕で挟まれる直前飛び上がり空中で一回転。回転しながらスマッシュを切りつけ着地する。
「創真さん!…だっけ。すまなかった!貴方を疑ってしまって」
攻撃を避け切り裂く。何度も、何度も。ヒットアンドアウェイがゼロノスの真骨頂だった。そんな連撃の中ゼロノスは創真に語り掛ける。
「もう決めた!貴方を信じる!だから立ってくれ!!」
「っ…!勝手…なんだな」
創真の心に言葉が響く。言葉を受け止め力を込める。焦りはなくただ真っすぐ先を見つめる。台羽創真。科学者として、正義のヒーローとして、もう…負けたくない。
かつて記憶をなくしさまよっていた自分を拾い、科学者としてとヒーローとしての自分を与えてくれた恩人。だがその恩人のもう一つの顔は…創真が戦っていた組織の親玉だった。どうしてか。その裏に潜む理由は…考えない。叩きのめして仮面ひんむいて、全部話させる。話して今度は…!
「勝手なくらいが…ヒーローらしいか!」
自身に満ちた笑顔が創真に戻る。愛と正義を胸に秘め、ヒーローは反逆の戦士として返り咲いた。
「あんた恩人だって…信じてた」
「へっへっへ、なぁらオレの所に帰ってくりゃいいじゃねぇか」
「いんや、あんたをこっち側に引きずり込む!」
啖呵を切り新たなフルボトルを取り出す。銀地の太い缶に赤と青のビルドの装飾。創真開発の強化用フルボトル。ボトル天面のプルタブ型起動スイッチを引き上げる。すると起動音と共にドライバーセット用端子が飛び出てくる。
即座にベルトにセット、ボトルのビルドを模した前面が鋭く発光する。
『ラビットタンクスパークリング!』
「っ!…そのボトルは!?」
創真を挟むようにトランジェルソリッド輸送管を生成し、赤色青色のトランジェルソリッドが満たされていく。
「知らないでしょ。だって見せてないから」
『Are you ready?』
「とーぜん…変身!!」
輸送管が満たされきると創真に接着。ぴったりとアーマーとして形成された。
『シュワッと弾ける!』
ラビットボトルの赤、タンクボトルの青、そして弾け出るラピッドバブルの白。三色が混ざり合う仮面ライダービルドの新形態…
『ラビットタンクスパークリング!イェイイエーイ!』
「仮面ライダービルドラビットタンクスパークリングフォーム、俺お手製の新フォームさ」
ドリルクラッシャーを手に取りスタークと向き合う。さっきは負けた。今度は負けない。闘志が噴き出て止まらない。
スチームブレードを構え、テンポの速い足踏みを繰り返すスターク。
「はあぁっ!」
剣が混じり合う。激しい火花と硬い金属感が手に伝わる。何度も何度も刃と刃がかち合い、鍔迫り合いが為される。それでも状況は膠着…否、自信と覚悟のバフか、ビルドが一歩優勢だった。一段階跳ね上がったパワーは鍔迫り合いでも押されず、むしろスタークを押し返す。
「なぁにをっ!」
押し返されたい想定外、パワーアップの想定外、己が手中に収められなかった想定外。スタークは怒りのまま大ぶりの一閃を繰り出す。
「ふっはあぁっ!」
その一閃を受け止め素早いカウンター。腹部を狙った反撃を受けスタークは吹っ飛ぶ。
「平和の求道者として…愛の戦士として…アンタと戦う」
ドライバーのレバーを高速で回しエネルギーを充填する。
『Ready…GO!』
ビルドの眼前にワームホール上の図形が発生、周囲に生成されたディメンションバブルが対象…スタークをその図形に押し込めようと作用する。
「ちいっ!」
だがスタークは咄嗟に自身の胸部よりコブラ型のエネルギー体を射出。それをディメンジョンバブルの囮としてその場からの逃走を図る。
「待てっ!!」
『スパークリングフィニッシュ!!』
ビルドは前に大きく跳躍し右足を突き出す。ラピッドバブルによる超加速と、インパクトバブルによる衝撃増加を併せ持った仮面ライダービルドラビットタンクスパークリングの必殺技、スパークリングフィニッシュが炸裂した。
スタークが召喚したコブラたちを一掃しさらにその奥へ衝撃は伝播。遠くの方で小さな呻き声が木霊する。
「たあっ!」
対するゼロノス、彼は高速移動を駆使し何度も何度もスマッシュを切り裂きダメージを与えていく。連撃を与えていけばやがてスマッシュにダメージと疲労、そしてストレスが蓄積されてくる。怒りのまま放つ隙だらけの大技、それを誘い出すのがゼロノスの狙いだった。
狙いは的中、スマッシュが大きく腕を振り上げ地面に叩きつける。大地が揺れ何本もの巨大なプレス機が生えてくる。プレス機がゼロノス目掛けて押し寄せてくるが…。
『Full charge』
「はあっ!」
飛び上がりプレス機をすべて躱しながらベルトを操作。ゼロガッシャーに必殺技用のエネルギーをチャージしていく。ゼロガッシャーに緑の光刃が纏われた瞬間、プレス機を踏み台に大ジャンプ。
大きく飛び上がりそのままスマッシュ目掛けて刃を振り下ろす。地球の重力も存分に乗った大切断!スマッシュは呆気なく真っ二つに切り裂かれその場に倒れ爆発を起こす。
「はぁ…はぁ…」
脱力するかの如く変身を解除する。背後に立ち込める炎の方を向けば、その奥に同じく肩で息をしている創真が見えた。視線を動かしてみてもスターク、その変身者が倒れている様子は見られない。創真の表情からも察せられるが、どうやら取り逃がしてしまったらしい。
いや…目的を考えれば十分成功だろう。
「…それじゃ、創真さん」
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仮面ライダーゼロノスの愛機、マシンゼロホーンは非常に高性能である。通常時でもその最高時速は360kmにも達する、モタード車の形状では考えられない速度を発揮する。
そんな車両が高速道路を駆け抜ければトレセンのバスなどあっという間に追い抜いてしまうことも可能だった。
「おかえりなさい、2人とも」
待ち時間をさぞ満喫したのだろうか。手にはファストフードの紙袋を提げゼロホーンに寄りかかっている真船がアストンマーチャン、そしてスパイラルウインドを出迎えた。
額や指先には包帯も巻かれている。スパイラルウインドには何があったか察するのが容易いが、アストンマーチャンには何故だか分からない。当然、彼女からすれば一大事であり真っ先に問いただしたくなることであった。
「トレーナーさん…その怪我…どうされたのですか?」
「えっ…ああぁ…ちょっと…帰りに転んじゃってね。大丈夫大丈夫、大した怪我じゃないから」
あっけらかんと、それでいながら一線を引くような誤魔化し方にマーチャンの不信感が積もっていく。頬を膨らませ一歩詰め寄ろうとしたその時だった。
「あっ!不審者でありますっ!」
「えっ!?ちょちょ…」
学園内をパトロールと称し巡回していたフェノーメノが真船を発見。彼女にとっては見覚えのない、それも傷だらけの男が生徒2人に声をかけている。正義感に突き動かされ、フェノーメノは真船を捉えんと自身の足で駆け出す。
ウマ娘に追われて自分の足で逃げるヒトはおるまい。真船はゼロホーンにまたがり颯爽と逃げ出した。
「メノちゃん!?ま…待って!それアタシのトレーナー!」
追うフェノーメノを追い、スパイラルウインドも走り出す。その場にただ一人残されたアストンマーチャンはキュッと、拳を握った。
戦闘描写書きたい動悸が出て急遽着手しました。本編を…本編を終わらせたいのに…
半年に一回更新とかのふざけたペースだと完結に何年もかかるんでしばしはマーチャンシリーズ終わらせるため頑張ります
追記(2026/02/08) 誤字修正
次回予告
「金城真船。マーちゃんのトレーナーだよ。初めまして」
ドンドン顕著になるゼロノスの欠点
「仮面ライダー、この学園にもいるって噂だぜ」
少し、また少しと暴かれゆく真船の秘密
次回、「止まらない旅、時の往く道」