日本には古くから、外界と繋ぐ橋渡しになる地がある。長崎…その歴史が持つ独特の文化は人々を惹き付け、今でも栄えた街に数えられる1つに数えられるこの都市…。今日、その長崎に新たな異界へのゲートが開かれる。
「ここが…」
「ふぅん…面白みのない街」
「なんだっていいだろ?早く暴れようぜ!暴れりゃ、来る!」
繁華街に面した大通り、交通が激しく車や路面電車が往来しているにも関わらずデカデカと灰色の幕が出現する。ただの幕、そのはずなのに車がそれを通過することも出来ずあちこちで衝突事故が発生する。耳を突き刺す鈍い音が何度も轟き悲鳴が飛び交う。
騒然とした空気もお構いなし、幕に影が浮かんだと思ったその瞬間、
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けたたましい轟音を立てゼロライナーが着陸する。ドアが開き、出てくるのは変身ベルトを既に腰に付けた真船とスパイラルウインド。警戒心を高めながら降りると…彼らはそこに広がる光景に目を奪われた。
「なんだ…これ…」
「酷い…」
そこでは、あちこちに瓦礫が積み重なる荒れ地だった。所々に火が立ち込め、あちらこちらに黒く滲む焼け焦げた跡。人がそこら中に倒れているのに、彼らに動く気配は一切ない。そんな異様な空間の中心には意味ありげに佇む3人の男女。
真船はゼロノスカードを、スパイラルウインドはデッキケースを握る力が強まる。この事件の何かを知っているであろう3人組。だがその雰囲気から、ただならぬ存在であること、これから起きるであろう一件の想像が着く。
「まんまと来たか、仮面ライダー」
中心の男が2人を見て、にやりと笑みを浮かべる。不敵で、不気味。身の毛のよだつような笑い方に真船らの警鐘がガンガンガンガンとうるさく鳴り響く。
「『ハンドレッド』が1人、ヒトモシ。貴様らの力を奪いに来た」
ヒトモシ、そう名乗った男は懐より小さなスティック状のアイテムを取り出す。アイテムの持ち手には鬼の面が象られておりその名を…変身音叉。一振り知れば折りたたまれていた音叉が展開し、それを強く彼自身の額に打ち付ける。すると音叉が振動。特殊な音波を周囲に放ちながらヒトモシが緑色の炎に包まれていく。
「同じく『ハンドレッド』が1人、アマガベ。そこにいるの、ウマ娘よね?狩ってみたかったよの~お命、頂くわね」
次に名乗るは3人組の紅一点。アマガベと名乗る女は3枚のメダルを取り出し自身の腰部に巻いてあるベルトへはめ込んでいく。サメの意匠が掘られたもの、クジラの意匠が掘られたもの、オオカミウオの意匠が掘られたもの、それぞれコアメダルと呼ばれる錬金のメダルを装填する。
「同じく、マツヨイ。俺は最強だ」
そして最後。一番の巨漢が懐から取り出すのはミニカー状のアイテム。名を…シフトカー。それを自身の左腕に巻いてあるシフトブレスに装填する。
「「「変身」」」
ヒトモシの周りの炎が
『サメ!クジラ!オオカミウオ!』
アマガベが装填したコアメダルから発せられるエネルギーが彼女の周囲にアーマーとして形成される、大海のエネルギーを一身に纏い荒ぶる波を手に戦う狂気の戦士、仮面ライダーポセイドンに変身した。
『ドライブ!タイプ…NEXT!』
マツヨイがシフトブレスにシフトカーを装填した瞬間、ドライブドライバーが認識。漆黒の鎧が彼にフィットするよう生成し装着させる。これにより、仮面ライダーダークドライブが未来より現着した。
「いい加減粗悪コピーにも飽きてきてな。生の力、刈り取らせて貰おう!」
粗悪コピー。彼らの自身が振るう力に対する評価はその通りであり…穿った見方でもあった。歌舞鬼は自身の鍛えの足りなさからか音撃を使えず、ポセイドンとて彼女のコアメダルに意思が宿ることもなく、ダークドライブにもベルトによる戦闘補助はない。どこかしらの欠点が目立つ、そんな仕様だった。
だがしかし、そんな形だけを真似たような装備であろうと…脅威は本物である。
「っ…!変身!」
『Altair form』
「変身!」
武器を構え襲い掛かってくるハンドレッド軍に気圧されながらも真船、スパイラルウインドそれぞれ咄嗟に変身。ゼロノス、ナイトとして相対する。
「はぁっ…ぐっ…んうぅぅぅぅ!」
ゼロガッシャーを構え、歌舞鬼・ダークドライブと戦闘を繰り広げる。ゼロノスは大剣を振り回し、彼らの武器からの攻撃が届かないように間合いを保たせるような大振りな動きを披露。しかしこれに歌舞鬼らはすぐに対応し挟み撃ちの形を取る。攻撃の隙を狙った数的有利に任せた戦法を取った。
歌舞鬼の持つバチ状武器、音撃棒で相手をされる。2本のバチで斬撃を受け止めようと構えてくるので剣の重さに任せ押し返し不意を突いたキックで対応、歌舞鬼を吹っ飛ばす。
「はぁっ!」
すぐに振り返り、ダークドライブの相手をしようとすると、そこにはもう既に眼前に迫りくるダークドライブの姿があった。しまった。冷や汗が出るまもなくダークドライブのタックルがクリーンヒット。
「ぐあっ…!」
突きとばされ受け身。距離を取り態勢を立て直そうとした瞬間、音撃棒がゼロノスの腹を叩く。内臓が震えるような大きな衝撃に一瞬、彼の視界が真っ白になりそのまま吹っ飛ばされる。
時を同じく。ナイトとポセイドンの一騎打ちが繰り広げられていた。高速で自身も得物を振り合い、発生した斬撃の余波が地面を抉る。
「はあっ!ああっもうっ!」
ナイトが振るう得物はウイングランサー。長い槍状の武器で斬るより突く方を得意とする武器だ。それに対してポセイドンが用いるのはディーペストハープーン。槍、というよりかは薙刀に近しいだろうか。全長は2mにも届き、ウイングランサーよりも少しばかりだがリーチがある。
その為か、決定打は生まれずそれどころかお互い攻撃が絶妙に届かない。刃が交わるのみの、それでも壮絶な攻防戦が続いていた。
「随分っ…鍛えられたのねっ!」
ポセイドンの安い挑発がナイトの癪に障る。まるで彼女を対戦相手として試すかのような剣捌きが苛立ちを招いて仕方がない。出来ればこっちは戦いたくなどないのだそれもこんな相手となど。
薄ら怖い雰囲気に反発心を発揮し苛立ちを露わにしながら何度も刃を振るう。甲高い金属音が繰り返し響き合い、拮抗状態に変化はない。
「
それを崩すかのように、ナイトが腰のダークバイザーを引き抜き一閃を浴びせる。直撃に怯むポセイドンへ、二刀流の連撃が繰り出されていく。斬りつける度火花が散りポセイドンが怯む。これならいける、そう直感しナイトがさらなる攻撃を仕掛けようとした時だった。
「はあっ!」
「っ!?」
ディーペストハープーンの先端に、水が高圧力で集まり先端が青白く輝く。デカめの攻撃が来る。危機を察知しナイトが後退、距離を取るとポセイドンは水を刃状に形成し直し大きく振るう。すると水の斬撃としてナイト目掛けて飛んでくる。
驚きはすれど今更困るような攻撃でもない。即座に叩き落し斬撃の無力化には成功する。だが…戦況はまた膠着状態。先ほどまで距離を詰めていたのにいつの間にか間合いが空いている。
「ウマ娘っていいわよねぇ~。この世界で一番強いしゅ・ぞ・く♡反吐が出る」
背筋がゾッとするような殺意。理不尽極まりない暴力。恐怖がない訳じゃない。だが、ナイトの中に燃える怒りがそれを打ち消し勇気をくれる。こんなのに負けちゃいけない。武器を握る力がぐっと強くなる。
「つまらない感性…強い弱いより、友達と笑顔でいられる方が、アタシは大事だね!」
勢いよくカードを引き抜こうと力を込めた瞬間、甲高い音と共に両者の間にゼロノスが吹っ飛んできた。
「っ!?トレーナー…!」
集中が一瞬途切れる。カードを引く手が緩み、視線が彼の方へ向いてしまう。
「ゼロノスとは、お前も運がないな」
倒れるゼロノスへ、歌舞鬼が声をかける。冷徹というよりいくらか哀れみと殺意を孕んだ声色。敵に慈悲を含んだ音撃棒がゼロノスの眼前に突きつけられる。
「そんな訳ッ…!」
そんな哀れみを受け入れる道理なんてない。怒り心頭、声を荒げながら音撃棒を払いのけ、そのまま歌舞鬼の顎へアッパーカットを仕掛ける。歌舞鬼からすれば予想外の一撃。徒手空拳の一撃は彼の顎を割る。
顔を抑えよろめく歌舞鬼へ、一歩一歩ゼロノスが歩み寄る。足取りがその場を凍らせ、誰もが動けなくなりそうだった。大剣が振り下ろされ歌舞鬼の体に火花がほとばしる。ふらつき足取りがおぼつかなくなった瞬間、追加の斬撃が繰り出される。
「ぐああっ…!」
吹っ飛んだ歌舞鬼と入れ替わるようにダークドライブが前に出てきて光弾を放つ。それを刀身で受け止め、高速で近づき大きく一閃。ダークドライブがよろける。
これでトドメだ。そう告げるようにベルトに手を伸ばそうとした。その時だった。
「ぐっ…!ふあっ!」
「…!なんだっこれ、体が!」
「ちっ…使うなとあれほど言ったのに」
「なにこれ…アタシ、どうなちゃってるの」
「こんのバカ…!」
ダークドライブの体から紫の衝撃波が放たれる。すると辺りの物体全ての動きが停止した。いや、正確に言えばとてつもなくゆっくりになった…と言うべきか。
重加速。コア・ドライビアから発せられるあらゆる物体の動きを低速化する現象。この重くのしかかる時間の中で…この場で自由に動けるのはただ1人、ダークドライブのみだ。
「ふん!はっ!たあっ!さっきの威勢はどうした」
抵抗できないのをいいことに、ひたすらにいたぶってくる。殴り、蹴り、斬り、撃ち、あらゆる攻撃手段で徹底的に痛めつけられる。
それでも思考まではゆっくりにならず、痛みに苦悶の声を漏らしながら耐えるしかない。
「トレーナー!」
「…哀れだな。さっさとカードを使い切って死ねば良かったものの」
歌舞鬼から放たれた言葉にナイトの心が揺れる。カード。なんのことだ。まさか彼が…トレーナーが、いつも変身に使うあのカードだろうか。あれが命を削る行為だった…。そういうことなのだろうか。
信じがたい。だが、自信を持って違うと否定できるほどに彼女はあのライダーシステムをしらない。むしろ、今まではぐらかすかのように教えてくれなかったのも、修行の時に変身するのを避けていたのも、合点がいってしまう。
「カードを…使い切って…?」
動揺が声になって漏れ出る。その動揺を拾い上げたのはダークドライブだった。
「なんだ?知らなかったのか?コイツのシステムってのはな…」
「やめろっ!!ぐああっ!」
告白を遮るように声を荒げるゼロノスを切り飛ばしダークドライブが自身の腕に巻かれた装備、シフトブレスを操作する。
「まぁいい。飽きた。どうせ死ぬのに変わりはない」
『NEXT!』
軽快なボイスがベルトから放たれると共に、手にしているブレイクガンナーが紫に光り出す。エネルギーの刃が少しずつ肥大化し、あわやトドメが刺される…!そう誰もが思った瞬間だった。
ゼロノスの前にオーロラカーテンが出現。華やかな音と共に2人のシルエットがカーテン内に投影される。突然の出来事に呆気にとられる全員。だがお構いなしにカーテン内のシルエットの1人は巨大なレールガンのようなものを構えた。
そして1人がオーロラカーテンより1歩踏み出すと、それは鮮烈なレッドとエメラルド色の鎧に身を包んだ謎の仮面ライダーだった。
「ハイパーカブト!何故貴様がここに…違う、まさかこいつは」
『KABUTO・THEBEE・DRAKE・SASWORD POWER ALL ZECTOR COMBINE』
ハイパーカブト。そう呼ばれた仮面ライダーは自身の武器、パーフェクトゼクターの操作を終えるとその先端をダークドライブへ向ける。
柄を曲げ砲身へと変化した刃の先には巨大なエネルギーの塊が形成されていき、周囲の空間もそれに比例して歪んでいく。そしてその強大なエネルギーを制御すべく、ハイパーカブトも自身の装甲を展開し発射に備える。
『MAXIMAMU RIDER CYCLONE』
トリガーを引いた瞬間、地形すら容易に変えてしまえるほどの超特大火力が放たれる。真正面からそのエネルギーの塊を浴びたダークドライブは悲鳴を上げるまもなく霧散。彼の消滅と同時に、重加速も解除された。
「誰か分からないけどありがとう!」
『Full charge』
何者だったのか、攻撃を終えるとすぐに消えてしまったハイパーカブトへお礼の言葉を述べながら、痛む体にムチを振るう。ゼロガッシャーをすぐに拾い上げ、必殺シークエンスへ移行した。
「っ…動ける、なら!」
『FINAL VENT』
ナイトも同じく必殺技を発動。飛び上がり、ポセイドン目掛け急降下の一撃飛翔斬を放った。紺色の鋭い弾丸になり、真っ逆さまに落ちていく。加速し、大火力砲としてその頭上へ突き刺さろうとする。
「いいなあ!いいなぁウマ娘!私も…最強が欲しいなぁ!!」
「あんたみたいなのと同じなんて死んでもごめんだねっ!」
しかし負けじとポセイドンもディーペストハープーンへのエネルギーチャージ。蒼い閃光が刃から放つ。拮抗、あわよくばカウンターで斬り勝てる。そう確信しほくそ笑むポセイドンだった。
だがしかし、急回転する飛翔斬の剣先はそのエネルギーを絡め取り、紺の弾丸は蒼い水を纏う。
「なっ!」
水と風、2つの属性を纏い威力は跳ね上がる。脳天に剣先が叩きこまれそのまま一刀両断。断末魔を上げる間もなく爆散し、女性対決は仮面ライダーナイトの勝利で幕を下ろした。
「はああああ!」
それに続くかのようにゼロノスもスプレッドデットエンドを発動。極大のエネルギー刃を形成し歌舞鬼の腹部めがけて大きく振るう。しかし歌舞鬼もこれを間一髪、音撃棒で受け止めようとするがその威力の差は歴然。勢い任せの大斬撃がかち合いに勝利。そのまま歌舞鬼を切り飛ばした。
「ぐあああ!」
爆発音と共に響く断末魔を聞き届けると、ゼロノスは満身創痍でその場に膝をつき、変身を解除する。手元からまた消えたカードをぼんやり眺めながら、真船は小さく呼吸する。
無茶の代償か、全身が痛い。大きく動けない。
「はぅ…すぅ…」
荒れた瓦礫の山の中。呼吸するのが精一杯。膝をついた四つん這いですらキツイのだ。力が入らず、崩れるように倒れかける。
「トレーナー!」
すんでの所でスパイラルウインドが崩れる真船の体を受け止める。必死に受け止めたせいか、腕の中で痛む彼の声に彼女の耳が項垂れる。
周囲を見渡す。ゼロライナーの汽笛が聞こえない。むしろ聞こえてくるのはサイレンの音ばかり。救急車?パトカー?消防車?いくつも音が混じって聞き取れない。だが人が来れば自分たちは間違いなく参考人として連れていかれかねない。
普段着ならいい。だが今はトレセンの制服。彼女にとってここがどこかはまだ知らない。それでも、こんな出がどこかバレる服で対面するのは面倒だ。
「ごめんっ!」
「いっっっ!!いだいっ!痛いから!」
「だからごめんって!」
緊急時の措置だから。そう言い訳し真船を俵担ぎする。痛い痛いと肩で暴れる彼の尻を大きくひっぱたき静かにしてから、スパイラルウインドは瓦礫の山を走り出した。
立ち込める炎はか細く、それでもしっかり、火種が燃え上がっている。
私生活忙しすぎて創作の時間をまじで確保できない日が来るとは…遅くなって申し訳ありません
公式図鑑でディーペストハープーン槍って説明されてるけど刃の付き方とか絶対槍じゃないよねって思う今日この頃
次回予告
束の間の休息
「アタシこれ食べる~」
2人きりの夜
「トレーナー…」
月が、怪しく微笑む
「へぇ~ん…しん」
次回、『月明り、お眠な夜更け』