登場怪人 ディスパイダー・リボーン、メガゼール、ギガゼール、バクラーケン
前回、僕、金城真船はバクラーケンの襲撃からマーチャンを守る事に成功した。だがそれは悪夢の序章に過ぎなかった。学園中にミラーモンスターが溢れ出し、次々に人を襲って行く。そんな中、僕は仮面ライダーの使命を全うする事を決意し1人でミラーモンスターとの戦闘を開始する。その後、仮面ライダーナイトと遭遇。彼女に付いていく形でミラーワールドへ向かうのだった。
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真船が、
「ここは…やって来たのか?鏡の中に」
ふと、涼しさを感じた。つい先程までは強化スーツを纏っていた為、真冬にも関わらず多量の汗をかく位暑かったが、今は真冬らしい寒さを肌で感じる。疑問に思っていると、答えはすぐに分かった。いつの間にか変身が解除されていたのだ。だが不可解な点もある。それはベルトにカードが刺さったまま、という事だ。つまり、ベルト自身はまだ変身しているつもり、という事だ。矛盾する状況に困惑したが、下手に再変身しようとしてカードを無駄にするのも嫌なのでこのままの状態でいる事にした。
その時、隣の部屋で甲高い音がした。硬い物同士がぶつかった時の音にも聞こえるその音は、彼にとって非常に聞き馴染みのある音だった。
「!?…やっぱり」
音がしたのは隣の教室だ。急いで向かってみると、そこには真船の予想通りの光景が広がっていた。そこでは仮面ライダーナイトと復活したディスパイダー、ディスパイダーリ・ボーンが戦闘を繰り広げていた。リ・ボーンの傍らには、数名の生徒が横たわっていた。恐らくリ・ボーンは彼女らを食料にするつもりだったのだろう。
どうにかせねばいけない状況になってはいるが、それを打破する方法が見当たらない。下手に加勢し、リ・ボーンを激昂させてしまっては、彼女らに危険が及ぶ。タイミングを見極めねばならない。現在はナイトが、彼女の専用武器、ウイングランサーを振るいリボーンの爪を弾き拮抗状態を作っている。下手な加勢は勢力図を崩す可能性が高い。真船は顔を顰めた。
そんな緊張状態は、リ・ボーンの一手で崩れた。ディスパイダーリ・ボーンへ進化した事で、頭部付近から新たに生えた人型の上半身、その胸部から巨大な針を乱射した。針はナイトの体を掠め、床に突き刺さる。すると、次の瞬間、ナイトがその場に膝を着いた。針には強力な麻痺成分が含まれていたのだ。
「キャッ」
そんな彼女を、リボーンが見逃すはずもなく、口先から強靭な糸を吐き出した。糸は対象を絡め取り、動きを更に鈍らせる。そして器用に足を使い、ナイトを窓の外へ放り投げた。
「まずいっ!」
放り投げられたナイトと、入れ替わる形で真船が戦闘に加わる。飛び上がって、大きく大胆にゼロガッシャーを振る。刃は、油断していたリ・ボーンの人型部分にクリーンヒット。若草色の血しぶきを吹き出しながらのたうち回る。
「グェエエエア」
油断していたタイミングを討たれ、リ・ボーンは激昂し暴れ出した。その衝撃で校舎が揺れ、リ・ボーンの足元に積まれていた生徒の山が崩れる。それによって、数名が目を覚ました。目を覚ました彼女らが最初に目にするのは当然リ・ボーンの存在だ。自分より大きく、凶暴である存在を前に、生物としての恐怖感情を煽られ、当然パニック状態に陥ってしまう。
「(くっ…焦り過ぎたか…)」
己の行いを悔いつつも、真船は果敢にリ・ボーンに立ち向かう。襲い掛かる爪を正確に弾き、攻撃を無力化していく。硬い高音が響く中、その様子をオロオロと眺めていた生徒らの目には涙が浮かんでいた。
「(救出を優先的に考えなきゃならない…でも、今雑に彼女らに指示を出すのは危険だ。だから俺がすべきなのは!)」
『Full charge』
必殺技待機状態へと変化すると同時に、刀身にオーラが纏われる。
リ・ボーンの鋭い爪攻撃を避けながら、生徒らの所へ向かう。突如現れた教員の登場に、彼女ら驚きの声を上げた。
「ごめん、手荒な事するよ!」
真船は、そう叫ぶや否や、必殺技で床を切り抜き、楕円の穴を開ける。そして次の瞬間、彼は生徒らを掴み、一緒に穴に飛び込んだ。下の教室は勿論クラスルーム。たくさん並べられている机を使い、器用に受け身を取って着地した。彼女らも見よう見まねで着地を成功させる。流石はウマ娘。やはりフィジカルは人間を遥かに凌駕しているのだ。
着地を決めた真船は、すぐさま上を向く。先程開けた穴は既にリ・ボーンの爪で塞がれており、間一髪だった事が伺えた。ホッと安堵した次の瞬間、上の階で激しい爆発がする。爆発は天井(上の階からすれば床)から見えるリ・ボーンの爪を巻き込み、その体を木端微塵に粉砕した。
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「キャアアアアア!」
窓から放り投げられたナイトは、女性らしい悲鳴を上げながら落ちていく。地面がいつまで経っても感じられずに永久に宙づりになる、という状況はやはり人の恐怖心を煽る。一瞬、彼女の脳から冷静な思考が消えてしまっていた。
だが
ベルト正面のデッキケースから、カードを1枚引き抜く。そのカードにはコウモリの様な生物が描かれており、『DARKWING』の文字が記入されていた。彼女は腰にあるレイピア状の召喚機のナックルガード部を展開、そこのカードホルダーへ先のカードを挿入する。
『Advent』
淡白な機械音声が鳴ったかと思うと、どこからともなく1匹のコウモリが飛来する。そいつは、先のカードに描かれたコウモリそのものであり、名をダークウイングという。ナイトの契約モンスターであり、れっきとしたミラーモンスターなのだ。
ダークウイングはナイトの背部と合体。巨大なマントになり、彼女に、自在に宙を舞う能力を授ける。マントで滑空をしながら、リ・ボーンの位置を探る。奴は3階の教室で、巨大な爪使い足元へ攻撃をしていた。
凄惨で暴力的な光景を目の当たりにし、彼女の中に怒りが込み上げてきた。何の前触れもなく、突如日常を破壊しながら挙句大切な友人までも手にかけようとしている。まさに理不尽であり、彼女が最も忌み嫌う暴力の形であった。そんな暴力、この世にあってはならない。
『お前の願いはなんだ』
鏡の中へ引きづり込まれてしまった友を助けたい。命を守りたい。胸の内に湧き上がる願いと、それを
『Final Vent』
「私の友達を…返せ!!」
ダークランサーを突き立てながらリボーン目掛けて急降下する。さらに、背部に合体しているダークウイングで自身の体を包み、急降下の動きに回転を加える。さながらドリルの様な形状を為しながら重力の恩恵を受け威力を増幅させていく。1本の巨大な槍となったナイトは校舎の壁を突き破りながらリ・ボーンの体を貫いた。
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リ・ボーンを撃破し、無事再開出来たナイトたちは互いを抱きしめ合い、喜びを分かち合っていた。互いの名を叫び合いその安否を確認する。中には涙を流す娘もおり、どんなに恐ろしい体験だったのかがうかがえる。
「すまない…少しいいか?」
感動の再会だとは分かっているが、話が進まないので真船が声を掛ける。そこでナイトはようやく彼を認識し、挨拶を返した。
「えっと…あ!みんなを逃がしてくれた人ですね!?私、スパイラルウインドって言います!本当…アタシの友達を守ってくれてありがとうございます!」
自らをスパイラルウインドと名乗った彼女は、ベルトからデッキケースを抜き変身を解く。鎧の中から姿を現したのは青鹿毛のウマ娘。耳は小さく、約7㎝のお耳には紺色のメンコが付けられていた。髪型は後ろ髪を大きくしならせたポニーテールで、おなかの部分に届きそうな長さを誇る。体つきはスレンダーであるが、足に目を向ければ目を見張るまでではないにしろそれなりの筋肉量があり、強靭なパワーが売りのタイプだと察せる。
「気にしないで。僕がやらなきゃって思った事をやっただけだから」
「それでもっ!助けてくれた事には変わらないです!…名前を聞いてもいいです?」
「僕は真船。金城真船。今は生身だけど…一応君と同じ仮面ライダーさ」
「そうなんですね!!じゃあアナタも仲間!」
そして彼女は手を差し出した。真船もその手を取り、2人は握手を交わした。
「あ、そうだ。君の友達たちをここから返す方法ってあるかい?」
「はい!もちろんあります。ええっと…」
カードケースから人数分のカードを取り出し見せつける。そのカードには『
「はい。これ持って鏡とかガラスにぶつかれば元の世界に戻れるはずだよ」
「…スーちゃんはどうするの?」
「私はまだ戦わなきゃいけないから。大丈夫、絶対この人と一緒に戻ってくるよ」
「でも…」
「そうだよ!危ないよ!」
友人たちから口々に心配の声が飛び出る。確かに今後控えているミラーモンスターたちの数も生態も分からない。それはつまり、想定もしないような危険が押し寄せてくるかもしれないという事なのだ。友人たちから心配されるのも分かる。
「私たちがここで倒さなきゃ、ずっとこのままなんだ。そんな状況、私は耐えられない」
「それは…そうだけど」
「だ~いじょうぶ!いつもの『一日一善』してくるだけだから」
スパイラルウインドの発した『一日一善』という言葉に反応し、友人らの静止が止んだ。それでも渋々、といった表情で彼女らは窓へ向かっていく。最後にもう1度、スパイラルウインドの方を振り向いた後に手を繋ぎ、いっせーの、の掛け声で飛び込んでいった。
すると窓が激しいフラッシュを放つ。あまりの眩しさに残された2人は手で目を覆う。しばらくし、光に目が慣れてきたので見てみると窓の側には人の様子など何もなく、そこにあったのはメラメラと燃える数枚のカードのみだった。
「これで、よかったの?」
強情とも言えたスパイラルウインドの様子を不安に感じ、真船は聞いた。
「いいの。全部倒せば、みんな守れるんだもの」
真船の問いに対し、スパイラルウインドは明るく答えた。その中にはとても硬い決意が混じっていた。この理不尽を打ち砕くという強い覚悟が。
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3つの影が廊下で蠢く。影の内2つは人ならざるフォルムをしており残りの1つの影を滅多打ちにしていた。片方が対象を羽交い絞めにし、もう片方が対象の腹をひたすら殴る。殴られた者の口から時々液体が噴出していた。
不敵な笑いが廊下に響く。そして、これが最後だ、と思いっきり勢いづけて腹パンが入る。殴られた者はこれまでどうにか保っていた立つ力さえ失われ、ついに倒れてしまった。
倒れた彼を嘲笑いながら一体が大きなハサミを取り出す。1m弱もあるそのハサミを彼目掛けて振り下ろす。
「はぁ!」
力強い声と共にハサミが弾き飛ばされる。
一体誰が…。2体が強襲を恐れ周囲を探る。敵はどこだ…。
否、彼らの敵はもうそこにいたのだ。
「だぁ!!!!!!」
突然のドロップキックが襲い掛かる。油断し切っていた2体はゴロゴロと無様に廊下を転がっていった。
「「ジャァァァァ!!」」
蹴られた2体の影…いや、2体のミラーモンスター、メガゼールとギガゼールは襲い掛かって来た敵を見据えた。そこにいたのはなんと…先程まで自分たちがいたぶっていた人間だった。彼は口元にたっぷりと血を滲ませ、2体を睨む。
「俺は生きてなきゃいけないんだ…フラッシュの、愛する人のために!!」
彼は魂の叫びを上げる。絶対に生き残るんだという決意を込め、ふらつく体を奮い立たせる。普通の人間ならこの状況ではとうに死んでいる。だが彼は『生きる』事が人一倍得意だった。
「ギッシャ!」
まず、メガゼールが自慢のハサミを携え襲い掛かる。だが男はそれをひらりと躱し、カウンターの手刀が相手の手首目掛けて飛んでいく。しかしメガゼールの肌は鋼鉄の如く硬く手刀が弾き返される。
「いって~」
手首を振り、痛みを誤魔化しながら後退する。流石人ならざるモノといったところだろうか。ヒト、ウマ娘を軽々しく超越した肉体の恐ろしさを目の当たりにして思わず表情が歪む。
こうも決定的な差を見せつけられてしまってはどうにも対処できない。下手に攻撃する事無く、ひたすらに逃げ回る事しか選択肢は無いだろう。
「(実物は目にしたことはないが…『仮面ライダー』が来てくれる事を祈るしかないな)」
この絶望的状況を打開できる唯一の手段。それは神頼みともいえる無謀な選択だった。幼き頃から都市伝説として耳にしてきた存在。1度も頼る機会が訪れずに育った為か、その存在が浸透してきた現在でもどこか遠い存在の様に感じる。そんな存在に命を預けるのだ。並大抵の覚悟ではない。
「ギギシャァ!」
「しまった!」
つい思考に意識を取られもう1体の怪人、ギガゼールの存在を忘れてしまっていた。背後から飛び掛かり、愛用得物のガゼルトルネードを突き刺す。
何とかすんでの所で回避し、ガゼルトルネードを脇腹でキャッチ、ギガゼールを固定しながらメガゼールの攻撃を避けていく。狙いは無論同士討ち。ギリギリ、ギガゼールに攻撃が当たりそうになるように攻撃を誘導する。が、一向に命中しない。向こうも相当の手練れなのだ。
堂々巡りな状況は突如激変した。メガゼールのハサミをまるで刺股の様に男の腹部へ突き刺す。そしてそのまま彼の体を持ち上げたのだ。
「うわぁぁ!!」
悲鳴を上げながらも彼は放り投げられ、床に打ち付けられる。衝撃で3階の床が崩壊し2階の床に叩き付けられる。
「がっ…」
痛みに悶え、のたうち回る彼に2体のゼールが忍び寄る。勿論、その手には自身の愛用武器がそれぞれ備わっている。床にこすりつけ、火花を飛び散らせながらゆっくり歩み寄るそれらに、男は人生を諦めかけていた。
「ちっくしょう…俺は…ここまでなのか…」
走馬灯が走る。彼の担当、エイシンフラッシュとの思い出の数々を幻視し、不思議と満たされた気分が芽生えた。だが、それ以上に沸き立つ気持ちがあった。
「俺は…諦めないぞ。絶対に、諦めるもんか!」
それは諦めたくないという気持ち。どんな命の危機にも絶望せず、常に生きようと真摯に立ち向かってきたのだ。こんな程度で折れる様なやわな経験をしてきていない。
残る力を振り絞り、立ち上がってゼールらを睨む。もう拳を振るう力さえ残っていない絞りカスの体にはそれが精一杯だった。
方や、ゼールらにはつい先程痛い目を見せられたという経験がある。もう油断は出来ない。彼が再び立ち上がったという事はもう一度戦闘する可能性があるという事なのだ。それはとても面倒くさい。
ゼールらが走り出す。5m、4m、3m、と短くなっていく距離がより緊迫感を高まる。
_残り2m。
_ついに武器が振るわれた。
_腕をクロスし、ちっぽけな抵抗をする。
_刃が近づいてくる感触が全身でする。
_ここで、死ぬのか…?
「はぁ!!」
否、そんな結末は訪れない。彼は勝ったのだ。自らの命運を賭けた大一番に。
恐る恐る目を開けると、その先には大きな刃が光っている。その刃…いや、大剣の持ち主を見る。
「仮面…ライダー?いや、誰だ?」
一瞬、緑色の仮面らしき物を幻視するも、すぐに真実が見えてくる。そこにいたのは1人の男だった。後ろ姿だけでその顔はよく見えないが、大剣を振るう彼からは強い威圧感を感じた。
真船だ。真船が間一髪のタイミングで助けに来たのだ。
「なぁ!君、名前は?」
このヤバい状況を放り出してまで尋ねたかった。突如助けてくれた彼への興味が湧き出たのだ。理由は分からない。ただ、『運命』とも言えるこの瞬間が異常なまでの好奇心を駆り立てた。
「すぐ忘れてしまうさ」
「忘れない。どんな事があろうが、俺はこの『運命』の瞬間を忘れない」
男の真っすぐな言葉に、真船の心が強く動かされた。遠い昔、自身がマーチャンにかけた言葉がそのまま帰って来たこの瞬間がとても感動的に感じた。久しく見えていなかった情熱が蘇った、そんな感覚がした。
不思議と、この男に賭けてみたい。そんな感情さえ覚えた。
「…真船。金城、真船」
「OK真船。一緒に戦おうぜ」
「いいや、それは許可できない。これ持ってとっとと帰れ!」
そう言うと、剣を大きく振るいゼールらを弾いた後、『
「ちょっ…うわああああ!」
ガラスに向かって体が真っすぐ飛んでいく。ぶつかる。そう思い、衝撃に備えていると急に前方が激しく発光した。発光したかと思った次の瞬間、彼の体はガラスの中へと突き抜けていったのだ。
鏡写しの世界へダイブしてゆく。深く、深く、落ちる様な錯覚が彼に襲い掛かる。周りを見渡すとそこには無数の自分。そのどれもが同じポーズをしながら落ちていった。そして彼はミラーワールドから追い出された。
「いっつ……ここは」
ガラスから吐き出され、廊下に叩きつけられる。教室に目を向けてみれば文字が正常な形をしており、ようやく元の世界に帰って来たのだと胸を撫で降ろした。
「そうだ真船!」
思い立ったかのようにガラスにへばりつき、真船の様子を確かめる。いくらあれだけ強そうな雰囲気をしていようが、生身の人間1人では到底ゼールらには勝てない。だが果敢にも1人立ち向かった彼が心配だった。
「…仮面ライダー!」
そこには真船の姿はおらず、代わりにいたのは大剣を手にした緑色の仮面ライダーだった。あの一瞬の幻視は嘘ではなかったのだ。
「…はっ!フラッシュ!」
ライダーの出現に思わず気を取られていたが、今はこんなに悠長にしている場合ではない。すぐさま窓から飛び降り脱出をする。2階ではあったが、頑丈な体と華麗な身のこなしでノーダメージで皆が避難している中庭へ走り出す。
画して、運命の出会いは幕を下ろした。陰と陽、2つの人生は交差する直線の如く、もう交わる事はないだろう。だが、これでいいのだ。彼らにはそれぞれの道があるのだから。
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ミラーワールドに残った真船はゼールたちと対峙していた。
「ジャジャジャ!」
メガゼールが飛び掛かる。カウンターを狙い、ゼロガッシャーを構える腕を引き締めたその時だった。真船の後方から甲高い鳴き声がすると共に、高速で
「真船さん!」
その直後、ナイトとなったスパイラルウインドが駆け寄って来た。どうやらメガゼールに追突した
「来たか、スパイラルウインド」
「も~、その呼び方長いから可愛くない~!スーって呼んでください」
「…はぁ。分かったよ、スー。これでいい?」
「それでヨシです!さ、ササっと倒しちゃいましょう!」
ナイトが意気込んでウイングランサーを構える。真船もそれに合わせゼロガッシャーを構え直した。
「油断しないでよ」
「がってんてん!」
「ギシャッ!」
ギガゼールが2人にガゼルトルネードを振るう。真船はそれを受け止めつつ、ギガゼールとナイトの距離が広がる様に攻撃を捌いた。1vs1の環境を作るためだ。
攻撃を受け流されたギガゼールは地面を転がりながら距離を取り、瞬時に立ち上がって体勢を整える。まだ真船は悠然とこちらに歩み寄っている様だ。ならばとガゼルトルネードを投げつける。当然軽々と弾かれるが、その隙を狙っていたのだ。飛び掛かり、両腕に着いた鋭いカッターで切り裂く。
まずは一撃。真船の服が切り裂かれ、腹部から出血する。さらに連撃をする。二発目は弾かれたが、諦めずに攻撃を畳みかける。腰、腕、胸と各所が切り裂かれ、血を流しながら真船は吹き飛ばされた。
「やっろ~!」
痛む傷を堪えながら真船は立ち上がる。吹き飛ばされた衝撃で口も切ってしまったようだ。呼吸のために口を開けるとそこから血が垂れてきた。血を痰として吐き出し、ゼロガッシャーを構える。
「はあああああ!」
強烈な叫びと共に果敢に走り出し立ち向かっていった。
ゼロガッシャーとガゼルトルネードがぶつかり合い、鍔迫り合いが生まれる。力と力がぶつかり合い、どちらも1歩も引けない衝突が生まれた。
「シャァ!」
メガゼールのハサミがナイトに襲い掛かる。が、彼女はそれをギリギリの所で避け、腹部にウイングランサーの柄でカウンターをする。怯んだ所を切っ先で切り裂き大ダメージを与える。
煙を上げながら飛び退くメガゼールだったが諦めずに再び攻撃を仕掛ける。ハサミを大きく振り攻めていくが、柄で受け止められまたしてもカウンターを食らう。ハサミを落としながら吹き飛び、地面に打ち付けられた。
『Full charge』
『Final Vent』
同時に必殺技を起動する。
真船は鍔迫り合いの状態のままスプレンデッドエンドを使用。肥大化し、威力の増したゼロガッシャーでガゼルトルネードごとギガゼールを切り裂いた。
ナイトは飛翔斬を使用。高速回転するドリルとなってメガゼールを貫通し撃破した。
「お疲れ様です、真船さん」
「ああ、おつかれスパイ…スー」
「残るは1階だけですね」
「手早く倒そう。早く平穏を取り戻すんだ」
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トレセン学園各所にてミラーモンスターが討伐されていく中、一体のミラーモンスターが廊下を闊歩していた。粘液を纏ったかのようなぐちゃりとした足音が響き、不気味さを醸し出す。
青と水色のエンペラ、円い手甲、大きな黄色い瞳、そう、真船のトレーナー室を襲撃したあのバクラーケンだ。一度真船と交戦し、深手を負って身を潜めていたがものの数分で復活。同胞らが憎きライダーに倒されている中獲物を求めて動いていたのだった。
奇怪な鳴き声を発しながら歩いているとようやく目的の少女が見えてきた。ふわふわとした栗毛に身を包み、紅く光る王冠で着飾った少女、アストンマーチャンだ。バクラーケンは初めからマーチャンを狙って行動していたのだ。一目見ただけで食欲が全開になる程よく肥え、健康的な筋肉も十分兼ね備えたまさに贅沢品なボディがバクラーケンのハートを射抜いた。マーチャンに限らずウマ娘は女性的な柔らかさと筋肉が同居し、ミラーモンスターからしたら恰好の餌なのだ。
捕食対象はオロオロとした様子で下駄箱周辺を彷徨い歩いている。どうやら人を探している様子だったが、バクラーケンからしたら寧ろ好都合だった。意識が人探しに割かれ警戒心が薄れている。一度触手で捕えてしまえば勝ちなのだからそこまで難しいミッションではないのだ。それに、彼女の周りにいる者は誰もが我先に逃げようとしマーチャンにかまっている余裕はなさそうだ。それもまた好都合だ。自分にとってどこまでも都合のいい状況にほくそ笑む。
バクラーケンは満足そうに身震いをした後、昇降口に設けられた姿見から現実世界に触手を伸ばす。床を這って進み、少しずつ忍び寄る。あと少し、もう少しでマーチャンを手中に収める事が出来る。そう確信した瞬間だった。
「させるかぁ!!」
力強い叫びと共に触手が切り裂かれる。切り裂かれたゲソは現実世界へと飛び出し、人々に更なる混乱を与える。昇降口にいたマーチャンもその混乱に巻き込まれ、戸惑いながらも校舎の外へと逃げ出した。
「ギュルル!?」
突然の衝撃に驚きながも、バクラーケンは切り口を庇いつつ攻撃をしてきた相手を確認する。するとそこには、大剣を手にし体中から血を流した青年、真船の姿があった。
一度深手を負わされた因縁の相手を前にし、バクラーケンは警戒心をMAXまで高める。ミラーモンスターとフィジカルで語り合える相手が剣を携えてやってきたのだ。いくら傷だらけと言えど、鬼に金棒状態と言っても過言ではない。
一方の真船。マーチャンを狙った相手に向けた情けなど必要ないと言わんばかりに鬼気迫る表情でバクラーケンを睨む。その奥には壮絶な覚悟が宿っていた。
「マーチャンに…あの娘に、手を出すな!」
ゼロガッシャーを突き出し、臨戦態勢を取る。
両者互いを睨み合い、緊迫した空気が流れる。さながら居合の様な張り詰めた静寂に満たされた両者の勝負は、一瞬で決着が着いた。
バクラーケンが触手を伸ばし真船を襲う。だが真船はそれを的確に叩き伏せ、急接近。防御用に突き出された両手の手甲をそれぞれ弾き飛ばしてから腹部にゼロガッシャーを突き刺した。
『Full charge』
さらにフルチャージスイッチを押下、カードをゼロガッシャーに挿入し必殺技状態へと移行する。ベルトから発せられたエネルギーは刀身へ移動し巨大なエネルギーの刃が形成されていく。刃がバクラーケンの体内で肥大化されるにつれその体は削れ、苦しそうに悶えていく。
「はぁぁぁぁ!!!」
ゼロガッシャーを押し込み、エネルギーを流し込む。トドメとして、気合を込めた大きい一発を放つとバクラーケンは短い断末魔を上げながら爆発した。
このバクラーケンを持ってして、トレセンに現れたすべてのミラーモンスターは討伐されたのだった。
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校舎の外を人が埋め尽くす。中庭、練習コース、模擬レース場、菜園と広範囲に人が広がり突如現れた脅威へ不安を募らせる。友人同士で身を寄せ合い不安を紛らわそうとする者もいれば、消えてしまった親しい者への涙を零す者もいた。
三者三様の反応を見せる中、アストンマーチャンは1人ポツリと中庭の欅にもたれかかっていた。自身を先に行かせ校舎に残った真船の身を案じながら佇む姿は寂しく、思わず声を掛けたくなる雰囲気を纏っていた。
「フラッシュ!!大丈夫か!?怪我はないか!」
「トレーナさん!ええ、大丈夫ですよ。貴方が守ってくださったお陰です」
遠くで1人のトレーナーと、その担当と思われるウマ娘が抱き合っている様子が見えた。何やら感動の再会といった様子の2人を見て、マーチャンの不安がより高まる。
何か大変な事に巻き込まれているのではないか、もしかしたらもう…。嫌な想像ばかりが頭をよぎり表情が歪みそうになるも、ウルトラスーパーマスコットという己の夢を思い出し何とか堪える。
そんな事を数分続けていると、彼女の耳がピクリと動いた。心じゃない。最早本能が求めていた声が届いたのだ。
「お~い、マ~チャ~ン!!」
今最も求めていた声だ。少し幼げが残る優しい声だ。真船の、トレーナーの声だ。
彼は今、このごった返す人混みの中で自分を探しているのだ。そう思うと居ても立っても居られなくなってマーチャンは駆け出した。声のする方へ必死に足を進める。
「トレーナーさん!」
マーチャンも声を出し彼を呼ぶ。フォームなんて関係ない。今はただ、一刻も早く彼に会いたい。その一心が彼女を突き動かす。
そして、間を繋ぐ糸を手繰り寄せる様に2人は再開を果たした。
「マーチャン!!」
顔を見るや否や、真船はマーチャンを抱きしめる。ガッシリとした筋肉質な腕がマーチャンの体を締め付け、確かに存在するという安心感をお互いに与える。
ふと、マーチャンの手に湿った感触がした。見るとそれは血だった。真っ赤に染まった手を見て、マーチャンが表情を荒げる。
「トレーナーさん!大丈夫ですか!」
必死な表情で問いただすマーチャンに対し、真船は軽く笑って釈明をする。だがその顔は単なる笑顔とは程遠く、額に汗を滲ませた作り笑いに等しかった。
「あはは…。ちょっと頑張りすぎちゃったかな」
ちょっとじゃない。そうマーチャンが言おうとした瞬間、自身を抱きしめていた力が緩むのが分かった。さらに真船がこちらに倒れ込んでくる。息は荒く、意識は朦朧としていた。
これはまずい。そう判断したマーチャンは、自分が元居た欅まで誘導しゆっくりと彼を休ませた。
「ありがと、マーチャン」
そう言って真船は静かにマーチャンへもたれかかった。一瞬、ドキリとしたが恐らく意識が途切れたのだろう。嬉しさなどすぐに消え去り不安が心の内を占める。
一体どうして彼はあんな見え透いた嘘を校舎に残ったのだろうか。何が校舎内で起こっていたのだろうか。何をしていたのだろうか。疑問は尽きない。
だが今、その答えを握った相手は眠っている。答えを聞くのは彼が目覚めてからだ。そう思い、マーチャンは真船の頭を自らの膝へ置き、膝枕をしてあげた。
ついに正式なネームドオリウマ娘を作りました、アテルです。
ちなみに絵は描けませんので姿は言語化でお伝えするしかありません。果たして二次元の世界にスパイラルウインドちゃんが降り立つのはいつになるのやら(自己紹介は次回)
他作品にまで出てきて変身しないのに大分おかしい戦績を立てる男、それが前作主人公。多分ダークキバにもなれる人材です、知らんけど。というかちょい出しにするつもりがめっちゃ尺食う存在になちゃった…
ウマ娘要素ちゃんと出せてるかな…すっごい不安。がっつり仮面ライダーやり過ぎてるよ
しばらくは休みます。受験勉強があるからね、しょうがないね(だから次回予告はないっす)
追記(2026/02/07) 誤字修正