永久に君を刻んで~スピンオフ~ 零れ落ちる砂   作:アテル

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未来

 少し…いや、かなりボロくなった街を見ながら2人は変身を解く。これはまた復興に日数が要りそうだ。

 

「ありがとうございました」

 

 とっくに西日が差し込む頃合いになっており、オレンジ色の光が飛び散ったガラスに反射してあちこちを照らす。万華鏡のような、小さなキラキラが無数に照らしつけてくる。

 

「困ったときはお互い様だ、気にすんな。っと、名前まだだったな。俺は七栗雄也(ナナクリ・ユウヤ)。ご存知の通り、仮面ライダークウガだ」

 

 雄也と名乗る青年は赤いスカジャンを見せつけながら笑う。戦っているときの険しい表情とは正反対の、楽しそうな微笑みは彼の本性を表しているようだった。

 

「アタシ、スパイラルウインドって言います!仮面ライダーナイトです!!!」

 

 明朗快活、裏表のない彼女らしい自己紹介で応える。実直で優しさ溢れる声に、雄也の頬がさらに緩んだ。

 

「見違えたな」

「雄也さんのお陰!本っっ当にありがとうございました!!!!」

 

 一歩間違えていたら命を落としかねなかったあの戦い。冗談でもなく、彼はスパイラルウインドにとって命の恩人でありさらに精神的師匠でもあった。

 

「まぁ、俺の言いたいこと…なんとなく伝わってたらいいさ」

 

 少し遠い目をして雄也は答える。彼が想起するのは5年前の8月。クウガの力を手にし少しずつ慣れ始めていた頃だった。

 

 

_______

 

 

 

 未確認生命体第26号。キノコの力を宿したその怪人は長野市の街中で堂々人を襲っていた。偶然居合わせた雄也は無論交戦。戦闘を始めわずかな時間で格闘戦が不得手な第26号は追いやられてた。

 このまま押し切れる。そう判断し必殺キックのための距離を作ろうと貯めてパンチをしようとした瞬間…

 

ギラザ(今だ)!』

 

 一瞬の隙を突かれ第26号の噛みつき攻撃がクウガに炸裂する。ただの噛みつきと侮るなかれ。第26号最大の特徴は口から流し込まれる毒。毒の威力はすさまじく、クウガは一撃でノックアウト。白い弱体化状態、グローイングフォームにまで戻ってしまった。

 毒の影響は収まらず尚も雄也の体を蝕む。そしてついには彼を命の危機に晒した。一度は心臓が止まり完全な死を経験した。

 結果的には彼の変身ベルトであるアークルの力で生き返る事が出来たが死亡し復活するまでの間に多くの人間に心労を掛けた。彼を慕う舎弟たち、支えてくれた警官、当時付き合っていた恋人。沢山の人間の涙を誘った。

 彼は悟った。自分が守りたいと願う近しい人間ほど、自分の死を悲しむのだと。死ねば彼らの笑顔は消えてしまう。自らの手で奪ってしまうのだと。

 

 

_______

 

 

 

「アタシ、もっと頑張る!いつか雄也さんみたくなるために!」

 

 決意を露わにしギュッと拳を握る彼女がいる。ふと向こうに、スパイラルウインドの名を叫びながら走って来る少女たちが見えた。

 力もある。優しさもある。信頼する友も、それを守ろうと欲す強い決意だってある。大丈夫、この子はもう強い強い立派な戦士だ。きっとこれからを担う頼もしい戦士になっていくだろう。

 

『君は…もう立派な仮面ライダーさ。今から君の名は仮面ライダークウガだ!』

 

 かつて言われた言葉が脳裏によぎる。その言葉をどうして自分に言ってくれたのか分かったから。

 

「なら、お前はもう立派な仮面ライダーだ。任せたぜ、仮面ライダーナイト」

 

 サムズアップをしながら彼女に使命を託す。クシャッとした笑顔を相手にスーは何やら疑問を抱いた。

 

「それは?」

「父さんが教えてくれた、立派な人間に送る勲章だ」

 

 するとスパイラルウインドも彼にサムズアップを返した。飛び切りの笑顔を付け加えて。

 笑みが零れる。誰かの笑顔を守るために戦う二人だったが、今この世界で誰よりも笑顔なのは彼らだった。笑顔は連鎖する。笑顔は笑顔を生み、次なる笑顔へと繋がっていく。

 

「おーーーーい!!スーちー!」

「あれ?ヘリオス!?みんなも!」

 

 そこに先程まで逃げていたヘリオスらがやって来る。戦闘の音が収まった為様子を見に来たのだ。

 

「えっと…お兄さん誰?」

 

 ヘリオスが頭上にハテナを浮かべ首を傾げながら尋ねる。雄也はおどけながら質問に返事をしようとした時、横のスパイラルウインドが手で制した。彼女の意図を察し一歩引く。

 夕日が差し込む。瓦礫が積み重なり戦いの過酷さと空虚さを醸し出す。そうは思っても…そう思えても、こうして友を守れたことに、仲間とめぐり逢えたことさえも忌まわしい記憶にしたくない。ハッキリ伝えてみんなで覚えていたい。それが友達と過ごす時間だと、思うから。

 

「この人の事なんだけど…先に、言わせてほしいんだ。…アタシ、仮面ライダーなんだ!今まで、言ってなかったけど」

 

 静寂が流れる。仮面ライダー。この世界におけるヒーローの名が飛んでくる衝撃は当然大きい。だが、『衝撃』だけだ。

 

「カッコイイじゃん。スー」

 

 パーマーが静寂を斬る。何かしらお咎めがあるだろうと思っていたスパイラルウインドは少し拍子抜けた顔で彼女を見つめる。それすら、彼女はお見通しだった。

 

「えっ?」

「仮面ライダーってことは、みんなを守るヒーローなんだよね?スーらしくて立派じゃん」

「パマちん…」

「そーそー!ウチらがそんな事で怒る訳ないじゃん!むしろスーパーヒーロー爆誕ってコトでフェスるしかなくね!?」

「ヘリオス…」

 

 太陽神。そんな異名すら持つほど底抜けに明るいのがヘリオスだ。全てを受け入れ肯定し共に楽しむ。そんな彼女こそ、自身の目指すヒーロー像の一つでもあった。パーマーだってそうだ。誰からも頼られるのは受け入れてくれるだろうと思われているから。真摯に向き合って、受け止めてくれるからみんなのパマちんなのだ。

 これがアタシの友達ではないか。ちらりともう一人の友人の方を向く。ここまで一言も話していなかったが、どうだろうか。

 

「マーちゃん?」

「スパちゃんはとってもカッコイイヒーローさんなのです。たくさんの人の目を引き付けてしまいます。マーちゃんもはヤキモチを妬いてしまうのです。…モチ⁻」

 

 マーチャンが続いて頬を膨らませて抗議する。可愛らしさが押し出されすぎて迫力はないが、真剣さだけは確かに伝わってくる。彼女らしい怒り方だ。想いを受け止めるようにスーは抱きしめる。

 

「ありがと。マーちゃん」

「たまにはマーちゃんもめでてくださいね」

 

 胸を張りスパイラルウインドの愛を受け止めるマーチャン。姉妹のような温かみあるやりとりを見て、雄也の頬が緩む。

 

「んじゃ、俺はそろそろお暇かな」

「ちょい待ち!お兄さんのこと全然聞いてない!」

 

 ヘルメットを被ろうとしている雄也にヘリオスが近づき行動を阻害する。それを言われ、まだ名乗っていないことに気が付いた。慌ててヘルメットを戻し彼女らの方を向く。

 

「ま~だ名乗ってなかったな。俺は仮面ライダークウガだ」

「「クウガ!?」」

 

 クウガという名前を聞いた途端ヘリオスとパーマーが驚嘆の声を上げる。A New Legend Heroの異名も持つこのヒーロー。5年前の大事件は世間をにぎわせ、辛くも守りきった伝説のヒーロー。2人とも当時テレビで報道を見ていたのをよく覚えている。

 

「ん?スパイラルウインドもなんだが…知ってたのか?」

「そりゃもう!超有名人じゃん!!ウハ~バイブスぶちあがってく~FOO~!!!」

 

 一人盛り上がるヘリオスを目にしながら勝手に有名人になっていた事実に驚愕を隠せない雄也。当時は未確認4号といわれ少し疎まれていた存在だっただけにヒーローとしておおっぴろげて歓迎される様子に困惑を覚える。

 

「クウガさん。アストンマーチャンです。ぜひ、あなたの心の片隅に置いておいてください」

「お、おう…」

 

 唐突な挨拶に困りながらもどこか忘れがたい彼女の姿が心に刻まれる。アストンマーチャン、心の中で思わず反芻した。今度テレビで見かけたときは必ず応援しよう。そう思えた。

 

 

_______

 

 

 

「んじゃ、雄也またね!」

「ああ。戦場じゃないところで、また」

「うん!」

 

 十数分後、日が暮れ始めた時間に別れの挨拶をする。また会おう。力強く宣言するスパイラルウインドの姿に笑みがこぼれる。些細な心持ちの変化だがそれが大きな差をもたらしたようだ。頼もしい後輩になった。彼女なら…あるいは託せるだろう。未来を。

 怪人が多発し混乱多い厳しい世だ。だがその世を牽引してくれるような頼もしさと明るさを兼ね備えた強い存在になっている。雄也はそう確信した。

 

『雄也くん…いや、仮面ライダークウガ。君に頼みたいことがある』

「んじゃ、またな」

「バイバーイ!」

 

 ヘルメットのバイザーを下ろしビートチェイサーのアクセルを強く踏む。タイヤが高速回転しバイクへ推進力を生み出し走り出す。

 

『仮面ライダーという希望の灯を、未来につなげていってくれ』

 

 けたたましい速度で道路をかける。風が吹きつけ体を圧迫してくる。いつもこうだ。

 

「仮面ライダーの灯、繋がりましたよ。本郷さん」

 

 風の圧迫感が消えた。ごうごうと音を立て雄也が行く道を指し示すように風が通り抜けていく。

 

「久々に会いに行ってやるか」

 

 帰ろう。風がそう言っているみたいだった。ヒーロー業にしばしのお別れを告げ、雄也は無数の光の中へ消えていく。東京はもう、元気になっていく。

 

 

_______

 

 

 

 雄也と別れたスパイラルウインド一行に大きなおなかの音が鳴り響く。申し訳なさそうに照れたスパイラルウインドが手を挙げた。

 

「えへへ…戦ったらお腹すいちゃった。どこかご飯食べに行こ?」

「おけまる!ダチがバイトしてる店あるしそこ行くべ!スーち~?色々聞かせて貰うかんね~?」

「アタシも聞きたいな。スーのこれまでとかさ!絶対カッコイイじゃん!」

 

 アハハという朗らかな合唱を響かせながら道を往く。明るい光は彼女らの中にある。光は輝きを放ち伝播していく。何よりもまぶしいそれは『未来』というものだ。




未確認第26号=メ・ギノガ・デ。ギノガに噛みつかれた雄介の演技が迫真過ぎて軽いトラウマ行くよあれは…

ちゃんと文章がへたくそになってるからリハビリ頑張ります

追記(2026/02/08) 誤字修正


次回予告

「初めまして、金城真船です」

「どちらさまでしょうか?」

「ここが…今回の侵略対象か」


次回、『いつもの一コマ、忍び寄る激動』
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