或る不幸な河童の手紙   作:にわかの底力

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或る不幸な河童の手紙

 三年にも及ぶ衝突の末、革命は成功を収めた。今までの体制は崩れ、議会制から一党制へと変わり、荒廃した治安維持部隊が解体、再編成され、中流階級中心の評議会が組織された。この革命運動の成功の背景には国際政治結社の協力があり、火種を燻らせていた周辺の国家でも、同様の革命運動が水紋のように広がっていった。

 しかし、それらの国家すべてで革命が成功したわけでは勿論なく、また宗教国家や皇政国家をはじめとする新体制派による政権を認めないとする国家も当然ながら現れ、旧体制派と新体制派で世界は二極化された。勿論のことながらこれら二つの勢力で衝突が起こらない筈もなく、世界は大戦の時代へと突入した。

 革命直後の、国が安定しない中での大戦で、我が国は善戦できているとはお世辞にも言えなかった。仕舞には、大規模な人員招集が行われることとなった。ここで真っ先に使い潰されるのが、我々囚人である。

 

 これは言わば私が招いた災厄。自分で蒔いた種。ここから逃げるなど許されない。

「そうか…、お前がそう決めたのなら、私はそれ以上は何も言わない」

「仕方がない。うまくやってくれよ、コック」

 コックは面会室から出て行った。もう私は彼に会うことは二度とないだろう。コックもこれを理解している。昔の彼ではないのだ。互いに。

 

 

 

 私はお前がこれを見た時に果たして生きているかどうかではなく、この手紙が果たしてしっかりお前の元へと届くのかどうかが一番の気がかりである。私は己が招いたこの災厄に、真剣に向き合おうと心に決めた。この先、私はこの国、いや、世界中の者に恨まれることになるだろう。

 

 無責任な言い逃れをする気はない。寧ろ、言い訳すら浮かばぬ。今一度問いたい、創作活動とは何たるかを。河童の軟弱な精神を支える為のものなのか、刹那の現状を打ち砕く手段に過ぎないのか、はたまた、自己で完結するちっぽけな白昼夢なのか。少なくとも私は、創作で世の中を変えるのは、不可能であると信じている。河童の根底は古来より変わらず受け継がれ、時代とともに受け取り方こそ違えど、本質は同じなのだと、その普遍的な精神世界を前にして、芸術や文学などがいかに無力かというのを、これほどまでに実感することは私の残り少ない寿命の中で感じることは恐らくないだろうし、もしや実感のうちに死するやもしれぬ。

 

 政変が叶った今、芸術家、創作家、同人作家は己が世界を変えたいが為に世に作品を放ってゆくことだろうが、やがて私と同じ病に陥り、失意の内に消えてゆくことであろう。私は、同人作家には、そうであって欲しいのだ。成功を夢見るもよし、自らを高めるもよし、何か一つの事に全力を尽くした先に、何もないことを知った時と同じ絶望を。

 私は意地の悪い河童だと思う。こういう河童なのだ。私は不幸である。誰よりも不幸な河童である。コック、これが未だかつてない程までに前向きに死へと突き進む者の胸の内だ。私はこの真白い世の中の、無益な争いで、無意味に命を捧げてくる。後を頼んだ、次期書記長。




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