キヴォトスに赴任する殺せんせー 作:名無しの毛玉
アビドス高等学校
Vo1『アビドス対策委員会』
殺せんせーが赴任してから色々とあった
初日に知り合った範囲での挨拶周りを終え、ようやっと書類の山に向き合う体制が取れたある日の事
『おはようございます!殺せんせー!』
「おはようございます、アロナさん」
シッテムの箱の画面越しに挨拶をする
『ここ数日間でシャーレの噂はすごい広まりを見せてますよ!その証拠にほら!』
とアロナが可視化した電子メールの山を見せてくる
『各学園の生徒たちからの助けを求めるお手紙です!』
ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ、百鬼夜行、
『問題がこれ程あるというのは悲しい事ですが、助けを求めてくれている、というのは良い兆候です!私たちの活躍が始まるということですから!』
「そうですね。声すらあげる事の出来ない状況はより悲惨です。生徒たちが『頼っていいのかもしれない』と思えるようにがんばっていきましょう」
『はい!』
それでですね、とアロナが手紙の山から一つ取り出した
『こちら緊急性が高いかもしれない事案です。ちょっと不穏な内容で。読んでもらったほうがいいかなと』
「どれどれ…」
手紙が開く。アロナが読み上げを始める
『連邦捜査部の先生へ。こんにちは。私はアビドス高等学校の
『以上です。あ、地図も添付されてますね。アビドス高等学校。…アビドス高等学校ですかぁ』
「おや、学校そのものに何か問題が?」
『はい…。昔はかなり大きい自治区でしたが、気候の変化で街が厳しい状況になっているのだとか。確か現在の地図だと…ありました。ここです』
「…これはひどい」
広い、広い都市だった。交通網も発達していたのだろうが、今では全て廃線したと書かれている。廃線の理由は明白だった
「都市の砂漠化ですか…」
『はい。砂嵐の影響で砂漠化が拡大。対策も間に合わなかったようで、住宅街も砂漠化の波に飲まれたようです』
「………」
殺せんせーは痛ましいものを見る目で、地図をじっと見つめていた
『…そう、砂漠化は進みましたが今でもとってもアビドス自治区は広いんですよ!街のど真ん中で遭難する人もいるのだとか!』
とアロナが明るく話しかけてくる
「あ、あああ!すみません!気を遣わせてしまって!そういうの先生の役目なのに!」
『ふふーん!アロナは先生のスーパー秘書ですから!先生を助ける事が私のお仕事なので!』
「…むむむ。負けていられませんね。このままではアロナさんの先生ポイントが先生より高くなってしまう」
『え゛っ。いや、ソンナコトハー、ナイデスヨー』
「悩んでる暇はありません!アビドスへGOです!」
と言いながら衣装部屋に殺せんせーは向かう。そして登山家もびっくりな重装備で出てきた
「これなら遭難しても大丈夫!」
遭難する気満々だった
『先生!クラフトチェンバーは準備されました?』
「おっとそうでしたね。鞄には詰め込みましたが、そちらの方が多くの物資を運べるでしょう」
クラフトチェンバー。シャーレの地下に設置されているオーパーツ。シッテムの箱に並ぶ謎の多い装置だが、アロナの統制の下に使うと物質の生成装置として扱うことが出来る。作り出せるものは多種多様。甘味からゲーム機から本から美容品から炬燵から設置型の屋内プールまで。およそ8時間もあれば大体のものが作れるそれは、割とランダム性が高かった
「1から3までは自由枠、4から10まではいざというときの補給物資枠。4から8番まではなんとか弾薬等のストックの生成が出来て良かったです」
『現地に到着したらそちらで生成しますね!』
「お願いします」
シャーレの先生、シッテムの箱、クラフトチェンバー。この三つがあることで、一人補給部隊が完成する。殺せんせーがいれば、物資が枯渇することは無い
アビドスは正解を引き当てた
そうして、アビドス自治区に辿り着いたものの
「どこなんですかねぇ…ここ…」
学校が見つからないまま数日が経過していた。人っ子一人いない街の中。登山レベルに用意した水分や栄養補給用の物資は底を尽き、複数持ってきたバッテリーも枯渇し、シッテムの箱はスリープモードに入っている。ある意味身軽だった
住宅街は似たような家屋が建ち並び、目印になるような特徴のある店などもなく、自販機や公衆電話の類も設置されていない。遭難するのも当然の環境だった
(これまで歩いてきた限り、砂漠化がまだ進行していない住宅街でも誰一人住んでいない。恐らく大半の住人は退避しているか、他の自治区に移り住んでいる。…つまり目撃者は出ない。別に普通にこれくらいやっていいと思いますが鈍ってる姿を見られるの恥ずかしいですからね。ここらで勘を取り戻すとしましょう)
「やりますか、フリーランニング」
そう言って、殺せんせーは屋根に一息で跳び乗った
(…流石に上から見ればわかりやすいですね)
見渡せば他の家屋より明らかに大きな建物。アビドス高等学校の校舎があった
屋根伝いにアビドスの校舎に移動する。直線距離でこのまま進めば30分もあれば着くだろう。いくつもの家屋を股にかけたが、やはりどの家にも住人はいない。出掛けている、という気配もない。誰もいない街だった
「…ん?」
殺せんせーの視線の先。銀の髪、獣の耳、背にはアサルトライフル。ロードバイクでアビドス校舎に向かう生徒の姿がそこにはいた
「…第一村人発見!」
大声だった。聞こえたのか生徒の耳がビクッと動く。生徒が振り返る
「ヌルフフフ…」
太陽を背に屋根で笑う不審者がいた。忘れないで欲しいのだが登山家もかくやという重装備のままである。とてつもなく怪しい
「………」
生徒は、謎の人物の
「…とりあえず降りてもらっていい?」
「あ、はい」
冷静な判断だった。殺せんせーは屋根から降り、生徒の正面に立つと身なりを整える。ここでやっと、生徒の目から警戒の色が消えた
「ん。SNSで見た顔」
「わーお先生有名人」
てれてれ、と殺せんせーが頭をかいている
「私の事は知っているようですが、自己紹介を。私は先生。殺せんせーと、お呼びください。あなたのお名前は?」
「ん。
「砂狼さん、ですね。よろしくおねがいします。砂狼さんはアビドスの生徒で?」
「そう。…あとシロコでいい。長いでしょ?」
「ではシロコさんと。先生アビドスに用事があるのですが一緒に行きませんか?」
「…じゃあアビドスにお越しのお客様、こちらです。…ていう感じのほうがいい?」
「普通で大丈夫ですよ!?」
「ん。冗談。…歩いた方がいい?」
「ロードバイクでも追い付けるので大丈夫ですよ」
「…疲れない程度に走るね」
「良い子ですねぇ…」
「ムキになると話してる余裕なくなるから」
「あぁそういう」
並走する。慣れているのだろう、シロコの走りに迷いはない。スルスルとアビドス校舎に向かっている
「この辺りに食べ物出してるお店とかないけど、大丈夫だった?」
「ええ。広いとは聞いてましたから、食べ物なんかはこの鞄に入れてましたよ。…さっき尽きましたが」
「…重くない?」
「まぁ平気です。だいぶ軽くなりましたしね」
「…それでもあの身体能力はすごいと思う」
「ヌルフフフ…がんばればシロコさんにも出来ると思いますよ」
「本当?」
「ええ。住んでる場所がどの辺りなのかはわかりませんが、毎日そのロードバイクでこの距離の登下校を繰り返してしているなら、充分な体力はついているでしょう。あとは、キチンとした教育のもとに慣れれば直ぐだと思いますよ、あなたなら」
「…先生が教えてくれるの?」
「生徒が望むなら、先生は教えますよ」
「じゃあ時間があったらお願い」
「ヌルフフフ…意欲があって嬉しいですねー」
「ん。出来ることは多ければ多いほど良い。手段が思いついても、使えなかったり、使っちゃいけなかったりするから、やれることは多い方が良い」
「御自身でそこまで…優等生が本当に多いですね
「いや、これは…先輩が教えてくれたこと」
「良い先輩がいるんですね。他に教えてもらった事などあります?」
「ん…。武器の手入れは怠ったらダメ。普段使わない武器も、持つからには丁寧に手入れすること。…先輩はショットガン使いだけど、拳銃も持ってる。そっちの整備も毎日やってる。…私も同じのを持ってる。整備の練習用に貰った。嵩張らないから、今も服の内側に着けてる」
「…素晴らしいですね。普段使いは今肩にかけてるそれですか?」
「ん。アサルトライフル。…ホシノ先輩はショットガンでノノミはマシンガンだから、後輩にアサルトライフルの子が来たときは嬉しかった。…多数派は私達」
キリッとした顔をしている。鼻息も少し荒い
そんな話をしていると、校舎に着いた
「…改めて。アビドスにようこそ、先生。部屋まで案内する」
「ただいま」
「おかえり、シロコせんぱ………い?」
案内された部屋の扉をシロコが開くと、アビドスの生徒たちがそこにいた
「…シロコ先輩が男の人連れてきたー!?」
「…セリカ。人聞きが悪い」
「わぁ。シロコちゃん大胆ですね!」
「…満面の笑みだし、わかってるでしょ、ノノミ」
「お、お、お、落ち着いてください!こ、こういうときはですね、冷静に、冷静に、れいせい…になれるわけないじゃないですかー!?」
「アヤネ、動揺しすぎ。…というか呼んだのアヤネじゃなかった?」
「えっ!?アヤネちゃんいつの間に!?」
「へぇっ!?違います違います心当たり無いです!」
「…先生だよ、この人」
「へ?先生?」
「ん。うちの学校に用があるんだって」
殺せんせーは(女子高生ってパワフルですね…)と静かに見守っていた
「…先生。黄昏れた目をしてないでこっちに来て」
「おっと。
「あっ、シャーレの!本当に来てくださったんですね!私、
黒髪で赤い眼鏡をかけた耳の尖った生徒が大きく頭を下げながら感謝を述べる
「えっと、取り敢えずこれホシノ先輩起こしたほうが良くない?…あ、私、
若干敬語がぎこちない、黒髪のツインテールで獣耳の生えた生徒がそう言いながら部屋から出ていく。少し経つと隣の部屋から「ホシノ先輩起きてー!」と大きな声が聞こえる
「ホシノ先輩、昨日はお疲れでしたからねぇ…直ぐに起きるでしょうか…。あ、先生!私は
ベージュ色の長髪の生徒は
ガチャ、と音を立てて二人入ってくる。セリカと『ホシノ先輩』だ
「ふわぁ…まだ起きる時間じゃないのになんで…。…ん?」
生徒の中でも特に小さな背丈で桃色の長い髪を持つ生徒。右目は金、左は蒼、その両目が殺せんせーを捉える
一瞬。ほんの一瞬。明らかな『敵』を見る目で、ホシノは殺せんせーを見た
直ぐに、夢のように、寝惚け眼に戻ってしまったが
(…なるほど。…とても、とても悲しい)
「…私は先生。殺せんせー、と呼んでください。あなたのお名前は?」
「…うへぇ。気付いてるのに普通に聞くんだ」
「ええ。あなたも、私の大切な生徒ですから」
「…おじさんは
一見するとぽやぽやと、瞳を閉じながら笑うホシノ。彼女の警戒の理由は単純だった
一目でそれがわかってしまったが故の、一瞬の恐怖が、ホシノが仮面を外してしまった理由だった
(きっと彼女は、『大人』にならざるを得なかった)
それがひどく悲しくて。言葉を連ねようとした瞬間
ダダダダダダダダダ
と、聞き慣れた銃声が外から聞こえた
「…またかー」
とホシノが脱力する。
「取り敢えずホシノさん」
「うん?」
「こちら補給物資です」
『クラフトチェンバー!生成開始です!』
殺せんせー以外には聞こえない、アロナの声と共に、殺せんせーがわざとらしく開けた鞄からダバダバと物資が出てくる。明らかに鞄の容量より出た物資の方が多い
「…うわー。なるほどねー。シャーレの先生ってすごいんだねぇ」
目をまんまると開けて素で驚いているホシノ。その後ろには餌入れから溢れる程に大量の餌を入れられてビビリ散らす猫のように扉の外に退避したセリカがいる
「…ん。これなら補給の問題は解決する」
と床に落ちた物資から必要分の弾丸を拾ったシロコが手際良く包装を剥がしていく。剥がした分はセリカに手渡される。どうやら落ち着くまで世話する事にしたらしい
「みんなで出発ですよー」
銃の整備を終えたノノミが軽々と
「後方支援はお任せください!」
補給物資の中から医療系の救援物資をドローンに装備させながらアヤネがパソコンを立ち上げている
「や、やってやるわ!」
とようやく落ち着いたセリカが慣れた手付きでリロードをする。恥ずかしいのかその怒気を襲撃者に向けていた。完全な八つ当たりだった
「みんなやる気満々だねぇー…おじさんもうちょっと寝ていたかったなー」
そう、おどけるホシノだが。ショットガンと盾を装備し、油断なく窓の外の敵を見ている
「ヌルフフフ…それでは先生のアビドスにおける初仕事、始めましょうか」
to be Continued in 『カタカタヘルメット団』
書きてぇけど余裕がねぇ、いつかEXとして書こうと思ってるお話リスト
登山服着る殺せんせーとフリーランニング
ロードバイクのシロコと生身で並走する殺せんせー
ホシノとシロコとノノミでお揃いの拳銃持ってたりしてほしい(アートワークのホシノの盾には拳銃が備え付けられてるのを見ながら)
女子高生の姦しさ
強キャラホシノ
ビビリ猫セリカ
今話の欲望リストです
アビドス編全部書いてから投稿しようと思ってたんだけどVo1の1話分と2話分だけでこの文量だから何時までかかるかわかんねぇなって思ってもう投稿することにした(2023/4/6/17:22予約投稿ポチー)
コハルのあの臍から下まで続く謎の縦線の正体がわかるまでにこの小説終わるのか…?(ヘソ出しコハルが見たいがこの設定を知らん人が多いのかヘソに無くて困るし公式見解が知りたい。あれ消せんの?消せないの?)