キヴォトスに赴任する殺せんせー 作:名無しの毛玉
Vo1『アビドス対策委員会』
「………なにやってんの、あれ」
ここはアビドス住宅街、45ブロック地区。相変わらず誰もいない街で、バイトに行こうと歩いていたセリカは、奇妙なものを目撃していた
「ヌルフフフ…さー捕まえてごらんなさーい」
「…捕まえたらご褒美。捕まえたらご褒美。…何を頼もう」
「ほらほらー、シロコちゃんファイトー。このままじゃおじさんに捕まっちゃうよー」
ノノミとアヤネは学校にいた。ノノミは落ちそうになったので断念。アヤネは視力が悪いので眼鏡が落ちそうになった際に断念。まだ安全面の準備が不足気味なので学校で待機となった。
「…いいご身分ね。先輩たち連れ出して、朝っぱらからぴょんぴょんと。…いや本当に何してるのよ」
怒りよりも困惑が勝っていた。確かに今日は自由登校日だ。だからといって何故あんなことを…?自由すぎやしないか?もうちょっとこう…なにかないの?セリカはツッコミたくて仕方がなかった
「…はぁ。急ご」
セリカは全力で走ることにした。殺せんせーたちに見つからないよう身を屈めながら
「…黒見さんもやれそうですねぇ。フリーランニング」
砂埃がすごい勢いで立っていたのでバレバレだった
「いらっしゃいませー!柴関ラーメンへようこそー!」
ここは柴関ラーメン。今も少数の人が暮らしているアビドス自治区に位置するラーメン店である。他の自治区からもこの店の味を求めて客がやってくるほどの名店だった
「セリカちゃん、柴関特製ラーメン出来たよ」
「あ、はーい!お客様ー!柴関特製ラーメンでーす!熱いうちにどうぞー!」
柴犬の姿をした大将が日々ラーメンを作るその店の店員は、セリカ以外はみんな犬の姿をしていた
セリカは普段から様々なバイトをしている。が、バイトに行ってはそのバイト先が悪徳で収入にならなかったり、高収入ではあったが疲れ切る事になって翌日ダウンしたり、仕事中に店が潰れてお金にならなかったり、安定した収入を得ることが難しかった
それを見兼ねて雇ってくれたのが元々行きつけだったこの柴関ラーメン。生徒は雇わない方針を曲げてまで雇ってくれた大将に、セリカはとても感謝していた。急に指示が変わったりしない安定した仕事内容、借金返済にもあてられるくらい充分な収入、生徒であることを鑑みてくれてシフトも自由。超ホワイトな職場だった
ガラッと店の扉が開く
「いらっしゃいませー!柴関ラーメンへ…わわっ!」
「あのー☆5人なんですけどー!」
「あ、あはは…。セリカちゃん、おつかれ…」
「ん。おつかれ」
「み、みんなどうしてここを…!?」
「うへー、やっぱここだと思ったー」
「ホシノ先輩か…」
「どうもー」
「先生まで…というか何そのハチマキ…」
ラーメンのどんぶりによくある模様のハチマキをつけた殺せんせーが鼻息荒く立っていた
「先生わりとラーメンにはうるさいですよぉー?今までいっぱい食べてきましたからね!」
「…ほぉー。お客さん本当に色々と食べてきてそうだね。でも安心しなよ、絶対満足させてやるからさ」
大将は久々に新規のお客さんが来てくれてニコニコしていた
「ほれ、アビドスの生徒さんたちも早く座んな。あの辺空いてるからさ。セリカちゃん、おしゃべりはそのくらいにして注文受けてくれな」
「あ、うう…はい、大将。それでは、こちらへどうぞ…」
「じゃあ私はここで♪殺せんせー!私の隣が空いてますよー!」
「…ん。私の隣も空いてる」
「うーん突然の二択。先生どちらを選べばいいんですかね」
「あはは…取り敢えずノノミ先輩の隣、座らせてもらいますね」
「それじゃあおじさんはシロコちゃんの隣でー」
「四席空いてたのに残り二席に…先生が遅れを…」
「ふふふ♪先生、私の膝の上って選択肢もありますよー?」
「何やろうとしてるのよ人の店で!変態!」
「まだ先生なにも言ってないのに!?」
「あはは、冗談ですよーセリカちゃん☆」
「あぁもう!普通に椅子動かしてシロコ先輩とノノミ先輩の間に座ればいいじゃない!ほら、さっさと座る!」
「はい…」
「先生しゅんってなっちゃったねー。ヨシヨシしてあげようかー?」
「大丈夫です…先生強い子…ぐすん…」
わかりやすく落ち込んで涙まで流している。嘘泣きのクオリティは高かったが口に出す言葉が嘘臭かった。なおヨシヨシはシロコとノノミがやった
「わざとらしいのよ!ほら!注文は!?」
「ご注文はお決まりですか、でしょー?セリカちゃーん。おじさんだって此処によく来るんだから接客の時の台詞は知ってるよー?ほらほらー、笑顔で親切にー」
「う、うう…ご、ご注文は、お決まりですか…?」
どうにか笑顔を絞り出していた。口角は引きつっていた
「私はチャーシュー麺でおねがいします!それにしてもセリカちゃん、バイトのユニフォーム似合ってますね♪」
「ん。かわいい。…私は塩で」
「ほんとほんとー。写真撮っとけば儲けれそうだよねー。先生1枚買わなーい?あ、注文は特製味噌ラーメンでよろしくー。炙りチャーシューもつけてねー」
「ホシノ先輩、変な副業はやめてください…。えっと…。セリカちゃん、私は味噌で」
「買いはしませんけどアルバムとして残せませんかねぇ。思い出アルバム。バイトの経験を残すのも大事ですから。…先生はこの柴関特製ラーメンでお願いします。最初はオススメからいきましょう」
「はいはい、全員注文はそれでいいのね。…ところでお金はどうするの?またノノミ先輩に奢ってもらうの?」
「私は大丈夫ですよー?限度額まではまだ余裕ありますしー」
ノノミは金色のカードを取り出して笑っている。物理的に眩しいのでホシノは目を細めていた
「いやいやー、またノノミちゃんにご馳走になるわけにはいかないよー。…殺せんせー奢ってくれるー?」
「にゅや!?ホシノさんあなたまさか最初からそのつもりで!?」
「あははーそんなまさかー。今思いついただけだよー」
「ぐ、ぐぬぬ…こんなところにもういられません!先生シャーレに帰らせてもらいます!」
「このあと殺されそうな台詞だねー。逃さないよー。シロコちゃん!ノノミちゃん!ゴー!」
「ん!」
「はーい♪」
「ちょっ!?きゃー!?触らないでぇ!?おまちになってぇ!?」
シロコとノノミとホシノに捕まりながら殺せんせーはワチャワチャしている。ホシノは殺せんせーの体を弄る
「…ふーん。やっぱり鍛えてるんだねぇ。…お。大人のカード持ってるじゃーん殺せんせー」
「にゅやー!?それは先生の大事なお菓子代に使うやつですよ!?返しなさい!」
「いやいやー、先生としてはカワイイ生徒の空腹を満たせる絶好のチャンスじゃーん?逃しちゃっていいのー?」
「ぐ…ぐぬぬ…。まぁ、お菓子はポイントでも買えるので良いんですけど…。はぁ…また早瀬さんに怒られますかねぇ、これは」
なおユウカが後日聞いた時には「いえ、まぁ、生徒の為に使ったのなら別に…。先生。後で私にも何か奢ってくださいね」と言ってあまり怒りはしなかった
「先生、先生」
ノノミが小声で殺せんせーに話しかける
「こっそり
「…いいえ。それはとっておきなさい。ここは先生の大人としての威厳を見せる時…!少なくとも
なお、そのお金に目が眩んで普通に持ち上げて床に届く長さのレシートをお菓子で作った。ユウカに財布を握られるのも当然だった
その後みんなでラーメンに舌鼓を打った。会計時、ホシノの注文したトッピングが思いの外高くて殺せんせーは泣いた
「早く出てって二度と来ないで仕事の邪魔もうホント嫌いみんな死んじゃえー!」
仕事中ずっと、主にホシノにからかわれたセリカは幼児のように罵倒して対策委員会と殺せんせーを追い出した
「あははー、元気そうでなによりー。じゃあセリカちゃんまたねー」
「あはは…。セリカちゃんまた明日ね」
「セリカちゃんまた明日ー!可愛かったですよー!」
「ん、また明日」
「ヌルフフフ…先生ここのラーメン気に入りましたのでまた来ますね」
「もう来んなっての!」
みんなが帰っていく
「…はぁ、仕事戻ろ」
「お疲れ様ー!」
仕事が終わった。目まぐるしい一日だった
「ホシノ先輩は前からたまに来てたけどまさか全員で来るとは…」
騒がしい一日だった。心地好さすら覚える疲労を抱えて帰路につく
「ホシノ先輩は人が働いてるってのにからかってくるわ、シロコ先輩とノノミ先輩は先生の事チヤホヤするわ、先生はデレデレしてるわで…。アヤネちゃんだけが頼りだったなぁ…」
ぶつくさと不満を口にするセリカだったが、口元は笑みを浮かべている
「ホントいつもいつも騒がしいったら。…先生も、なんか馴染んでるし。…認めない。認められない。…でもなぁ」
こんな日常が、明日も続くといいのに。そう思う
そんなセリカの背後に
ドドドドドーーーーーン!!!
大量の爆撃が降り注ぐ
「…!?」
(対空砲…?いや、砲撃音は…Flak41改?なんでこんなところに?一体誰が?カタカタヘルメット団?目的は?どこから撃ってきたの?)
疑問が一瞬で頭の中を駆け巡る。答えは出ない
(やば…意識が…みんな…)
セリカが倒れる。戦車すら木端微塵になるだろう砲撃の絨毯爆撃には流石に耐えられなかった
遠方に影が複数。カタカタヘルメット団だった
「…続けますか?」
「いや、生かさなければ意味がない。この程度でいいだろう。車に載せろ、ランデブーポイントへ向かう」
明らかな精鋭。裏を生きる気配がする。統率の取れたカタカタヘルメット団達はセリカをトラックに載せると、闇に消えていった
アビドスで、アヤネはセリカの帰りを待っていた
「………」
今日は色々あったから愚痴を聞いてあげないと。そう思って待っていたが、いつまで経っても帰ってこない。柴関ラーメンは既に閉店している。大将にも連絡を取った。帰路につくセリカを見ている人は複数いた。普段通りならもう帰ってきている時間。なのに、部屋にも学校にも、セリカの姿は無い。電話にも出ない
合っていて欲しくない予感が、アヤネの脳裏に浮かぶ
静かに扉が開く。シロコが部屋に入ってきた
「ん…。ただいま」
「おかえりなさい、シロコ先輩。…あの、どうでした?」
「セリカの帰宅ルートを辿ってみたけど、何処にもいない。目撃証言は柴関ラーメンを出て直ぐ側の無人区域で途切れてる。…爆撃の跡があった」
「…!?…それは。…そうですか」
嫌な予感は、当たっていそうだった
「…ケータイの電源も入ってなさそうですね」
ずっと連絡をかけ続けていたノノミが、悲しげに呟いた
「…あとはホシノ先輩と先生の連絡待ち」
シロコは、なにも出来ない無力感に包まれながら、ジッと、静かに立っていた
「みんな、おまたせー」
「黒見さんの居場所がわかりましたよ」
ホシノと殺せんせーが部屋に入ってきた
「本当ですか殺せんせー!」
「はい。黒見さんの端末から居場所を特定しました」
「うへぇ。先生ったら連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスして情報抜き取ってきたんだよー?極悪人だよー?バレたら始末書だよー?」
『このスーパーOS、アロナの手にかかればこれぐらい楽勝です!バレるような取り方はしてませんよ!』
「バレなきゃいいんですよバレなきゃ。…本当はダメなので生徒のみなさんは真似しないでくださいね?先生とのお約束です。…今は黒見さんの安否が最優先ですから」
「先生…すみません。ありがとうございます!」
「ん。それで、セリカはどこにいるの?」
「ん。ここだよー。この砂漠化が進んでる市街地の端の方。だーれもいないし廃墟になってる。隠れるにはうってつけの場所だね」
「確かここはカタカタヘルメット団の存在を多数発見出来たエリアです…。やはりカタカタヘルメット団の仕業…」
「帰宅中のセリカちゃんを襲って連れ帰ったんですね。…どうお掃除しましょうかー♪」
「ノノミ、怖い。…目的は人質かな」
「急いでセリカちゃんを連れ戻しに行きましょう!」
「よっしゃー。そんじゃー行ってみよー。先生、号令よろしくー」
「ヌルフフフ…ホシノさんありがとうございます。では、いきますよ!アビドス対策委員会、出発です!」
おー!という声が部屋に響いた
ガタン、ガタン、と。セリカを載せたトラックが砂漠を進む。少しずつ、セリカの意識が戻ってくる
「…うーん。…!?ここどこ!?」
セリカの目が覚める。
「…ッ!
頭だけではない、全身バラバラにされるような痛みを我慢しながら、セリカは周囲を確認する。ほぼ真っ暗だが僅かに光が見える。セリカはそこから外を覗く
「…ここ砂漠?…線路ってことは。…郊外!?…ダメ、ここじゃ通信も繋がらない…!脱出出来たとしても、アビドス校舎は遠いし、食べ物も飲み物も無い…。銃は…ダメ、弾が抜かれてる…。…はは、何よ、ダメな事ばかりじゃない…」
セリカはぺたり、と座り、項垂れる
…心配、するだろうな。みんな
…このまま何処かに埋められちゃうのかな
…誰にも気付かれないんだろうな
…私も、街を去ったと思われるのかな
…裏切ったって、思われちゃうのかな
…誤解されたまま、死んじゃうのかな
…みんなに、死んじゃえって言ったのが最後か
…ヤだなぁ。また明日って、言ってくれたのに
「うっ…くっ…ぐぅぅ…う、うぅ…」
セリカの目から、涙が溢れる。その時だった
ドカーン!と、トラックが横転する
「うわぁあああ!?」
トラックの扉が開く。そこから転がり落ちるように外に出る
「ケホッ、カハッ、やっば砂入った、ペッ、ペッ。ふぅ…。…一体ナニ!?爆発したんだけど!?」
「セリカちゃん発見!生存確認しました!」
「アヤネちゃん!?」
「こちらも発見した。半泣き…いや、ボロボロに泣いてるセリカを発見!」
「ちょおっ!?シロコ先輩やめて!?」
「なにぃ!?うちのセリカちゃんが泣いてただとぉ!?そんなに寂しかったの!?ママが悪かったわ、ごめんねー!!」
「ホシノ先輩いい加減にしないと殴るわよ!?」
「泣かないでくださいセリカちゃん!私たちがその涙拭き取ってあげます!さぁ私の胸の中に!」
「ノノミ先輩抱き着かないで痛い、痛いってば!」
殺せんせーはちょっと遠くから女子高生の姦しさを眺めていた。デジャブだった
「…殺せんせー、黄昏れた目をしてないで声かけたら?」
「おっと失礼シロコさん。ヌルフフフ…。…この流れ昨日もやりましたね。…黒見さん」
「…なによ、先生」
「安心しました」
「…!?」
殺せんせーがセリカの頭を撫でた
「あなたがいなくなったと聞いて、先生本当に焦りました。まだ教えてない事がたくさんある。まだあなたにはたくさんの可能性がある。まだたくさんの思い出を積み上げる時間がある。…その全てが、ここで終わってしまうのは、先生ちょっと認められません」
「………」
「ヌルフフフ…先生頼りないかもしれません。信じる事が出来ないかもしれません。でも先生が、黒見さんとの関わりを諦める事はありません。一度標的を決めた先生はしつこいですよぉ、ヌルフフフ…」
「…セリカでいいわよ、別に」
「…おぉっ!聞きましたかホシノさん!セリカさんがデレました!」
「あぁもうそこでふざけんな!あといつまで触ってるのよこのバカ!不審者!変態教師!」
「にゅやぁっ!?すみませんセクハラでしたか!?怖いんですよねどこまでやっていいか!?」
「…別に、ちょっとなら、いいわよ」
ホシノは思った。知ってたけどすごいデレるな、この子
ノノミは思った。あとで私もセリカちゃん撫でたいです
シロコは思った。先生の撫で方かなり上手いと見た
アヤネは思った。あれもしかして名字呼び私だけですか
ところでお忘れかもしれないが、ここはカタカタヘルメット団のアジトのド真ん中である
「てめぇらうちのシマ荒らして生きて帰れると思うなよぉ!?」
チンピラ集団が取り囲んでいた
「ん。セリカ、これ弾薬」
「…ありがとう、シロコ先輩。ちょっと腹が立って仕方なかったのよね。…あいつらに全部ぶつけてやる」
静かな怒りをセリカは燃やしていた。というより、この場に集う対策委員会全員が、静かに怒りを燃やしていた
「じゃあ、まぁ、やろうか」
一切巫山戯ることなく、鷹の眼のような眼光で、ホシノは敵を睨んでいた
「お掃除の時間ですー♪」
楽しそうな声とは裏腹に、なんの色も映さない瞳でノノミは敵を見ていた
「…ん」
静かに、全ての武装を展開し、シロコは合図を待っていた
「…絶対に許しません」
この中で一番、当事者よりも怒りを燃やしていたのは、アヤネだった。背後には両の手を越える数のドローンが浮かんでいた
『戦場の状況把握、完了です!殺せんせー!』
「ヌルフフフ…カタカタヘルメット団のみなさまに於かれましては、なにもすることなくご退場いただきます」
殺せんせーによる、完封宣言であった。実際、なにもさせなかった。戦力比
遠方に影。セリカを拐った集団だった
「…あれが、先生か」
「いいんですか、手を出さなくて」
「構わない、仕事はした。標的を目的地に届ける運搬依頼までが我々の業務だ」
「…そうですか」
「…この仕事からは手を引くぞ。充分な報酬は得た」
「そうですね。アレの相手はしたくないです」
そうして、影は消えた。アビドスの脅威は去った
「いやーみんなおつかれー」
「ん、おつかれさま」
「おつかれさまですー♪」
「おつかれー」
「おつかれさまです」
「ヌルフフフ…おつかれさまです。…これも昨日やりましたね」
「あははー、そうだねー」
「セリカちゃん大丈夫ですか?」
「別にこれくらいどうって事…」
「無いはずが無いから寝てなー。Flak受けて戦えてたのがおかしいんだからさ。ゆっくり休みなねー」
「…うん。おやすみ、みんな」
「ん。ここからなら一番近い寝られるとこは保健室。一緒に行くよ、セリカ」
「別にいいのに…」
「ダメ。セリカを一人にすると危なっかしい」
「何よそれ…」
セリカとシロコが部屋を出る
「…みなさんこれを見て下さい」
アヤネは何かの部品を取り出す
「戦闘中に撃破した件のFlakやその他の戦車、自動人形の部品です。確認したところ、キヴォトスでも危険とされ、違法認定された機種と判明しました」
「うへー…普通手に入るものじゃないねぇそれ。一体カタカタヘルメット団は何処から仕入れたのやら」
「流通ルートを探れば、裏にいる存在も探せそうですね♪」
「はい。ただのチンピラが、何故ここまで執拗に私たちの学校を狙っているのかも、明らかになるかもしれません。…先生」
「はい?」
「我儘になってしまうのですが…私に探らせてくれませんか?」
と、アヤネは殺せんせーに頭を下げた
「セリカちゃん捜索の時みたいに、きっと先生に頼れば一瞬なんだとは分かってます。でも…あの時、私は、何も出来なかった。それが、悔しいんです」
「アヤネちゃん…」
「………」
ノノミは心配そうに、ホシノは静かに、見守っている
「…頭をあげてください」
「…はい」
「まず先に。奥空アヤネさん」
「はい」
「あなたが何も出来なかった、なんてことはありません」
「えっ?」
「セリカさんが失踪した事に最初に気付いたのはあなただった。セリカさんの捜索部隊をいち早く編成したのもあなただった。シロコさんに現場を、ノノミさんに連絡網を、ホシノさんと先生に端末情報を、任せたのはあなただった。そしてあなた自身は、地図上からセリカさんが居そうな場所をずっと探していた。何も出来なかったなんてことはありません。あなたは確かに、あなたの役割をこなしていた」
殺せんせーはアヤネの頭を撫でる
「ですので、先生は奥空さんに任せます。これまでやってきたことを見て、奥空さんなら出来ると信じてますから」
「…ありがとうございます、殺せんせー。…あと、アヤネでいいですよ。みんな名前呼びなのに、私だけ名字呼びなの、寂しいので」
「ではアヤネさん。先生、一番の褒め方がこれなのですが、大丈夫ですかね」
殺せんせーはアヤネの頭を撫でる手を指差す
「…大丈夫ですよ。安心します」
「なら良かった」
二人で笑い合う。それを眺めながらホシノは「ちょっとおじさんたち離れた方がいいかな?」とノノミに耳打ちしているし、ノノミは「もうちょっと見ていましょう♪」と壁の花の構えだった
「…はぁ」
セリカは、深く、ため息を吐く。散々な一日だった。朝から変なもの見るし、仕事中にからかわれるし、体は痛いし。看病してくれると言ったシロコ先輩は先に寝てるし
「…嬉しいなぁ」
日常は、続いていきそうだった
ガラッと扉が開く
「セリカさーん。お見舞いに来ましたよー」
と殺せんせーが入ってくる。手に持つ皿にはすごい精密にカットされたタコ型のリンゴがあった
「…きんも」
「にゅや!?ちょっとリアル過ぎましたかね!?」
「やるならやるでなんでタコさんウインナーみたいにしなかったのよ先生…というか普通ウサギじゃない?こういうの」
「うーん…魅せ方を間違えましたかね…お恥ずかしい」
「…ふふ、まぁいいわよ。元気付けようとしたのは伝わるし」
「そこが伝わってるなら大成功ですね」
「…あ、あの!」
「はい?」
「…お礼、まだしっかり言えてなかったなって、思って、その、あの…。…あ、ありがとう。助けてくれて。…で、でも!今回の借りは絶対返すから!絶対、いつか絶対、返すから!…なんでヘラヘラ笑ってんの!?」
「ヌルフフフ…いいえー?別に先生にやけてなんかないですけどー?」
「うっわムカつく!…はぁ、全く。…じゃ」
セリカは、満面の笑みを浮かべて、はっきりと言った
「また明日ね!殺せんせー!」
キヴォトス某所、高層オフィスビル、最上階
「…格下のチンピラ如きではあの程度が限界か。主力戦車まで貸し出したというのに、まったく」
体格の大きい、義体。生徒ではない。キヴォトスの大人。高い社会的地位を持つその人物は、暗い部屋で一人呟く
「…目には目を、生徒には生徒を。専門家に依頼するとしよう。ついでに、貸し出した分の取り立てもやってもらうとするか」
連絡を入れる。少しの間を置いて、通信が繋がる
「はい、どんなことでも解決します。
「仕事を頼みたい、便利屋」
アビドスに潜伏中のカタカタヘルメット団。まだまだ構成員はたくさんいた。だが今日、カタカタヘルメット団は全滅する
「うわあああっ!?」
最後の一人が倒れた
「あーあー、こっちは終わったよー」
生徒の中では小柄な体躯、大きな鞄には『LOVE&VIOLENCE』、獲物は
「こっちも制圧完了したよ、ボス」
白と黒がハッキリ分かれた髪色、服には『BORN.TO.KILL』、獲物はサイレンサー付き
「お、終わりました、アル様…」
小さな帽子を被った生徒、鞄には首吊りウサギのアクセサリー、獲物は
「…ふふふ。弱いわね。クビって言われるのも納得だわ」
首と袖にファーの着いたコートを纏う生徒、後頭部からは三日月のように上を向く角、獲物は
「…この仕事は、私たち便利屋68がいただいたわ」
アビドスに新たな脅威が迫る
to be continued in 『便利屋68』
文量5割増し(平均6000、今話9000)
生徒とフリーランニング(最初シロコだけの予定がおじさんが気付いたら書き加えられてた)
体を触って(先生ってやっぱり女の人とは違うんだなぁ)って体の硬さで実感するホシノ
めっちゃ甘いユウカ
絶対にプロな誘拐犯
ブチギレ対策委員会
セリカとアヤネの名前呼び
スチル欲しいセリカの「また明日」
いったいどれほどの強敵なんだ便利屋68…
今話の欲望リストです
4/7の18時投稿して20時くらいまでUAとか眺めてから書き始めて4/8の15:30にタイマーストップして予約投稿をぽちー。RTAなんですよね(ライブ感で書いてます、毎回)
割と感想がモチベーションに直結するなぁと思いました。毎日投稿とかする気無かったんですけど気付いたら書いてますね、なんだかんだ。まぁ私が一番この話を読みたい読者なんで「はよ続き書けよ」って作者の私をせっついた結果なのですが。Vo3の3章での殺せんせー速く読みたいけど遠い…
こう、アニメスペシャル編かな、ってノリと尺でお送りした黒見セリカの一日編ですがどうですかね。みなさんの解釈とは一致してますかね殺せんせー。ブルアカの方はいつでも読み返せるのでまだ大丈夫なんですけど暗殺教室の方が記憶を頼りに書いてるので不安なんですよね。前話のホシノの弾無視も褒めはしましたけど投稿したあとから「ん…?」てなりましたし。適当なようで繊細なコミュニケーションが求められる小鳥遊ホシノ。夏イベントが遠い
あと暗殺教室がジャンプ+の方で結構な話数無料で読めることに昨日気付きました(88話、4/10まで)
読んでくるので明日も投稿するかは謎です