と言っても、かなり大幅な改変がなされるでしょうが。
「…と言う訳で、私たち全員揃ってIS学園に行くことになりました~!」
『な…なんだとぉ~っ!?』
篠ノ之家緊急家族会議によってIS学園に行くことが決定した篠ノ之家御一行。
束はそれを千冬に知らせる為に、テレビ電話で連絡をしていた。
『何がどうしてそうなったッ!? 一夏の奴がISを動かしたことで大忙しになった私に対する嫌味かッ!?』
「ち…違う違う! 違うって~! そんなんじゃないよ~!」
画面の向こう側にいる千冬は、もう既にかなり憔悴しているのか、その手には栄養ドリンク片手に話していた。
『そもそも、真尋さんとクロエはちゃんと了承しているのか?』
「しているも何も、ちゃんと家族会議で話し合った結果だって言ったじゃん。それに、お兄ちゃんが行くことはいっくんの精神的安定にも繋がるんじゃない?」
『ま…まぁ…昔から一夏は真尋さんに妙に懐いていたしな…。いや、そうなると今の真尋さんの事を一夏に説明する必要があるんじゃないのか?』
「そこら辺は別に大丈夫じゃない? 私から説明すれば、大抵の事は納得してくれると思う」
『確かにな…』
「否定しないんだ…ちょっとだけショック」
昔から色んな破天荒な行為を繰り返してきた束の、そっち方面への信頼度は別の意味で地に落ちていた。
なので今更、束が何をしたところであんまり驚く事は無いと言うのが織斑姉弟の共通見解なのだ。
『しかし、どうやって二人を入学させるつもりだ? もう受験は終わってしまったぞ?』
「私からの推薦ってことにする予定」
『あぁー…成る程な。それならば誰も文句は言わんか…』
ISの開発者直々の推薦状。
これを断れる人間は、この世界には一人もいない。
と言うか、誰も断れないと言うのが正解だ。
『篠ノ之束の逆鱗に触れるべからず』。
これは世界中のIS関係者たち全員の標語だ。
「入学に備えて、お兄ちゃんの専用機も鋭意製作中だしね~」
『やっぱり作っているのか…専用機を』
「あったりまえじゃ~ん! 寧ろ、作らない理由が無いでしょ。正確には、かなり前から原形は作ってたんだけど。最近になって、お兄ちゃんの要望が明確に形になったから、一気に進んだって感じだけど」
『まぁ…あれ程の才能を見せつけられたらな…』
最近のシミュレーションの結果はもう既に報告されていて、千冬はそれを聞かされた時本気で度肝を抜かされた。
たった一年で素人が世界レベルの実力者へと変貌してたのだから無理もないが。
「因みに、お前はどんな名目で来るつもりだ?」
『え? IS関係の技術顧問…的な?』
「ある意味、お前以上に適任がいないから何も言えない…」
これ以上に配役が適任なのもそうはいないだろう。
開発者なんだから、最高の顧問になってくれるのは疑いようがない。
『しかし…そうか。お前達が来るのならば…『アイツ』とも久しぶりに再会することになるのか』
「アイツ? 再会? 何の事?」
『なんだ、知らないのか? お前のことだから、てっきりもう既に今年入学する生徒の情報ぐらいは掴んでいると思っていたが…』
「皆で仲良くお引越しだからね。色々とやることが多いんだよ。で、ちーちゃんが言ってる『アイツ』って誰?」
『…お前と真尋さんの妹の『箒』だ』
「…………へ? 箒ちゃん?」
久し振りに聞いた妹の名を聞き、束の頭が一瞬だけフリーズ状態となった。
「ほ…箒ちゃんがIS学園にッ!? な…なんでっ!?」
『どうやら、例の保護プログラムの一環らしい。ほら、IS学園には…』
「外部からの干渉を阻害する校則が存在する…か」
完全に想定外の事に、束の頭は久し振りにフル回転する。
なんせ、数年振りに篠ノ之三姉妹(本当は兄妹)が集結するのだ。
長女…いや、今は次女か。
ともかく、色々と考える事が多くて普通に困っていた。
「箒ちゃん…今のお兄ちゃんの姿を見たら、どんな反応するだろう…」
『さぁな。少なくとも、私の時以上に驚くのは間違いないだろう。自分の兄が、久し振りに再会したら女の子に変わっているんだからな』
「だよねぇ~…入学をしたら、ちゃんと箒ちゃんにも色々と説明をしなくちゃいけなくなったか~…。いっくんの方は兎も角、箒ちゃんに説明するとなると憂鬱になってくるかも…」
『束…』
篠ノ之家の末娘である箒は、束がISを開発した事で振り回され、政府の保護プログラムにて日本全国を転校と言う形で転々としている。
いつもは自信満々な束も、流石に箒に迷惑を掛けているという自覚があるので強気ではいられない。
何を言われても耐えられるようにしなくては…と、密かに心の中で決意を固める。
「けど、そっかぁ…箒ちゃんも一緒に入学するんだぁ…。これはお兄ちゃんに報告しなくちゃね。どんな顔をしてくれるだろ」
『普通に喜ぶんじゃないのか? 箒の奴はお前よりも真尋さんの方に懐いてただろ』
「うぐっ…! 痛い所を突くね…ちーちゃん…」
そうなのだ。
この三兄妹、揃って仲睦まじいと言う訳ではなく、束と箒の間に真尋が入ってなんとかなっているという感じだった。
なので必然的に、真尋がいなくなると途端に会話が途切れる…なんてことも珍しくは無かった。
別にお互いに嫌っている訳ではなく、どう接したらわからないといった感じ。
「と…兎に角、お兄ちゃんにも箒ちゃんの事を教えてあげないと! それじゃ、ちーちゃん! 今度はIS学園でね~!」
『ちょ…おい束…』
ぶつん…と通話が切れ、束は急いで真尋の部屋に行くことに。
その顔には、いつもの作り笑顔ではなくて、自然な笑顔が浮かんでいた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
まさか、人生で三度も引っ越しを経験するとは…。
因みに一回目は保護プログラムで引越しをする時。
二回目は束にTS薬を飲まされて、ここに強制連行された時ね。
「真尋さま。この棚に並んでいる箱に入っている人形の数々はどうなさりますか?」
「うーん…フィギュア類は可能な限り持って行きたいなぁ…」
流石に学校の寮に同人誌の類は持っていけないので置いていく。
もし見つかったら、恥を晒すだけじゃ済まされないから。
「ゲーム類とパソコンは絶対必須だな。寧ろ、これが無いと始まらないまである」
「真尋さまはゲームが大好きですからね」
「ま、これでもゲーマーですし?」
金は稼いでないけど。
いつかはゲームで金を稼げるようになりたいな~。
「お兄ちゃん!!」
「「わぁっ!?」」
な…なんだなんだなんだっ!?
いきなり束が部屋の中に入ってきたんですけどッ!?
研究所内にパラドックスポケモンでも出現したかッ!?
オレはサケブシッポが欲しいです。
あれを抱き枕にして寝たい。
「大ニュースだよ! 大ニュース! ハイメガキャノン級の大ニュース!!」
「ハイメガキャノンとなっ!?」
それ、ちゃんと意味が分かって言ってるのかっ!?
ハイメガキャノンってアレだぞっ!?
コロニーレーザーの約20%の出力があるって言われてる超々高出力を誇る、MSが内部搭載している兵器の中でもぶっちぎりで最強の威力を誇ってるやつだぞっ!?
「そんなに慌てられて、一体どうなされたのですか?」
「聞いて驚かないでよ? 実は…」
「「実は?」」
勿体ぶるじゃないか…一体マジでなんだってんだ?
「あの箒ちゃんもIS学園に入学するんだって!!」
「はぁっ!?」
箒って…あの箒かっ!?
オレと束の妹で、剣道一直線だった箒っ!?
「なんでまたどんな事になったんだ? 確かに箒はお前の妹ではあるけど、アイツは本当にそれだけであって、別にISとは全く関わってないだろ?」
「それがね、どうも政府の保護プログラムの関係で入学することになってるみたい。ちーちゃんがそれっぽい事を言ってた」
「あー…成る程ね」
要するに『IS開発者の妹だし、IS学園に入学させとけば大丈夫じゃね?』的な事を考えたんだろ。
なんて安直で安易な考えですこと。
よっぽど面倒くさかったんだろうな。
え? なんでオレは注視されてなかったんだって?
いや…保護プログラムに巻き込まれた時はまだ、オレは男で成人してましたし?
政府のお偉い方達的には無視しても問題無い案件だったんじゃないの?
知らんけど。
「箒さまというと…お二人の妹の…?」
「そ! 私とお兄ちゃんの可愛い妹なのです!」
「そう…だな。もう随分と会ってないけど、それでも大事ってことには違いないか」
血の繋がった家族だしな。
大切にしない理由が無い。
「でもそっかぁ…箒も入学するのかー…って、ちょい待ち」
「どしたの?」
「あのさ…あいつと会うって事は、オレの事も教えないといけないってこと…だよな?」
「そうなるね」
いや…そうなるねって。
「どーするんだよ一体っ!? 久し振りに会った実の兄が女の子になってたと知ったら、箒の奴が驚きの余りぶっ倒れちまうぞっ!?」
「だいじょーぶだよ、きっと。箒ちゃんの事だから、普通に受け入れてくれるって。寧ろ、今のお兄ちゃんの姿を見て、余りの可愛さに興奮しちゃうかも?」
「それはそれでまた問題があるような気がする」
もしも本当にそうなった時、オレのほうはどんなリアクションをすればいいんだよ…?
マジで反応に困るぞ?
実際に千冬の時も普通に受け入れられて困ったし。
「箒の奴…今でも剣道をやってるのかな…」
「やってるみたいだよ? この間、剣道の全国大会中学生の部で優勝したって新聞に載ってたし」
「優勝したんかい。しかも新聞に載ってたって…」
知らない所で、もう一人の妹が全国的な有名人になってた件。
はぁ…なんか増々、自分が情けなくなってくるなぁ…。
「ところで、お兄ちゃん。お引越しの準備は順調に進んでる?」
「ん? まぁな。ちゃんと持っていく物と置いていく物の分別はやってるよ」
「それは結構。それとは別にお兄ちゃんにはやることがあるけどね」
「やることとな?」
それは一体なんじゃらほい?
「はいこれ」
「え?」
いきなり束がテーブルの上に置いたのは、無駄に分厚い本の数々。
もしかしなくても…これは参考書か?
「基本五教科は問題無いと思うけど、あそこはそれとは別にISの授業もあるからね。ちゃんと予習はしておかないと」
「よ…予習とな…!」
予習なんて、生まれてこの方一度もやった事…あるわ。
妹たちに置いて行かれないようにと必死になってた頃、自分でもドン引きするぐらいに勉強に没頭してたっけ。
予習、復習なんて日常茶飯事だった。
ま、その努力は全く実らなかったわけですが。
「で…でもそっか…今から行く場所は『IS学園』だもんな…。ISに関する授業があるのは当たり前か…」
「そゆこと。分からない所があったら、いつでも遠慮なく言ってね。懇切丁寧に教えてあげるから。手取り足取り腰取り…ね」
「腰取りとは」
そんな言葉、普通に初めて聞くわ。
はぁ…人生二度目の高校生活は…予想以上に波乱に満ちる予感がする。
オレ…ちゃんと女子高生が出来るんだろうか…。
別の意味で心配になって来た…。
次回、遂にIS学園入学。