まひろは上手くIS学園に馴染めるのでしょうか?
「…てなわけで来ました~」
「ました~」
「した~」
一夏IS動かしたぞ騒動から少しだけ時間が経過し、オレたちは遂に皆揃ってIS学園の前に立っていた。
そんなオレたちの目の前には、黒いスーツを着た千冬が出迎えてくれている。
「よく来たな…と言いたいが、少しだけ遅かったな」
「ん? 何か拙かったかな? ちーちゃん」
「いや…別にいいか。ついさっきまで入学式が行われていただけだ。本当は出席した方が良いんだろうが…」
入学式かぁ~…。
あれって無駄に緊張するからイヤなんだよなぁ~。
在校生とは違って、新入生は練習なんてしようがないからね。
ぶっつけ本番で緊張するなって方が無理がある。
「それじゃあ、オレとクロエちゃんは今から教室に直行する感じ?」
「そうなりますね。私が今から案内します。二人は私が担任を務める一年一組になります」
「一夏は?」
「…一組です」
「…マジ?」
こーゆーのって、普通は担任と生徒が血縁関係だった場合、クラスは別々にするんじゃなかったっけ?
詳しい理由は知らないけど、身内贔屓や授業などに集中出来ないからとか…ソレ系が原因だったり?
「因みに箒は?」
「あいつも一組です」
「「「………」」」
それ…完全に厄介な連中を一組に集中させてない?
世界唯一の男性IS操縦者とIS開発者の妹。
あ…それを言ったらオレも該当しちゃうか。
「そういや、お兄ちゃんに対して学園側の反応ってどうだった? 一応、念の為にお兄ちゃんのシミュレーターの映像を添付したけど…」
え? 束の奴、いつの間に学園にオレの映像とか送ってたのか?
開発者サマの推薦状ってのに関係してるのかな?
「かなり驚愕していた。まさか、僅か一年足らずでヴァルキリー級の実力者に成長するなど誰が想像するか」
「だよねー。流石は私の自慢のお兄ちゃん」
自慢って…本当に凄いのはお前の方だろうに。
「二人は教室に連れて行くが、束は学園側から専用の部屋を用意して貰ったから、そっちの方へ向かえ。一応、名目上は『研究室』と言うことになってはいるが、実質的にはお前の自室だ。過度な改造さえしなければ、部屋の中は好きにしてくれて構わないとの事だ」
「『過度な改造』ってどれぐらい?」
「壁を壊して部屋を拡張するとかするなって事だ」
「りょーかーい…ちぇ」
こいつ…拡張する気満々だったな。
束から制限を取り払ったら、それこそ好き放題にするからな~。
最悪、IS学園自体を大改造して、エルドランシリーズに出てくる学校みたいにする可能性だってある。
「そうそう。学園での呼び方は普通に名前呼びで良いぞ?」
「名前で? しかしそれでは…」
「だって、同じクラスの同じ『篠ノ之』が二人もいたんじゃ紛らわしいだろ? それに、こっちの方が後から編入してきたようなもんだし」
「それは…そうですが…」
「あと、単純に千冬に『篠ノ之』って呼ばれるのは違和感が凄い」
「「確かに…」」
どうして束とクロエちゃんが納得する?
ここは普通、千冬が納得すべき場面では?
「そうなると、これからちーちゃんはお兄ちゃんの事を『真尋』って呼ぶことになるの?」
「そうなるんじゃね?」
「なっ!? わ…私が真尋さんを呼び捨てに…だと…!?」
なんか千冬が急に劇画調になって驚いてるし。
別に千冬になら普通に呼び捨てにされても気にしないけど。
「し…しかし、それでは他の生徒達に示しが…」
「じゃあ、ちーちゃんはお兄ちゃんの事を『篠ノ之』って呼べるの?」
「うぐ…!」
こらこら。そこで詰まるな。
仮にも教師だろうが。
生徒への示しはどうした。
「そ…それは追々なんとかする! 今は時間が無い! 兎に角、二人は私に付いて来てくれ! 束は自分の部屋に行け! いいな!?」
「へーい」
なんともまぁ気の抜けた返事ですこと。
らしいっちゃ、らしいけどね。
こうして、オレの人生二回目の高校生活が幕を開けたのだった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「「ほぇ~…」」
すげ~…今時の高校の校舎って、こんな風になってるのか~。
って、IS学園は色んな意味で特別な所だから、ここと通常の高校とを一緒にしちゃダメか。
「ここが学校…初めて来ました…」
「そうなのか?」
「はい。事情が事情なので、行きたくても行けなかったというのが正しいのですが…」
そういや、オレってまだクロエちゃんの詳しい事情とかって全く知らないんだよな。
だからと言って無理に聞き出そうとかは微塵も思わないけど。
誰にだって聞かれたくない事の一つや二つある。
因みにオレの場合は山ほどある。
「ついたぞ。ここだ」
なんて話しながらピッカピカの廊下を歩いていたら、いつの間にか教室に到着。
…教室の扉って、こんなに大きかったっけ?
いや…違うな。
これは単純にオレの身体が小さくなってるだけだ。
だって、今のオレにとっては千冬すらも大きく見えてしまうから。
「こ…こーゆーのって、まずは先に千冬から入って諸々の事情を説明して、その後にオレ達が入るって流れじゃないのか?」
「それは転入生の場合ですn…だ。二人は少し遅れただけの新入生だから、このまま一緒に入るぞ」
「「はーい」」
千冬の奴…地味に今、敬語口調になりかけてたな。
どうやら、オレもお前もこれから色々と苦労することが多そうだ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
オレとクロエちゃんが教室に入った瞬間、急にシーンとなった。
全員の視線がこっちに集まっていて凄く痛い。
そんな中、オレは非常に知っている二人の姿を見つけた。
っていうか、二人揃って列の一番前に座ってた。
(一夏の奴め…案の定、めっちゃ驚いてるな。無理も無いか。前に知り合った名も知らぬ女の子と、こんな形で再会してるんだからな。そして…)
チラっと窓際の列の一番前を見る。
そこには、久し振りに再会した妹の姿が。
(まぁ…そうだよな。オレが誰なのか分からないよな。だからこそ、名前を聞いた時のリアクションが凄く楽しみだ)
この状況で、こんな事を考えてしまう辺り、オレも中々に下種な兄だよな。
束の事を全く言えませんわ。
「山田先生。任せてしまって済まなかったな」
「いえいえ。お気になさらないでください。それよりも、その子達が例の…?」
「そうだ。ついさっき到着してな。ここまで案内してきた」
ふーん…あの眼鏡で緑色の髪で巨乳な人は山田先生って言うのか。
覚えておこう。
一組の担任は千冬で、ここにいるって事は…この人は副担任?
「えー…諸君。私がこの一年一組の担任の織斑千冬だ。よろしく頼む」
「「「「「キャ…」」」」」
「それと、最初に言っておく。私が来たからと言って、いきなり騒ぎ出すようなアホ丸出しな行為は控えておくように。もしも破った場合は…」
場合は…ゴクリ…。
「お前達の頭蓋骨が陥没するかもしれん」
殴る気だ――――!!
こいつ、全力全開で体罰する気満々ちゃんだ―――!!
「なんてのは流石に冗談だが、私の方で内申点を大幅に下げさせて貰う」
教師としての特権を使おうとしてる―――――!!
それでいいのか担任教師――――!!
「何事も無くスムーズにIS学園を卒業し、ここにいる同級生たちを来年になって『先輩』と呼びたくなかったら精々、大人しくしておくことだ。いいな」
「「「「「はい!」」」」」
良いお返事。
若いっていいわよねぇ~。
お姉さんには眩しいわぁ~(笑)。
「それで、ここにいる二人に対して疑問を持っている者達もいると思うので紹介しよう。彼女達もお前達と同じ今年からの新入生なのだが、事情があって入学式に間に合わず、こうして遅れて教室まで来た…ということだ。では、自己紹介を頼む」
「は…はいぃ…」
「はい。分かりました」
すげーなクロエちゃん…全く緊張してないっぽいですぜ。
ガッチガチに緊張&気まずさを感じているオレを余所に、クロエちゃんは堂々と一歩前に出て自己紹介を始めた。
「皆さん初めまして。ドイツから来た『クロエ・クロニクル』と申します。これかどうぞ、よろしくお願い致します」
な…なんて丁寧な挨拶なんや…!
皆も、余りの丁寧さに『ほぇ~』って顔になって拍手してるし。
つ…次はオレの番か…!
よ…よし…いくぞ!
伊達に長年に渡って引き篭もりニートやってないって所を見せてやる!
「きょ…今日から皆さんと一緒にIS学園に通う事になった篠ノ之真尋で~す…。みなさ~ん…よろしくね~…」
……よっし! OK!(コマンドー風)。
自分的には100点満点!
一度目の高校生活の時の自己紹介なんて、そりゃもう酷かったからな~。
今じゃ完全にオレの黒歴史認定ですたい。
「し…篠ノ之…真尋…だと…!? 真尋兄さんと…同じ…名前…!?」
名前を出して、ようやく箒がそれっぽい反応をしてくれた。
でもまだ、オレと自分が知ってる『篠ノ之真尋』が同一人物って事は分かってないみたい。
奇跡的な確率の同姓同名としか思ってないんだろう。
「え? 篠ノ之真尋って…え? あの時の子が…真尋さんと同じ名前…? え?」
うん。一夏の奴も面白い様に動揺してますな。
でもな一夏。
お前がISを動かしたってニュースを見た時も、今のお前と全く同じ顔をオレ達はしてたんだぞ?
「クロニクルさんに篠ノ之さんですか~…へぇ~……ん? 篠ノ之?」
山田先生がオレ達の名前を反芻してるけど、途中で気が付いたみたい。
そりゃ『篠ノ之』なんて名字の奴が同じクラスにもう一人いれば、そんな反応にもなりますわな。
「では、二人は空いている席に座って貰って…」
空いてる席と言っても二ヵ所あるんですが?
一つは一夏の列の一番後ろの席。
もう一つは、箒の列…要は窓際の席の一番後ろと言う最高の場所。
勿論、オレは窓際一番後ろの方に行きたいわけで。
(大丈夫ですよ真尋さま)
(ん?)
(真尋さまは窓際の席に行ってください。私が残った方の席に行きますから)
ク…クロエちゃ~ん!
やっぱり君こそが天使や~!
このお礼はいつの日か必ずするからね~!
ということで、遠慮なくオレはクロエちゃんの好意に甘える事に。
窓際一番後ろとか、ある意味で最高のお約束な席じゃあないですか。
その後、担任である千冬から、まるで軍隊の教官みたいな言葉が飛び出し、ラストに『半月で基礎知識を、もう半月で基礎動作を身に付けろ』とか抜かしやがった。
他の子達やクロエちゃんは兎も角、一夏には相当に厳しいだろ~。
え? オレ?
オレはほら…知識に関しては束の詰め込み教育でなんとかなった…というか、した。
実技の方は一年間ずっとシミュレーター使ってたせいか普通に完璧。
実際のISにはまだ乗った事は無いけど…まぁ、なんとかなるでしょ。
なんたって今のオレにはこいつが…『専用機』があるからな。
だろ? エアリアル…いや、今はまだ『ルブリス』だったか。
それよりも、問題はこの後…だよなぁ~…。
箒と一夏に、なんて説明をしたものやら…。
人生二度目の高校生活。
果たして、真尋は上手く馴染めるのか?
そして、久々に再開した末妹の箒とはどうなってしまうのか?