お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第19話 まひろと妹

 真の意味で兄妹ならぬ姉妹水入らず状態になったオレ達。

 まさか、こんな形で箒とまた一緒に暮らす事になるとはね…。

 本当に世の中、何が起きるのか分からないもんですな。

 

「これでよし…っと」

 

 机の上に研究所の自室から持ってきたパソコン一式をセットする。

 流石は天下のIS学園だ。

 ちゃんとケーブル端子を挿す場所もある上に、ネット環境まで完璧に整ってる。

 まさか、学生寮の各部屋ごとに個別のWi-Fiのルーターまであるとは思わなかった。

 幾らなんでも部屋に金かけ過ぎ。

 

「さっきの段ボールの中にもありましたが…それが兄さんのパソコンなのですか?」

「そーだぞー。最新機種な上に、いつの間にか束の奴が魔改造してるせいで通信速度やセキュリティが凄いことになってる」

 

 まさか、ペンタゴンも真っ青なレベルのファイアーウォールを普通のパソコンに搭載するなんて誰も想像もしないでしょ。

 そのお蔭で、こっちは安心安全にネットを楽しめるんだけどね。

 

「そうだ。ついでだし、起動確認するついでにさっき束に貰ったUSBの中身でも確認してみるか」

 

 確か、あのセシリア・オルコットって子がISで試合をしている様子を写した映像が入ってるんだっけ?

 どんな風なのかは分からないけど、それでも見てみる価値はあるだろ。

 

「まずは電源を入れて…っと」

 

 軽いセットアップをしてから通常起動確認OK…ってね。

 よし。これで大丈夫でしょ。

 

「手慣れてますね…」

「オレにとっちゃ最早、生活の一部になっていると言っても過言じゃないからな~」

 

 これぐらいは出来て当然と言いますか。

 ブラインドタッチ? そんなの自然と出来るようになってたよ。

 

「よし。そんじゃ、例のUSBの中身を見てみようかね…ってな」

 

 USBをパソコン本体にぶっ挿して、そこから中身を確認~…お?

 

「ふむふむ…映像フォルダがありますな。時間は…10分程度?」

 

 えらく短いな…。

 ISの試合って言ったらもっとこう…最低でも2~30分ぐらいはしてるもんだと思ってた。

 それとも、この映像が特別短いだけなのかな?

 

「…取り敢えずは見ますか」

 

 ここで何か言っても意味無いしな。

 まずは己の目で確かめてから…だ。

 

「映像再生…っと。どれどれ~?」

 

 いつの間にか箒が後ろにいたけど、気にせずに再生開始。

 どんな映像なのかな?

 

「「ん?」」

 

 パソコンのディスプレイに映し出されたのは、アリーナと思しき場所の空中にて蒼いISを身に纏っているセシリア・オルコットの姿。

 あれが彼女の専用機ってやつかー。

 青いですねー。真っ青ですね。

 青と言えばグフですねー。ブルーディスティニーですねー。

 もしくはマクシミリアン・ジーナスのパーソナルカラーですねー。

 他にも青い機体って言えば沢山あるんだろうけど、パッとで思い付いたのはこれだけ。

 因みに、一番好きなのはグフ。ランバ・ラル最高。

 そして、グフ・カスタムは神。ノリスは漢の中の漢。

 

「これが、あの女の試合中の姿ですか…」

「みたいだね。おや?」

 

 なにこれ…さっきから全くその場から動いてなくね? なんで?

 

「兄さん。オルコットの周囲に何か飛んでます」

「これって…ビット兵器?」

 

 なーる…そゆことね。

 ビット兵器搭載機なのか。

 一応、手にはロングレンジライフルを装備してるけど、撃つ気配は全く無し。

 四基のビットだけが動いて、執拗に相手の選手を追い掛け回している。

 

「…まさかとは思うけど…これは…」

「兄さん…?」

 

 舐めプしてる?

 いや、そうとしか考えられない。

 だって、ビットを動かしている間、自分はその場から動かないとか絶対に有り得ないし。

 そんなの『どうぞ狙って下さい』って言ってるようなもんじゃん。

 つまり、この子は相手の選手を完全に見下して『アナタ程度なんて私が手を下すまでも無く、ビットだけで十分ですわオホホホホー!』ってしてたわけか。

 これはいけませんなー。褒められませんなー。

 

 オレは、どんなジャンルのゲームであろうと、誰かと対戦する時は常に全力を尽くすように心掛けている。

 それが相手に対する最大限の敬意であり、同時に最も大切なマナーであると信じているから。

 だから、こんな相手に対する経緯が無い行為はいちゲーマーとしては決して見逃せない。

 

「これは…負けられない理由が出来ちゃったかな…」

 

 よござんしょ。

 フェアプレイ精神の無いお嬢様に、この真尋ちゃんが対戦時の礼儀ってのを教えてあげないといけませんな。

 

「えっと…何か対策などは思いつきましたか?」

「対策? そんなの思い付くまでも無いよ」

「そう…なのですか?」

「うん。1対多数の戦闘なんて今までに腐るほど経験してるからな(主にFPSゲームで)。それに、ビットの動きが直線的過ぎる。この程度なら簡単に軌道も読める」

 

 ぶっちゃけ、これならエクストリームVSシリーズでNPCが使ってくるνガンダムやサザビーの方が遥かに強いよ。

 見ただけで簡単な対策が幾つも思い付いた。

 

「…やっぱり、兄さんは凄いですね…」

「そう?」

 

 こっちからしたら、箒や束の方がずっと凄いって思うけど。

 オレじゃ逆立ちしたってISの開発なんて不可能だし、剣道で全国取るなんて無理。

 そもそも、ちゃんと竹刀を持てるかどうかも怪しい。

 

「ま…得意不得意は人それぞれだしな。気にする事は無いだろ」

「そういうものですか…」

「そーゆーもんだよ。多分ね」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 夜になり、オレはパジャマを着て自分に割り当てられたベットで横になる。

 

 あれから、箒と一緒に夕飯を食べたり、部屋での取り決めとかを話し合ったりして、シャワーを浴びた後に髪を乾かしてから横になった。

 まさか、この歳で箒に髪を乾かして貰う日が来るとは思わなかった…。

 今のオレって髪が長いから、ドライヤー無しじゃ絶対に乾かないんだよな…。

 

(それにしても、こうして寝転ぶと改めて実感出来るわ。このベッドでけー…)

 

 こうしてオレが両手両足を広げて大の字になっても全然余裕だし。

 ベット自体もフカフカで寝心地抜群。

 本当に、至る所に金を掛けてるんだなーって分かる。

 

 最初は慣れない場所でちゃんと寝れるか不安だったけど、これならなんとかなりそう。

 ちゃんとスマホのアラームはセットしてあるし…朝は大丈夫…だと信じたい。

 最悪、箒がオレを起こしてくれる…よな?

 

(この期に及んで未だに妹に頼ろうとしてる自分…情けねー…)

 

 流石に朝ぐらいは起きれなきゃダメだろ…。

 

「あ…あの…兄さん…」

「ん?」

 

 箒? いきなりどした?

 

「突然で恐縮なのですが…そっちに行ってもいいですか?」

「……にゃんと?」

 

 こっちに来る? 誰が? 箒が?

 いやいやいや…今の箒って確か浴衣姿じゃなかったっけ?

 寝る時はこの格好が落ち着くからとか言って…。

 

「いい…ですか…?」

 

 ダメだと言いたい!

 でも言えない!

 妹の、こんな寂しそうな声を聴いて『イヤ』と言える兄がいるだろうか!

 いや、いない!

 

「う…うん。いいよ…」

 

 い…言ってしまった…。

 こうなったら、全力全開で煩悩を捨て去るのみ!

 今だけは手段を選んでいる場合じゃない!

 今のオレは女…今のオレは女…今のオレは女…!

 実の妹を意識するような変態じゃない…!

 私はお姉ちゃん…私はお姉ちゃん…私はお姉ちゃん…!

 お姉ちゃんを全力で遂行する!

 どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 どうして、いきなり私はこんな事を言ってしまったのか分からない。

 ただ、急に真尋兄さんの傍にいたくなった。

 我ながら情けないとは思っている。

 思っているが…それでも、今の私は少しでも兄さんと一緒にいたかった。

 じゃないと、昔を思い出してしまいそうだったから。

 

「し…失礼します…」

「ん……」

 

 兄さんがベットのシーツを捲り上げてから、私が入り易いようにしてくれる。

 本当に些細な事だが、兄さんのその優しさが、今の私には溜まらなく嬉しかった。

 

 体を滑り込ませるようにしてベッドに入り込む。

 横を向くと、そこには兄さんの顔がある。

 

(本当に…女になってしまったんだな…)

 

 女性になった真尋兄さんは、何と言うか…凄く可愛らしかった。

 こんな事はいけないと頭で分かっていながらも…本気で胸がドキってなってしまうほどに。

 

「え…えっと…それじゃ…オレはむこう向いてるから…」

真尋姉さん(・・・・・)

「え?」

 

 兄さんの顔が見えなくなると思ったら、反射的に『姉さん』と呼んでしまっていた。

 どうしよう…顔を赤くしながら目を丸くしている姉さんが…可愛くて仕方がない…。

 

 無意識の内に手を伸ばし、私は『真尋姉さん』の頬に触れていた。

 

(なんて…肌触りなんだ…。スベスベする…)

「ほ…箒…? なに…を…」

 

 おかしい…こんな気持ち…初めてだ…。

 初めて一夏を異性と認識した時とはまた違う…不思議な気持ち…。

 こうして『真尋姉さん』の傍にいるだけで、触れているだけで、愛おしさが止まらない。

 ずっとこうしていたい…ずっと一緒にいたい…。

 そんな不純な気持ちが、心の奥底から溢れ出てくる。

 

「あわわわわ…」

 

 …真尋姉さんの慌てている顔を見て、一周回って冷静になった。

 私はさっきから何を遠慮しているんだ?

 姉さんと私は家族であり兄妹…じゃなくて、今は姉妹。

 妹が姉に何を遠慮する必要がある?

 寧ろ、姉に甘えることは妹にとって最大の特権なのではないか?

 そうだ。絶対にそうだ。間違いない。

 

『なに? 実の姉が可愛らしくて愛おしすぎて困っている? 逆に考えるんだ。一線を越えちゃってもいいさと』

 

 私の脳内に出現した名も知らぬ謎の英国紳士も背中を押してくれた!

 ならばもう、私の内なる衝動を止める者は何もない!

 

「…姉さん」

「にゃ…にゃんれしゅか……ふにゃぁっ!?」

 

 隙だらけだった姉さんの身体をそっと抱きしめた。

 あぁ…なんてフニフニでプニプニなんだ…♡

 良い匂いもするし…癒される…。

 

「寝る時に人肌を感じると熟睡できると、どこかで聞いたことがあります。私も姉さんもまだ新天地に慣れない身。こうして互いに体を寄せ合う事でよく眠れると思うんです」

「う…うん…そうにゃね…」

 

 …顔を真っ赤にして恥ずかしがっている真尋姉さんが天使過ぎて辛い。

 なんだ、この可愛い生き物は。

 あ…私の大好きな姉さんか。

 

「おやすみなさい…真尋姉さん…」

「お…おやしゅみ…」

 

 今日は…久し振りにいい夢が見れそうだ…。

 

 

 

 

 

 

 




箒、百合覚醒。
ここから全てが始まる?




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