お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第21話 まひろと宣戦布告

 三時間目が始まり、山田先生に代わって今度は千冬が教壇に立つ。

 うーん…やっぱり、まだ見慣れないなー…。

 見知っている相手が教壇に立つってのは。

 

「授業をする前に、まずは報告することがある。と言っても、これは織斑個人に関することだがな」

「俺個人について?」

 

 三時間目が始まってすぐにそんな話をするってことは、前に束が言ってた『アレ』の事なんだろうな。

 

「報告とは他でもない。お前の専用機についてだ」

「専用機って…前に束さんが言ってたやつか…」

「そうだ。学園の方で予備機を用意できれば一番だったのだが、今の時期には流石に難しくてな。政府の方で特別に専用機を用意することになった」

 

 まだ入学して二日しか経ってないしな~。

 新入生であるオレたちはまだしも、在校生にとってはオレたちの事情なんて全く関係ないしね~。

 ただでさえISは数が限られてるんだし、特別枠とは言え貴重な訓練用の機体を貸し出すわけにはいかんよなー。

 

「え…マジ? 専用機!?」

「すっごー…流石は男性IS操縦者…」

「羨ましいな~…」

 

 なんとなーく予想はしてたけど、専用機の話が出た瞬間にクラスがざわめきだした。

 これが女子高のノリってやつか…。

 

「『専用機』については、後でちゃんと復習しておけ。これから嫌でも深く関わっていくことになるんだからな」

「う…うっす…」

 

 おや。敢えて、ここでは説明はしないんだ。

 安易に教えても一夏の為にはならないと判断したのか?

 いや…違うな。

 これはきっとアレと見た。

 ここでワザと教えない事で、オレやクロエちゃんを初めとする面々と話す理由にしたんだろう。

 

「あのー…先生。質問良いですか?」

「なんだ?」

 

 およ?

 まだ名前も知らない女の子が急に挙手をしよったですよ?

 

「篠ノ之さん達って…もしかして、あの篠ノ之博士の関係者だったり…?」

 

 あー…やーっぱ、その質問が来るかー。

 そーだよねー。気になるよねー。

 ISの話題とは切っても切れないもんねー。

 

「そうだ。二人は篠ノ之束の妹になる」

 

 あっさりと答えやがった。

 オレは別に気にしないけどさ。

 あと、正確にはオレはお兄ちゃんだけどね。

 

「その篠ノ之束だが、実は今、このIS学園に特別顧問と言う形で勤務している」

「「「「えぇ~っ!?」」」」

 

 てっきり女子達からの質問攻めが始まると思いきや、間髪入れずに束の話題に持って行きやがった。

 こうすることで、オレ達への関心を薄れさせたのか。

 やるな…千冬め。

 

「校舎内に『特別研究室』を設け、そこで仕事をしている。何か気になることなどがある時は遠慮なく来て構わないとの事だ。ただし、ISに関することに限定されるがな。当人曰く『下らない理由で来たら部屋にも入れない』らしい。よく覚えておけ」

「「「「「はい!」」」」」

 

 相変わらず良いお返事です事。

 しっかし、まさか束がオレ達以外の生徒の訪問を許可するなんてな…意外だ。

 オレが知らない間に、アイツのコミュ症も少しずつ改善に向かっているのかな?

 

「これで報告は終了する。少し遅くはなったが、今から授業を始める」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 三時間目と四時間目の間の休み時間~。

 丁度、お腹が空き始める時間帯~。

 今日のお昼は何にしようかな~…なんて考えながら一夏の机に集合するオレ達。

 

「…なんで俺の所に集まるの?」

「「「「なんとなく」」」」

「せめて明確な理由はあってくれ…」

 

 オレと箒とクロエちゃんと本音ちゃんの同時攻撃に沈む一夏。

 こいつ、今日もまた疲れてるな。

 慣れない環境で仕方がないとは思うけど、そうしてるとまるで残業疲れで参っているサラリーマンみたいだぞ?

 

「はぁ…また勉強しなくちゃいけない項目が増えたし…」

「はっはっはー。ま、いざとなればオレやクロエちゃんが教えてあげるよ」

「そうですね。非常に不本意ではありますが、真尋さまがそう仰るのであれば仕方なく教えて差し上げます」

「なんか、すっごい言葉が聞こえて来たんですけどッ!?」

 

 悪意を全く隠そうとしてない…。

 別の意味で凄いよクロエちゃん…。

 

「事前に予習をしておかなかった自分の責任だろうに。にい…じゃなくて、姉さんたちの手を余り煩わせるなよ」

「箒の言葉にグゥの音も出ない…。全く以て仰る通りでございます…」

「おりむーがノックアウトだー」

 

 箒がトドメを指して、本音ちゃんが駄目押ししやがった…。

 これはあれですな。

 戦闘不能と書いてリタイヤと呼ぶ状態ですな。

 

「安心しましたわ。まさか、本当に訓練機で勝負を挑んでくるのかと思いましたから」

「…………」

 

 こんな時に面倒くさいお嬢様のご登場。

 これまた、ややこしいタイミングで…。

 

「ちょっと!? 聞いてるんですのッ!?」

「………」

「返事が無い。只の屍のようだ」

 

 箒からまさかのボケがっ!?

 しかもドラクエネタだとっ!?

 もしかして、プレイ経験があるのかッ!?

 

「いやまだ死んでねぇよっ!?」

「「「「「あ。復活した」」」」」

 

 どこの誰がザオラルを唱えたんだー?

 もしくは、この教室内に教会の神父様でもいたんですかー?

 復活の料金は100ゴールドで。

 

「ま…まぁ…いいですわ。それよりも、篠ノ之真尋さん?」

「なんじゃらほい?」

「アナタは一体どうなさるおつもり? まさか、あれだけ大口を叩いておきながら自分だけ訓練機で試合をする…なんてことは…」

 

 いや。別にオレは大口なんて叩いてないんですが。

 叩いたのはクロエちゃんなんですが。

 

「いや。私は最初からちゃんと専用機を持ってるし。ほら」

「な…なんですって…!?」

 

 首からぶら下げてる『ルブリス』の待機形態を見せつける。

 なんかちょっと自慢してるみたいで恥ずかしい。

 

「さ…流石は篠ノ之博士の妹ですわね。それぐらいは当然ですわね…」

 

 当然じゃないよ?

 箒は専用機持ってないし。

 ま、時間の問題だろうけど。

 あの束が溺愛している妹の箒に何も作らないとは考えにくい。

 密かに何かを作っていても全く不思議じゃない。

 だって束だし。

 

「そういや昨夜さ…君の試合をしている映像…見させて貰ったよ」

「あら? 早速、試合に向けての研究ですの? 無駄な足掻きでしょうけど…ご感想は?」

 

 感想? そんなの一つしかないッつーの。

 

「オルコットさん…」

「何かしら?」

「慢心。舐めプ。ダメゼッタイ」

「そうそう。慢心に舐めプ…は?」

 

 良い機会だし、ちゃんと言っておかないとね。

 ここで言う事で、試合までの間に意識改革が出来るかもしれない。

 

「慢心はともかく、なめぷ…とはなんですの?」

「舐めたプレイってこと」

「わ…私が舐めた試合をしているとっ!? このセシリア・オルコットがッ!?」

「うん。っていうか、そうとしか見えなかった。ね。箒?」

 

 ここで箒に話を振ることで信憑性を上げる。

 ちょっぴり可哀想だけど、彼女の為を考えてオレは敢えて鬼になる。

 具体的には伊吹萃香みたいな可愛い鬼に。

 

「そうですね。素人目から見ても、お世辞にも本気で戦っているようには見えなかった」

「なっ…!?」

 

 こーゆー時、素人の言葉ほど攻撃力のある言葉って無いんだよなー。

 変に先入観が無いから、ドストレートに言ってくる。

 

「え? 真尋さん、そんなに酷かったんですか?」

「いや…酷いっていうか…見てられなかった」

 

 もし同じことを大会とかでしたら、間違いなくブイーングの嵐だろうね。

 少なくとも、熱狂的なファンは絶対に許さないだろう。

 

「ふむ…興味がありますね。真尋さま。後で私達にも見せて貰えますか?」

「いいよー。んじゃ、お昼ご飯でも食べながら一緒に見る? 映像データはスマホの方に移してあるし」

「おぉ~。まひろん、抜け目がないね~」

 

 こんな事もあろうかと…ってね。

 一度でいいから言ってみたかった。

 

「そもそもね。攻撃を全てビットに任せて自分は全く動かないってのは酷いと思うよ?」

「そ…それは…!」

 

 この反応…やっぱり意識的にやってたんだな。

 これは重傷ですなー。

 

「あーゆー『誘導兵器』ってのは、基本的に『自分とビット兵器との連携』こそが最大の武器にして特徴でしょ? そーゆーのが許されるのはアニメやゲームの演出だけであって、現実でそれをやっちゃダメでしょ。相手はほぼ確実に『自分は舐められてる』って思うよ?」

 

 スパロボやアニメとかでは、ビット兵器のみが動いて攻撃…なんてのもあるけど、それはあくまでフィクションだから。

 最近じゃ普通にスパロボでもファンネルと一緒に連携攻撃とかやってるけど。

 特にνガンダムとかは。

 フィン・ファンネル最高。カッコ良すぎ。異論は認める。

 

「なのに、映像の中のオルコットさんはビットだけを動かして、自分はライフルを撃つ事もせずにジッとしているだけ。あれはちょっと…相手の選手が可哀想だよ。同じ負けでもさ、お互いの全力で戦って負けるのと、舐めプされて負けるとじゃ全然意味合いが違ってくるからね?」

 

 どうしよう。ちょっと止まらなくなってきた。

 えーい! ここまで来たら言ってやれ~!

 

「ISってさ…今じゃスポーツって認識になってるよね? だったら、ちゃんとスポーツマンシップに則った方がいいんじゃない? 確かに試合である以上は勝敗は大事だけど、それ以上に大事なのは『試合を通じて何を得るか』だと私は思うんだよね。例え勝負に負けても、試合を通じて何かを得られれば十分だと思う。けど、あんな風に舐められた試合をされたら得る物なんて何もないし、お互いにとっても後味が良く無い物を残すと思うんだよね。お互いに全身全霊、全力全開で戦えば、勝っても負けても大満足できると思う。オルコットさんだって同じことをされたら嫌だよね? 自分が嫌だって思う事を他人にしたらいけないと思うよ? じゃないと、後悔するのは自分自身なんだから。仮にも代表候補生であるオルコットさんなら分かってくれるよね?」

 

 ひ…一息で言い切った…。

 めっちゃ疲れた…喉乾いた…。

 

「こ…こ…こ…」

「こ?」

 

 鶏の真似?

 

「このセシリア・オルコットにそこまでの暴言を吐いた以上、覚悟は出来ているんでしょうねッ!?」

「えぇー!?」

 

 別にオレは暴言なんて言ってないよーっ!?

 普通に『舐めプは駄目だよ』って言っただけなのにー!?

 

「いいでしょう…篠ノ之真尋さん! お望みどおり、試合当日はこの私の本気を見せて差し上げますわ! 首を洗って待っている事ね! フン!」

 

 なんか知らないけど、完全に怒らせちゃったみたい…解せぬ。

 まるで悪役令嬢みたいな事を言いながら席に戻って行っちゃった。

 

「前に私や織斑先生が言った事をもう忘れたんでしょうか? 彼女と真尋さまとでは実力が違い過ぎると何回も言ったでしょうに…」

「怒りの余りに忘れてしまったんだろう。別に構わんさ。試合当日に姉さんの実力を、その身を持って味わえばいい」

 

 クロエちゃんと箒が意気投合してるんですが。

 いつの間に仲良くなった?

 

「あのー…真尋さん…?」

「なに?」

「試合の日…俺には手加減とかはー…」

「しないよ? どんな相手も全力全開。それがオレのモットーだから」

「ですよねー…」

 

 相手が素人でも容赦はしないよ?

 寧ろ、素人だからこそ本気で挑みたい。

 一見すると酷い風に見えるかもだけど、その経験って割とマジで大事。

 もし一夏に伸び代があるのなら、全力の負けから多くの事を得てくれると思う。

 ま、これ全部が対戦系のゲームで得た教訓なんだけどね。

 

(でも…ちょっち言い過ぎたかもだなぁ…)

 

 今はまだ無理でも、試合が終わった後にでも謝った方がいいかも。

 試合の後なら話しやすいだろうし…多分。

 

 

 

 

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