お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第22話 まひろと特訓?

「ははははははははははははは!」

 

 放課後に束の研究室に行って今日の出来事を話したら、開口一番で大爆笑された。

 解せぬ。

 

「そりゃ…お兄ちゃんと他の子を比べちゃ可哀想だって~!」

「そーかな…?」

「そーだよー! いい加減、お兄ちゃんは自分がどれだけ凄い才能を秘めているのかを自覚した方がいいと思うよ?」

「そんな事を言われてもなー…」

 

 これまでにも何回か束に言われ続けてきたけど、全く実感が湧かないんだよなー。

 オレにIS操縦者としての天才的な才能があるだなんてさー。

 今の今までずーっとヒキニートだった、このオレがだよ?

 とてもじゃないけど信じられないでしょー。

 

「あの…姉さん。真尋姉さんは本当に、そんなに凄いのですか?」

「凄いってもんじゃないよ。ちーちゃんでも、あんなにも成長スピードは速くなかったよ? 私から見ても、お兄ちゃんの成長速度は明らかに異常だもん。普通に考えて、たった一年でモンドグロッソ入賞レベルにまで強くなったりしないって」

 

 いや…あれはあくまでシミュレーションだから…って、束謹製のやつだったから、その再現度はオリジナルと全く遜色なかったんだった。

 

「あの束さんが、そこまで言うって事は…マジで真尋さんは凄いんだな~…」

「そーだよー? いっくんには申し訳ないけど、いっくんがお兄ちゃんに勝てる確率は完全に0%だねー」

「僅かな可能性も無いのか…」

 

 なんと無情な…。

 現実は虚しいもんだ。

 

「でも、そのー…イギリスの候補生の子? その子にならワンチャン勝てるかもだよ?」

「マジですかッ!?」

「うん。相手が慢心して、更にはいっくんに与えられるISの性能が高くて、その上でいっくんがちゃんと一週間でやれることをすれば…だけど」

「なんかサラっと言われたけど、何気にとんでもない条件を叩きつけられてないか…?」

 

 相手慢心云々はなんとかなるかもだけど、機体の性能に関しては完全に運ゲー。

 束にお願いすれば調査とか出来るかもだけど、ぶっちゃけ性能や特徴を知ったからって、今からどうこう出来る訳じゃないし。

 となればもう、今からやることはたった一つしかないわな。

 

「ISの操縦訓練に関しては、お兄ちゃんが使ってたシミュレーターを使えばいいけど…」

「けど?」

「ISは機械だから、覚える事はそれこそ山のようにある。それらに関しては流石に一週間で覚えるのは無理。それは分かるよね?」

「それはまぁ…」

 

 千冬の場合は『一週間で覚えろ』とか言い出しそうだけど。

 いや…流石にそれは無いか。

 

「極論を言っちゃうと、ISも結局は体を動かすことになる。なら、やることは単純だよね?」

「それって…まさか…?」

「「「レベルを上げて物理で殴る」」」

「まさかの脳筋理論っ!? そんなんで本当にいいんですかっ!?」

 

 束とオレとクロエちゃんの言葉が見事にシンクロ。

 でも、今はそれが一番効果的だと思う今日この頃。

 

「真尋さまも、ちゃんと体力作りをしてからISシミュレーターを使っていらしたのですよ? 同じようにIS初心者でISの操縦を少しでも覚えようとするなら、まずはそれ相応の体力作りから始めるのが妥当なのではないですか?」

「ぐはぁっ!?」

 

 クロエちゃんの超ド正論が一夏の精神にクリティカルヒット!

 一夏に9999のダメージ!

 

「あ…あの運動嫌いの真尋姉さんが…体力づくり…?」

「私達と一緒にランニングをしたよ~」

「お揃いのジャージを着て走りました」

「真尋姉さんがランニング…」

 

 おいこらそこの箒。

 一体何を想像している?

 

「…ジャージ姿の真尋姉さん……有り寄りの有りだな」

 

 何が?

 いや…やっぱり言わなくていい。

 聞いたら別の意味で姉妹の仲が崩壊しそうだわ。

 

「それにさ、いっくん…最近あんまり運動とかしてないでしょ?」

「ギクッ! ど…どうしてそれを…」

「やっぱり。普通に動きとかを見てれば分かるよー。ねぇ? 箒ちゃん」

「そうですね。私も、教室で見た瞬間から一夏が運動を怠っている事が一瞬で分かりました」

「うそーん…」

 

 流石は束と箒だな。

 それぐらいは朝飯前ってか。

 

「だ・か・らー…まずは運動をして昔の体力を取り戻す所から始めたらどうかな? それだったら今からでも出来るし、道具とか必要ないでしょ?」

「確かにそうだけど…まるで引退したスポーツ選手みたいだな…」

 

 字面だけを見たら確かにそうかも。

 実際にはピッチピチの15歳だけどね。

 

「おや? あんまし乗り気じゃない感じ?」

「いやー…乗り気じゃないと言いますか…そこまでモチベーションが上がらないと言いますか…」

「むー…ならば仕方がない。お兄ちゃん。ちょっとこっちに」

「ん? いきなりどーした?」

 

 なんか束が手招きして来るので近づいてみると、オレの耳元でヒソヒソと変な事を言いだした。

 

「いっくんにやる気を出させる為にさ、お兄ちゃんがごにょごにょごにょ…」

「え? それマジで言ってる?」

「言ってる。それにさ、日本語は難しいし…いざとなれば適当に誤魔化せるよ?」

「それはそれで悪い気がするけど…仕方がないか…?」

 

 やる気も無いままに頑張っても良い効果は得られないしな。

 何事も、モチベーションがある方が良いに決まってる。

 それに、オルコットさんの性根を叩き直すには、素人の一夏に敗北するってのもいい薬になるかもしれない。

 どんなにプロでも、慢心したら意味が無いんだよって。

 

「一夏ー…ちょっと失礼」

「うわ…。な…なんスか…?」

 

 束に言われた通り、今度はオレが一夏に近づいて耳元に顔を寄せる。

 なんか一夏の顔が真っ赤になってるんだが…まさかオレの事を女として意識とかしてるんじゃないよな?

 お前だけは信じても良いんだよな?

 

「もし…頑張って特訓をして…その上で試合でオルコットさんに勝てたら…」

「ゴクリ…か…勝てたら…?」

「デート…一緒に行って…あ・げ・る♡」

「!!!!!」

 

 うをっ!?

 いきなり一夏の目が大きく見開かれたんですけど!?

 な…なんだなんだなんだー!?

 これはまさかの覚醒イベント来ましたかー!?

 

「真尋さんとデート…。今の真尋さんと…デート…?」

 

 急にボソボソと呟きだしたし…。

 なんかちょっと怖いんですけどー!?

 心なしか、興奮してい息が荒くなった上に目が血走ってないッ!?

 

「それって…真尋さんと一日ずっと一緒に過ごすって事ですよね…?」

「う…うん…そうなる…かな…?」

 

 なんだろう…とんでもない地雷を踏んでしまったような気がするんだけど…。

 この作戦…本当に大丈夫なのか?

 

「…真尋さん」

「ん? どした?」

「俺…やります。試合までに自分を徹底的に苛め抜いて、その上で真尋さんに勝利を捧げます」

「そ…そっか…頑張れ」

「はい! 織斑一夏…頑張ります!」

 

 と…兎に角、やる気になってよかった…のかな?

 

「真尋姉さん。一夏の奴に一体何を吹き込んだんですか? よく聞こえませんでしたが…」

「うーん…ちょっとね…」

「「怪しい…」」

 

 うぅ…箒とクロエちゃんの両方から怪しまれてる…。

 

「俺、今から早速自分を鍛えてきます!」

「おぉ~! やる気になったね~!」

「はい! それじゃ、行ってきます!」

 

 すっごい爽やかな笑顔を振りまきながら、一夏は出て行ってしまった。

 本当にこれで良かったのだろうか…?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 その日から、一夏は自分を更に奮い立たせる為に自分自身のボルテージを更にあげていった。

 

「俺は最強だ!! 鍛えに鍛えに鍛えまくって、必ずや試合に勝利する!!」

 

 そう叫びながらスクワットをしまくる一夏。

 早過ぎて残像が見えてるんだけど…。

 

「俺がチャンプだ!! ベルトは俺が奪うんだ!! ベルトは俺の為に作られた!!」

 

 腕立て伏せ。腹筋に背筋。更には鉄棒を使った懸垂までやり始めた。

 幾らなんでも、効果絶大過ぎでは?

 因みにオレは、いつものようにISのシミュレーターを復習してる。

 

「俺こそがチャンピオンだ!! 俺は神を見た!! 俺だけが神と話せる!!」

 

 終いには変な事を言いだした。

 こんな事を叫びながら全速力でルームランナーしてる奴ってどう思います奥さん?

 

「チャンプに服など不要だ!! 脱いでやる!! 俺はチャンプだ!! 服などいらん!!」

 

 遂には上半身裸になってバーベルを持ち上げ始めた。

 そのバーベルの重さが俺の体重と全く同じなのは単なる偶然なんだよな?

 お願いだから、そうだと言ってくれ~!

 

「死に晒せや!!!!!」

 

 いやいや。殺すな、殺すな。

 死に晒せとか言いながら竹刀の素振りをするな。

 普通に怖すぎるわ。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 試合前日の日となる日曜日。

 束の研究室に成果を報告しに来た一夏は完全に生まれ変わっていた。

 っていうか、どう考えても前以上に鍛え上げている。

 

「この通り。完全に体力は取り戻しました。むん!」

 

 なんで上半身裸の状態でボディービルダーみたいなポーズをする?

 よく見たら、なんか腹筋がシックスパッドになってない?

 割れた腹筋とか始めて見たわー…。

 

「さ…最近になって妙に頑張っていると思っていたら…いつの間にこんな事になっていたんだ…?」

 

 日曜と言う事で今日は千冬もいるんだけど、そりゃまぁ驚いていた。

 たった一週間で弟の身体が鍛え上げられて1.5倍ぐらい大きくなってたら、そりゃ驚きもするわ。

 

「にゃはは…。まさか、ここまで効果覿面だとは思わなかったよ…。お兄ちゃんは魔性の美少女だね~」

「もしや…真尋さんと束が焚きつけたのか…?」

「正確には、束の提案なんだけどね。一夏のやる気がイマイチだったから、ちょっとでもやる気を出させようと思ったんだけど…」

「その効果が二人に予想を遥かに上回ってしまったと…」

「「うん…」」

 

 鈍感そうに見えても、やっぱり一夏も男の子だったってことなのかな?

 それはそれで少しだけ安心するけど…総合的には微妙な気分。

 

「結局、真尋さまが何を言ったのかは分かりませんでしたが…」

「一つだけ分かることがある。確実に邪な事だって事だ」

「人聞きの悪い事を言わないで貰えませんかねぇっ!?」

 

 っていうか、箒も人の事は言えないでしょうが!?

 結局、初日以降ずっとオレのベッドに潜り込んで寝てるくせに!

 そっちの方がずっと邪な気がするんですけどッ!?

 

「でも、ISの練習は出来なかったね。いっくんが筋トレばっかりやってたから」

「大丈夫ですよ束さん! そんなのは気合と根性と熱血と集中と加速と閃きと必中と覚醒と鉄壁と不屈と愛と勇気の力でどうとでもなりますから!」

 

 なんで精神コマンドフル活用なんだよ。

 つーか、愛だけで十分な気もするけど。

 …愛は精神コマンドの『愛』だよな?

 決して別の意味の『愛』じゃないよな?

 

「これなら勝てる! 負ける要素もビジョンも全く無い!!」

 

 あーあ…一週間前までの現代風男子な一夏はどこへやら。

 見事な熱血系色ボケ筋肉男子に変身してしまった。

 

 今更ながら…複数の意味でオルコットさんが不憫になってきた…。

 明日の試合…大丈夫かな…?

 

 

 

 

 

 




一夏。愛の力にて自らを魔改造。



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