遂に来てしまった、クラス代表決定戦(仮称)。
オレと箒、一夏と千冬、クロエちゃんに加えて束も一緒に第三アリーナのAピットに来ていた。
本音ちゃんは観客席に行っていて、山田先生は用事のため不在。
すぐに来てくれるらしいけど。
「オルコットは既に向こうのピットにて待機をしている。後は、こっちの準備が整い次第、試合を始められるが…」
現在、オレと一夏の二人はそれぞれISスーツを身に着けている。
一夏の方は男性用に特別に製作した物を着ていて、オレはと言うと…。
「うぅ…これがISスーツか…。もう殆ど水着じゃないかぁ…」
まぁ当然のように女性用のISスーツ(学園指定)を着ている。
デザインもそうだけど、色が紺色になっているから、もうまんまスク水ですね。
慣れていかないといけない…いけないけど…。
(これに慣れるには…時間が掛かりそうだなぁ…)
まさに『羞恥心を克服せよ!』だな。
そう簡単に克服してたまるかって感じだけど。
「お…お兄ちゃんのISスーツ姿…これはこれでまた独特なエロさが…」
「真尋さまのISスーツ…控えめに言って最高です…♡」
「ハァ…ハァ…ハァ…!」
そして、さっきから興奮しまくっている一部女性陣。
全員が顔を真っ赤にしているけど、束は体をクネクネさせて、クロエちゃんはうっとりとしていて、箒に至っては鼻血を出しながら目を血走らせてオレの身体を頭から足もとまで舐め回すように凝視してる…。
お願いだから…そんな目でオレを見ないで…。
見られる方の身にもなってくれよぉ~…。
(そういや、昔何かの本で『女性は見られることに敏感云々』って書いてあったような気がするけど…こういう事だったのか…)
成る程なぁ~…。
これは確かに、男の視線に敏感にもなるわ…。
今、オレを見てるのは全員揃って女だけど。
「ま…真尋さんのあられもない姿…か。こ…これは…凄い破壊力だな…」
千冬――――――――――――っ!?
お願いだから、お前だけはソッチ側に行かないで――――――!?
鼻を押さえながら顔を背けないでぇぇぇぇぇっ!!
「良く似合ってますよ。真尋さん」
「それ…お前にだけは絶対に言われたくないんだけど…」
だって一夏のISスーツ姿…膨張した筋肉でピッチピチになってるんだもん!
お前は一体どこのボディービルダーだっつーの!
明らかに15歳の高校一年生の体つきじゃないから!
一体いつからバキの世界の住人になったんだっ!?
「で…では、先にどちらからオルコットと試合をするかだが…」
あ。話を無理矢理に元に戻した。
鼻にティッシュを詰め込んでるから威厳皆無だけど。
「織斑の専用機は今、山田先生が取りに行っているから流石に試合は不可能。と言う事は必然的に…」
「オレが先…ってことになるのか」
別に構いやしないけどね。
緊張しないってわけじゃないけど、こーゆーのは先に終わらせた方が気が楽ってなもんよ。
後になればなるほど、緊張が長引いて胃が痛くなるしね。
「じゃあ、お先に失礼するぞ。一夏」
「はい。頑張ってくださいね」
「もち」
気合を込める意味でサムズアップ。
すると、一夏もサムズアップで返してくれた。
「お兄ちゃん。いつも通りにやれば大丈夫だよ」
「それが出来れば苦労はしないんだけどなー。ま、やるだけやってみるよ」
束からのありきたりなアドバイスを聞きつつ、オレは射出用カタパルトのある場所まで移動する。
IS用にもちゃんとあるんだな…これ。
ロボットアニメ系の世界だけの代物じゃなかったんだ…。
「んじゃまぁ…いっちょ、やってみますか。ね?」
首からぶら下げているルブリスの待機形態を握りしめ、静かに目を瞑ってから頭の中でイメージする。
プラモやアニメでよく知っている『ガンダム・ルブリス』が、自分の身体に覆われている姿を。
「…いくよ。ルブリス」
いきなりオレの身体が光りだし、体に次々とルブリスのパーツが装着されていく。
足から順に脛、太腿、腰に胴体、両腕に両肩にバックパック。
最後に頭部が覆われ、オレの見た目は完全にガンダム・ルブリスになった。
「無事に展開完了したみたいだね。気分はどう?」
「うん…意外と悪くない。自分自身がガンダムになるってのは不思議な感覚だけど」
「だろうね。私も頑張った甲斐があったよ」
ハイパーセンサーのお蔭で、自分の眼でもちゃんと自分の外観が見える。
本当に…見事にガンダムになってますがな。
「こ…これが姉さんの専用機ッ!?」
「全身装甲…! だが、何か聞き覚えのある単語が聞こえてきたような気が…」
流石に箒や千冬には分からないか。
こればっかしは仕方がない。
けど、一夏の方は…。
「おぉ~! 束さん! これってアレですよね!? 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に出てきた『ガンダム・ルブリス』!」
「そのとーり! お兄ちゃんのガンダム好きに合わせて、私が製作しましたー! えっへん!」
「す…すげー…! ISとは言え…本物のガンダムが目の前にあるよ…! しかも、操縦者はあの真尋さんとか…控えめに言って最高かよ」
なんて予想通りのリアクションをしてくれるんだ一夏は。
だから気に入った。
「お…おい一夏っ! お前はこの機体を知ってるのかッ!?」
「知ってるも何も、アナザーガンダムのテレビシリーズ最新作に出てくるガンダムだよ! 箒は知らないのか?」
「い…いや…そう言うのは余り見ないからな…」
根っからの剣道少女の箒には縁が無い趣味だろうしなぁ~…。
だからと言って責める事はしないけど。
「念の為に、試合前に武器の確認…っと」
バックパックにレシーバーガンが装着されてて、ビームサーベルも問題無し。
左腕にはコンポガンビットシールドも完備…よし。完璧。
「準備できたよ」
「では、出撃をお願いします。やり方は分かりますか?」
「一応。カタパルトに足を固定して…っと」
腰を低くしてから衝撃に備える。
これこそ『出撃~!』って感じ。
「発進タイミングは真尋さんに任せます」
「分かった」
最後にルブリスの中で深呼吸を一回…二回。よし。
「篠ノ之真尋! ガンダム・ルブリス…いきまーす!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
アリーナのステージ出ると、もう既にオルコットさんが蒼いISを装着して待っててくれてた。
全身真っ青とか、色々と想像が膨らみますなー。
言っていったらマジでキリが無いから省略するけど。
「…来ましたわね」
「来ましたー」
色的にはルブリスとは対照的だな。
あ…向こうの機体の分析データが来た。
えーと…『ブルー・ティアーズ』?
名は体を表すってことか…。
「全身装甲…それがアナタの専用機ですの?」
「そうだよ」
「このセシリア・オルコットにあそこまで言った以上…生半可な実力では許しませんわよ?」
「それに関しては大丈夫だと思うよ。舐めプをせずに、そっちがちゃんと試合をすれば…だけど」
「…言われるまでもありませんわ」
にしても…これが実際に宙に浮くって感覚かー…。
なんだか不思議だなー…。
初めての筈なのに、なんでか全く怖くない。
これもシミュレーターで散々練習をした成果かな?
あれ、恐ろしくリアルだったからなー。
「最初から『本気』でいきますわ…!」
「それが普通」
「くっ…!」
なんで悔しそうにする?
何か拙いことでも言った?
『では…試合開始!』
スピーカーから千冬の声で試合開始のゴングが聞こえた。
いきなり過ぎて、思わず体がビクってなっちゃった。
「まずは先制を!」
「だよね」
その手に握っていたロングレンジライフルを構えてから、即座にこっちに撃ってきた。
あれはレーザーライフルの類か。
光学兵器である以上、弾速はめちゃ速いので普通なら回避なんて無理。
そんなん出来るのはニュータイプやスーパーコーディネーターやイノベイターやXラウンダーだけ。
でも、来ると分かっていれば対処のしようはある。
「おっと」
「シールドで防がれたっ!? ならばっ!」
咄嗟にコンポガンビットシールドを構えて防御に成功。
受けた時の衝撃も殆ど無い。
IS様々ですな。
「おっ?」
ティアーズの周囲にあったビットが本体から分離し、こっちに向かって飛んできた。
成る程…最初から虎の子であるビットを使ってきたってことね。
でも、問題はソコじゃないんだよなぁ~。
「ほっ。ふっ。おっ」
「あ…当たらない…! どうしてっ!?」
攻撃して来ているビットの数は四つ。
これは余りにも少なすぎる。
いや…映像を見たから知ってたけどね。
(たった四つじゃ…流石に楽勝すぎるなー…)
数が少ない上に動きが直線的。
これじゃあ、当たってはやれないかなー。
(しかも、相変わらず『本体』は全く動いてないし…。まだ舐めプ?)
仕方がない…か。
これは、こっちのやる気を見せてやるしかないね。
「まずは…レシーバーガン、セット」
バックパックからレシーバーガンを切り離して手に持ち、それと同時に左腕に装着してあるコンポガンビットシールドに命令を送る。
「ビットステイヴ…全基射出!」
「こ…これはっ!?」
今まで一体化していたシールドがバラバラになって、そのパーツ一つ一つが全て独立したビット兵器となる。
これこそがルブリスの『ビットステイヴ』だ。
「1…2……7基っ!? 7基ものビットを操っていると言うのッ!?」
「いやいや…操るだけじゃダメでしょ」
「え?」
バックパックのスラスターに火を入れ、一気に加速する。
その間もちゃんとビットを操作し、四基は防御に専念させ、残り3基は牽制をさせる。
その気になればいつでもビットでビットを落とせるけど、ここは敢えて勝利難易度を上げてみましょう。
え? それも立派な舐めプなんじゃないかって?
何を仰る読者さん。
寧ろ、こうすることでオレはいつも以上に本気になれるのですよ?
難易度イージーでやっても面白くないじゃない?
どうせやるなら難しくしないと。
「あ…有り得ない!! 7基ものビットを操りながら、自分自身も動けるだなんてッ!?」
「いやいや…有り得なくはないから。これこそがビット兵器搭載機の本来の動きだから。これが『普通』なの」
ビットからの攻撃が一切無くなった上に、オルコットさんはまだ棒立ちのまま。
この時点で勝負あったも同然な気がするけど…まだ動かない気?
オレはそのまま真っ直ぐにオルコットさんの目の前まで動き、レシーバーガンからビームブレイドを形成し、ビームの刃を彼女の首元に突き付けた。
「…ここまで接近されて、こうまでされてもまだ動かない気?」
「……け…い……す…」
「ん?」
声が小さすぎて良く聞こえなかった。
この子、今…なんて言った?
「動かないんじゃなくて! 動けないんですの!! ビットを動かしている最中は!!」
「……へ?」
そ…それ…マ?
嘘…じゃない…っぽいよね…この様子からすると…。
「ビットの操作に集中する余り…私自身は一切身動きが取れないんですの…!」
「えー…?」
そんなのアリ…?
冗談でしょ?
だってそれじゃ…ビット兵器を搭載している意味が無いじゃん。
一体何の為の『遠隔操作端末』だと思ってるの?
近~中距離では本体との連携をし、遠距離では相手の射程圏外から一方的に叩くためにあるんだよ?
でも、ISの試合じゃ相手の見えない場所からの攻撃なんて不可能だから、必然的にビット兵器を使う際には本体との連携が必須事項になる。
なのに…それを『しない』じゃなくて『出来ない』なんて本末転倒じゃん。
「なんで…どうして! アナタは7基ものビットを私以上に機敏に操り、その上でご自身も自由に動けるんですのッ!?」
「なんでって言われてもなぁ…最初から普通に出来たし…」
「最初から…普通…に…?」
「うん。普通に」
こればっかしは、マジでそうとしかいえない。
別に特別な事なんてしてないし。
因みに、こうしている間もちゃんとビットは動かしてます。
オルコットさんのビットは本人の精神的動揺が影響してか、動きがさっき以上に遅くなってるけど。
「…言うだけの事はある…ってことですわね…。決して大言壮語ではなく…本当に、それだけの実力をお持ちだった…」
オルコットさんが俯いて、何かブツブツと呟きだした。
なんかちょっと怖い。
「…この試合…私の負けですわ」
「え? いやいや…まだどっちもダメージ受けてないよね?」
「何を仰いますの? もう既に私は貴女に『チェックメイト』されていますわ」
チェックメイト?
なんか言い回しがカッコいいなオイ。
「ビットを動かしている限り、私は攻撃も回避も防御も出来ない。もし仮にビットの制御を解除して私が攻撃をしようとしても、ここまで近づかれたらライフルは使えないし、私が近接武器を展開するよりも先に貴女の攻撃が来る。恐らく、貴女ならば、この距離からミサイルビットを撃っても簡単に迎撃してしまえるのでしょう。そうなればミサイルの誘爆で私も大きなダメージを受ける。つまり…この状況に追い込まれた時点で、今の私ではどう足掻いても逆転は不可能…」
意外と冷静な分析力があってビックリ。
最初から、こんな風に素直だったら良かったのに。
「篠ノ之真尋さん。アナタの実力に敬意を払い…この試合、私はサレンダーします」
「え? ちょ…まっ…!」
こっちもまだ殆ど何もやってないんですけどッ!?
ここからお互いに本気を出して試合も盛り上がって~…的な事を想定してたのにっ!?
まさかのオルコットさんの降参宣言ッ!?
そんなのアリですかっ!?
もうちょっと足掻こうよ! 頑張ろうよ!
熱くなれよ!! お米食べろ!!
『試合終了! セシリア・オルコットの降参により…勝者! 篠ノ之真尋!』
あ―――――――――っ!?
色々と考えている間に試合終了の宣言がされちゃったーっ!?
(生まれて初めての試合がコレって…なんだか複雑な気分…)
うぅ…スッキリしないよぉぉぉ――――――!
めーっちゃ消化不良なんですけど―――――!