お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第25話 一夏と筋肉

 グダグダなままに始まってしまったオルコットさんと一夏の試合。

 案の定、先制攻撃としてオルコットさんは手に持つレーザーライフルを撃ってきたが…。

 

「えい」

「はうあっ!?」

 

 あろうことか、一夏の手…というか、白式の手によってペチンと弾かれてしまった。

 

「レ…レーザーを弾いた…ですって…!?」

「この程度、筋肉を鍛えれば誰にだって可能だ」

 

 ドヤ顔をしながら何言ってんだ、あの変態筋肉は。

 

「そう言えば、この白式に何か武器は無いのか? ん?」

 

 流石に無手のままじゃアレかと思ったのか、一夏が拡張領域内をのんびりと調べ始める。

 その間もオルコットさんは必死になって一夏の事を狙い撃っているが、其の全てが左腕で弾かれた。

 肝心の一夏は、視線と右手だけは投影型コンソールに向けて、器用に何かを操作していた。

 

「あ。なんかあった。これか?」

 

 やっと見つけたか。

 さて…何が出るのかな?

 

「おぉー…って、これだけか?」

 

 一夏の手に握られたのは、一本の近接用ブレード。

 どことなく、ガンダムバルバトスの太刀に似ている気がする。

 

「き…近接用のブレード一本だけ? 舐めてるんですのッ!?」

「別に舐めちゃいないよ。本当にこれしか入ってなかったんだ」

「完全な欠陥機じゃないですの…」

「だよなー。せめて、近接用ブレードがあと五本あったらよかったのに」

「なんであと五本ッ!? そこは普通、他に射撃兵装とかを希望する場面なのではなくてッ!?」

「いや…あと五本あればさ、戦国BASARAの伊達正宗みたいに指の間に一本ずつ剣を挟んでからの六刀流とか出来たのになーって思って」

「指の間に剣をッ!? とち狂ってるんですのッ!?」

「その文句は伊達正宗本人に言ってくれよ。俺が開祖じゃないんだしさ」

 

 なんだろう…今の一夏なら本当に六刀流が出来そうな気がする。

 流石にテンションMAXになって馬に乗りつつ『レッツパーリィー!』はしないだろう…と信じたい。

 

「しっかし…この剣、妙に小さくないか?」

「アナタの手が大き過ぎるんですのよっ!!」

 

 オルコットさんの叫びに観客席の皆がウンウンと頷いてる。

 まるでコントみたいになってきたな…。

 この試合、本当に大丈夫か?

 

「こ…こうなったら、ビットを使って包囲をして…!」

「あれか。だが、俺の筋肉は数の暴力などに決して負けない!」

「人聞きの悪い事を言わないでくださいまし!」

 

 それ言い出したらキュベレイとかゲーマルクとかクィン・マンサとかどうなるんだって話だよな。

 あれ…ファンネルの数が明らかに異常だし。

 それを普通に操ってみせるハマーン様率いるネオ・ジオンのニュータイプ&強化人間の実力が良い意味でおかしいのよね。

 

「ええい! お行きなさい!」

「おぉ?」

 

 四基のビットがティアーズ本体から分離し、ステージ内を縦横無尽に飛び回る。

 でも、あれを操作している間は本人は動けないんだよね?

 それでも出すしかない程に精神的に追い詰められてしまったのか。

 

「ふん」

「デコピンでビットのレーザーを弾かないでください!」

 

 ビット兵器最大の弱点は、一撃一撃の威力が低いことなんだよな。

 例外はνガンダムのフィン・ファンネルや、α・アジールのファンネル。

 あれは流石に異常。

 

「えーっとー…」

 

 一夏のやつ…何を狙ってる?

 ずっとビットの動きを目で追ってるけど。

 

「そこだ! ふん!」

「なっ!?」

 

 絶妙なタイミングで近接ブレードを投げると、なんと四基のビット全てがたった一投で貫かれ、火花を散らしながら地面に落ちた。

 

「おー…ダメ元でやってみたら成功した。まるで焼き鳥みたいだな。はっはっはっ」

「よ…四基のビットが重なるタイミングを狙って、寸分違わぬタイミングで剣を投げて命中させるだなんて…」

 

 うん…オルコットさんが顔を青くするのも無理ないわ。

 一体誰が、投げ槍の要領で剣を投げて四基のビットを一撃で貫くだなんて思う?

 本当に筋肉で全てを解決しようとしている…普通に怖い。

 

「そ…それならミサイルビットで…!」

「ミサイル如きで俺の筋肉を打ち砕けると思っているのか?」

「うぐ…!」

 

 普通なら戯言だと思うんだろうけど、今回の場合はマジで掠り傷すらも与えられるか微妙だしな…。

 これが筋肉の可能性なのか…。

 

「もう…後は、このレーザーライフルで…!」

「させるかー!!」

「ひぃっ!?」

 

 物凄い形相で突撃した一夏は、狼狽えて動きが遅れたオルコットさんの隙を突いてレーザーライフルの銃身を握りしめた。

 

「こんな物…こうだ! ふん!」

「ライフルの銃身が曲がったぁッ!?」

 

 文字通り、一夏のアホみたいなパワーによってライフルがぐにゃりと曲げられてしまった。

 あれはもう使い物にならないな…。

 

「これでもう、お前の武器は全て使えなくなった。どうする?」

「ま…まだですわ! ティアーズには最後の武器として近接用のショートブレードの『インターセプター』が…」

「えい」

「へ?」

 

 オルコットさんの手に短い剣みたいのが握られ、一夏に向かって振るわれたが、その刃は二本の指にて呆気なく阻まれ、そのままペキンと折られてしまった。

 

「随分と脆いな。こういうのは、ちゃんと超合金ニューZαかガンダリウム合金とかで造っておかないと」

「は…ははは…」

 

 んな材質、この世界には無いッつーの。

 遂にオルコットさんの心が折れたのか、渇いた笑いを浮かべてしまった。

 

「降参…ですわ…」

「勝ったー」

 

 試合終了。

 勝ったのは一夏。

 勝因は相手の戦意喪失。

 でも…なんだろう。

 一夏の顔はスッキリしている。

 自慢の筋肉を披露できたからか?

 

「あ。まだISの設定が完了してないのに終わっちまった」

「ぐはぁっ!?」

 

 オルコットさんの精神に更なるダメージがッ!?

 これは普通に辛い!

 

「なんて言ってたら、設定終了した的な案内が出たんだけど。これを押せばいいのか? ポチッとな」

 

 試合終了してからって…。

 割と時間はギリギリだったのか?

 

「おぉぉー?」

 

 一夏の身体…ってよりは、白式が眩しく光り輝く。

 これが第一形態移行ってやつなのか。

 やがて、光が収束していき形態変化が終了する。

 

「あ。終わったのか? あれ? 剣はどこに行った?」

 

 それは、見事なまでに真っ白な機体だった。

 背部のウィングなどは機動性が高そうな印象を受けるけど…。

 

「なんか両腕と両足の形状が大きく変わってる。まるでソウルゲインみたいだ」

 

 あれはー…完全に一夏に合わせて肉弾戦主体に変わってるでしょ。

 舞朱雀のブレードに辛うじて剣の名残が残ってる…気がする。

 

「これで白式は本当の意味で俺のISになって事なのか。さて、そろそろビットに戻るか…って、あれ? アイツはどこ行った?」

 

 オルコットさんなら、白式が一次形態移行している間にピットに戻っちゃったよ。

 

「ま…いっか」

 

 いいんかい。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ピットに戻ってきた一夏は、満面の笑みを浮かべながらオレに近づいてきた。

 

「見てくれてましたか真尋さん! 勝ちました!」

「うん…よく頑張ったね…」

「あざっす!」

 

 心なしか、こうして近くで見ると白式が一回りぐらい大きくなってるような気がする。

 サイズの方も一夏(マッスルモード)に合わせたのか?

 

「いやー。見事にパワーで勝っちゃったねーいっくん」

「筋肉に不可能はありませんから」

「う…うん…そうだね…」

 

 あの束が本気でドン引きしてるんだけど。

 からかったのに、真正面から返されたら、そりゃこうもなるわ。

 

「あの白式と言う機体…本来ならば剣戟戦闘特化なのだろうが…見事に剣が無くなってしまったな」

「ですね…完全に格闘専用特化型になっちゃってます…」

 

 教師二人も冷や汗を流しながらジト目で呆れてる。

 もうツッコミが追いつかないよ…。

 

「最も不憫なのはオルコットだな…。真尋さんに負けたまでは良かったが、二度も降参と言う形で敗北してしまったからな…」

「しかも、その二回目は殆ど力ずくに等しかったですし…」

 

 あれが原因で彼女の中に男じゃなくて筋肉に対するトラウマが生まれない事を祈る。

 

「後は、オレと一夏の試合だけか…」

「そうなるねー。どっちがどっちに行く?」

「オレが向こうに行くよ。さっきの試合の事もあるし、もし一夏が向こうのピットに行ったらオルコットさんが発狂して倒れるかもしれない」

「「「「有り得る」」」」

 

 全員が満場一致で頷いちゃったよ。

 

「大丈夫だって! もしそうなっても筋肉でどうにかしてみせるさ!」

「「「できるか!」」」

 

 思わず千冬と箒に混じってオレもツッコんでしまった。

 これが俗に言うツッコミ脊髄ってやつか…。

 

「と…兎に角、オレは向こうのピットに行ってくるから。また後でなー」

 

 なんて言いはしたものの…オルコットさんの今を見るのが少し怖い…。

 落ち込んでないと良いけど…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 てなわけで向かい側のピットに来ました。

 お邪魔しまーす…。

 

「えっとー…オルコットさーん…?」

「うぅぅ…まびろざーん…」

「おわっとっ!?」

 

 なんと、オルコットさんはベンチに顔を埋めながら号泣していて、涙と鼻水を出しまくっていた。

 完全に清楚なイメージが壊れてるし。

 

「筋肉怖いですわ――――――!!!」

「だろうね。って、おっふ」

 

 凄い言葉を吐きながら、オルコットさんがオレに抱き着いてきた。

 いきなりの事で本当に驚いたけど、流石に泣いている女の子を無下にする程オレは馬鹿じゃない。

 

(しっかし…見事に筋肉がトラウマになってるし…)

 

 うーん…どうしてこうなった?

 元はと言えば、束が変な事を言い出すから…。

 それに乗ってしまったオレにも責任はあるか…。

 

「だ…大丈夫だった?」

「はい…」

 

 なんとなーくオルコットさんの頭を撫でてみる事に。

 これで少しは落ち着いてくれるかな?

 

「…いい香りがしますわ…♡」

「はい?」

 

 今…なんて言った?

 良い香り?

 

「凄く…落ち着きますわー…♡」

 

 なんだろう…オルコットさんが顔を左右に揺らしながらオレの胸とお腹の間ぐらいの所に顔を擦りつけてるんだけど…。

 

「なーにをやってるか貴様―――――!!!」

「抜け駆けは許しませんよ―――――!!!」

「チッ…!」

 

 おわっ!?

 これまたいきなり箒とクロエちゃんがピットに入ってきた―――!?

 

「真尋姉さんだけがこちらに来ると言った瞬間から、なんとなく予感はしてたが…矢張りだったか!!」

「まだ私だって真尋さまとハグなんてしたことないのに! 油断も隙もあったもんじゃありませんね!」

「な…何を言ってますのッ! 私はただ、真尋さんに敗北のショックを慰めて貰っているだけで…」

「「慰めて貰っている人間が、そんなニヤケ面になるかっ!!」」

「別にいいじゃありませんの! ニヤケ面になったって!!」

 

 急にピット内が騒がしくなってきた…。

 さっきまでのシリアスな空気はどこに行ったの…?

 

 

 

 

 

 

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