お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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まだまだエピローグ的な部分ですね。

まひろちゃんがIS学園に入学するまではもう少しだけ掛かるかもです。








第3話 まひろと致命的運動不足

「うっ…うううぅ~…」

 

 よもや…よもや…こんな事が…。

 

「ど…どうしたの、お兄ちゃん? そんな風に可愛らしく泣いたりして」

「何かあったのですか?」

「束ぇ~…クロエちゃぁ~ん…」

 

 こいつの発言は一先ず置いといて。

 はぁ~…。

 

「束…オレはもうダメかもしれない…」

「え? マジでどしたの?」

「この果ての無い無限禁欲生活編で決定的な間違いを起こしてしまいそうな気がして…気分転換に昔寝ぼけて間違えて購入してしまったBLゲームをやってみたんだが…」

「それがどうかしたの?」

「不覚にも……ちょっとだけ興奮してしまった自分が居るんだ…」

「うわぁ…」

 

 実の妹にマジのドン引きされたぁ~!

 うわぁぁぁぁぁん!

 

「ま…まさか…自分が腐女子に目覚めかけていたとは…普通にショック…」

「べ…別に問題は無いんじゃない? 今のお兄ちゃんは立派な女の子なんだしさ」

「良いわけあるか!」

 

 このオレが…このオレが違う意味で腐ろうとしているんだぞ!?

 流石にBLにもGLにも一人のオタクとして理解はある…だがしかし、自分自身が『ソッチ側』に行くとなると話は別だ!

 

(ふむふむ…成る程ねぇ~…。遂に趣味嗜好までもが女性側に引っ張られてきたのかな? 今着ている女の子の服も普通に着こなしているし。流石にBLの方は私も想定外だったけど…)

 

 なんか束が顎に手を当てながらニヤニヤしてる。

 こいつがこんな事をしている時は、大抵が碌な事を考えていない時だ。

 伊達に長年、こいつの兄貴をしている訳じゃあない。

 

「あの…真尋さま。束さま。少しよろしいでしょうか?」

「「なに?」」

「その…先程から真尋さまが仰られている『BL』とは一体何の略称なのでしょうか?」

「「うぐっ!?」」

 

 ク…クロエちゃん…それを聞いちゃいますか…!

 そんな純粋な目で尋ねられると答えなくてはという義務感に苛まれるが…!

 

(言えるワケが無いだろーが!! こんな小さな子に『BLっていうのはボーイズラブの略称なんだよ』なんて! 何にも知らない女の子を腐海に落とすわけにはいかない!!)

 

 だがどうする…?

 ここで答えてあげないと流石に可哀想だし…。

 かといって、他にい答えも思い付かない…!

 あの束も今回ばかりは困り果てているようで、視線を横に逸らしながら必死に良い考えを捻出しようとしている。

 

(なに? 女の子にBLの意味を聞かれて困っている?)

 

 あ…あなたはジョースター卿!?

 どうしてオレの脳内に!?

 

(こんな時は逆に考えるんだ。教えちゃってもいいさと)

 

 え――――――――――――!?

 教えちゃってもいいんですか――――――!?

 

 いや待て真尋よ。冷静に考えろ。

 クロエちゃんは至ってノーマルな嗜好の女の子だ。

 そんな彼女に『BL=男同士の恋愛』って事を教えても何の問題もないではないか?

 寧ろ普通に『そうなんですか』の一言で済む可能性だって十分に有り得る!!

 

「…クロエちゃん」

「真尋さま?」

「BLってのはね…『ボーイズラブ』の略なんだよ」

「お…お兄ちゃん!?」

 

 ふふふ…束の奴も驚いているな。

 だがここは逆転の発想なのだよ!

 オレの好きなフリーゲームでもよく言ってる!

 

「ボーイズラブ…? 言葉通りに捉えれば、男性同士の恋愛…という意味ですか?」

「そうだよ」

 

 オレが丁寧に教えてあげると、束は凄い形相&速度でこっちにやって来た。

 

「ちょ…お兄ちゃん!? なに普通に教えちゃってるのッ!? クーちゃんが腐女子になったらどうする気っ!?」

「大丈夫大丈夫。こーゆーのは逆に前知識が何にも無い方がいいんだよ。ほら」

 

 クロエちゃんがオレがしてたBLゲームのパッケージを見ながら、うんうんと唸っていた。

 

「成る程…世の中にはまだまだ私の知らない趣味嗜好があるのですね。今のご時世、同性同士の恋愛が決して珍しいわけではありませんし。こう言った題材のゲームがあっても不思議ではありませんね。勉強になります」

 

 ほらね?

 

「真面目っ子は、こーゆーオタ知識すらも真面目に受け取っちゃうんだよ」

「よ…良かった…」

 

 特にクロエちゃんみたいな純粋無垢な子はね。

 ある意味、この子で助かったとも言えるけど。

 変に俗世間に染ってたら、それこそ腐女子ルート一直線だったに違いない。

 

「はぁ…本当にどうなるかと思ったよ」

「あはは…スマンスマン。けど、お前の焦った顔ってのも新鮮だったな」

「おーにーいーちゃーんー?」

「いひゃい! いひゃい!」

 

 うにゃ~!

 ジト目になった束にほっぺを引っ張られるぅ~!

 

「全く…お兄ちゃん。そんなに気分転換がしたいなら、丁度いい方法があるよ」

「いい方法?」

「そ。でもまぁ…お兄ちゃんには難しいかもしれないなぁ~?」

「そうなのか…? けど、今のままよりはずっとマシだ! 教えてくれ!」

 

 こうなったらもう背に腹は代えられない!

 今は本当に藁にも縋る思いだからな!

 

「それは~…」

「それは…?」

「ズバリ『運動』です」

そりゃ無理だぁ~!

 

 背に腹は代えられないとは言ったが、それだけは無理だぁ~!

 無理寄りの無理だぁ~!

 サイコザクにボールでタイマン仕掛けるのと同じぐらい無理だぁ~!

 

「おい束! お前は自宅警備員と言う存在を何だと思ってるんだ!?」

「ただのニートでしょ…。どうしてそんなに偉そうなの…?」

 

 自宅警備員は自宅にいるからこそ『自宅警備員』なんだぞ!?

 一歩でも外に出たら、それはもう自宅警備員じゃなくなるだろッ!?

 

「というか、お前も人に偉そうな事を言えた立場なのかッ!?」

「言えるよ? 私、こう見えてよく外に出たりしてるし」

「うそ~ん!?」

「ホントだって。確かに私は天才科学者だけど、だからと言って健康維持を放棄している訳じゃないし。ちゃんとした食生活に適度な運動は欠かしてないよ? ね? クーちゃん?」

「はい。私もよくご一緒して外に出ていますから」

「クロエちゃんまでっ!?」

 

 そんな…束は生活習慣的な意味だけではオレの同類だと思っていたのに…。

 

「いい機会だし、お兄ちゃんも外に出てみようよ。ね?」

「いーやーだー! 太陽の光なんか浴びたら石になるぅ~!」

「お兄ちゃんはどこの柱の男なの?」

 

 ある意味じゃ似たようなもんだろ~!?

 流石に流法(モード)は使えないけど。

 

「それじゃあ、このまま部屋に籠って腐女子街道を突き進む?」

「うっ…!」

 

 それは…それだけは…!

 

「大丈夫です真尋さま。私もご一緒しますから!」

「クロエちゃん……うううぅ~…」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「はうわ~!?」

 

 結局、二人の圧力に負けて外に出てしまったのでした…。

 そういや、初めて研究所の外に出た気がする。

 実際には束特製のニンジンロケット(粒子変換可能)によって、適当な住宅街に飛ばされたんだけど。

 

「まさか…数年振りの外出がこんな形になろうとは…!」

「生まれて初めてBLに感謝してるよ…ありがとう…!」

「そこまで言うか」

 

 因みに、今のオレは動きやすいように上下がジャージで、髪もポニーテールにされた。

 うーん…箒の奴はいつも、こんな感覚で過ごしているのか…。

 

「ほら! 体を動かせば気分もスッキリするよ! 私もよく、研究に行き詰ったりした時は体を動かしてるし!」

「そうなのか…」

 

 こいつでも行き詰まるなんてことがあるんだな…ちょっと意外だ。

 

「た…束…クロエちゃん…」

「「ん?」」

「せめて…一緒にお願い…」

「「可愛い…」」

 

 なんか言ったか?

 こっち的には割と切実なお願いなのですが。

 

「だ…大丈夫だよ、お兄ちゃん! 私達も最初からそのつもりだったし! ね? クーちゃん」

「はい。ご心配は無用です」

「そっか…よかった…」

 

 このまま一人で孤独に走らされるとか普通に地獄だし…。

 本当に…本当に助かった…。

 

「全く…これじゃあ、どっちが妹なのやら…」

「何か言ったか?」

「何も~?」

 

 そーなのか…? ま、別にいいけどさ。

 

「なら、まずはこの辺で軽くジョギングね」

「はい…」

「はい!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 10分後。

 

「ちょ…待って…束…クロエちゃん…ペース…速すぎ…だから…!」

「あー…ゴメンね、お兄ちゃん! 体力落ちちゃってるもんね…配慮が足りなかったよ…あはは…」

「申し訳ありませんでした…」

 

 ゼー…ハー…ゼー…ハー…。

 この妹は本当に…。

 

(仮に万全状態でも絶対に追いつけないっつーの…)

 

 昔から束はよく出来た…いや、出来過ぎた妹だった。

 幼少期から既に人並み以上に頭脳明晰で、暇さえあればパソコンばかりを弄っていた印象がある。

 それでいて運動神経も抜群で、中学の時なんかは学校の授業で非公式ながらも50メートル走の当時の世界記録を易々と更新してみせたとかなんとか。

 ウチの実家は昔、剣道場をやっていて、当然のようにウチの親父は子供であるオレ達にも剣道をさせようとした。

 けど、オレには剣道の才能は無く、すぐに挫折をして止めた。

 一方の束と箒は違い、束も興味は無いにも拘らず天才的な剣の腕を持ち、あっという間に免許皆伝級の実力を身に付けた。

 箒もまた剣道の関しては天賦の才を持っていて、メキメキと腕を上げていった。

 もしかしたら、今じゃもう全国クラスにまでなってるかもな。

 

 まぁ…そんな家族も、今はバラバラになっているワケだが。

 束の開発したパワードスーツ『インフィニット・ストラトス』によって。

 

 『白騎士事件』

 あの事件以降、オレと家族は変わってしまった。

 いつの間にか束はいなくなってしまったし、家族もまた政府の『保護プログラム』…だったか? で色んな場所を転々とさせられている。

 そしてオレはというと、優秀過ぎる二人の妹という立場と周囲の視線。

 長男であるが故の重圧感。

 その全てから逃げるかのように自分だけの空間に引き篭もって…。

 

(その挙句が実の妹の手によって女の子にされるとか…オレの人生も遂にここまで来たかって感じだな…トホホ…)

 

 もうこれから先、何が起きても驚かない自信があるわ。

 自分の性別が変わる以上の事がそうそう起きるとは思えないし。

 

(しっかし…実の所、最近は妙に気が軽かったりする。何というか…自分の身の丈に合った立ち位置に収まった感じがするというか…)

 

 もう…このまま本当に『()』である事を止めて…そして…。

 

(まぁ…それはそれとして)

 

 そんな事よりも、今のオレは凄く衝撃を受けている事がある。それは…。

 

「大丈夫ですか真尋さま? 少しペースを落としましょうか?」

 

 現在の自分の体力がクロエちゃん以下だったという事実…!

 オレの体よ…そこまで弱体化しているというのか…!

 

「ううぅ……」

「お兄ちゃん?」

「真尋さま? どうなされました?」

 

 もう…限界だ…。

 

「……び」

「「え?」」

「乳首…痛い…ジャージに擦れて…」

「「えぇっ!?」」

 

 そこ、そんなに驚かれるような事?

 

「な…なんで着けてないのッ!? ちゃんと服と一緒に渡したよねッ!?」

「確かにあった…あったけど…アレだけはどうしても抵抗があると言いますか…装着したら色んな意味で終わりな気がしたと言いますか…」

「真尋さま…」

 

 だってぇ~! 仕方がないじゃ~ん!

 少し前まで成人男性だったんだよ!?

 いきなり『アレを着けろ』とか言われても、そう簡単に受け入れられないから!

 

「はぁ…仕方がない。クーちゃん」

「はい。束さま」

「え?」

 

 な…なんか急に束とクロエちゃんに両腕を掴まれたんですけど?

 猛烈にイヤ~な予感がする…。

 

「丁度いいから、今から買いに行こうか」

「な…何を…?」

「勿論、ブラジャーをです」

「……はい?」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 気が付いた時、オレは二人によって近くにあったランジェリーショップへと強制連行されていた。

 うぅぅ…恥ずかしぃ~!!

 

「実はこの子、今日が初めてなんだよね。だから、悪いけど色々と教えてあげてくれる?」

「お任せください」

 

 お任せしないで店員さん!

 

「それでは、こちらにいらしてください」

「は…はい…」

 

 これは…行くしかない流れだ…。

 コミュ症は場の流れには基本的に逆らえない…。

 

 そのままオレは女性の店員さんに連れられて更衣室へと一緒に入ることに。

 

「それじゃあ、リラックスしてくださいねー」

「ひゃうっ!?」

 

 く…くすぐったい!

 胸にメジャーを当てられるってこういうことなのかっ!?

 

「少しだけ触りますねー」

「ちょ…さわ…? ええっ!?」

 

 て…店員さんの手がオレの胸にににににににに…!

 ちょっとだけムニッとして…!

 

「はい。ここをこうやって。それから…」

「ひにゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 数分後。

 オレは遂に最後の一線を越えてしまったのだった。

 

「へぇ~…よく似合ってるよ。スポブラ」

「あ…う…」

 

 更衣室のカーテンから顔を覗かせながら、束が感想を言った。

 どんな世辞を言われても、今は全く響かない…。

 

「…………」

「ク…クロエちゃん?」

 

 なんか、さっきからクロエちゃんがずっとオレの胸を凝視してるんですけど…。

 こんなクロエちゃんは初めて見た…。

 

「大きい…」

「え?」

「真尋さま…私よりも大きいです…」

 

 頬を膨らませながら言われても…オレはなんて返せばいいんだ…?

 全然全く分からないんですけど。

 

「う…あううぅ~…」

 

 オレが段々と『女の子』になっていく…。

 けど、心だけは絶対に屈さないぞ!…多分。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日。

 

「お兄ちゃん? ジョギングには行かないの?」

「自己同一性の危機によりお休みします…」

「やれやれ…一進一退って感じかな」

 

 ぐすん…オレは男だ…それを忘れないように頑張らなければ…。

 寧ろ、運動不足よりも、そっちの方が重要な気さえしてきた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は、もしかしたらオリジナルの話になるかも。




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