謎のクラス代表就任パーティーがあった次の日。
教室はいつもとは違った賑わいを見せていた。
「あっ! 皆おはよー!」
「おはよー」
本当に今時の女子高生ってのは元気だなー。
いや…オレがまだ男だった頃の女子高生も普通に元気だったか。
つまり、いつの世も女子高生は元気だって事だ。
「妙に賑やかだが…何かあったのか?」
「そうそう! そうだった! 皆はもう『転入生』の話は聞いた?」
「「「「「「転入生?」」」」」」
そんなのが来てたのか? いつの間に?
と言うか、この子達はどこでその情報を入手したんだ?
「なんでも、中国からやって来た子で、隣の二組に編入されたんだって」
ほぇ~…中国から。
これまた異色の転入生ですこと。
流石は国際色豊かなIS学園ですな。
「中国か…」
ん? 中国って聞いた途端、急に一夏が遠い目をした。
「どした? 話聞こか?」
「え? あぁ…なんでもないッスよ真尋さん。ただ、ちょっと懐かしい気持ちッつーか…中学の頃を思い出しただけで」
「中学の頃?」
「はい。俺の知り合いに中国人がいて、それで…」
「ふーん…」
オレの知らない中国人の子ねぇ…。
どーせ女の子だろうな。
「ん? そんな奴がいたのか?」
「箒が知らないのも無理はねぇよ。殆ど入れ替わるような形で転入してきたしな」
「そうなのか…それならば、私や真尋姉さんが知らないのも道理か」
入れ替わるように転入…。
中々に凄いフレーズだな。
「もしや、この私の存在を危ぶんでの転入かしら?」
「いや…別に危ぶんではいないでしょう…。寧ろ、一夏さんに引かれてやって来たと思う方が自然です」
「おりむーは人気者だね~」
「この場合は意味が違ってくるけどな」
オルコットさん…見事にフルボッコ。
前に名前で呼ぶように言われたけど、知り合ってまだ少ししか経ってない女の子をいきなり名前呼びするのは流石に勇気がいるので元の呼び方に戻した。
引き篭もり生活(ピー)年のベテランを舐めんなよ?
「けど、この時期の海外からの転入生って事は、普通に考えても只者じゃあないんだろうな~」
「そうですわね。普通の転入生ならば、ここまで話題になることも無いでしょうし。となれば…」
「その転入生とやらはセシリアと同じ『代表候補生』である可能性がある…と言う事か」
代表候補生…中国の代表候補生かー…。
やっぱ、専用機はドラゴンを模してて、腕部がビヨーンって伸びたりするんだろか?
ドラゴンガンダムやシェンロンガンダムみたいに。
最後の切り札に『真流星胡蝶剣』とか使ってこないだろうな?
あれって『爆熱ゴッドフィンガー』と同じぐらいの威力がある超級奥義だぞ?
直撃なんてしたらひとたまりもないっつーの。
「真尋さまも警戒なさっておられるのですか?」
「そりゃね。なんたって4000年の歴史があるからね。侮れないでしょ」
「アチョー! って拳法使って来るかもね~」
ルブリスで無手の格闘かー…。
出来なくはないだろうけどー…似合わねー。
そーゆーのはνガンダムかGガンダム系の機体がピッタリなんだよ。
オレはまだ殴り合い宇宙はしたくない。
「真尋さんの実力ならば、誰が相手でも問題は無さそうですけど…」
「だからと言って油断は禁物だ。思わぬ形で足を掬われるかもしれんしな。故に、真尋姉さんが警戒心を抱くのは普通の事だ」
「箒の言う通りだな。まぁ…あの真尋さんの事だから、相手を侮るような事はしないと思うけど」
随分とまぁ高く評価してくれちゃって。
嬉しくはあるけどさ…。
でも、一夏の言う通り誰が相手でも油断はしない。
どんな時も全力全開スターライトブレイカーだ。
「真尋ちゃん! 今度のトーナメント頑張ってね!」
「主に私達のデザートの為に!」
「デザート?」
どうして、そこでデザートの話になる?
「真尋さま。どうやら、トーナメントで優勝したクラスには学食のデザートの半年フリーパス券が授与されるそうです」
「あー…なるほどなー…」
そりゃ彼女達も必死になる訳だ。
デザートは女の子の大事な心の栄養分だしな。
オレも決して嫌いじゃないけど。
「けど、一年の専用機持ちがいるクラスって、今の所は一組と四組だけだから、優勝する確率自体はかなり高いと思うよ?」
え? 四組にも専用機持ちの子がいるの?
それは普通に初耳なんですが。
「残念だけど…その情報は少し古いから」
「「「「「「え?」」」」」」
いきなり聞こえてきた知らない声。
誰だ、誰だ、誰だーと思いながら教室の入り口の方を振り向くと、そこには見慣れない黒髪ツインテールな女の子が腕組み&片膝立ちのポーズで立っていた。
「お…お前…まさか…鈴か?」
あれ? 一夏ってばお知り合い?
本当に顔が広いやっちゃなー。
「そうよ。中国代表候補生にして、二組のクラス代表の『凰鈴音』。ちょっと聞き捨てならない話が聞こえてきたから、宣戦布告ついでに様子を見に来たんだけど…」
ん? 急にキョロキョロとし出して…誰かを探してる?
「篠ノ之真尋ってのは誰?」
「え? 私?」
なんでオレの事を御指名?
あの子とは完全完璧に初対面な筈なんだけど?
「ふーん…あんたが…」
今度は頭の先から爪先まで舐めるように見られた。
さっきから一体何なのかしらん?
「こんな子が本当にイギリスの候補生や一夏に勝ったの? 全く強そうには見えないんだけど」
ストレートに言われた。
ま、自覚はあるから文句は無いけど。
「「「「ハッ…」」」」
「な…なによ…」
あ…一夏と箒とクロエちゃんとオルコットさんが、すっごい馬鹿にした顔であの子の事を見てる。
「確かに真尋さんは完全無欠の美少女であることは認めるけどよ…」
「相手を見た目でしか判断できんとは…中国の候補生とやらもたかが知れてるな」
「全くですわね。どうやら、先程の私の心配は杞憂で終わりそうですわ」
「真尋さま。今度のトーナメントは真尋さまの優勝で確定したようです」
ひ…ひでぇ…ここまで言うか…。
あの『鈴』って呼ばれた子の顔があっという間に赤くなっていくよ~。
「アンタたちねぇ…言ってくれんじゃない! そんなに、その真尋って子が強いって言うのっ!?」
「「「「強い」」」」
「まさかの即答っ!?」
ハイ終了…とはならずに、彼女は少しでも反対意見を探そうと教室中を見渡すが…。
「ぶっちゃけ、真尋ちゃんが負ける姿なんて想像出来ないよねー」
「だねー。素人目でも凄いって分かる強さだったもんねー」
「先生達が大絶賛してる時点でねぇ~…」
「申し訳ないけど、味方は出来ないなぁ~…」
見事に味方ゼロ。
どうして、このクラスの子達はオレの事をこうも褒め称えるのだろう。
ワケガワカラナイヨ。
「上等じゃないの…! こうなったら、トーナメント前にきっちりと実力差を見せつけて…」
「おい」
「あによっ!? あだっ!?」
あー…痛そー…。
いつの間にか背後にいた千冬から『出席簿アタック』を喰らって悶絶してる…。
「もうSHRの時間だ。早く自分のクラスに戻れ」
「ち…千冬さん…!? なんで…!?」
「織斑先生だ。もう一発食らいたいのか?」
「ひぃっ!?」
あらら…完全に怯えちゃって。
流石にちょっと可哀想になってきた。
「それと、一つ言っておく」
「な…なんですか…?」
「お前では真尋さんに絶対に勝てん。実力が違い過ぎる」
「ち…千冬さんまで…!?」
「分かったら、とっとと自分のクラスに行け」
「は…はい…」
最後は完全に委縮をした状態で戻って行った。
もしや彼女…千冬の事が苦手なのか?
「あいつ…一体何をしに来たんだ?」
「というか、何がしたかったんだ?」
「一夏さんに会いに来た…という風には見えませんでしたわね…」
「完全に意味不明でしたね」
「面白かったね~」
あぁ…完全に転入初日から失敗してる…。
ここからの挽回は難しいぞー…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
午前の授業が終わって昼休み。
オレ達は皆一緒に食堂へと向かうことに。
「お腹空いたなー。今日のお昼は何にしよー」
この感じはー…うん、あれだな。
「姉さんは何にするか決めましたか?」
「うん。うどんにする。どのうどんにするかは行って決めるけど」
「なら、私も今日はうどんにします」
姉妹揃ってうどんですかー。
偶にはいいかもねー。
「うわー…隣でうどんの話とかされると、急に俺も食いたくなってくるわー」
「じゃあ、おりむーもうどんにするー?」
「そうだなー…俺も真尋さん達に便乗して、うどんにするかなー」
おぉー…オレから始まった謎のうどんブーム到来。
うどんはいいよねー。
何をトッピングしても合うから素晴らしい。
お揚げに天ぷらにカレーに…うどんには無限の可能性があるんだよ。
これには流石のユニコーンガンダムもビックリだ。
「うどん…? とは何でしょうか?」
「日本を代表する麺類の一つだ。太くてコシの強い麺が特徴だな」
そっか。
当然だけどイギリスにはうどんなんて無いから…。
でも、これを機に日本食を堪能して欲しいと思うのは、自分が日本人だからだろうか。
「私もよく、こちらに来る前はうどんを食べていました。独特の麺ではありますが…あれは中々の中毒性がある食べ物ですよね」
「そうなんだよねー。レパートリーも豊富だから、何を食べようか迷うんだよねー」
特に、専門店とか行けば、その種類に嫌でも驚かされる。
しかも安いから、気が付いた時には常連になっていると言う不思議。
「わ…私もうどんとやらに挑戦してみようかしら…」
「それがいい。折角こうして日本にいるんだ。祖国では味わえない料理を食べるのも一興だろう」
「そう…ですわね。何事も挑戦…それは食事も同じ。異国に伝わる未知のヌードル…見事に堪能してみせますわ!」
「「「「「おぉ~」」」」」
オルコットさんが変な方向にやる気を見せている。
でも、未知の味に挑戦するってのは確かに勇気がいる事だよねー。
特に新しい店に入る時の緊張感…あれはマジで洒落にならない。
「結局、皆揃ってうどんか。このまま、IS学園全体でうどんブームが起きたりしてな」
「いやー…それは流石に…ねー?」
なんて事を話していたら、いきなり彼女が立ち塞がって来た。
「やっと来たわね! 待ってたわよ一夏!」
朝も顔を見せた、一夏の知り合いらしい中国からの転入生『凰鈴音』さん。
もう既にラーメンを注文し終えたようで、トレーを持ったまま食堂の出入り口に立ってた。
まさか…本当に一夏の事を待ってたんじゃあない…よね?