お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第34話 まひろとトーナメント表

 放課後になって、オレは皆と一緒にISの練習の為にアリーナへと向かう事に。

 最近はずっとアリーナと束の研究室を往復してばかりな気がする…。

 引き篭もってばかりいるよりはマシ…なのか?

 

「真尋さんは、またビットの練習をなさるんですの?」

「んー…それもするけどー…もっと機体を自由に動かせるようになりたいかなー」

「「「え? 今以上に?」」」

「別に変な事じゃないと思うんだけど?」

 

 なんで、そこで三人揃って疑問符が出るの?

 

「あれだけの実力を持ちながらも、向上心を持ち続ける…本当に素晴らしいです。真尋さま」

「向上心って言うか…」

 

 実際には、他にやることが思いつかないだけと言いますか…。

 自分で言うのもアレだけど、射撃の命中率はかなりのレベルになっちゃってるし…。

 もう普通に置き撃ちとか出来るしね。

 慣れると意外と簡単だったりするよね。

 あれの有用性を自覚すると、改めてニュータイプパイロットたちの化け物具合を実感できる。

 特にアムロとシャア。

 あの二人だけは完全に別格過ぎるから。

 

「ん~?」

「どうしました本音さん?」

「あそこ~」

 

 徐に本音ちゃんが廊下にある何かに向けて指を指した。

 皆揃って指の先を見て見ると、そこにはIS学園ならではの電子掲示板があった。

 普通はもっとアナログだと思うんだけど、至る所が最新技術の塊なIS学園は、こんな場所にも凄い技術を使っている。

 

「なんか掲示板の前に人だかりが出来てない?」

「みたいですね…なんかあったのかな?」

 

 掲示板には主に、学園内のイベントに関する事や、各種部活の部員募集に生徒会からのお願い事、後は新聞部の学園内新聞が掲示されてたりする。

 

「もしかして、この間のパーティーの時に来てた新聞部の先輩の記事が出来上がったのかな?」

「そうかもしれませんわね。どうします?」

「別に急いでいる訳ではないし、少しぐらい見てもいいんじゃないか?」

「そうだねー」

 

 つーわけで、オレたちも他の子達と同じように掲示板を見に行ってみる事に。

 さーて、一体何があるのかなー。

 

「「「「え?」」」」

「これは…」

「ほわ~」

 

 電子掲示板に表示されていたもの…それはなんと、今度の学年別クラス対抗戦のトーナメント表。

 もう発表されたのかと言う驚きと同時に、トーナメントの組み合わせに目が点になった。

 

「どうやら、鈴さんはトーナメントの第一試合になってるようですわね」

「最初から専用機持ちの試合を持ってくるとはな。真尋姉さんはどこだ?」

「えーっと……あ、見つけた」

「どこ~」

「私も見つけました。一番端っこですね。え? 端っこ? それはつまり…」

 

 オレも見つけた…。

 けど、それは明らかに変だった。

 『篠ノ之真尋』と書かれた場所の線が、どことも交わらずに真っ直ぐと上にだけ向かっていたのだから。

 

「こ…これは…まさか…」

「完全にシード枠になってますね…真尋さん」

「ほわぁ~…」

 

 な…な…な…なんでぇ~!?

 どうして、よりにもよってオレがシード枠になってるのぉ~!?

 いや…無駄に動く必要が無いってのは普通に有り難いけどさ、それと引き換えにめっちゃ目立つポジションじゃんかぁ~!

 オレが一体何をしたっ!?

 

「これはアレですわね。見事に真尋さんの実力が学園側にも伝わってますわね」

「このトーナメント表を見る限り、そうとしか考えられんな」

「いつの間にそんなことにっ!? あの時の試合って、そこまで大々的にやってないよねッ!?」

 

 あくまでもクラス内での出来事って感じじゃなかったっけっ!?

 だからこそオレも渋々ながらも試合に出られたのに…。

 

「あれ? もしかして真尋さん…気が付いてなかったんですか?」

「な…何を?」

「あの時の試合、結構な人数の生徒達が観客席で観戦してたんですよ?」

「マジでッ!?」

「マジです。だから、真尋さんが思っている以上に真尋さんの存在と実力は学園内に知れ渡ってると思いますよ?」

「そ…そんなぁ~…」

 

 一夏の口から語られる衝撃の真実!

 あの時は試合をする事に集中してて、観客席の事なんて全く目に入ってなかったんだよなぁ~…。

 

「生徒同士の噂なんて、当然のように学園側も承知してるでしょうし…」

「きっと、そこからまひろんの強さが公になっちゃったんだね~」

「あうぅ~…」

 

 さ…流石はIS学園…壁に耳あり、障子に目あり…ってことなのか…。

 

「そうじゃなくても、学校って場は一種の閉鎖社会だから、ちょっとした噂でも広まるのは凄く速いらしいですよ? あっという間に全学年にまで知れ渡るって中学の時に鈴が話してました」

「そっかぁ~…」

 

 言われてみれば確かにそうだよなぁ~…。

 それ…め~っちゃ理解出来るわぁ~…。

 ただでさえ女子高生は噂話が大好きだし、今は完全な情報化社会。

 スマホを使えば簡単にネットに繋ぐことが出来るし、それがIS学園ともなれば尚更だ。

 

「これは素直に覚悟するしかないですね、姉さん」

「箒ぃ~…」

「そんな可愛い顔で上目使いしないでください…思わず抱きしめたくなってしまいますから…」

「ふぇぇっ!?」

 

 なんか実の妹から凄い言葉が飛び出してきたんですがッ!?

 

「ま…まぁ…真尋さんならきっと大丈夫ですわよ。当日は私達も見に行きますから…ね?」

「うん…」

「はぅわっ!? ま…真尋さん…可愛過ぎますわ…♡」

 

 オルコットさんもおかしくなったぁっ!?

 って、これに関しては今更か。

 

「はぁ…なってしまったものは仕方がない…か。せめて、シード選手として恥ずかしくないように、頑張って練習に励みますか…」

「その意気です、真尋さま」

「まひろん、がんば~」

 

 皆からの励まし&応援を受けて、オレは改めてISの練習をしにアリーナへと向かうのだった。

 でも…足が重いなぁ~…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 真尋たちが去って行ったあと、入れ違いになるようにして鈴もまた電子掲示板がある場所へと来ていた。

 

「ふーん…アタシは第一試合…ね。上等じゃない」

 

 普通ならば、一番最初と聞いて多少なりとも緊張を覚えたりしそうだが、彼女の場合はその心配はないようで、逆に本人のやる気に火を着けていた。

 

「んで、肝心の真尋はどこにー……へ?」

 

 一番端に書いてある真尋の名前を見て、鈴の目が丸くなる。

 今まで散々と目の仇にしてきた真尋が、あろうことかシード枠になっていたから。

 

「じょ…冗談でしょ…? 代表候補生であるアタシが通常枠で、どうして候補生でもなければ企業所属でもないアイツがシードなのよ…」

 

 いつも強気な鈴の顔に驚きと疑問が浮かぶ。

 学園内に流れている『真尋の実力はもう既に世界レベル』というのは決して眉唾などではなかったのか。

 そうでなくては、この組み合わせの説明が出来ない。

 

「いいわ…つまり、真尋と戦いたかったら、決勝戦まで行けってことでしょ? やってやろうじゃない…!」

 

 どうやら鈴は典型的な『相手が強ければ強い程に燃え上がるタイプ』だったようで、今回の事で完全に鈴のやる気に火を着けてしまった。

 

「待ってなさい真尋…! 必ず決勝戦まで行って、アンタと雌雄を決してやるんだから…!」

 

 メラメラと燃え上がる鈴だったが、この時の彼女はまだ知らなかった。

 自分やセシリア以外にも代表候補生の生徒が他のクラスにいて、その人物がクラス代表として自分の前に立ちはだかる運命にあることを。

 真尋しか見えていない今の鈴には全く見えていない事実ではあるが。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方その頃、学園内にある束の研究室。

 

「あらら…お兄ちゃんがまさかのシード枠とは。思い切った判断をしたねー…ちーちゃん」

 

 千冬から渡されたトーナメント表を見ながら苦笑いを浮かべる束。

 それを見ながら、千冬は茶を啜っていた。

 

「仕方がないだろう。真尋さんの実力は圧倒的だ。候補生でさえあのザマなのに、一般の生徒達とぶつかったら完全にワンサイドゲームになってしまう。流石にそれは哀れだろう」

「確かにねー。もし、お兄ちゃんを一般枠にしてたら、完全な無双プレイになっちゃって、決勝進出は確定しちゃうもんね」

「そう言う事だ。真尋さんには申し訳なく思うが、他の生徒達の事を考えると…な」

 

 教師としては苦渋の選択ではあった。

 だが、千冬にそこまで考えさせるほどに真尋の実力は明らかに突出し過ぎていた。

 束が製作した専用機の性能を加味したとしても、真尋は既に候補生や国家代表以上に到達している。

 仮に今からモンドグロッソに出場しても、確実に好成績を残すだろうと思えるほどに。

 

「にしても、IS学園に来て見事に今まで隠れ潜んでいたお兄ちゃんの才能が開花していくね~」

「全くだ。昔からあんなにも大人しい人だった真尋さんに、あれ程のISに関する才能があったとは…今でも信じられん」

「ちーちゃんの気持ちは私もよく分かるよ。私だって、最初にこれを知った時は同じようなリアクションをしたもん」

 

 争い事とは無縁と思ってきた最愛の兄に、本人すらも知らない武芸の才能が存在していた。

 それを知った時、束は確信した。

 『矢張り、真尋の中にも『篠ノ之の血』は確実に流れている』のだと。

 触り程度とは言え、真尋も剣を握っていた期間はあり、その時に基礎的な部分だけは完成していた。

 それから長い月日が経ち、ISと言う存在に触れたことで今まで不明だった真尋の『才能』が明らかとなった。

 『先読み』『空間把握能力』『イメージ力』。

 いずれもISを動かす上で必須とも言うべき能力だ。

 真尋はその全てが常人のそれを圧倒的に超えていた。

 束や千冬たちのような『超人』から見ても異常と言えるほどに。

 

「ま…決勝戦の一回で十分にルブリスの第二形態移行の条件は満たせると思うけどねー」

「もし試合中に第二形態移行なんてしたら…」

「間違いなく、試合を見ている人間全員の度肝を抜くことになるだろうね」

「インパクトとしてはこれ以上ない程に強力だな。その噛ませ犬になってしまうであろう相手には同情するが」

「それこそ仕方がないよ~。今回はもう本当に相手が悪かったとしか言えないし」

 

 流石の束も、今回のトーナメントで真尋とぶつかる選手には申し訳ないと思っていた。

 折角、頑張って決勝まで進んでも、最後の最後に待ち受けるのが世界レベルの超強敵。

 勝つ事は愚か、善戦するだけでも超高難易度な相手だ。

 

「ルブリスからエアリアルになったら…お兄ちゃんの強さに更に磨きがかかるだろうなぁ~…」

「それ程なのか?」

「うん。機体性能が上がることは勿論、ビットの数が7基から11基にまで増えるんだよ? 他の連中が4基から6基ぐらいのビットを動かすのにヒーヒー言ってる所に、いきなり二桁のビットを動かせますなんて言ったら…」

「世界中でビット兵器の練習をしている奴等の心をへし折ってしまうな…」

「でしょ? まぁ…お兄ちゃんの場合は本当に『ISに関する才能の塊』だから…そこら辺は納得してもらうしかないよね~」

「そうだな…と言うか、実際に試合を見たり、あの人の相手をすれば嫌でも理解出来てしまうだろう…」

 

 こうして束と話していて、本当に真尋をシード枠にして良かったと思う千冬。

 じゃないと、下手したら他の生徒達にトラウマを植え付けかねなかったから。

 

「精々、決勝戦で派手に暴れて貰うとするか…」

「それがいいね。最後ぐらいは好きにしても良いでしょ」

 

 未だに測れない真尋の『本気』…。

 今回のトーナメントで、その一端でもいいから見れたらいいなと思う束なのだった。

 

 

 

 

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