クラス対抗戦の試合は
観客の人たちも今の時間にトイレに行ったり、食べ物や飲み物を買いに行ったりしている。
因みに、オレ達の場合はじゃんけんに負けた一夏が代表して皆のお菓子や食べ物とかを購買部に買いに行ってくれている。
「体を鍛え始めてからこっち、一夏の足の速さも凄いことになってるから、あっと言う間に戻ってきそうだなぁ…」
「と言うか、今の一夏の場合は走ることすらも止めて、跳躍で戻ってきそうです」
「何故だか容易に想像がつきますわね…」
もう完全にオレ達の中では『一夏=筋肉超人』のイメージになってしまった。
このまま一夏はどこへ行くつもりなのだろう…。
高校卒業後の進路は『ボディービルダー』とか言い出さないだろうな…。
「それはそれとして、準決勝の試合は案の定なことになりましたね」
「そうだな。鈴と、あの更識簪と言う者の対戦か…」
どっちとも代表候補生なのだから、この結果はある意味では当然。
ここから先の結末は流石に全く予測出来ないけど。
「次の試合で勝った方が、決勝戦でまひろんと試合をすることになるんだよね~」
「そうなりますわね。でも…」
「何か問題が?」
「いえ…次の試合、鈴さんは相当に不利な状況になると思いまして…」
「確かに…」
今までの試合で凰さんは手札を見せすぎた。
特に、あの『衝撃砲』…あれを早々に使ったのは拙かったと思う。
あーゆーのは基本的に『初見殺し』の武器だ。
初めての相手にならば絶大な効果を発揮するけど、使えば使うほどに武器の特徴や弱点などを次々と看破されていき、最終的には『無い方がマシ』と言える程にまで弱体化してしまうケースが多い。
「多分だけど、あの更識って子…もう完全に頭の中で対衝撃砲のシミュレートを完了してると思う」
「私も真尋様と同意見です。恐らく、あの更識簪なる人物…私や束様と同じように、即席での脳内分析が得意な方とお見受けします」
「姉さんと同系統の人間…か。鈴のような直情的な奴との相性は最悪に近いと言えるな…」
一瞬だけ『箒がそれを言うんかい』って思ったけど、それはお姉ちゃんとして言ってはいけないことだと思ったので頑張って飲み込みました。
オレって偉い?
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「因みに、真尋さんはもう衝撃砲の攻略は…?」
「全然大丈夫。頭の中じゃ、衝撃砲を完封出来る作戦を幾つか思いついてる」
「流石は真尋さん! 素晴らしいですわ!」
う~ん…褒めてくれるのは素直に嬉しいんだけど…しれっとニッコニコ笑顔で頭を撫でまくるのは止めてほしいなぁ…。
隣で箒とクロエちゃんが般若の形相でこっちを見てるから…。
箒に至っては、どうやってかは知らないけど、自然と隈取まで浮かんできてるし。
「織斑一夏! 只今戻りました~!」
「「「「「おぉ~」」」」」
思ってるよりも早く戻って来たな~。
案の定、まるでドラゴンボールに出てくるキャラみたいに、大きな跳躍を繰り返しながら戻って来たし。
気のせいか、ジャンプや着地の度にドラゴンボールでよく使われてるSEが聞こえたような…?
「はい! 真尋さんはアイスココアとカップのティラミスでしたよね?」
「うん。ありがとね~。人が沢山いて大変だったでしょ」
「そんなことは無いですよ。何故か、俺が近づくと皆揃って横にどけてくれましたから」
「あぁ~…」
そりゃ…ねぇ…?
顔だけ普通で、首から下がビスケット・オリバな人間じゃ、普通に考えて怖がって傍から離れようとしますわな。
皆に呆れ顔をさせながらも、一夏はちゃんと全員分のリクエストを手渡していた。
こういう所は真面目だから無下に出来ないんだよなぁ…。
小さい頃からの仲だってのも大きいけどさ。
「そういや、ここに戻ってくる途中で鈴に会ったぞ」
「どんな様子でしたの?」
「なんつーか…すっごい鼻息が荒かったな。興奮状態だったとも言える」
それはもう完全にアレじゃないですか。
何回か試合を繰り返した結果、脳内アドレナリンが溢れ出しまくってる状態じゃあないですか。
「直情的な上に、興奮状態になっているとは…」
「増々、鈴さんには不利な状況になりますわね」
「対戦相手である更識簪さんは、緻密な計算と確かな実力でロジカルに攻めてくるタイプ。発情した猪のような状態の彼女では、まず勝ち目はないでしょう」
うを…クロエちゃんってば…言うねぇ…。
寄りにもよって『発情した猪』って…。
本人が聞いたら激怒間違いなしですな。
「あいつ、真尋さんと決勝戦で戦うことを心待ちにしてる的なことを言ってたけど…これは…完全にフラグになっちまったかなぁ…?」
「多分ね…」
途中で冷静になれれば、まだ勝敗は分からないけど…。
それは全て本人次第だしな。
少なくとも、今のオレ達に出来ることは何もない。
それはそれとして、次の準決勝戦が終わったら、オレも準備をし始めた方がよさそうだ。
決勝戦に進出するのがどっちだとしても、オレは全力で戦うだけだ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
はい。
オレがアイスココアとティラミスに舌鼓を打ってる間に準決勝戦が始まる直前になったので、ここからは真尋ちゃん視点で試合の内容をお送りしま~す。
やっべ~…流石はIS学園のティラミス…ふっわふわで超美味しい~♡
冷たいココアとの相性が最高過ぎるぅ~♡
「クラスの子達から聞いたわ。あんた…日本の代表候補生なんですってね」
「それが何か?」
試合開始数分前。
ステージの真ん中付近で浮遊しながら両者が睨み合っている。
正確には、睨んでいるのは凰さんだけで、相対する更識さんは涼しい顔をしていた。
「どうして専用機を使わないのよ? まさか…舐めプのつもり?」
「そんなわけないじゃない。私だって、使えるなら使ってる」
「じゃあ、どうして使わないのよ」
「そこは普通『使いたくても使えない事情がある』って察せない?」
「そんなの知らないし、どうでもいい。あたしは、あたしが舐められることに我慢できないだけ」
「話にならないし…はぁ…」
あーあ…凰さんは完全に頭に血が上ってますな…。
目標である決勝戦が目前だから興奮している…さっき一夏は話してた通りだ。
「その目…」
「何よ」
「私の事なんて微塵も見てないね。まだ試合が始まってもいないのに、もう決勝戦の事を考えてる」
「当たり前じゃない。準決勝なんて、あたしからすれば単なる『通過点』に過ぎないんだから」
「ふーん…」
うっわ…それはダメだよ~…。
スポーツマンとして一番言っちゃいけないセリフじゃんかよ~…。
「そのセリフ…試合が開始してからも言えたらいいね」
「なんですって…?」
これは…更識さんもカチキレてますな。
でも、彼女の場合は冷静に怒ってるって感じ。
自分の感情を上手にコントロール出来てる証拠だ。
同じ歳の女の子同士なのに、更識さんの方が何枚も上手だ。
凰さんには申し訳ないけど、この試合は…。
「何度だって言ってやろうじゃないのよ…この眼鏡女!!」
「語彙力なさすぎワロタ」
二人が話している間に試合が開始され、始まると同時に凰さんが自慢の連結した二振りの青龍刀で斬りかかる!
けど、更識さんはそれを無表情で薙刀で受け止め、軽く受け流した。
「性能…出力…全てがそっちが上。でも…」
「流された!? こんなもんで…がっ!?」
すっご…流れるような動作で薙刀をクルクルと回転させて、柄の部分で思い切り凰さんのお腹を突いた!
あれは痛そ~…。
「機体の性能が戦力の決定的差じゃないってことを教えてあげる」
「アンタね…!」
い…今のセリフ…おもっくそシャアのセリフじゃないか!
あの子…やっぱりオレと同じガンダム大好きっ子だ!
じゃないと、こんな自然とシャアのセリフが出る筈がない!
「舐めんじゃないって…言ってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「舐めてるのはソッチでしょうが」
連結していたのを分離させ、今度は二刀の青龍刀で攻撃を仕掛けていく。
けど、その動きは完全に精細を欠いていて、全ての攻撃が大振りだった。
そんな力任せの攻撃が更識さんに通用する筈もなく…。
「パワー頼りの攻撃なんて通用しないって、今のやり取りで理解出来なかったの?」
「うっさいのよ!! 幾ら同じ候補生でも…訓練機如きに乗ってるような奴に負けるわけにはいかないのよ!!!」
「そんな風に『訓練機如き』なんて言ってる時点で、アナタの程度の低さが知れるってもんだよ…っと」
「なんですっ…しまっ!?」
長柄故の強みを見事に活かして、更識さんは凰さんの我武者羅攻撃を全て回避、または受け流して防ぎきって見せる。
更には、ワザと横に避けることで体勢を崩した凰さんの隙を狙い、右手に持ってた青龍刀をカキーンと弾き飛ばした。
「まず一本。これで手持ち武器の数は同じになったね」
「ふ…ふん! アンタ程度には丁度いいハンデだわ!」
「ここまでされても、まだそんなセリフを吐ける…その根性は大したもんだね」
「こいつを食らっても…そんな事を言えるのかしらね!!」
あ…凰さんのIS『
衝撃砲発射の予兆だ…。
さて、更識さんはどうするのかな?
「甘いよ」
「え!?」
更識さんは徐に拡張領域からアサルトライフル『焔備』を取り出すと、その銃口を地面に向けて、そのまま発射した。
ISの銃で地面を撃てば、当然ながらその衝撃でステージの半分ぐらいが一瞬で土煙で覆われる。
流石にずっとこのままって訳にはいかないので、すぐに設置されている排煙機構が稼働して煙を排出しようとするが、それも一瞬ってわけじゃない。
ってことはつまり…?
「衝撃砲の弱点…周囲の空間を圧縮すると言う特性上、その『周囲』に『不純物』が混ざると途端に透明ではなくなる。つまり、唯一無二の『無色透明』っていうアドバンテージが失われる。そうなったらもう、それは少し変わった弾を撃ち出すアサルトライフルと同じ。どれだけ射角が無限でも、見えてれば余裕で躱せる。その武器が有用なのは初見の相手と格下の相手だけ。ちょっと分析力があったり、完全格上との相手じゃ完全に死に武器と化す見事な上級者向けの武装。故に使い手の技量が最も重要視される。使う人次第じゃ見えてても十分に脅威となるだろうし」
あああああぁ~…恐らくは決勝戦でオレが言う予定だったかもしれないセリフを全部言われちゃったんですけどぉ~…?
これ…別の意味で後々大丈夫なんだろうな…?
「何が言いたいのよ…アンタ…!」
「ここまで言ってもまだ分からない? それとも、分からない振りをしてるのかな? じゃあ、ハッキリと言ってあげるね」
あ…それは流石に…。
「その『衝撃砲』も、そのISも、アナタみたいな『なったばかりの初心者代表候補生さん』には荷が重すぎる代物だって言ってるんだけど? これで分かって貰えた?」
「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
う…うわぁ~!?
完全に凰さんがブチ切れモードに入っちゃったぁぁぁぁ!?
相手から冷静さを無くさせる為の煽りだったんだろうけど、これは効果が抜群すぎるんじゃないんですかねぇぇぇぇ!?
こんなんじゃザビーネさんも激おこプンプン丸待った無し案件でござるよぉぉ!?