お…おぉぉ…!
なんか、その場の勢いでアサルトライフルの弾を切り払いしちゃったんだけど…。
オレはいつからキラ・ヤマトみたいな真似が出来るようになったんだ?
いや、実際には彼の方が遥かに難易度高いことをやってたけどさ…。
「こっちの弾がビームサーベルで切り払われた…!? 強いとは思ってたけど、まさか…ここまでとは…!」
更識さんも凄い顔でめっちゃドン引きしてるし…。
よく見たら、観客席の人達もお口あんぐり状態になってますがな。
そりゃ、漫画やアニメでしか見ないような芸当を現実で見せつけられたら、そうもなりますわな…。
「今の切り払い…練習とかしてたんですか…?」
「いや…流石ないそれは無い。完全にぶっつけ本番です」
「ですよね…。やっぱり、貴方は規格外すぎる…!」
なんか勝手に規格外認定されたんですが!?
本当の規格外ってのは、千冬や束みたいな超人連中を指すのであって、オレはまだ全然常人の範疇ですから!
まだ人間辞めた覚えはありませんから~!
「けど、これでハッキリした。真尋さん相手に下手な射撃戦は却って自分の首を絞めるだけの愚行だって。きっと、バズーカの弾頭やミサイルだって簡単に切り払うんでしょう?」
「それはやってみないと何とも…」
とか言ってるけど、なんか普通に出来そうな予感がするから怖い。
アサルトライフルの飛んで来る弾よりは簡単かもしれないけどさ…。
「じゃあ、やっぱり私がするべきことは…」
あ…ライフルを収納して、改めてヒートナギナタを両手で構えた。
これは…マジモードに入ったかな。
今までも十分に本気だったかもだけど、それ以上になったってこと。
俗に言う『リミッター解除』ってやつだね。
「
彼女に合わせて、オレも反射的にビームサーベルを構える。
両手で持ち、刀身部分を少し斜め下にした。
「「…………」」
オレも彼女も何も言わない。
いや、何も言えないが正しいか。
なんだろう…この感じ…久し振りだな…!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
さっきまでよりも明らかに速い!
これが彼女の本気!
下手な搦め手は一切抜き、真正面から突っ込んできたか!
それならばこっちも、それに全力で応える!
IS操縦者として、一人のゲーマーとして!
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
サーベルを構えたまま、こっちも全力で突貫する!
コウ・ウラキじゃないけど、これぐらいしないと今の彼女には応戦できない!
「「くぅぅぅぅ!!」」
オレのビームの刃と、彼女のプラズマ熱の刃がぶつかり合って火花を散らす!
けど、今更もうこの程度の事じゃビビってはいられない!
「「まだまだぁっ!!」」
更識さんはナギナタを高速回転させながらオレのサーベルを弾き、胴体がガラ空きになった僅かな隙を狙って刃を突き刺そうとしてくる!
これはもう…こっちも形振り構ってはいられないか!
「こう…なったら!!」
「抜いてきた…もう一本のビームサーベル!」
ルブリスには、ちゃんとお約束のように二本のサーベルがあるんだよ!
って、そんなの言わなくても分かってるか!
「くっ…! 二刀流になったことで一気に攻め辛くなった! たった一本増えただけで、ここまで違うのっ!?」
「たった一本! されど一本ってね!」
君は知らないかもだけど、篠ノ之流じゃちゃんと二刀流の剣も教えてるんだよ!
つっても、実際に出来るのは父さんと束、箒ぐらいだけどね!
オレのは完全に三人の見様見真似だよ!
「ここから…一気に決める!!!」
「そう簡単には…やらせない!!!」
互いの力によってオレ達の体が弾かれるように離れ、僅かな旋回の後に再びぶつかる!
その度に熱の刃と光の刃による火花と衝撃波が辺りに飛び散り、彼女の打鉄とオレのルブリスの装甲を熱で焼いた。
「まだ…!」
「まだ!」
「「ここから!!」」
そんなことを何度も繰り返しているうちに、いつの間にか高速移動をしながらの剣戟に移行していた。
だからだろうか、この時のオレは何にも気が付いていなかった。
さっきからずっと、何度もルブリスがオレにあることを訴えていたことを。
【全ての条件が整いました。これよりガンダム・ルブリスを
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
突如として加速した戦闘に、観客席で見ている者達は驚きを隠せないでいた。
特に、真尋の事をよく知っている者達は。
「ま…真尋さまの二刀流!? あんなの初めて見ました!」
「まさか…あの更識という方は、真尋さんに二本の剣を使わせる程の実力者だったと言うことですの!?」
「す…すげぇぇぇぇぇぇっ!! 真尋さんの二刀流とか最高じゃねぇか!!! うぉぉぉ…興奮してきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
クロエ、セシリアが驚愕している中、遂に興奮が頂点に達した一夏は、制服のズボンすらも筋肉の膨張で内側から弾き飛ばし、完全にブーメランパンツ一丁だけの状態になってしまった。
しかも、何故かその状態のまま180度の開脚までし始める始末。
まるで、どこぞの某人類最強さんみたいだが気にしてはいけない。
そんな中、箒だけが完全に別の意味で驚きまくっていた。
「あ…あの動きは…まさしく篠ノ之流極意『二刀一刃』の構え…! い…一体いつの間に…あの奥義を…!?」
二振りの刀を一振りの刃として扱う、篠ノ之流剣術の極意にして奥義と言われている技。
あの父や束でさえも習得に相当な年月を費やし、箒ですらも辛うじて会得出来たのはIS学園入学直前だった。
それをまるで、さも最初から扱えていたかのように軽々と振るっていた。
「真尋姉さんはいつ、どこであの奥義を…? 少なくとも、私はあの人があの技を練習している姿を見たことが無い…。と言うことは…まさか…!?」
この土壇場で使えるようになった。
それしか考えられない。
自分たちが苦労に苦労を重ねて得た奥義を、IS越しとはいえこうもあっさり。
「は…はは…! 姉さんの言っていた通りだった…。真尋姉さんは…IS操縦者として間違いなく稀代の天才…! 流石は私の真尋姉さん…アナタの実力は伊達じゃなかった…!」
驚きを通り越して、乾いた笑いすら出てしまう箒。
思わず全身の力が抜けて椅子に深く座り直す。
「はぁ…やっぱり…真尋姉さんは最高だぁ…♡」
そして、実の姉(兄)に惚れ直してしまう妹だった。
そんな彼女だからこそ気が付いた。
敬愛する姉の愛機の変化に。
「ん? なんだ…? 姉さんのISが僅かだが光っているような気が…?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
え? 何?
今になって気が付いたんだけど、さっきからずっとルブリスがなんか言ってる?
でも、それに視線を向けている余裕は…!
「ここぉぉっ!!」
「甘い!!!」
無いんだよなぁぁ…これが!!
そんな隙を一瞬でも見せようもんなら、あっと言う間にそこから叩き込まれる!
何をしたくて、何を訴えているのかは知らないけど、やるならそっちで勝手にやってて頂戴な!
『了解しました』
キャァァァァァ!? シャベッタァァァァァァッ!?
『逃げたら一つ…進めば二つ…』
この台詞は…まさか…!?
『本当に面白いよね、君って。まるで、最初から女の子だったみたいだ』
なんだろう…この声…どこかで聞いたことがあるような、無いような…。
『でも、もうそろそろルブリスのままじゃキツくなってきたんじゃない? このままじゃ、いつまで経っても決着はつかないよ? 今の彼女は機体の性能差を自分の技量で見事に埋めてる。この状況を打破するには…』
な…なによ…打破するには?
『進むしかないんじゃないかなぁ…この『先』に』
先とな? なんのこっちゃい。
ちゃんとオレにも分かるように説明せんしゃい!
『おやおや? もしかして普通に勉強不足かな? じゃあいいよ。それに関してはボクの方で勝手にやっておくから。君は君の試合に専念するといいよ』
さっきから勝手に何を言って…ふぇ?
な…なんか視界が眩しく光って…いや違う!
視界じゃなくて、ISが…ルブリスが光ってるんだ!
もしかしてスーパーモード!?
遂に明鏡止水の境地に至っちゃったか!?
でも、流石にルブリスじゃシャッフル同盟みたいな必殺技は…。
『はいはい。勝手に面白い勘違いしないでねー。ボクは、あの人たちみたいな人外一歩手前な超人集団じゃないからねー。それじゃ…行くよー』
行くってどこに…うわぁっ!?
『おはよう…エアリアル』
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
それは、本当に突然の出来事だった。
何度も何度も繰り返してきたナギナタとサーベルの剣戟。
再び、それが繰り返されようとした…その時。
「な…なに…!? ルブリスが光って…まさか!?」
実際に見たことは無い。
その単語も参考書でしか見たことが無い。
操縦者とISが多くの経験を積み、真の意味で同調し、『先』へと進む現象。
本当に…本当に…極めて稀に起こるISの『進化』。
こちらに向かってビームサーベルを構えながら向かってくるルブリス。
そのボディから放たれる光が徐々に増していき、遂には全身を覆い尽くす。
思わず簪も腕を使って光から目を守ろうとする。
「ま…眩しい…! けど…!」
油断はしない。
もし本当に想像通りの事が起きているのならば、今まで以上に油断は出来ないのだから。
そして、光が収束して消失し、そこから現れたのは…。
「あの…姿は…」
青を基調としたトリコロールカラー。
今までよりも丸みを帯び、その頭には特徴的なV字アンテナ。
全身に装着された11基ものビット・ステイヴ『エスカッシャン』。
それは、簪もよく知っている『水星からやって来た新時代のガンダム』。
「ガンダム…エアリアル…!」
エアリアルの振り上げた光の刃は止まらない。
咄嗟にナギナタの刀身部分で受け止めるが、今までとは明らかに結果が違っていた。
「パ…パワーが増してる…!? 押される…!」
機体性能が向上し、更にはビットの数も増えたことによる恩恵なのか、さっきまでとは明らかに何もかもが違っていた。
もう全く拮抗しない。
たった今、全ての意味で真尋が…エアリアルが簪を凌駕して見せたのだ。
そして…。
「なっ…!? ナギナタが!?」
突如として真上から放たれた一筋の細いビームによって、ピンポイントでナギナタの柄が破壊、切断されてしまう。
反射的に視線を向けると、そこにはいつの間にか本体からパージされていた一基のビットが浮いていた。
(い…一体いつの間に!? 全く気が付かなかった!)
その隙が…決定打となった。
「貰ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「し…しまっ…!」
エアリアルのビームサーベル二刀流によって交差するように斬られ、そこへ更に一瞬でパージされた11基全部による一斉攻撃。
その波状攻撃によって、遂に簪の打鉄のSEが尽きてしまった。
「ま…けた…? 私…が…?」
余りにも一瞬過ぎる決着。
悔しさよりも驚きの方が勝ってしまった簪は、自分が落下しようとしている事にも気が付かない。
だが、その心配はすぐに杞憂に終わる。
「えっと…大丈夫?」
「ふぁ…ふぇ…?」
いつの間にか、エアリアルこと真尋が簪のことをお姫様抱っこして、落ちそうになっていた彼女の事を助けていたから。
この時の彼女の顔が真っ赤に染まっていたのは言うまでもない。