ですが、段々と候補は絞られてきました。
「う~ん…ここがこうなって…こうか」
こうしていると、つくづく自分が凝り性だって思い知らされる。
最初は本当に『なんとなく』だったのに、いつの間にかこうなってるし…。
にしても、意外とやれば出来るもんだ。
ふふ…自分の才能が怖いぜ…。
「よし! でーきた! 三つ編みかんせー!」
難しいかもと思ってはいたけど、割と普通に出来てしまった。
これはこれでアレな気もするが…。
「…って、一体何をやっているんだオレは…」
なんか急に我に返った。
普通に楽しく髪型を変えている自分が怖い…!
「真尋さま~? いらっしゃいますか~?」
「おに~ちゃ~ん?」
げ!? ここでまさかのクロエちゃん&束の登場か…。
また変な事を言われそうだ…。
「え?」
「か…」
「な…なんだよ…」
「「可愛い!!」」
「言うと思ったよ!」
本当に悪い意味で期待を裏切らないな!
こっちの想像通りのリアクションをしよってからに!
「で、いきなり髪型なんて変えてどうしたの?」
「べ…別に何かがあったってわけじゃない。最近急に暑くなってきただろ? それに、例のISシミュレーターをしている時も、こんな風に髪を纏めておけば、髪の毛が乱れなくても済むんじゃないかって思って」
「成る程ね~」
「それで、色々な髪形を試していたら、途中から楽しくなってきて…」
「例えばどんな? 私達にも見せてよ~!」
「え~…?」
「私も是非とも見てみたいです!」
「クロエちゃんまで…」
この二人の圧…凄いんだよなぁ…。
こうグイグイ来られると逆らえないって言うか…。
「まぁ…別に減るもんじゃないし…いいけど…」
「やった! んじゃ、私がしてあげるね!」
「え? ちょ…」
…という訳で、なんか急に束の手によってオレの髪型ショーが開幕された。
「まずは箒ちゃんとお揃いのポニーテール! この前のジョギングの時もしてたよね」
「そういや、そうだったか…?」
「凄くお似合いです! 真尋さま!」
これは比較的纏まっていていいよな。
箒が常にこの髪型にするのも頷けた。
「次はお団子! これも可愛い!」
「ま…真尋さまのうなじがモロに…!」
「ちょ…ちょっと?」
なんかクロエちゃんが興奮気味だけど…なんで?
にしても、これが一番落ち着くかもしれない。
めっちゃ纏まってるし。
「これも忘れちゃならない! 王道のツインテール!」
「最高です真尋さま!」
「お…おう…そうか? って、めっちゃ写真撮ってるし!」
クロエちゃんがスマホの写真機能使って百連写しとる!
そんなにオレの写真ばかりあっても意味無いでしょうが!
「はぅ~…堪能したぁ~…♡ やっぱ、お兄ちゃん…女の子としてのスペックが高すぎだよぉ~」
「それ、普通におかしな日本語になってるからな?」
女子力が高い兄って変だろーが。
「と言いつつ、全く抵抗する素振りを見せなかったね?」
「そ…そういえば…!」
完全に束の成すがまま状態になっていた…!
それを受け入れている自分もまたいた…!
「な…なんて恐ろしい…! 無自覚の内に『女の子』をしている自分が…!」
「あ。女の子座り」
「凄く自然に座ってましたね」
「いや…これは…!」
そ…そんな馬鹿な…!
もうオレの意志とは関係無しに『女の子』と化しているというのか…!?
「あうぅ~…もぉ~やだぁ~…」
自分が自分で無くなっていく感覚…。
これはかなりキツいぞ…。
「い…いや! ここで諦めてどうする篠ノ之真尋!」
「「おぉ~」」
「よし…決めたぞ! オレは絶対に男としての自分の心を取り戻してみせる!」
「具体的にはどんな?」
「うぐ…それは…」
そもそも、冷静に考えたら『男としての自分』ってなんだ?
自分で言っておいてなんだけど、全く分からないぞ…。
「そ…そうだ! 力! パワー!」
「「パワー?」」
「その通り! 男らしい筋力を得られればきっと…!」
「パワーねぇ…」
「ってことで、クロエちゃん! 今からお姫様抱っこさせてくれ!」
「喜んで!」
「喜んでなんだ!?」
ここで男らしくクロエちゃんをお姫様抱っこ出来れば、二人も少しはオレの事を男として見るようになるに違いない!
よぉ~し! いっちょ、やりますか!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「うぐぐぐぐ…!」
「あの…真尋さま?」
結論。
微塵も持ち上がらにゃい…(泣)
「私…そんなに重いですか…?」
「いや。この場合はクーちゃんが重いんじゃなくて、お兄ちゃんの腕力が無さすぎるだけ」
「ぐはぁ!」
ストレートに言いやがって…!
正論だから何も言えねェ…。
「さ…流石にお姫様抱っこはハードルを上げ過ぎたか…。何事にも段階を踏まなきゃいけないしな。うんうん。焦りは禁物だよな」
「誰に向かって言ってるんですか?」
「自分に言い聞かせてるんだよ」
ハイそこ五月蠅いぞ。
「ってことで、まずは男らしい肉体作りから始めよう」
ベッドの上に寝転んでから、上半身を繰り返し何度も起こして…起こして…起こして……。
「……………」
「「…………」」
うぐぐ…どうして起き上がらない…オレの身体よ~!
全力を出しているのに、全くベッドから離れない~!
「え? もしかして今、腹筋してる?」
「私には普通に寝転んでいるようにしか見えませんが…」
「ゼー…ハー…ゼー…ハー…」
「「しかも疲れてるっ!?」」
疲れて悪いか!?
こっちだって一生懸命にやってるんだよ!?
「ふ…ふふふ…今日の『腹筋擬き』はこの辺にしておくか」
「腹筋擬きって…」
擬きは擬きだ。異論は認めん。
「お兄ちゃん…やる気はあるみたいだし、私でよかったら筋トレ用具ぐらい作るよ?」
「い…いや…妹にそこまで世話を掛ける訳には…うっ!?」
「どしたの?」
「なんか急にお腹が…もしや、これが噂に聞く筋肉痛?」
「そんな馬鹿な」
バカって何だ。バカって。
そりゃ、お前に比べたらバカかもしれないけどさ…ん?
「あ…あれ? なんかこれ…割とマジで気持ち悪くなってきたような気がするんですけど…」
「え? ちょ…お兄ちゃん!?」
「真尋さま!?」
あうぅ…意識すると途端に気持ち悪さが加速した…。
もう無理ぃ~…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「はぁ…横になったら、かなりマシにはなってきたかも…」
あの後、冗談抜きで起きていられなくなったので、そのままベッドに寝る事に。
たったそれだけの事なのに、不思議と落ち着いてきた。
「よ…よ…よ…よがっだよぉ~…」
「よがっだでずぅ~…」
「ちょ…二人して泣くなよ~」
…心配を掛けさせちゃったな。
普通に悪いことをしてしまった…。
「それにしても、この気持ち悪さは一体なんだ? 今まで一度も経験がしたことが無いレベルでヤバかったんだが…。風邪って感じじゃないし…。まさかとは思うけど、女体化薬の副作用とかじゃあないよな?」
「まさか。お兄ちゃんに投与する薬なんだから、それこそ安全性に関しては自分でも過剰だって思うぐらいに検証しまくったし。そんな事は無いとは思うんだけどなぁ~」
「それって、オレ以外だったら安全性を考慮しないって聞こえるんだけど…」
「…テヘ♡」
「普通に怖いからやめれ」
にしても、本当に風邪じゃないとしたらマジでなんなんだ?
少なくとも、ここ最近は食生活もちゃんとしていたつもりだけど…。
「けど…本当になんでしょうね? 真尋さまが来て約一ヶ月…こんな事は初めてです」
「そうだねぇ~…ん? 一ヶ月?」
どうして『一ヶ月』に反応する?
一ヶ月がどうかしたのか?
「あの~…お兄ちゃん? なんか他に気になる事とかってない?」
「気になる事?」
「そ。例えば、急に胸が張るようになったりとか」
「言われてみれば、そんな気がするような…」
お腹だけじゃなくて、胸も苦しいんだよなぁ…。
まさか、これが所謂『恋の病』!? って、んなわけあるかい。
「束さま…もしや、これは…」
「うん…間違いないよ。よくよく考えればそうだよね。今のお兄ちゃんは、少なくとも肉体面は完全な『女の子』なんだし。こういう事が起きても全く不思議じゃない」
な…なんだよ…二人だけで理解したような顔になって。
オレにもちゃんと説明し~ろ~よ~。
「え…っとね…お兄ちゃん? すっごい言い難いことではあるんだけど、恐らく今のお兄ちゃんの身体は…」
「うぐっ!?」
ま…またお腹が痛くなってきて…!
これはかなりキツい…!
「ご…ゴメン束! 話はトイレから戻って来てからでお願い…!」
「あ…ちょっと待って、お兄ちゃん!」
「なんだよぉ…?」
「えっと…そのぉ~…」
早くしてくれないか?
こっちは冗談抜きで辛いんだが。
「と…兎に角、何があっても冷静にね! 気を確かに持つんだよ!」
「いざという時は、私達がフォローしますから!」
「…? わ…分かった。ありがと…」
いきなり急に優しくなったな…。
まぁ、こっちとしては非常に有り難いけど。
そんな訳で、急いでトイレへと直行。
これにも完全に慣れてしまったなぁ…。
「にしても、二人して一体何なんだ? トイレぐらいで大袈裟な…イタタ…え?」
ちょ…待っ…え? うそ…こ…これって…!
ま…まさか…そんな…!?
「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ひっく…ひっく…血が…血がいっぱい…」
うぅぅ…想像以上に衝撃的な光景だった…。
これは普通にトラウマだよぉ…。
女の子って本当に凄い…尊敬しちゃう…。
「お…お兄ちゃん…大丈夫?」
「うん…」
「真尋さま…お腹を温めると少しは楽になりますよ」
「ありがと…クロエちゃん…ぐず…」
今になって二人の優しさが身に染みる…。
「束さま。ナプキンやお薬はあったでしょうか?」
「う~ん…どうだろ? 後で調べてみないとね。もし無かったりしたら、後で買いに行かないと」
なんか二人で話してる…。
でもそっか…今日からはオレにも関係ある話になってくるのか…。
「その…あまり落ち込まないでください、真尋さま。女の子なら誰もが必ず通る道ですので。分からない事などがあれば遠慮なく聞いてください。喜んでお力になりますから」
「うぅ…クロエちゃ~ん…」
なんて良い子なんだ…クロエちゃん…。
オレ…こんなにも女の子に優しくされたの初めてだ…。
「あー…えっとぉー…レトルトならあるけど? お赤飯。食べる?」
「いらんわ!!」
こいつだけは平常運転しやがって~…!
元気になったら覚えてろよぉ~…!
次回は早くもお風呂のお話。
IS学園はまだまだ遠い。