因みに、ここで『どうして、あの二機に絞ったのか』という理由を申し上げておきますと…。
まず、エンゲージゼロは機体のモチーフが『女性』であり、正式採用機のエンゲージガンダムのモチーフが『男性』。
これがTSしたまひろと合っているような気がしまして。
エアリアルに関しては割とストレートな理由。
同じ時期にアニメが放映され、学園もので尚且つ、搭乗者が女の子。
あと、やっぱ最新のガンダムだからですかね。
ストーリーがIS学園に突入するまではアンケートを続けるので、どんどん投票していって下さると有り難いです。
今日も今日とて、オレは束特製のISシミュレーターを使っていた。
これの存在は割と本気で有り難くて、自宅警備員であるオレには最高のゲームとなっていた。
だって、家の中にいながら外に出た気分を味わえるんだから。
しかも、適度な運動にもなるから小言も言われない。
なにこれ最高過ぎ。
「よっし! 敵機撃破~♪ 前よりもタイムが短くなってるんじゃないか?」
「確かにそうだね~。んじゃ、ちょっと難易度を上げてみる?」
束はまたもや横でこっちのデータを計測していた。
そんなにもオレの情報が必要なのだろうか?
専門家じゃないオレが考えても意味無いけど。
バカの考え休みに似たり…ってね。
…自分で言ってて悲しくなってきた。
「具体的にどれぐらい上げるんだ?」
「今までが『代表候補生なりたて』レベルだったのに対して、次は『熟練の代表候補生』って感じかな?」
「熟練…因みに、その上は?」
「『国家代表なりたて』『熟練の国家代表』『モンドグロッソ上位入賞者』って続いていく」
「最後は?」
「『ブリュンヒルデ』…要は『ちーちゃん』だね」
「流石にそれは無理ゲー…」
ここで束が言う『ちーちゃん』とは、こいつの親友でありオレも知っている『織斑千冬』という女で、少し前までISの日本代表を務めていて、モンドグロッソと言うISの世界大会で第一回優勝というとんでもない記録を持っている。
第二回大会も決勝戦まで進んだらしいが、何故か途中で棄権をしているらしい。
その理由は知らないし、なんとなく知らない方が良いような気がするので聞かないでいるが。
「…まずは一段階アップでよろ」
「りょ~かい」
最後に立ちはだかるのは千冬かぁ~…。
シミュレーションとはいえ、世界最強に勝てるのか…?
ゲーマーとしては非常に燃えるシチュエーションなんだけど。
「た…束さま! 真尋さま! 大変です!」
「クーちゃん?」
「クロエちゃん?」
なんかいきなりクロエちゃんが慌てて束の研究室に入ってきた。
確かお風呂を付けに行っていた筈だけど…何かあったのかな?
「どうしたの?」
「お風呂が壊れました!」
「「え?」」
お風呂が壊れたとな?
「具体的にはどんな感じ?」
「お湯が全く湧きません。ずっと水のまんまです。湯沸かし器も反応しなくて…」
「ふむ…」
珍しいな…てっきり、この研究所の機械類は束が定期的にメンテでもして壊れ知らずだと思ってた。
「束。直せないのか? 天才科学者だろ?」
「うーん…直そうと思えば余裕で直せるけど…流石に、それなりの時間は必要かな。少なくとも、今すぐは難しいかも」
「今すぐは無理…ってことは、今日はお風呂に入らなくても済む?」
いつもならば風呂に擁している時間が急に余った!
これはチャンスなのでは?
よし。今から部屋に戻って早速、ネットの海でMSに乗り、仲間達が待っている戦場に繰り出して…。
「はいダメー。お風呂は毎日入らないとダメだって言ったでしょ?」
「でも、風呂は壊れてるんだろ?」
「まぁね。だから…三人で銭湯に行こう!」
「「銭湯?」」
これまた意外な人物から意外な提案が飛び出してきた。
「ほら。ウチの実家の近くに銭湯があったでしょ?」
「あぁー…確か、酒屋の向かいにそんなのがあったっけ?」
完全にうろ覚えだけど…よくそんなの覚えてたな~。
割と普通に感心するわ。
「セントウ…とは、所謂『大衆浴場』のことですか?」
「そうなるね。いい機会だし、クーちゃんにも日本の銭湯を体験してもらおー!」
そっか…クロエちゃんは外人さんだったっけ。
一緒に暮らしていると普通に忘れてしまう。
どこの国の子なのかまでは知らないけど。
「あれ? でも、オレが銭湯に行くのってマズくね?」
「なんで?」
「いやだって…今のオレに女湯に入れとでも?」
「んー…別に構わないんじゃない? だって、今のお兄ちゃんは立派な女の子なんだし」
「その通りです。気にする必要はありませんよ」
「良いのかよッ!?」
まさかの全面肯定!?
これは流石に予想外の反応…。
だがしかし、自宅警備員として安易に外出する訳には…。
でもでも、合法的に女湯に入る機会なんて未来永劫やって来ないし…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「「「おぉ~」」」
やって来ちゃったよ…実家の近所にある銭湯…。
思っている以上に小奇麗にしている事に驚いた。
オレの中の銭湯のイメージって昭和のままでストップしてるからなー。
「ここがジャパニーズ・銭湯…」
「いや~…普通に懐かしいね~。昔も、よく家のお風呂が稀に壊れた時なんかに箒ちゃんやちーちゃん、いっくんなんかと一緒に来てたよね~」
「そーいや、そんな事もあったっけかー」
因みに『いっくん』とは、千冬の弟の『織斑一夏』の事を指す。
オレにとって数少ない、男で対等に話せる希少な人間だ。
よく男同士、オレの部屋で二人で対戦ゲームとかしてたっけ。
「しっかし…」
目の前にいるのは、見事におばちゃん&おばあちゃんばかり。
うふふ…こんなことだろうと思ってたよ…。
現実なんて、所詮はこんなものだよ…世の男性諸君…。
「はい。残念でした」
「うっさい」
ふん…いいもーんだ。
最初から期待なんてしてなかったし…して…なかったし…。
「ほら。早くお金を払って更衣室に行こ?」
「「はーい」」
ってなわけで、料金を支払ってから更衣室へと向かうことに。
余談だが、オレはクロエちゃんと同じ子供料金だった。
解せぬ…と言いたいが、今のオレの見た目は完全に小さな女の子だから何にも言えない…。
「ところでさ…束はいいのか?」
「良いって何が?」
「いや…オレの方は特に気にしないけど…」
「あっ!?」
ここでやっと気が付いたか。
服を脱ぎかけているところで咄嗟に自分の身体を両腕で隠そうとしてるし。
「あ…あんまり見ちゃダメだからねっ!?」
「ご心配なく。オレは妹の裸に欲情するような変態じゃありませんので」
「それはそれでちょっと複雑…。お兄ちゃんになら何をされても良いのにな…」
なんか小さい声で物騒な事を言ってるけど、ツッコんだら負けな気がするのでスルー。
「言っておくけど、クーちゃんのことも見ちゃダメだからね?」
「あのなー…あれだけ一緒に暮らしていたら、もうクロエちゃんもオレにとっては妹みたいなもんだぞ? それに、オレはロリコンじゃありません。そこら辺は割と健全だって自負してるから」
「それを堂々と言うのも、どうかとは思うけどね…」
うっさい。
こーゆーのはちゃんと言っておくことが大事なんだよ…多分。
「私が真尋さまの妹…えへへ…♡」
「あれ? クーちゃんはまんざらでもない感じ?」
「ほれ。早く行くぞー?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「おー! 不思議と昔よりも広く感じるー!」
「お兄ちゃんの身体が小さくなってるからじゃない?」
「あー…そうかもな」
にしても、まさか今になって自分が銭湯に来る羽目になるとは…。
我ながら凄いことをしているもんだ。
「広いですね…まるでプールみたいです」
「最近の銭湯は、ちょっとしたスパリゾートみたいになってる場所もあるぐらいだしねー」
どこも集客に必死だって事だな。
なんて言ってると悲しくなるからやめよう。
「お? なんかこっちのブクブクしてる…? もしかしてジェットバスってやつか?」
「はいはい。ジェットバスはいいから。まずは頭と体を洗ってからねー」
「真尋さま。こちらです」
「へーい」
仕方がない…ここは大人しく洗うか。
流石のオレも、それぐらいはしますよー。
(体をごしごしー…ってな。お次は頭だな。こっちもテキトーにやって…)
いつものように洗ってから…ハイ終了。
とっとと湯船に入りますかね。
「んじゃお先~」
「え? ちょ…お兄ちゃん?」
「真尋さま…それは流石に…」
え? なに?
なんか急に二人に手を引かれて戻されたんだけど。
「ちゃんと洗っただろぉ~?」
「体はともかく、髪の方はもっとちゃんとしないとダメだよ! 前はともかく、今のお兄ちゃんは私やクーちゃんと同じぐらいに長くなってるんだから」
「そう言われてもな…」
女の子の髪の洗い方とか全然知らないし…。
「この際だし、私とクーちゃんで女の子の髪の洗い方ってのを教えてあげるよ」
「お任せください、真尋さま」
「えぇ~…」
急に面倒な事に巻き込まれてしまった…。
「まずは、ブラシを掛けてからの素洗い。今回はもう遅いけど」
髪を洗うのにもブラシを使うのかよ…。
「そして、シャンプーはよく泡立ててから、髪全体を優しく包み込むように洗っていきます」
うへぇ~…原液状態で頭に付けるんじゃダメなのか~?
「んでもって、濯ぎはキチンとすること。出来れば五分ぐらいね」
「ご…五分ッ!?」
冗談だろッ!?
泡を洗い流すだけなのに五分も掛けるのかよッ!?
女子ってスゲー…。
「仕上げに、毛先にたっぷりとトリートメントをして…」
「ヘルプミー!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
結局、オレが湯船に浸かる事が出来たのは束とクロエちゃんから徹底的に髪を洗われてからだった。
一体どれぐらいの時間が掛かったのか見当もつかない…。
「湯船に髪を着けるのはマナー違反だからね。髪が傷んじゃうから」
「「はーい」」
オレたちは三人揃って髪が長いので、全員で髪をタオルで纏めている。
これはスッキリしてていいけど。
「もう出たい~…」
「だーめ。せめて100数えてから」
「子供扱いするな~!」
見た目はこうでも、中身はお前よりも歳上なんだぞ~!
歳上…なんだけどなぁ…はぁ…。
(兄としてというか…歳上としての威厳…もう殆ど残ってないような気がする…)
寧ろ、今の方が楽な気がしてくるから怖くなってくる。
実際の所、昔と違って今は全くストレスとか感じてないんだけど…。
「100秒って…思ってるよりも長いんだな…」
51…52…53…まだなのか…まだ100秒経過しないのか…。
そうして、心を無にしながら数を数え続け…。
「99…100! はい100秒数えた! もうオレは出るからな! ロビーで待ってるから!」
「はいはい」
「真尋さま…」
そんな目をしてもダメでーす。
お風呂慣れしていない身に銭湯はハードルが高すぎるんだよ~!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「はふぅ~…」
売店でコーヒー牛乳を買ってからベンチに座る。
あぁ~…冷房が火照った身に染みるぅ~…。
「どうして女の子のお風呂って長いんだって思ってたけど、ようやく全ての疑問が氷解したよ…」
髪を洗うだけでも、あれだけの手間暇をかけてたら、そりゃ嫌でも時間が掛かりますがな。
次からはオレのお風呂時間も長くなるのかな…。
(にしても、今更になって妹と一緒に風呂に入るとは…)
束や箒がまだ小さかった頃は、よく一緒に入ってたっけ…。
それなのに、今はオレが入れられる立場になってしまって…。
見事に立場が逆転してしまった…。
(…束もすっかり大人になったって事か…)
いや…違うな。
束も成長したけど、それと同じぐらいにオレ自身があの頃から…。
「真尋ちゃーん?」
「真尋さまー?」
お。二人とも来たか。
っていうか、何故に束も名前呼び?
「あ…そんな所にいた。お待たせ~」
「お待たせしました」
「あ~…うん。それは別にいいんだけど…どうして名前で呼ぶ?」
「だってほら…今は人の目があるし…流石に『お兄ちゃん』って呼ぶわけには…ねぇ?」
「御尤も」
今のオレをそんな風に呼んだら、確実に変な目で見られるだろうしな。
こっちとしても、そんな事は御免被る。
「それじゃあ…そろそろ帰ろっか! 束お姉ちゃん!」
「…!!??」
ど…どした?
まるで頭上に雷でも落ちたかのような顔になって…。
「た…束…お姉ちゃん…!」
「束…さま…?」
「おーい…?」
「えへへ~…♡」
「ちょっとぉっ!? そっちに合わせてやっただけなんですがッ!?」
なんか変なスイッチが入った!?
お姉ちゃん呼びは禁句だったかッ!?
「うんうん! また三人一緒に来ようね! 真尋ちゃん!」
「な~で~る~な~!」
「わわ! 束さまだけズルいです! 私も真尋さまを撫でたいです~!」
「ちょ…クロエちゃんもッ!?」
どうしてオレだけがこんな目に遭うんだ~!?
こーゆーのは一夏の役だろ~!?
「あ…まだ髪が生乾きになってる…」
「え?」
「よし。ここは、お姉ちゃんとして髪の毛の正しい乾かし方をじっくりねっとりと教えて…」
「もうご勘弁を! っていうか『じっくり』『ねっとり』って何ッ!?」
どっちの擬音も猛烈に嫌な予感しかしないんですけどぉ~!?
もう銭湯はこりごりだよぉ~!
やべぇ…普通に書いてて楽しかった…。