お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第9話 まひろと妹の友人の弟

 束からいきなり、お使いを頼まれたオレとクロエちゃんは、どことなく懐かしい風景をバックにして歩道を進んでいた。

 

「しっかし…小腹を満たす物なぁ…。リクエストが大雑把過ぎて、何を買えば正解なのかが…」

「確かにそうですね。もう少しだけリクエストを絞ってくれれば有り難かったのですが…」

「そうだよな~」

 

 天才の癖に、妙な所が抜けてると言うか、なんというか…。

 

「ここは矢張り、スーパーに行ってみますか? あそこならば大抵のものは揃っていますし…」

「い…いや…それはちょっと…」

 

 クロエちゃんの言う通り、スーパーならば束の要求を充たす物だって普通に売っている事だろう。

 駄菓子菓子!(誤字に非ず)

 スーパーと言う場所は余りにも人が多すぎる!!

 ぶっちゃけ、今のオレちゃんにはまだまだハードルが高すぎるのです。

 前の身体の時でも、そんなに行っていた場所じゃないし…。

 

「だ…大丈夫だよ。この辺はオレも知らない場所じゃないし、きっとなんとかなるよ」

「流石は真尋さま…頼もしいです」

 

 よっし!

 なんとかして『スーパー行きルート』は回避したぞ!

 

「けど、それでは一体どこで買うのですか?」

「あぁ…それな。実は、我々は闇雲に歩いている訳ではないのだよ」

「そうなのですか?」

「そうなのです。あそこの角を曲がれば、昔よく通っていた駄菓子屋さんが…あれ?」

 

 角を曲がった先にあったのは……何も無い空き地でした。

 

「何も…建ってませんね…」

「あ…あれぇ~? そんな馬鹿な…確かにここにあった筈なのに…」

 

 オレがマジのマジで困惑していると、偶然にも近くを通りがかったご近所のおばちゃんがやって来た。

 

「あら? もしかして知らないの?」

「な…何を…ですか?」

「ここにあった駄菓子屋ね、店主をしていたおばあちゃんの体調が悪くなったらしくて、家族と一緒に田舎に帰ったらしくて、その時にお店も辞めちゃったんですって」

「そ…そんな…」

 

 ここの駄菓子屋は、よくレアカードの当たる確率が他よりも高いって、一部のオタク達の間では非常に評判が良かった隠れた名店だったのに…。

 オレも、この店で一体どれだけのレアカードを引き当てた事か…。

 

「真尋さま…どうしますか?」

「い…いや。まだだ…まだ慌てるような時間じゃない。まだ大丈夫だ」

 

 嘗ては駄菓子屋だった空地を後にし、オレは頭の中に思い浮かんだ第二の候補地へ向けて歩き出す。

 

「俺の記憶が正しければ、確かこっちに『明らかに地方のやつだろ』って感じの、聞いたことのない名前のコンビニがあった筈…!」

 

 あそこならば、他の有名なコンビニよりも客は少ないし、その割には中々に品ぞろえも豊富だった…と思う。

 

「よし…ここの角を左に曲がれば……あれぇ?」

 

 記憶の通りに歩いてきたはずなんだけど、そこにあったのは見慣れたコンビニなどではなく…お洒落な感じの喫茶店だった。

 

「えっと…喫茶『エゥーゴ』? どう見てもコンビニじゃないですね…」

「んなアホな…。まさか、ここまで潰れていたなんて…」

 

 この近所にある他のコンビニは…あるにはあるけど、ここからだと遠すぎる!

 

(行くしか…無いのか…スーパーに…!)

 

 こうなったらもう…覚悟を決めるしかない…のか…!?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「……………………」

「ま…真尋さま…?」

「や…やっぱ無理ぃ~!」

 

 俺が辛うじて知っているスーパーまで来たは良いけど、人が多すぎて中に入るどころか、入り口に近づく事すら出来ないぃ~!

 どーして、よりにもよってこんな日に限って人が多いんだよぉ~!

 あ…そっか。今日って日曜日だったわ。

 そりゃあ、人口密度が高いのも道理だ。

 

(もしかしたら、意外と人が少ないかも…なんて淡い希望が一瞬で木端微塵になってしまった…! これは無理…普通に不可能…!)

 

 こんな人込みの中に入って行ったら確実に人酔いする…!

 それに加えて、緊張のあまりに気を失うかもしれない…。

 最悪、マジで漏らす。

 

「どうしますか…? 大人しく帰って事情をお話しします…?」

「い…いや…それはそれで嫌だ…。折角、回復しかけている兄としての威厳が再び地に落ちてしまう…! それだけは…それだけは…!」

 

 本当にどうすればいいんだ…!

 完全に八方塞がりじゃあないか…。

 

「あのー…」

「「え?」」

 

 いきなりなんだよ…って、へ?

 こ…こいつは…まさか…!?

 

「大丈夫か? どこか具合でも悪いのか?」

(い…いいいいいいい一夏じゃあねぇか!)

 

 かなり背が高くなってるけど、こいつは間違いなく千冬の弟である『織斑一夏』だ!

 ど…どうしてここにっ!?

 友達の家の遊びに行ってるんじゃなかったのかッ!?

 

(真尋さま。この方をご存じなのですか?)

 

 オレの様子を見てクロエちゃんがヒソヒソ声で話しかけてきた。

 まぁ、当然の反応だよね。

 

(千冬の弟で、オレや束の妹でもある箒の幼馴染の織斑一夏だよ)

(この方が…成る程…)

 

 まさか、この状況で一夏に話しかけられるとは完全に予想外だ。

 当然だけど、オレの事にも全く気が付いてないみたいだし。

 

「君は、この子の友達なのか?」

「え? は…はい…」

 

 クロエちゃんもいきなり話しかけられて戸惑っていらっしゃる。

 そりゃ無理もないわ。うんうん。

 

「熱は…無いみたいだな」

ひゃんっ!?

 

 こ…この鈍感野郎! いきなり人のおでこに手を当てやがった!

 思わず変な声が出ちゃったじゃないか!

 

「む~…」

 

 んでもって、なんかクロエちゃんがほっぺを膨らませながらジト目でこっちを睨んでるし…。

 

「もしかして、何か困ってるのか? よかったら手伝うぞ?」

「……!?」

 

 こ…ここは…助けを乞うべき…なのか…!?

 か弱い女の子&コミュ症のコンビよりも、そこにこのコミュ力お化けの一夏を加えたほうが…。

 

「う…うぅぅぅぅ~……」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「そっかー。お姉さんにお使いを頼まれたはいいけど、人が多すぎて中には入れなかった…と」

「うぐっ…!」

 

 結局、オレ達は一夏に一緒に来て貰う事に。

 歳上としての威厳…もうこの時点で皆無だわ…トホホ…。

 

「なんか…ごめんなさい…」

「全然いいって。そんな気にすんなよ。確かに、人が多すぎると入りずらいよな。ちょっと気持ち分かるよ」

 

 はぁ~…なんかスーパーがトラウマになりそう…。

 こんなんじゃ、社会復帰どころか一人で外出すらも不可能だよぉ~…。

 

「ところで、一体何を買いに来たんだ?」

「えっと…少しお腹が空いたから、小腹を満たせるものを…」

「小腹…ってことは、お菓子とかかな?」

「多分…私だけじゃなくて、お…お姉ちゃん…の友達も一緒だから…」

「成る程な。じゃあ、大人数で食べれるヤツの方がいいか」

 

 あうぅ~…昔は少しウザいと思っていた一夏のコミュ力が、今はこんなにも有り難く感じるとは…世の中、何がどうなるか本当に分からないもんだよな…。

 

「ほ・ん・と・う・は! 私達だけでも大丈夫だったんですけど! 仕方がないのであなたにも手伝わせてあげます!」

「お…おう…俺…なんか嫌われてる?」

 

 ク…クロエちゃんが一夏のことをめっちゃ睨み付けてる…。

 こいつの性格は人によっては好き嫌いが分かれるかもだけど、出逢ってから僅か数分でそんななる?

 うーん…乙女心はよく分らんでござる。

 今はオレも乙女だけど。

 

 因みに、念の為に一人称は『私』に変えてある。

 変に怪しまれても面倒だしね。

 

「そういや予算は?」

「千円。お釣りはお小遣いにしていいって言われた」

「あー…それに釣られたな?」

「うっ…」

「図星か。ま、お小遣いには勝てないよな」

 

 なーんか清々しく笑ってやがるし…。

 こいつ、前にも増して明るくなってないか?

 

「そういえば、アナタはどうしてここにいるんですか?」

「俺? 俺は罰ゲームでお菓子を買って来いって言われたんだよ。ったく…ハメ技は反則だろ…」

 

 あー…大方、友達同士でプチ格ゲー大会でもやって、それで負けたから…って感じか?

 昔から直感的な事は得意な癖に、何故かゲームではそれが活かされないんだよな、こいつの場合。

 

「どうせなら、めっちゃ癖の強いお菓子でも買って行ってやるか」

「例えば?」

「そこにある『激辛唐辛子チップス(魔王編)』とか」

「「魔王編?」」

 

 どうしてポテチの名前に魔王?

 これを考えた奴は何を考えてるんだろう…。

 絶対に酒に酔った勢いで思い付いたろ。

 

「ま…適当な奴でいいか。えっと…」

 

 どこかに何かいいのがないかにゃ~…っと。

 んん? あれは…。

 

「あんな所に、よくお客さん用に出す時に見られる大きな缶に入ったクッキーの詰め合わせがあるや。あれにしよ」

 

 ちょっち値段は高いけど、別に問題無いでしょ。

 四人で食べるには問題は無い量と見た。

 

「ん~! んん~!!」

 

 と…届かない~!!

 背伸びをしても全く手が届かないんですけど~!

 ったく誰だよ! あんな場所に商品を置いた奴は!

 

「ほら。これで良いか?」

「あ…ありがと…」

 

 見るに見かねた一夏がヒョイっと取ってくれた。

 うぅ…増々、自分が惨めになっていく…。

 

「「あ…」」

 

 一夏からクッキー缶を手渡される瞬間、不意にお互いの手が触れてしまう。

 その時、何故か心臓がドキってなった。

 

「ご…ごめん…」

「ううん…こっちこそ…ごめんなさい…」

 

 な…なんだこの気持ちは…!?

 顔が熱くなって、胸がドキドキして…ま…まさかっ!?

 

(ち…違う!! 断じてそんな事は無い!! 相手はあの一夏だぞ!? 自分よりもずっと年下の子供だぞっ!? 冷静になれ篠ノ之真尋ー!!)

 

 落ち着けー…落ち着くんだ自分ー…。

 深呼吸…深呼吸…。

 

「…二人して、何を顔を赤くしてるんですか?」

「「えっ!? あ…その…」」

「しかも、同じ反応…」

 

 なんか、さっきからクロエちゃんが怖いんですけどー!?

 冗談抜きでどうしたー!?

 いつものクロエちゃんはどこに行ったんだー!?

 

「…絶対に渡しませんから」

「ちょ…!?」

 

 急にオレの腕に抱き着いてきたし。

 歳相応のクロエちゃんを見れるのは役得だけど、なんだかなぁ~…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 結局、最後の最後…要はレジまで一緒に来て貰った…。

 いつの日か、この借りは返さないとな…。

 

「そ…それじゃあ、私達はこれで…今回は本当にありがとう」

「別にいいって。それじゃあな」

 

 そうして、一夏は最後まで爽やかな笑顔を振りまいて去って行った。

 あれが天然ジゴロの実力か…恐るべし。

 

「では真尋さま。私達も帰りましょうか」

「そうだな。って、まだ腕を離してくれないの?」

「当然です。ほら、早く行きましょう」

「う…うん」

 

 こりゃ…今日一日はクロエちゃんに逆らわない方がいいかもな…。

 はぁ…本当に疲れた…。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 その後。

 帰ってから、行って帰ってくるまでの経緯を話すと…。

 

「えっ!? いっくんに会ったのッ!?」

「うん。本当に偶然だったけど」

「真尋さんには気が付いては…」

「いなかった。ま、当然だけど」

「ですよね…」

 

 寧ろ、この見た目でオレが真尋だって気が付く方が怖いわ。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ついでの余談。帰り道の一夏。

 

「あの子…かなり可愛かったなぁ…。またどこかで会えたりとか…って、流石にそれは無いか。恋愛漫画じゃあるまいし」

 

 因みに、帰った途端に一夏は買い出しに『どうして遅くなったのか』を問われて素直に事情を話すと、友人達からの一斉口撃を受けた。

 罰ゲームの筈が、いつの間にか美少女二人との買い物というご褒美に変わっていたのだから当然だが。

 

 

 

 

 

 

 




この時点ではまだ一夏は、少し意識をする程度。

でも、原作に突入したら…?




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