大怪獣バトル 〜運命に導かれし者たち〜 作:ウルトラジャンボ
キングジョーを破壊されたマービンはカズマ達がいた場所とは遠く離れた地点で一息ついていた。
「救援要請を使うことになるなんてな…」
近くの岩場に腰を下ろしたマービンは光線銃を取り出しそれを眺める。
(それにしても何故俺はあの時奴を撃たなかったんだ…こんな傷ぐらい訳ないというのに…)
あの時、マービンは負傷を理由にカズマを見逃した。
しかし何故見逃したのか当の本人は分からないでいるのだ。
静かに考え込むマービンの耳に鋭い羽音が聞こえてくる。
マービンが見上げると幾つもの黒い影がジャングルに降り立っていた。
「ビィイイイイイイィイイン!!!」
「あいつらは“宇宙昆虫サタンビートル”…この辺りは奴らの縄張りなのか」
地球のカブトムシそのものな姿をしたサタンビートルの群れは、しばらく辺りを見渡していたが何かに引かれるかの如く全員がその場から飛び去っていくのであった。
飛び去っていくサタンビートルの群れをマービンはただ見届けることしか出来ないでいるのであった。
「なぁ結構歩いたと思うけどまだ着かないのか〜?」
「だからもう少し歩く必要あるってさっきも言ったろ!」
その頃、キングジョーを退けたカズマ達は再びジャングルを進んでいた。
「そんな怒んなくったっていいじゃないか!?」
「いちいち聞かれるこっちの身にもなれよ!」
「ちょっと二人共、喧嘩しないで!」
カズマとツヨシが言い争いになり始めたのでリコがその間に入って二人を止める。
「「…ごめん…」」
二人は同時に謝るとまたジャングルを進んでいき始める。
(最近カズマ君の様子がおかしい…怒りっぽくなってる感じがする…)
先頭を歩くカズマの背中を見ながらリコはカズマの最近の様子を気にしていた。
そこにツヨシが寄って来てリコに耳打ちする。
「なぁカズマ変だよな?あんなに怒りやすい奴だったっけ?」
「ううん…カズマ君は優しい人だから…」
「単純にツヨシがしつこく聞くからだけだと思うモコ」
「そう…かもしれんな…」
モコがツヨシを揶揄ってるのを見て案外そうかもしれないとリコが思ったその時、カズマのバトルナイザーが反応を示す。
[宇宙昆虫反応!宇宙昆虫反応!宇宙昆虫に警戒せよ!]
すると鋭い羽音と共に一体のサタンビートルが木々を踏み倒しながら地上に降り立つ。
「ビィイイイイイイィイイン!!!」
「また虫!?このジャングル虫系の怪獣多くない?」
「とりあえずここはカズマに任せよう。邪魔にならないように離れてないと」
ツヨシがリコを連れ少し離れた場所に向かうと同時にカズマはバトルナイザーを構える。
「行け、ゴモラ!」
[バトルナイザー、モンスロード!]
「キシャアァァァァァアアァッ!!!」
召喚されるやすぐにゴモラは空中からドロップキックを打ち込みサタンビートルを大きく吹っ飛ばす。
だがサタンビートルはすぐさま起き上がると長い角を突き出してゴモラに突進攻撃を仕掛けるが、ゴモラに角を受け止められてしまう。
そのまま角をへし折られそうになるがそれを振り解くとゴモラに掴み掛かり、腕を振って格闘戦を挑む。
振るわれるサタンビートルの腕を適度にいなしつつ懐に潜り込んだゴモラは突進攻撃でサタンビートルを仰け反らせると、尻尾を振り回しその身体を打ち据えていく。
地面に叩きつけられたサタンビートルはたまらず口から毒のゴミを含んだガスを吐き出して反撃し、ゴモラを遠ざける。
「臭っ!なんだあれ!」
「カズマ君!鼻を抑えて吸わないようにして!」
「ぐうっ…!」
毒ガスでゴモラとの距離を空けることに成功したサタンビートルは、羽根を広げ空中から全身を使った体当たり攻撃を繰り出すも、ゴモラに容易く受け止められてしまう。
そのまま組み合いになる二体だったが、ゴモラはサタンビートルの腕に噛みつく。
「ビィイイイイイイィイイン!!?」
振り解こうともう片方の腕でゴモラを殴りつけていくサタンビートルだったが、ゴモラは意に介さずそのまま投げ飛ばすと、サタンビートルに跨りパンチ攻撃の嵐を喰らわせていく。
続けてサタンビートルの頭を掴んでその身体を起こしたゴモラは腹部に蹴りを一発入れると、前転からの尻尾攻撃を頭部に喰らわせる。
「ビィイイイイイイィイイン…」
先程の一撃が致命傷になったのか、弱々しく鳴いたサタンビートルは地面に前向きに倒れ込むと目の輝きを失い動かなくなってしまった。
「よっしゃ!」
「いいやまだだ!」
喜びかけたツヨシをカズマが制止すると同時にバトルナイザーが警告音を出す。
[複数の宇宙昆虫反応!複数の宇宙昆虫反応!複数の宇宙昆虫が接近している!]
すると幾つもの黒い影が上空を横切りカズマ達が見上げると、そこには複数のサタンビートルが空中を飛び回っていた。
「サタンビートルがこんなに!?」
「ジャングルだからそりゃ虫も多いよなぁ」
「勘弁してよ〜!」
「皆!あのサタンビートル何か違うモコよ!」
モコの言う通り、飛び回るサタンビートルの群れの中に一匹異なる姿をしたサタンビートルがいた。
他のサタンビートルよりも立派な角を持ち、黄金の羽根を持つそのサタンビートルは自身の周囲にいるサタンビートルに何やら指示を出しているように見える。
「あのサタンビートルが群れのリーダーっぽいモコね」
「さしずめ“ヘラクレスサタンビートル”って言ったところか?」
ツヨシによって名付けられたヘラクレスサタンビートルは二体のサタンビートルをゴモラに差し向ける。
差し向けられたサタンビートルの一体は空中から毒ガスを撒き散らしゴモラを牽制していく。
その毒ガスに紛れもう一体のサタンビートルがゴモラに空中突進攻撃を仕掛けていき、毒ガスによって動きが鈍っていたゴモラを突き飛ばしてしまう。
ゴモラを突き飛ばすと毒ガスを撒き散らしていたサタンビートルは地上に降り立ち、突進攻撃を仕掛けたサタンビートルと共にゴモラの両腕を掴み立ち上がらせると、空中にいる仲間達に合図を出していく。
それを受けたヘラクレスサタンビートルの側で待機していたサタンビートルも地上に降り立ち、ゴモラに殴りかかって攻撃する。
「負けるな…!ゴモラ!」
だがカズマとゴモラもやられてばかりではなく、ゴモラは自身の両腕を抑えているサタンビートル達を振り解くとまず正面にいるサタンビートルを蹴り飛ばし、すぐさま二体目のサタンビートルを殴りつけ最後に残ったサタンビートルに肩からの突進攻撃を喰らわせる。
そして最初に蹴り飛ばしたサタンビートル目掛けゴモラは全体重を活かした押し潰しを決め、一体目のサタンビートルを倒す。
起き上がったゴモラが横目で見ると二体のサタンビートルが左右から角を突き出して突進攻撃を仕掛けてきているのが見えたため、ゴモラはそれをギリギリまで引きつける。
「ゴモラ、躱すんだ!」
突進が当たる直前でゴモラに回避されてしまったサタンビートルは互いに激突してしまう。
その隙を突いたゴモラは尻尾で纏めて薙ぎ払い地面に叩きつけると超振動波を放ち、二体のサタンビートルを撃破すると上空にいるヘラクレスサタンビートルを睨みつける。
「ビィイイイイイイィイイン!!!」
ヘラクレスサタンビートルは大きく鳴くと自身の周囲にいるサタンビートルと共に地上に降りゴモラと対峙すると角を突き出して威嚇する。
ゴモラは腕を鳴らすとヘラクレスサタンビートルに駆け出していき、ヘラクレスサタンビートルもまたゴモラに駆け出していき二体は取っ組み合いになる。
互いに一歩も退かぬ力比べだったが、ヘラクレスサタンビートルはゴモラから離れると口から毒ガスを噴射する。
それを避けたゴモラだったが、ゴモラがいた辺りの木々はあっという間に枯れてしまった。
「群れのリーダーだけあるって訳か…ゴモラ!頭を狙え!」
毒ガスを噴射し続けるヘラクレスサタンビートルだったが、ゴモラはその頭に岩石をぶつけて怯ませ毒ガスを止める。
さらにもう一つ岩石を投げつけるゴモラであったが、投げつけられた岩石をヘラクレスサタンビートルは角を使って弾き飛ばしていくと再びゴモラへ駆け出していき、角をゴモラに突き立てる。
「キシャアァァァァァアアァッ!!!」
角を突き立てられたゴモラは苦痛の声を上げるもすぐさま角を抑えヘラクレスサタンビートルの顔に膝蹴りを叩き込んだ後、尻尾を勢いよく振り回しヘラクレスサタンビートルを吹っ飛ばす。
「ビィイイイイイイィイイン!!!」
追撃を試みるゴモラだったが、ヘラクレスサタンビートルの一声を受けた他のサタンビートル達が腹部の突起からロケット弾を発射してゴモラを妨害する。
起き上がったヘラクレスサタンビートルもロケット弾を発射しゴモラを追い詰め、遂にゴモラは膝を突いて倒れてしまう。
倒れたゴモラを見て勝ちを確信したヘラクレスサタンビートルはゴモラに近づくと、背中を足蹴にし仲間のサタンビートルに自身の勝利をアピールする。
「調子に乗るんじゃねぇ!カブトムシ野郎!」
その光景を見たカズマは声を荒げ、それに呼応したゴモラも飛び起きるように立ち上がりヘラクレスサタンビートルを転倒させる。
そのままヘラクレスサタンビートルに馬乗りになるとその顔を執拗に殴り始めていく。
慌てて他のサタンビートル達がゴモラを止めようと駆け寄るが、ゴモラは超振動波を放ちサタンビートル達を次々と倒していく。
そしてゴモラはヘラクレスサタンビートルの角を掴んで立ち上がらせると、角をへし折りながら投げ飛ばしてしまう。
「ビィイイイイイイィイイン…!!!」
弱々しく鳴きながらもロケット弾を発射して抵抗するヘラクレスサタンビートルだったが、放たれるロケット弾の嵐を駆け抜けたゴモラは腹部に角を突き刺す。
「やれ!ゴモラ!」
指示を受けたゴモラは超振動波を流し込みヘラクレスサタンビートルを跡形もなく粉々に粉砕してしまう。
その光景を見た他のサタンビートル達はリーダーが倒されたことを悟ったのか次々とその場から逃げるように飛び去っていくが、ゴモラは超振動波のエネルギーを集中させる。
「逃がすな全員始末しろ!」
「待ってカズマ君!」
リコはゴモラに指示を出そうとしていたカズマの手を取る。
「何すんだよ!?」
「あの子達、戦う意志無いんだから殺さなくてもいいと思う!…それに最近カズマ君おかしいよ…」
リコの言葉を聞いたカズマはゴモラをバトルナイザーに戻す。
「おかしいって…何がだよ…」
「イライラしてる感じが伝わってくる…あと戦いを楽しんでいるようにも見える…カズマ君はそんな人じゃないはず!」
「戦いを楽しんでる…?俺…が…?」
リコに詰め寄られたカズマだったが、その瞬間地面に倒れ込んでしまった。
「カズマ君!?」
「どうしたんだ!?」
リコはその場にしゃがみ込みツヨシもモコと一緒にその場へ駆けつける。
「うっ…ううっ…はぁ…!」
「どうしちゃったのカズマ君!?」
「ひょっとしてあの時サタンビートルの毒ガスを吸ってたんじゃないモコか?」
「マジかよ!どうするよ解毒できるものこの辺にあるのか?」
リコ達が慌てていると近くの茂みが揺れ出した。
「なんだモコ!?」
「まさかペダン星人のあいつとかじゃないよな…?」
リコ達が警戒する中、茂みから姿を現したのは………
・宇宙昆虫サタンビートル
宇宙怪獣の一種で、地球のカブトムシに酷似した姿をしている。口から吐き出す毒のゴミを含んだガスや腹部の突起から放つロケット弾、鋭い角を武器とする。惑星ファーリーのジャングルに群れを成して生息しており、何かに引かれるかの如くカズマ達の前に現れる。リーダーであるヘラクレスサタンビートルの指揮のもと次々とゴモラに襲いかかるが返り討ちにあいヘラクレスサタンビートルも倒されたことで戦意を失った群れの残りは逃亡する。
・宇宙昆虫ヘラクレスサタンビートル
サタンビートルの突然変異個体で、通常のサタンビートルと比べ角が長大な他、黄金の羽根を持っている。群れを率いるリーダーとして仲間を指揮しながらゴモラと交戦、一度は連携もあってゴモラを追い込むも瞬く間に反撃され最後は超振動波を受けて粉々に吹っ飛ばされてしまった。