大怪獣バトル 〜運命に導かれし者たち〜 作:ウルトラジャンボ
「ありがとうございましたー!!!」
ここはフジキヶ丘にある飲み屋“馬羅味《ばらあじ》”、そこから一人の客が出てきた。
「今日は飲み過ぎたなぁ〜嫁さんに怒られちゃうよ〜」
相当飲んだのであろうその男はおぼつかない足取りをしていた。
やがて男は電柱にもたれかかりそのまま座り込んだその時
「ピャァアアアァァッ!!!」
甲高い鳴き声が男の耳に届き男が顔を上げるとそこには…まるで半魚人のような姿をした“海底原人ラゴン”が男の前に立っていたのである。
「か、怪獣だぁ〜!助けてくれぇ〜!」
男は慌てて逃げだしていったがそこにラゴンの姿など無く代わりに一輪の黒い花が咲いていた。
「次のニュースです。ここ数日の間続いている怪獣事件に新たな動きです。怪獣が目撃されたとされる地点には共通してとある花が咲いていることが分かりました。植物専門家である後藤カオル教授によるとこの黒い花は今までに見たことがない即ち新種の花である可能性が高いとして、現在調査が進められています…」
「花かぁ…」
ニュースを見てそうぼやきながら朝食を口にするリコ。
すると母の声が玄関から聴こえてきた。
「リコー!これからおばあちゃん病院に連れて行くから留守番お願いねー!」
「はーい!気をつけてねー!」
リコはそう母に声をかけ再び朝食を食べはじめたその時、窓から何かの視線を感じたリコが窓の方を見ると全身が緑色の葉の塊で覆われた“吸血植物ケロニア”がそこに佇んでいたのである。
「ワオオゥゥアアァッ!!!」
ケロニアは両腕を挙げ威嚇するように吠えると窓をすり抜けて家の中に入ってきた。
「きゃあ!?」
驚きのあまり椅子から転げ落ちたリコだが、急いで2階にある自分の部屋まで駆け上がっていくとスマホを手にして警察に連絡しようとしたその時スマホが鳴り画面にカズマの名前が出る。
「もしもし?リコ?あのさ課題のことでそっち行こうと思うんだけど…」
「カズマ君!あの…怪獣が家に出たの!だから…」
「えっ!?すぐ行くから待ってて!」
「違うの!危険だから来ないで…って切れちゃった…」
リコはスマホを握りしめながら布団の中で震えていた。
「ワオオゥゥアアァッ!!!」
一方、家に入ってきたケロニアはリコがいる2階に上がってきていた。
そしてその足音は徐々に大きくなりリコがいる部屋に近づきやがて足音は部屋の前で消えた。
(カズマ君…!)
手にしたスマホをさらに強く握りしめたリコの目に涙が浮かんだその時、玄関のドアが勢いよく開く音がしてカズマの声が聞こえてきた。
「リコ!大丈夫!?」
カズマはそのままの勢いで家に入ると2階に駆け上がっていきリコの部屋に入る。
「リコ!俺だよ!」
「カズマ君!怖かった!」
リコは布団から出るとそのままカズマに抱きついた。
いきなり抱きつかれたカズマは顔を赤くしながらもリコの頭を撫でて落ち着かせる。
「…ごめんね…いきなり」
「あぁ全然大丈夫…ところで怪獣って?」
「えっ?足音がこの部屋の前まで来てたんだけど…」
「俺が来た時にはなんにもいなかったけど…」
リコはカズマから離れると部屋から出て周りを見るがケロニアはどこにもいなかった。
「あれ…確かにいたのに…全身葉っぱの怪獣が窓すり抜けて家に入ってきたんだけど…」
(全身葉っぱ?ケロニアかな?)
そんなことを考えながらカズマも部屋から出てリコと一緒に家をくまなく探し回るがやはりケロニアの姿は無かった。
「もしかしたら逃げだしたのかな?」
カズマは窓から庭に出ると一輪の花が目に留まった。
それは今朝のニュースでも言っていた例の黒い花であった。
カズマはそれを手に取りまじまじと眺めるが、黒いというのを除けば変わったところは無いんじゃないかというのが第一の感想である。
(怪獣が現れた所には共通してこの黒い花があるんだったっけ。…なんか怪しいんだよなぁ…)
「この花“メージヲグ”だモコ!」
「うおっ!大声出すなびっくりするだろ!」
ポケットの中からモコが大声をあげながら飛び出して来た。
「で?モコはこの花のこと知ってるの?」
「宇宙を旅している時に見かけたことがあるモコ。この花は生物が持つ恐怖心を栄養に成長していくんだけど厄介な性質があって…」
「厄介な性質?」
「その生物が恐怖している存在を幻という形で相手に見せることが出来るんだモコ」
「幻で…じゃあリコ達が見てたのは幻の怪獣で実体は無いってこと?」
「そうなるモコね」
「カズマ君!外は大丈夫だった!?」
モコとメージヲグについて話をしていたカズマだったが、リコが来たためモコを慌ててポケットに隠し彼女の元に駆け寄る。
「あぁ、外にもいなかったから大丈夫だよ…それとこれ庭に咲いてたんだけどさ」
「その黒い花ニュースで言ってた花よね。もしかしてこれのせい?」
「確証はないけど多分そうだと思う。それでこの花どうする?」
「う〜ん…警察とかZAPの人に連絡した方がいいと思うけど…」
「うわぁ!怪獣だぁ!」
外から通行人の悲鳴が聞こえて来た2人は庭に出てみるも怪獣の姿は無かった…正確には“見えて”なかったというのが正しいか。
通行人の男には“稲妻怪鳥ヒナバッサー”の姿が見えているのだ。
それを皮切りに街の人々も怪獣の幻を見出しパニックに陥る。
ある人には“誘拐宇宙人レイビーク星人”として、またある人には“インセクトタイプビーストバグバズンブルード”として、はたまた別の人には“凶暴竜ロックイーター”として幻が見えているのである。
その側ではメージヲグが人々の恐怖心を吸収し成長していた。
更にメージヲグは花弁から何らかの粒子を空に向かって放出し、それは次第に巨大な怪獣の形となり姿を現した。
「カズマ君!あれって…確かゴルザだっけ?」
「ゴルザ!?」
「グォォオオオオオン!!!」
リコの目にはゴルザとしてメージヲグの幻が映っているのだが…
「…いやギマイラじゃね?」
「ギィガァアァァァア!!!」
カズマにはギマイラとして映っているのである。
「確かギマイラってあのトゲトゲした怪獣だったっけ?あの怪獣どう見てもトゲトゲしてないでしょ!」
「自慢じゃないけど怪獣のこと詳しい俺が言うんだからあれはギマイラなの!」
「ゲードスだぁ!く、喰わないでくれぇ!」
「「えっ!?」」
怪獣が突如現れたことで一斉に逃げだす人々の中からゲードスの名前が出たので2人はもう一度怪獣を見るが、やはりリコの目にはゴルザが、カズマの目にはギマイラが映っている。
「どういうことなの…?」
「(恐怖心を元に作り出す幻の怪獣…)そうか!あれは人によって見える怪獣が違うんだ!」
「カズマ君?どうしたの?」
「あぅっ!?い、いやこっちの話!リコは家の中に入ってて!俺は助けを呼んでくるから!」
そう言うとカズマは塀をよじ登って外に出た。
「カズマ君!…危ないのはカズマ君もなのに…」
リコは声をかけるが既に離れたカズマにその声は届かなかった。
すると激しい光と共にゴモラが現れ、ゴルザに向かっていった。
急いでリコは家の中に入ると窓を閉めて家の中からゴモラを見つめる。
(なんでゴモラが…?もしかしてカズマ君と何か関係してる?…ううん今はなんだっていい!カズマ君を守って…!)
カズマが走り去ったと同時にゴモラが現れる。
リコはその事に疑問を持ちながらもゴモラに祈りを込めた。
するとカズマから渡されたメージヲグが白く染まっていくのであった。
「キシャアァァァァァアアァッ!!!」
召喚されたゴモラはギマイラを睨むが、ギマイラはその場から動こうとはしない。
「カズマ!?ゴモラを召喚してどうするモコ?相手は実体の無い幻なんだモコ!」
「だからって放っておく訳にはいかないだろ!」
カズマが幻を見るとそれはギマイラから姿を変え始めた。
グドン、レッドキング、デスドラゴ、ガンQ、バキシム、ヒッポリト星人…いずれもカズマがゴモラと戦った怪獣達である。
そして再びギマイラに姿を変えた時、ギマイラが激しい光に包まれ出した。
[未知のエネルギーが収束している模様!警戒せよ!]
バトルナイザーが警戒を促す中、それは1体の怪獣の形となり姿を現した。
猿のような凶暴な顔つきに長く湾曲した角、背中に生えた黒い翼のような意匠とさながら悪魔のような姿をした“恐怖エネルギー魔体モルヴァイア”である。
「なんだあいつは!?」
「メージヲグが人々から吸収した恐怖心を収束させて生み出した感じだモコね」
「あの怪獣も幻なのか…?」
「ウキャアァァアアァッ!!!」
モルヴァイアは大きく吠えると口から火球を放ちゴモラに攻撃を仕掛けるが、ゴモラはそれを尻尾でモルヴァイアに弾き返す。
弾かれた火球の直撃を受けたモルヴァイアは後ろに吹っ飛んでしまい倒れ込む。
「攻撃が当たった…ということは!」
「あいつは実体があるってことか!行くぞ、ゴモラ!」
ゴモラはモルヴァイア向かって突進していくが、立ち上がったモルヴァイアはゴモラの角を抑えるとゴモラの顔目掛けて膝蹴りを何度も叩き込み投げ飛ばす。
続けてモルヴァイアはゴモラを踏みつけようとするもゴモラはそれを転がって回避し立ち上がる。
お互いに態勢を立て直し睨み合いが始まるが、先に動き出したのはモルヴァイアの方だった。
助走をつけたモルヴァイアはその勢いのままジャンプしゴモラに飛びかかるも、それを見切ったゴモラは尻尾をモルヴァイアの腹部に叩きつけて地面に叩き落とす。
すかさずゴモラは飛びかかりモルヴァイアに馬乗りになると追撃を入れる。
モルヴァイアの顔に数発パンチを入れるも、腕を振りかぶった一瞬の隙をついてモルヴァイアは火球を放ちゴモラを攻撃する。
火球を受け怯んだゴモラを押し退けたモルヴァイアは近くにあったビルを持ち上げると、それを勢いよくゴモラの頭に叩きつける。
さらにゴモラの腹部に蹴りを浴びせ背中で担ぎ上げて地面に投げ飛ばした後、左腕を掴み鋭い牙で噛みついて攻撃してきた。
「キシャアァァァァァアアァッ!!!」
「うぐっ!?ま、まただ…」
「カズマ、大丈夫モコ!?」
噛みつかれた左腕から血を流し苦しむゴモラ。
カズマもまた左腕を抑えその場で膝をついてしまう。
「これくらい平気だ…けどこのままじゃまずいかもな…」
額に汗を浮ばせながら、カズマはモルヴァイアを見上げる。
「このままじゃゴモラが負けちゃう…!」
リコは家の中からゴモラとモルヴァイアの戦いを観ていた。
「カズマ君も戻って来ないしどうしよう…あれ?」
不安になるリコだったがふと手元を見るとあることに気づいた。
カズマから手渡されたメージヲグが白くなっていたのだ。
「なんで白い花に…もしかしたら!」
するとリコは窓を開けて家の外に出ると白いメージヲグを掲げる。
(お願い!ゴモラを助けて…!)
掲げた白いメージヲグにリコが祈りを込めると白いメージヲグから金色の粒子が放たれた。
一方、モルヴァイアはゴモラにトドメを刺そうと口にエネルギーを溜め始めていた。
「あの野郎、あんなにボロボロになるまで噛みやがって…!」
立ち上がろうとするゴモラだったが、左腕からの出血が激しく立ち上がれずにいる。
そしてモルヴァイアが火球を放とうとしたその時、突如モルヴァイアが苦しみだした。
「どうしたんだいきなり?」
「カズマ!あれを見るモコ!」
モコが示す方向を見ると、先程リコが持っていた白いメージヲグから放たれた粒子がモルヴァイアを包み込んでいた。
その粒子はゴモラも包み込むと左腕の傷を塞ぎ治してくれたのである。
「傷が治った…あれは一体?いやこの際なんだっていい!ゴモラ、奴が苦しんでる今がチャンスだ!」
そう言ったカズマがバトルナイザーを掲げると同時にゴモラは身体から炎のようなオーラを発するとモルヴァイアに突っ込んでいった。
自身に向かってくるゴモラを見たモルヴァイアは再び近くにあったビルを投げつけて攻撃するが、ゴモラはそれを角で弾き飛ばすとそのまま肩からの体当たりでモルヴァイアを吹っ飛ばすと、ゴモラはモルヴァイアの両足を掴み自身の身体を軸にして何度も回転し勢いをつけて投げ飛ばす。
続けてゴモラはモルヴァイアの角を掴むとその超パワーを活かし、角を捩じ切ってしまう。
「ウキャアァァアアァッ…!グゥゥワヮッ…」
角を捩じ切られ弱々しく吠えたモルヴァイアは何とかして立ち上がるも、ゴモラはモルヴァイアの頭に尻尾を叩きつけて攻撃する。
その一撃を受け膝をついたモルヴァイアの身体は黒い粒子状になりそれは空中で一つの巨大な球体になると、そのまま逃走し始めた。
「逃すか!超振動波だ!」
カズマの指示を受けゴモラは角から超振動波を放ち、それを受けたモルヴァイアは大爆発と共に消滅する。
それと同時に街で大量発生していたメージヲグや幻影怪獣軍団も一斉に消滅するのであった。
「メージヲグが消えていくモコ…」
「これで一件落着だな。ゴモラもよくやったな」
「キシャアァァァァァアアァッ!!!」
カズマはゴモラを労いながらバトルナイザーに戻すとリコの元に向かうのであった。
「順調に育ってきているな…期待しているぞ、我が血を継ぎし“息子”よ…」
・恐怖エネルギー魔体モルヴァイア
フジキヶ丘に咲いた黒いメージヲグが吸収した人間の恐怖心を元に生み出した邪悪なエネルギー体。悪魔のような姿をしており、口から放つ火球や鋭い牙による噛みつき攻撃を得意とする。
ゴモラとの戦いでは身軽な動きで翻弄し噛みつき攻撃で苦戦させるもリコが手にしていた白いメージヲグから放出された粒子を受け弱体化、最期は超振動波を受け消滅した。
・宇宙植物メージヲグ
フジキヶ丘に突如として咲いた宇宙植物。人間の恐怖心を栄養に成長しその恐怖心を素粒子に変えて、人々が恐れるものを幻影として映し出すことが出来る。実は近くにいる人間の心の状態で性質を変化する生態をしており、リコが手にした花はリコの想いに応えるかのように白い花に変化、モルヴァイアの苦手とする成分を含む粒子を放出するようになった。最終的にはモルヴァイアが倒されたことで全てのメージヲグは消滅するのであった。
・幻影怪獣軍団
黒いメージヲグが吸収した人間の恐怖心を元に映し出した幻の怪獣達。
海底原人ラゴン
吸血植物ケロニア
稲妻怪鳥ヒナバッサー
誘拐宇宙人レイビーク星人
インセクトタイプビーストバグバズンブルード
凶暴竜ロックイーター
超古代怪獣ゴルザ
地底怪獣グドン
どくろ怪獣レッドキング
破壊暴竜デスドラゴ
奇獣ガンQ
一角超獣バキシム
地獄星人ヒッポリト星人
深海怪獣ゲードス
吸血怪獣ギマイラ
が幻影という形で映し出され人々をパニック状態にした。最終的にはこちらもモルヴァイアとメージヲグの消滅に合わせ消滅するのであった。